広島市へ「平和記念式典」へのイスラエル招待の再考を求める要望書を送付しました
2024年 07月 20日
広島市へ「平和記念式典」へのイスラエル招待の再考を求める要望書を送付しました
報道されているとおり、広島市は本年8月6日の「平和記念式典」に際し、パレスチナでの無差別殺戮を続けているイスラエルを〝招待〟する一方、この国家暴力の被害を受け続けているパレスチナに対しては、日本政府が国家承認をしていないとの理由でなんらの働きかけもしないとの決定を下しています。
これに対し、すでに多くの非難・抗議の声が上がっていますが、私もこのたび、以下の申し入れ文書『「平和記念式典」へのイスラエル招待を再考され、「被爆地」としての本源に立ち返った御対応をなされることを強く要望いたします』を、電子メイルとして送付しました。
担当窓口は《平和記念式典の招待者、入場規制に関する》意見の受付先となっている、同市・市民局市民活動推進課です。
メールアドレス:katsudo@city.hiroshima.lg.jp
申し入れ文書・本文にも記したとおり、私は同課の方がたと、かねてやりとり等を重ねてきたこともあり、このセクションのみならず、広島市の職員の皆さんが、どれほど誠実に、被爆地としての歴史的意味を今日に担い続けられながら勤務されているかを、よく知っています。
そうした行政の現場のありようを思うにつけ、松井一實市長が、この過てる決定を直ちに撤回することを強く要請するものです。
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広島市 市民局
市民活動推進課 御中
山口泉と申します。沖縄在住で、文筆業に携わっております。
貴課とは、以前から、私も協力者として関わりを持ってきた絵本『さだ子と千羽づる』(SHANTI=絵本を通して平和を考えるフェリス女学院大学の学生有志=著/オーロラ自由アトリエ刊)巻末の「鶴の折り方」図解(日本語版・英語版)を、平和記念式典で配布されるプログラムに挟み込みたいとの御要請を受けた関連で、〝コロナ禍〟が始まるまで、ずっと、メイル等のやりとりをさせていただいております。
私は、人類史上初めて原爆投下の惨禍を受けられ、以後、核兵器廃絶と世界平和に取り組んでこられました広島市の御活動に、かねてより深い敬意を抱いて参りました。私自身、36年以上前から、広島市および長崎市は何度もお訪ねし、とりわけ広島市へは25年以上続けて、8月6日を中心にお伺いして、思いを近しくする内外の方がたとの交流を深めつづけております。
そうしたところ、今般、広島市が8月6日の「平和記念式典」に、イスラエルを招待する一方、パレスチナ代表部へはそうした働きかけをなされないとの報に接しました。
ご承知のとおり、イスラエルは昨年10月以来、ガザ地区への言語を絶する非道な武力行使を強めており、現状はパレスチナの民を地上から消し去ろうとするほどの「ジェノサイド」の様相を呈しています。ハマスの攻撃を口実としたイスラエルの行動は、子どもたちや女性、老人、国際ボランティアを含む医療関係者・報道関係者を問わず無差別になされ、すでに4万人以上の命を奪っている大殺戮であり、第二次大戦終結以来、同国がパレスチナに対して重ねてきた不法占拠・暴力をいよいよ深めるものとして、絶対に容認することはできません。
ちなみに7月19日、ハーグの国際司法裁判所は、イスラエルによる東エルサレムとヨルダン川西岸の占領が国際法違反と勧告しました。イスラエルによるパレスチナ抑圧は、国際輿論から広く糾弾されています。
現在のイスラエルの暴虐とそれに苦しむパレスチナ子どもたちの姿に、私は、広島に心を寄せる者の一人としても、79年前の被爆の惨禍をおのずから連想します。またこのかん、イスラエルに近い米国の共和党下院議員らによって公然と、パレスチナへの「核攻撃」を唆す恫喝がなされているのも、到底、看過することはできません。
そうした状況下、人類にとって非暴力・反戦・平和・核廃絶の理念のよりどころとして存在し、活動してこられた広島市が、あえてイスラエルの側に立ち、パレスチナの人々の苦難を黙殺するかのごとき対応をされることには、残念という言葉では言い表わせないほどの感情に駆られます。
長崎市の鈴木史朗市長は、現時点でイスラエルに対し、同市の8月9日の「平和祈念式典」への招待状ではなしに、即時停戦を呼びかける書翰を送付しました。その一方、パレスチナ暫定自治政府の駐日代表部の代表へは、例年どおり招待状を送るということです。現状、起こっている事態の理非曲直を考えれば、この点に関し、まことに人倫に適った判断であると言えるでしょう。
これに対し、一方の広島市が、同じ被爆都市でありながら、こうした原則的な対応をされないことは残念でなりません。
今回のこの対応に関し、松井一實・広島市長は、パレスチナを日本政府が国家承認していないことを理由としているようです。しかしながら、いまだパレスチナを承認していないのは、米国はじめNATO諸国等であり、国連加盟193箇国のうち140箇国以上が、既にパレスチナを国家として承認しています。
日本政府が、国連における核兵器廃絶等の決議の投票行動に際しても、つねに米国に追随しているのは周知のことです。その米国による史上初めての核兵器使用・無差別大量殺戮の「標的」とされ、外国人を含む多大な犠牲者・被害者を出した広島市が、被爆都市としての歴史の意味を自ら打ち捨て、日本政府に追随する形となっていることは、貴市に敬意を払い、思いを寄せてきた一人として、暗澹たるものを覚えます。政府が承認していないことを理由に、こうした挙に出るというのであれば、「被爆地」として世界に核廃絶を訴え続けてこられたはずの広島市の主体性はどこに行ってしまったのでしょう?
また、人は個別の命として存在しています。現に非道な暴力によって民の命が奪われ続けているとき、自国政府による「国家承認」を理由として、蹂躙される一人一人の命を大切にしないことは、人道上、決定的な誤りです。
今回の「平和記念式典」へのイスラエル招待・パレスチナ黙殺という対応は、被爆都市としての苦難の上に、幾多の先人が築かれてきた反戦・平和・核廃絶を訴える広島市の歴史を根底から否定しかねない重大なものです。
どうか、広島市が今回の決定を再考され、「被爆地」として担われてきた人類に対する責務の本源に立ち返った御対応を一刻も早くなされることを、強く、強く要望いたします。
山 口 泉
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今回、私が送付した申し入れ文書は、以上です。
なお、この問題については、来月にかけ、さらに継続的にSNS等での発信をしてゆくことになると考えています。
引き続き、御関心をお寄せいただければ幸いです。
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