極秘でおねがいします その58 | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 ヨンハ達は急な宿泊だったため、安東にある外資系のホテルのスウィートに全員で泊まることになっていた。こればっかりは当日にヨンハが思いついて言いだしたことであり、ソンジュンやユンシクにいたっては、集まった時に言い渡されただけだから着替えすらない状態でやってきている。ユンシクはほぼ一緒にヨンハと仕事をしていたというのに先に言ってくれても、とぶつぶつ文句を言ったぐらいだ。下着はトックが申し訳ないと標準的なものを用意しており、洗面はアメニティがある、まあ服は・・・と思っていたら、着ていたワイシャツは部屋に入ったとたん脱ぐよう急かされ、ホテルのクリーニングに持っていかれてしまった。下着もと言ってくれたが、替えがあるからとさすがにそれはビニール袋に入れてカバンに突っ込んだ。

 

 「なあんかおかしいんだよなあ・・・。」

 

 リビングになっている部屋でソファにふんぞり返りながら風呂上がりのヨンハがブツブツ言っているのを、ミネラルウォーターを飲みながらソンジュンは何がですか、と聞き返した。

 

 「トックだよ。なんだかこそこそしてるんだよなあ。」

 

 「トックさんは俺たちの世話で出入りが多いだけじゃないですか。」

 

 「それはそうなんだけど、そうじゃないんだよなあ。」

 

 トックが最後に入るからと、三番目に入ったバスルームから居心地悪そうにバスローブで出てきたユンシクを見るとヨンハは話題を変え、せっかくだから明日はちょっと観光しよう、と明るく声を上げてタブレットを出すよう急かした。

 

 

 

 トックの様子にヨンハが勘づいたのは鋭いと言っていいだろう。トックのスマホにジェシンから連絡が入っていたのだ。ジェシンはトックの連絡先を、電話番号とメルアドは割と前から知っていた。ヨンハは学生時代、それこそジェシンが出会った中学生の時には家から送迎がつくようなお坊ちゃんで、その送迎がトックだったのだ。坊ちゃんが迷惑をかけたら、と連絡先を交換したのは高校生の時だったろうか。大人になってからも、ヨンハと飲んだりするときはいつもトックが迎えに来てくれていた。そのトックにメールを一本送ったのだ。

 

 一人の時に連絡を返してほしい。忙しいのに申し訳ない。

 

 申し訳ないのはこっちですよ、とトックは頭を垂れて、ヨンハ坊ちゃんとお友達が部屋に入ってから、クリーニングの手配やらちょっとした菓子などの買い物やらで出入りをしながらメールを返した。すると、今ならご用件をうかがえます、というトックの返事に間を置かず、ジェシンから電話がかかってきた。

 

 『・・・さっきは失礼な態度で悪かった・・・。』

 

 「とんでもない・・・。うちの坊ちゃんが言いだしたことです、俺ももっと止めるべきでした。」

 

 『いや、こっちの都合であんなことになった。それに、今回の行き先をあいつに言ってしまったのは俺のミスだ。トックのせいじゃないよ。』

 

 昔なじみだから口調は砕けているが、ジェシンはとっくに寄り添っていつもしゃべってくれる。その礼節をトックは好ましいといつも思ってきたから、今回のことも一方的にこっちが悪いと恐縮しきりだった。

 

 『で・・・聞きたい事があって・・・。』

 

 「分かっていますよ、明日のことですよね。ジェシンさんとお連れ様は明日もこちらでお仕事ですか?」

 

 さすがに何泊とは聞いていない。木曜日から何泊か取材旅行っていう出張らしい、という事で金、土ぐらいはこちらにいるだろうという目算で来ただけなのだから。ヨンハが珍しく連休を取れた、それだけの理由で。

 

 『おう。日曜までこっちにいる予定だし、なかなか一人で遠出する人じゃないから、今回みたいな機会は十分に堪能させて差し上げたいんだ。ただ・・・知り合いに・・・それがたとえ俺の知り合いであっても・・・会うと困る人なんだよ・・・。』

 

 トックは周りを見渡してから胸を叩いた。

 

 「明日はどういうご予定ですか。こちらはソウルに明日中に戻りますから、そんなにあちこちにはいかないと思うんですよ。ですからご予定を教えてくださればどうにかして避けます。」

 

 『仕事を増やして悪いな。』

 

 その後、トックにジェシン達の明日の大まかな行動予定が届き、トックはそれを頭に叩き込んで部屋に戻ったのだ。

 

 

 

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