孫一凡指揮上海交響楽団 北欧の旅 | 上海鑑賞日記(主にクラシック)

上海鑑賞日記(主にクラシック)

上海生活の合間に聴いた音楽や見たスポーツなどの記録を残します。

日時:2023年03月24日(金)20:00~

会場:上海交響楽団音楽庁

指揮:孫一凡

演奏:上海交響楽団

独奏:寧峰

曲目

ニールセン:序曲「ヘリオス」作品17

ニールセン:ヴァイオリン協奏曲作品33

シベリウス:交響曲第1番ホ短調作品39

 

感想:

上海交響楽団の演奏会で指揮者は若手の孫一凡さんで、なかなか優秀な印象を持っている指揮者である。

今回はニールセンとシベリウスという北欧の作曲家特集で、現在のデンマークとフィンランド生まれだが実は同じ年(1865年)に生まれていて、ヨーロッパはまだ戦争で領土を奪い合っていた時代である。

特にフィンランドはロシアの支配下にあり、この日演奏される交響曲第1番はロシアの支配が強まる中でシベリウスが祖国の独立を願う思いを持ち作曲されたとされる。

このような背景の今夜のプログラムの作曲家達であるが、ほかの作品は聴いたことがあるが実はこの夜のプログラムはどれも初めて聴く曲である。

さて1曲目のヘリオスは、非常に統率の取れた演奏で豊かな響きがホールに充満し心地よい演奏になった。

この指揮者の本領発揮といったところである。

こういったしまった演奏になると聴衆も引き込まれるようで。静寂が保たれ余分な雑音はほとんど聴こえない。

演奏後の拍手にもいいものを聴かせてもらったという熱いメッセージを感じる拍手だった。

 

2曲目は同じくニールセンのヴァイオリン協奏曲でソリストは寧峰さん。

この寧峰さんは過去にも何度か聴いている上海では人気の高いソリストである。

さて演奏が始まるとオケとソリストが非常に息のあった演奏を展開し打てば響くといった感じで流れるように進む。

このソリスト、そもそもテクニックは非常に高いものは持っていたが、深い表現力といった面ではやや物足りない面もあったが、この曲ではそういったソリストの弱い面が見事カバーされており、ソリストの良い面がうまく際立った演奏に整えられていた。

それもこれも仲立ちをする指揮者の力量によるものと察し、この指揮者の調整能力の高さを感じる。

まさにオケとソリストが一体となったコンチェルトが展開された印象で、選曲の妙なのかもしれないが非常に良い演奏に感じ、満足度の高い演奏になった。

ただコンチェルト後のアンコールにソロで2曲演奏されたが、こう言っては何だがソリストへの印象はコンチェルトほどの凄さは感じず、以前と同じレベルの印象に引き戻された感じで、コンチェルトの演奏の良さがさらに際立つ結果となった。

 

後半はシベリウスの交響曲第1番。

第2番は日本でも非常に人気が高く多く演奏される曲だがこの第1番はプログラムに並んでいるのさえあまり見かけないほど、演奏される機会は多くない。

さて、演奏が始まると前半同様に統率の取れた演奏だが、どこか違和感がある。

何というかシベリウスっぽくないのである。

どこがどう違うのかという細かい面は指摘が難しいが、節回し的なアクセントの面でシベリウス、あるいは音色の面でフィンランド的な匂いに欠けていた。

楽器でいうと、オーボエ、フルート、トランペット、トロンボーンあたりの音のニュアンスが何となくシベリウスっぽくなく、ファゴットの響きもどこか違和感がある。

何が違うのか明確に指摘できないのが悔しいが、この作曲家の持つ独特な響きの世界がこの演奏にはちょっと欠けてしまっていた印象なのである。

恐らく指揮者としては100%に近い仕上がりでオケのドライブは出来ていたと思うが、どうも音楽の解釈の面で迷い道に入ったかのように何か作曲家の世界とは違う位置にいた印象であった。

そのためなのか、この交響曲の演奏は前半のニールセンに比べ曲全体の印象が弱く、終演後の拍手の熱にも差があったように感じた。

オーケストラをコントロールするという意味においては。成功していたようには見えていたが、作曲家の世界を掘り下げるといった意味ではもう少し勉強が欲しい演奏となったのである。

 

 

  翻译: