#18 自分の家?
6月7日(水)【3日目-1】
夜中に雨が降ったみたいで、朝起きた時には外の地面がぬれていた。
曇り空の下、先生は学校へ向かった。
「鍵、なくすなよ」
先生は、生徒よりも早くに登校しないといけないらしい。
朝ご飯は、昨日買ったパンと夜ご飯の残り。
ぜんぶ、昨日のままだった。
テーブルを片付けて、洗濯をする。
洗濯機はドアの外にあった。
ビールがかかった服はすでに中に入っていた。
学校…か……。
ユメコやマリンに会いたいな。
ママやパパ、お兄ちゃん…みんなに会いたい…。
そんな気持ちが私を学校に向かわせた。
給食が終わった頃だから、誰か外に出てくるかも…。
なんて思って見てたけど、校庭がぬれてるからか、外には誰もいなかった。
教室からは騒がしい声が聞こえていた。
体育館からはバスケの音もする。
低学年はもう帰るのか……
水曜日。
もう3日も休んでる。
この中にいたことが、なんだかとっても遠い昔のことのような気がしてきた。
夢の中にいるみたいな感覚に包まれながら、しばらく誰もいない校庭をのぞいていた。
やっぱり、家にも行きたくなる。
いっぽ歩きだせば、もとの姿に戻れるかもしれない。
家族になら気づいてもらえるかもしれない。
そう思って、今日は家の近くまでこれた。
でも、なんか、ちょっと自分の家じゃないような気がしてきた。
やっぱり気づいてもらえないかもしれない。
少し怖くなって玄関から離れる。
「ナツミ?」
後ろを向いた時、よく聞き覚えのある声が目の前で聞こえた。
「え……それ…って……?」
お兄ちゃん…だ。
「どうした……?」
とても、驚いている。
まあ、そうだよね。
でも、お兄ちゃんこそ、こんな時間にどうしたの?
<つづく>
関西では学校のグラウンドを
「校庭」とは言わないそうなので…
校庭は運動場のことですと追記しておこう。。