保育園の頃から、運動会はいつも二人ぼっちだった。

 

園によっては保護者が競技に全員参加するような所もあるようだが、幸い息子の通っていた保育園は違った。

小学校も同じような感じで、ただお弁当を持参して見に行けば良い。


競技に参加しなくて良いのは楽だが、問題はお弁当の時間だった。

 

ワイワイと賑やかに家族仲良く応援している場所では、自分たちが酷く似つかわしくないように感じてしまった。

息子がどう感じていたのか分からないが、寂しそうだったのは確か。

 

だから、息子が幼い頃は運動会がとても苦手だった。


お昼ご飯を食べる時に周りを見渡すと大体はお父さん・お母さんと一緒で、どちらかしか来ていないご家庭ではおばあちゃんやおじいちゃんが来たり、家族ぐるみで仲の良いお友達と一緒に見学したりしていた。

年の近い兄弟が居ればそのご兄弟も一緒に参加していて、それはそれは賑やかだった。

 

我が家とはとても対照的。
 
比較的都市部なので、もちろんシングルのご家庭もある。

 

同じように子どもと二人だけの家もあるはずなのに、なぜか見当たらなくてポツンと取り残されたような気持ちになるのが常だった。


うちだけ二人。

 

ざわざわと周りは楽しそうにはしゃぎ、その喧噪の中で場違いなほどの静寂。

 

息子は気にしないようにしていたようだが、いつだったかお友達が少しだけ我が家のシートに遊びに来た時には本当に嬉しそうだった。

やっぱり寂しいんだ。

 

でもそれを隠して普通に振舞っているのだろうか。

せめてご飯だけは息子の喜ぶものにしようと、その時々の好物を作って頑張った。

 

見栄えにもこだわった。

 

見た瞬間に楽しくなるようなご飯にしようと。

朝早く起きて作ったご飯を見た時の息子はとても嬉しそうだった。

 

好物ばかりで揃えているのでモリモリと食べ、その後も楽しそうに参加していた。
 

 

 


夫は家でうだうだと時間を潰している。

 

普段あんなに威張っているのに、息子の運動会にも来られないのか。

正直なところ、これ以上はないというくらいに夫には失望しているし、言いたいことは山ほどある。

 

でも、それをストレートに伝えたら、またへそを曲げてモラハラ攻撃が始まるのは目に見えている。

モラハラが始まったら、一番に被害を受けるのは息子だ。

 

まだ幼い息子のことを平気で叩くような男だ。


運動会などの行事のたびに周りの家族のことが気になってしまったのは、私が「普通」というものにすごくこだわる性格だったからかもしれない。

 

普通からはみ出してしまったことが恥ずかしくて、息子にも申し訳ないとずっと思っていた。
 

後ろめたい気持ちが常につきまとい、息子に聞いたことがある。

「いつもいつも二人ぼっちでごめんね。お父さんに頑張って来てもらおうか?」

そうしたら、息子は首を横に振って言った。

「来なくていい」

まだ小学校低学年の頃のことだ。

 

あまりにもキッパリと言い切ったので、息子の本心だと思う。