「肯わぬ者からの手紙」第65信(『週刊金曜日』2024年9月27号)[全文]



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『肯わぬ者からの手紙』第65信



みんな死ねばいいんだと

振り絞られた声を耳底に

   (『週刊金曜日』2024年9月27日号)[全文]



 以下、「肯わぬ者からの手紙」第65信《みんな死ねばいいんだと/振り絞られた声を耳底に》(『週刊金曜日』2024年9月27日号)全文を公開します。


 長崎での駐日パレスチナ常駐総代表部1等参事官ヒシャム・ナサール(Hisham M. NASSAR)氏らとの出会いを綴った、前回・第64信《西欧列強の魂への侵略に/ナガサキが照射したもの》(『週刊金曜日』2024年8月30日号)と内容的には前後しますが、今夏、5年ぶりに再開した広島・平和記念公園での絵本『さだ子と千羽づる』(SHANTI著/日本語版は1994年、オーロラ自由アトリエ刊)野外朗読会の活動を基軸として、かねてこの連載でも紹介しておきたいと考えていた正田篠枝の、とりわけ晩年の詩『みんな死ねばいいんだ』を中心に綴っています。


 この作品は、私が「思想」というものの根底に置かれるべきと考える、〝希望〟の功利主義を打擲(ちょうちゃく)する意志が静かに還流する絶唱の1つ。

 たとえば『肯わぬ者からの手紙』の前前回・第63信《空疎な慰藉と明るい隷従/言葉と道理の腐蝕の中で》(『週刊金曜日』2024年7月26日号)で言及した鶴見俊輔的な〝「戦後」民主主義〟の無節操な功利性と、まさしく対極にあるものと言えるでしょう。


 また1980年、二十代半ばの私が、請われて顧問に就任した出版社で知遇を得た山代巴が、夜を徹し、繰り返し私に語ってくれた峠三吉の臨終の模様は、小林多喜二・三吾兄弟のベートーヴェンOp.61『ヴァイオリン協奏曲』をめぐる逸話(これについては、今まで、さまざまな場で既述)と並んで、私が「日本文学」で最も心打たれるエピソードの双璧です。韓国民主化運動の人びと、光州民衆美術の友人たちにも、これだけは躊躇なく語ることのできた話柄でもありました。

 今回、冒頭に記した川手健と峠三吉の2人こそ、山代が出会ってきた多くの人びとのなかでも、最も熱誠を込めて話してくれた存在でした。


 その山代を含め、GHQのプレスコード下、「死刑」を覚悟で原爆の悪について告発し続けた正田や川手、峠ら、先達の存在を根底から冒瀆するものとして、先般の松井一實・広島市長の「イスラエル招待」は、なされています。

 また付け加えるなら、今回の沖縄県とこのジェノサイド国家との〝提携〟〝協力〟という醜行に〝見て見ぬふり〟〝聞いても聞こえないふり〟で口を噤み続ける卑怯者たち――沖縄の既得権層や、それと狎れ合う「日本人」(ヤトンチュ)の植民地主義的似而非(えせ)〝リベラル知識人〟らにも、彼らの闘いの意味が通じることは決してないでしょう。


 長崎でも広島でも、私が出会ってきた被爆者のなかには、こうした欺瞞と最初から決定的に異なる位相で生き、亡くなっていった方が何人もおられます。

 そうした方がたについて、この『肯わぬ者からの手紙』においても、また書き留めてゆきたいと、私としては考えています。



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by uzumi-chan | 2024-10-06 21:13

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