『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…14』を試し読み♪ | 一迅社アイリス編集部

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という編集部ブログ。

こんにちは!

本日は、明日発売の一迅社文庫アイリス8月刊の試し読み、第2弾をお届します(〃∇〃)

試し読み第2弾は……
『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…14』

著:山口 悟 絵:ひだかなみ

★STORY★
悪役令嬢カタリナの破滅の運命を無事回避!ーーしたはずが、ゲーム続編の舞台である魔法省に就職していた私。闇の魔法を暴走させそうになったことで思い悩んでいたある日、闇の魔法に関係すると思われる事件が再び発生! 続編の攻略対象である上司サイラスの故郷へ出向くことになるけれど、彼に思いを寄せる美女が同行!? ヒロインのマリアを取り巻く状況も変化して……。
大人気破滅回避ラブコメディ★第14弾!!

TVアニメシリーズに続き劇場版アニメも公開された人気作!!
コミックゼロサムにて、イラストのひだかなみによる長編コミック版も大人気★連載中!! コミカライズ①~⑩巻大好評発売中! スピンオフコミック全③巻も大好評発売中!


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「食べすぎだよ。義姉さん」

 義弟のいつもの小言が聞こえてきた。

「あっ、キース」
「あっ、キースじゃないよ。少し飲み物を飲むだけだって言ってなかなか戻ってこないから心配したんだよ。でも話が区切りつかなくて抜けられなくて、そこにセザール王子がきて声をかけてくれて、義姉さんの場所も教えてくれたんだよ」

『身内に声をかけてきてやる』と言ったセザールはその言葉通りキースを呼んできてくれたみたいだ。
 こんなに人が多い中から、それほど面識のないキースをこんな短時間に見つけてしまうなんてセザールはやはり只者ではないなと感心する。

「まったく、またセザール王子に迷惑をかけているし、しっかりしてよ。義姉さん」
「はい。ごめんなさい」

 その辺は本当にその通りなので謝っておく。
 ちゃんと反省して謝ったからか、キースもそこで小言はおしまいにしてくれた。
 私はキースの許可を得て、皿に残った料理だけ食べて飲み物を飲んで一息ついた。
 しかし、料理を食べるのに夢中で気付かなかったけど、

「最初より人が減ったような」

 周りに目をやりそんな風に口にすると、

「人は減っていないと思うけど、他国の人たちはだいたい皆、ソルシエ王族に挨拶に行っているから、ほら」

 キースがそう言って示した先には、それはそれは長い列ができていた。

「うわっ、すごい」

 思わずそんな声が出てしまった。
 普段のパーティーでも、それなりの列にはなるけどあそこまで長い列になっているのは初めて見た。

「今日は特に出席国が多いからね。仕方ないとはいえ、大変だよね」

 キースがにこやかに挨拶を繰り返しているソルシエ王族たちに目をやり言った。
 私もつられてそちらへ目をやる。いつもと変わらずにこやかに挨拶に応じている王族の面々だが、やはり人数が人数なので大変だ。
 末っ子王子のアランなんかは、あまり社交が得意でないのもあり、顔に疲れが出始めているようだ。となれば同じようにジオルドも疲れてきているだろう。ただジオルドは、疲れを顔に出さないで我慢するタイプだから、顔色は変わらないだろうけど。
 ちらりとジオルドに目を向けると、ぱちりと一瞬、目が合った気がした。
 あれ、この大人数の中で目が合うとかないか、気のせいかな?

「義姉さん、どうしたの?」
「え~と、今、一瞬、ジオルド様と目が合ったような気がしたけど、こんな大人数の中、そんなことないよね。気のせいだね」

 きっと、前世のアイドルのコンサートで目が合ったとなるのと一緒だな。

「う~ん、あながち気のせいでもないかもしれないけど……」

 キースが少し眉を寄せてそんな風に言う。

「えっ?」
「いや、やっぱり気のせいだね。とにかく一人行動は慎んでね」
「はい」

 キースによい返事をしたところで、また呼びかける声が聞こえた。

「カタリナ様、やはりここにいらっしゃったのですね。見つけられてよかったです」

 にこやかな笑顔で社交界の華と呼ばれる美しい令嬢メアリ・ハントがこちらへとやってきた。その後ろにたくさんの知った顔を引き連れて。

「メアリ、それにマリアにソフィア、ニコル様にサイラス様まで、皆で一緒に来たんですか?」

 アスカルト兄妹、ソフィア、マリアまではいつものメンツだけど、そこにサイラスも一緒だったことに驚いた。昨日は全然、今日の話なんかしていなかったのに。

「ソフィア様たちと待ち合わせてきたのですが、入る時にマリア様たちにもお会いしたので、そのまま一緒にきたのですわ」

 メアリがざっくりとそのように説明してくれた。

「マリアとサイラス様が二人できたの!?」

 私は驚いた声をあげてしまった。
 マリアは、ともかくあのサイラスが意中の女性であるマリアと二人で行動することができるなんて!
 ついこの間まで恥ずかしいから一緒の馬車に乗れない。二人きりでなんて話せないって小学生男子でももっと進んでいるぞってくらいもじもじしていたあのサイラスが!
 サイラス、ついに小学生男子並みになれたのねと嬉しくなっていると、マリアが、

「いえ、サイラス様とはお城で待ち合わせていただいたのです。お城まではソラさんが一緒について来てくれました」

 そんな事実を教えてくれた。
 ちらりとサイラスを見ると『その通りだ。俺がマリアと二人きりで馬車に乗れるわけないだろう』みたいなドヤ顔をしていた。
 全然、小学生男子以下だった。これ、このままじゃあ絶対に発展しないやつだわ。
 強い光の魔力を持つマリアは今やソルシエの有名人であり、交流を持ちたいという人も多くこういったパーティーにも参加するようにお達しがくるようになっていた。
 しかし最近、闇の魔力を持つ集団に襲われたばかりなので、一般的な護衛は近くについているということだけど、さらに闇の魔法を持ち腕っぷしも強いソラ、そして強い魔力を持ち、武闘派でもあるサイラスを追加で護衛とするようにとでも通達があったのかもしれない。
 いや、もしかして寮からのソラの護衛はサイラスがマリアと二人で馬車に乗れないために頼んだのかもしれない。そちらの方がありそうだ。
 私は小さな声でこっそりサイラスに、

「馬車でのソラの護衛はもしかしてサイラス様が頼んだのですか?」

 と尋ねてみた。

「ああ、二人きりで馬車に乗ることなどとてもできないからな」

 サイラスは同じように小さな声で、でも『当たり前だ』という風に答えた。
 いや、なんでよ! というかソラと二人っきりはいいのか?
 サイラスは知らないけど、ソラだってゲームⅡの攻略対象なのだ。
 今はそんなことはないように見えるが、マリアを好きになる、いやもう少しずつ好きになっている可能性だってあるのに。

「あの、ソラとマリアが二人きりになるのはいいんですか? ソラもマリアに好意を持っているかもしれないですよ」

 マリアが好きでアプローチしている最年少で魔法省に入った天才少年デューイのことは警戒しているようなのになぜだ?
 どちらかというと、というかどう見てもデューイよりソラの方が女性を口説くのは上手そうなんだけど。
 ソラが本気でマリアを好きになり、アプローチし始めたら『未だに二人では馬車に乗れない、緊張する』なんて言っている小学生男子以下のサイラスに勝ち目はないと思う。
 しかし、私の指摘にサイラスは目をぱちくりとして驚いた様子を見せて言った。

「いや、ソラがマリアに好意を持っていないことくらい私でもわかる」
「えっ、どういうことですか?」
「どういうことって、彼はどう見ても」
「どう見ても何ですか?」
「カタリナ嬢、君は気付いていないのか?」
「気付いていないって何がですか?」
「……」
「ちょっとサイラス様、なんですか、どういうことなんですか?」

 黙ってしまったサイラスに少しだけ声を大きくしてそう問うと、

「カタリナ嬢、君はまだまだ恋愛についてわからない、子どもなのだな」

 となんだかやれやれみたいな顔で言われた。
 な、なんだと~~~~!? まさか恋愛レベル小学生男子以下のサイラスに恋愛がわからない子どもと言われるなんて! あなたにだけは言われたくないんですけど!
 なんてことだ、言い返してやろうと思ったところで、

「カタリナ様、ほらこちらのお菓子、美味しいですよ」

 とメアリが腕を引いてきて強制的にサイラスから離され、小声での会話はお開きになった。
 なんかやれやれ顔のままのサイラスの顔がどうも気にくわないが、それでも美味しいお菓子は気になる。

「どれどれ」
「これです。初めて目にしたので新作だと思いますわ」
「わぁ、本当だ。私も初めて見たわ」

 さっそく一つ取って食べてみる。うん、すごく美味しい。

「私も一ついただいてみてもいいでしょうか?」

 新しいお菓子ということで興味津々のマリアに、自分の家でもないけど私が「いいよ」と承諾すると、マリアは嬉しそうにお菓子を口にした。

「私も食べてみます」

 ソフィアも便乗して、お菓子を口に入れ「美味しい」と頬をほころばせた。

「美味しいのでお兄様もどうぞ」

 と妹に勧められてニコルもお菓子に手を伸ばした。
 いつもの無表情でもぐもぐしていたが、ぼそりと出てきた言葉は「美味い」だったので何よりだった。

「ようやくカタリナ様に会えてよかったですわ」

 皆でお菓子を美味しくいただきながら、メアリがそう口にした。

「今日は人が多いからね。会うのも大変だよね」

 とうんうんと頷いたのだけど、

「いえ、カタリナ様ならきっとこの飲食の場におられると思っていたので場所は大丈夫だったのですが」

 あ、飲食のところにいるのはバレバレだったのね。そうか。ちょっと遠い目になりそうな私の横でメアリが続ける。

「たくさん声をかけられてしまってなかなか動けなくて」
「ああ、メアリたちは皆、綺麗だから男性からのお誘いはすごいのでしょうね」

 メアリもマリアもソフィアも、ものすごい美女だものね。

「いえ、もちろんそう言った声がけもあったのですが、それ以上にニコル様へのアプローチがすごくて……」

 メアリがげんなりした表情でそう言った。

「えっ、ニコル?」

 私の疑問にはメアリでなく妹、ソフィアが答えてくれた。

「はい。お兄様の魅力はいつもすごいのですが、今日は他国の人も多いせいかよりすごくて、若い女性はもちろん老若男女皆様から声をかけられまして、中にはかなり地位の高そうな壮年男性などもいらっしゃって簡単にあしらえなくて、大変でしたの」

 おぉ、他国の人たちにも魔性のオーラは抜群に効くのだな。そして老若男女関係なく魅了していく。こんな美女たちに囲まれてもなお一番人気を誇るとかさすがすぎる。

~~~~~~~~(続きは本編へ)~~~~~~~~

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