サテライトポートフォリオで少しだけ積立投資しているピクテ投信投資顧問の低コストアクティブファンド「iTrust世界株式」の2023年5月次運用報告書の定例ウオッチです。「iTrust世界株式」の5月の騰落率は+2.71%、参考指数であるMSCIワールド・インデックス(ネット配当込み)の騰落率は+4.84%でした。残念ながら5月は参考指数を大きくアンダーパフォームしています。そうした中、5月から好調が続いている日本株に対してピクテは、なかなか慎重な姿勢を示していました。
5月は月初こそ米国の債務上限問題や金融機関の信用不安などから株式市場も軟調にスタートしましたが、経済指標が予想を上回る数字となったことや、半導体関連企業の業績予想が好転したことなどを好感して市場は上昇に転じました。業種別では、情報技術、コミュニケーション・サービスなどが大きく上昇した一方、エネルギー、公益事業、生活必需品、素材などが下落しました。こうした中、「iTrust世界株式」の基準価額は情報技術セクター銘柄を中心とした株価上昇がプラス寄与となりましたが、消費関連銘柄の株価下落などにより相殺されたため、株式要因はマイナス寄与となっています。ただ、主要通貨に対して円安が進行したことから、為替要因が大きくプラス寄与して基準価額も上昇しました。
5月を振り返ると日本株が元気だったのですが、「iTrust」シリーズの受益者に配信される機関投資家向けレポート「Barometer」6月号を読むと日本株に対してピクテはなかなか慎重な姿勢であることが分かります。日本経済は堅調な内需を背景に底堅いとしつつも「日本銀行が超緩和的な金融政策を転換すれば、こうした状況は修正される公算が大きい」と指摘しています。また、バリュエーション分析で日本株は割安感が解消され中立的水準となっており、「今後12ヵ月間の株価収益率(PER)の上昇余地が限定的」とのことです。センチメント分析でも日本株は「買われ過ぎている状況を示唆している」。こうした分析がどこまで当たるかは分かりませんが、やはり日本株はどこかで調整があってしかるべきだと考えておく方がよさそうです。
そのほか気になったのが中国経済。新型コロナ規制解除後も回復が遅れており、ピクテも投資判断をニュートラルに引き下げました。一方、中国以外の新興国は順調に成功しており、先進国とのGDP成長率格差は一段と広がる可能性があるそうです。このためピクテの投資判断もオーバーウェートを継続しています。中国への不安と、中国以外の新興国への期待が入り混じる展開となっており、このあたりの動向が今後の市況を左右しそうです。