哲学者ルソーの小説『新エロイーズ』に心模様を託す | PARISから遠く離れていても…/サント・ボームの洞窟より

PARISから遠く離れていても…/サント・ボームの洞窟より

わが心の故郷であるパリを廻って触発される数々の思い。
文学、美術、映画などの芸術、最近は哲学についてのエッセイも。
たまにタイル絵付けの様子についても記していきます。

2024年が始まった……

「自然」の力は偉大だ。

敢えて脅威とは言わないでおこう。

そして人間自身も自然の一部であることを

忘れないようにしなければいけない。

 

誰しも心の内部にはマグマを抱えている。

決して外部へと溢れさせてならないものを。

まるで自然の力と呼応するように

多くの人々が溢れさせた結果が

戦争を招くのに違いない。

 

それでなくとも金、権力、色欲に溺れること

抗えない人々が増大している。

いや、増大ではなく堰き止められていたものが

ずっと暗黙の了解で隠されていたものが

噴出する世の中になったのだろう。

 

マザー・テレサやあのローマ法王だって

表の称賛すべき顔とは別に

自らの暗い内面や衝動に悩んでいた事実は

いったい何を指しているのか?

 

いうまでもなくそれは私自身をも含むもので

個人的且つ全ての人々に共通する問題を

実は昨年の暮れから抱えていた。

 

 

 

以前よりずうっと購入すべきか悩んでいた本を

師走に入り思い切って購入した。

『新エロイーズ』

ジャン=ジャック・ルソー著/岩波文庫

 

全1~4巻の長編小説で私が購入したのは写真のもの。

昭和35年発行、昭和46年2/20に第4刷となっている。

その四半世紀後の1997年に新訳?新装版?出たのが最後で

Amazonでは現在取り扱いがなく

メ〇〇リで4,000円したが手を打ったものだ。

現在こちらで手に入れるとすれば9350円~12,000円する。

因みに第1巻のみだと6,410円

それでたった今確認して驚いたのが

新品未使用のものが\1,000,000(ゼロの数は正しい)!

いくら何でもそれは吊り上げ過ぎというものだろう。

これがまかり通る世の中とは、いや恐ろしい。

 

(口絵) 最初の接吻/ジャン=ミシェル・モローの版画

 

 

「自然に帰れ」

ルソーの有名な言葉である。

この言葉は知っていたものの

今回初めてルソーの著書に触れ

私はその意味を勘違いしていたように思う。

 

自然は人間を善良、自由、幸福なものとしてつくったが、社会が人間を堕落させ、奴隷とし、悲惨にした。それゆえ、自然に帰らねばならない。人間の内的自然、根源的無垢(むく)を回復しなければならない。(コトバンクより)

 

この正月の間に気持ちを切り替えるべく

1冊目だけを読了した。

18世紀という設定や

貴族と平民という身分違いの男女の恋模様

現代に生きる自分等とはかけ離れすぎている?

そんな杞憂もごく導入部だけで

あとはただ流れに身を任せるだけだった。

ページをめくる手がもどかしいほど

その世界に没入することができたことに驚いた。

 

その訳を考えてみる。

この物語を通し

自然

名誉

偏見

それらが様々な形で織り込まれ

つまり時代を越え万国に共通する

普遍的な問題が扱われているからだ。

先ほど文を引用させて貰った通りの。

 

特に私が感心したのは、その心理描写だ。

映画等だと割と伝わりやすいものでも

文章の中でこれほど見事にここまで言うのかと

呆れるぐらいに表現されている。

 

忘れずに付け加えるなら

これは全編が書簡体の

ルソーの唯一の小説であるということ。

 

最後に私がこのレアな本を

どうしても手に入れたかった理由は

物語のタイトル『新エロイーズ』にあるのだが

察しのいい人なら気付くだろう。

 

それにしてもこのような翻訳本が

こういう形でしか手に入らないとは……。

アレクサンドリア図書館の貴重な蔵書のように

埋もれていく運命にあるなら残念でならない。

 

もし、興味のある方は図書館(たぶん)の

蔵書にはあるかもしれないのでぜひ探してほしい。

 

全冊読み上げるのには時間がかかるかもしれない。

でも時空を超えた世界に夢の世界へ

確かに私を連れて行ってくれたのだー。

 

 

赤薔薇

 

 

(親愛なる読者の皆さまへ)

 

勝手ながらそういう事情でここのところ

なかなか訪問もできずにごめんなさい。

少しずつ読ませて頂きたいと思っております。

本年も変わらずにお付き合い頂けたら嬉しいです。

 

本【小さな読書会】の開催ももう少しお待ち下さい!

 

 

 

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by vingt-sann

 

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