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総務省が「次世代地デジ放送」仕様策定。4K/HDR/22.2ch対応へ

技術的条件の詳細(映像符号化方式)「放送システム委員会報告 概要」総務省資料より

総務省は18日、4K8K衛星放送で実現している超高精細度テレビ放送を地デジ放送でも行なうための「放送システムに関する技術的条件」について、情報通信審議会から答申を受けたことを発表した。これにより、2019年6月より審議されてきた“次世代地デジ放送”の基本仕様が確定した。今後同省では、答申を踏まえ、関係規定の整備を行なう予定。

次世代地デジ放送の映像解像度は、4K/3,840×2,160と2K/1,920×1,080の2つ。8K/7,680×4,320については、「将来、符号化方式の更なる高圧縮化や伝送方式の改善等が実現され、符号化映像の高品質性の担保がなされた場合に適用」する“条件付き採用”となった。

フレーム周波数は60Hz、59.94Hzのプログレッシブ(インターレス不可、放送局でのIP変換)で、4K以上の解像度では120Hz、119.88Hzのハイフレームレートをサポート。表色系はSDRがBT.709/BT.2020、HDRがBT.2100(HLG/PQ)で4K8K衛星放送と同じ広色域を採用。ビット数は、2K/4Kともに10bitとなった。

映像圧縮には、最新の符号化方式とされる「H.266」(VVC:Versatile Video Coding)を採用。これにより、現在の4K8K衛星放送で使われているHEVC規格よりもビットレートを50%弱削減。審議会で実施した画質評価実験では、2K時で約7Mbps、4K時で30Mbps程度を所要ビットレートと導出。符号化の制御チューニング次第では、2Kは5Mbpsで十分、4Kにおいても15Mbpsで4K放送品質相当の画質になることを実験で確認済みとのこと。

マルチレイヤプロファイルにも対応しており、異なる解像度を持つ映像を効率的に伝送したり、インターネットと連携した配信、サブコンテンツの配信なども可能という。

技術的条件の詳細(映像符号化方式)「放送システム委員会報告 概要」総務省資料より

音声のサンプリング周波数は48kHzで、量子ビット数は16bit以上。48kHz以外のサンプリング周波数に関しては、「実運用動向から放送局設備へのインパクトが大きいこと、当面サービスが想定されていない」との理由により、採用が見送られている。

音声符号化方式は「MPEG-H 3D Audio」と「AC-4」の2種類を採用。どちらも現行のMPEG-2 AACと比較して、高効率かつオブジェクトベース音響に対応しているのが理由(従来のチャンネルベースも対応)。

チャンネル数は最大56ch。この56chというのは、「22.2ch音響に対応し、かつオブジェクトベース音声を用いた差し替え音声によるサービスを考慮して、MPEG-H 3D Audioで規定されているレベル4で規定された最大入力音声チャンネル数としたため」だという。

技術的条件の詳細(音声符号化方式)「放送システム委員会報告 概要」総務省資料より

東京スカイツリーなどの電波塔から、家庭の受像機へ送信するための伝送路符号化方式としては、伝送容量を約1.7倍に向上できる「地上放送高度化方式」と、既存の2K放送と次世代放送の信号を重ねて送信して受信側で各々を取り出せる「階層分割多重(LDM)方式」の2つの方式を用意している。

伝送路符号化方式について「放送システム委員会報告 概要」総務省資料より
想定されるサービスイメージ例(地上放送高度化方式)「放送システム委員会報告 概要」総務省資料より
想定されるサービスイメージ例(LDM方式)「放送システム委員会報告 概要」総務省資料より