ミニレビュー
ソニー「Xperia 1 VI」実はイヤフォンジャックも進化。テレマクロ動画撮影が楽しい
2024年5月21日 07:30
ディスプレイ解像度やアスペクト比の変更が大きな話題となった「Xperia 1 VI」。実はオーディオ面でも、スピーカーユニットの刷新やイヤフォンジャックの設計変更などのアップデートが行なわれている。また、望遠レンズを活かしたテレマクロモードでは動画撮影も可能になった。
短い時間ではあるが、これらの機能に触れることができたので、オーディオビジュアル面とテレマクロでの動画撮影などについて掘り下げて紹介する。
進化したのはスピーカーだけじゃない。イヤフォンジャックも基盤から刷新
Xperia 1 VIでは、搭載されている2基のスピーカーユニットが刷新。ユニットの振動が大きい、低域や大音量での再生時に歪みを低減する構造が採用され、低域のレスポンスが向上し、全帯域でよりクリアなサウンドを実現した。
またサウンドチューニングも、この新スピーカーユニットを活かすためのものに変更。Xperia 1 Vと比較して、70Hz〜170Hzの低域の音圧レベルが20〜80%向上。10kHz近辺の高域の音圧レベルも10〜25%向上したことで、よりワイドレンジで豊かなサウンドになった。従来通りソニー・ミュージックエンタテインメントが協力している。
スピーカーだけでなくイヤフォンジャック部も進化。DACなどを含むAudio ICが従来よりも高性能なものに刷新されただけでなく、基板回路の設計を改善。左右の音声信号の配線を見直して、干渉が起こりにくい設計としたほか、グラウンドの抵抗を徹底的に低減。チャンネル間のクロストークがXperia 1 Vと比較して約50%低減し、空間表現や低音再現が向上した。
まずスピーカーから実際に音を聴き比べてみる。今回はともに手に取って数曲再生してみたのだが、Xperia 1 Vでも十分だろうと思っていた、スマホ本体からまっすぐ届くような低域が、VIではさらに磨きがかかり、同じ音量でもよりパワフルに聴こえる。「YOASOBI/アイドル」を再生してみると、低域の押し出しが強くなったことで曲全体のメリハリが増したほか、細かい音まで粒立って聴こえるので、スマホのスピーカーであることを忘れそうになる。
「ヨルシカ/斜陽」では、ギターの音が背後に広がっていく余韻が明瞭になり、空間もより広く感じられる。こうした空間の広がりは、360Reality Audioの楽曲を再生するとより明確になる。立体音響系は自分を中心に広がるドーム状の空間に音が鳴っているような印象なのだが、Xperia 1 VからVIへと切り替えると、そのドームが2周りくらい大きくなったような感覚になった。
有線ヘッドフォンではさらに明確に進化を感じられる。低域の迫力が増したというよりも、安定感が段違い。スピーカーのときと同じく「YOASOBI/アイドル」を再生してみると、演奏の中からボーカルが浮かび上がってきているような感覚で聴こえる。全体的に音が明瞭になり、「アイドル」のような音数の多い曲でも、細かい音まで聴き取れて、曲の情報量が一気に増したように感じる。
「米津玄師/Lemon」では、米津玄師のボーカルの輪郭がよりくっきりとして、声のより低い部分もハッキリと聴こえるので、その魅力を存分に味わえる。2世代前のXperia 1 IVの時点でかなり突き詰められているように感じていたが、スマホに直差しでさらにクオリティが上がるのは衝撃的だった。
テレマクロモードは動画撮影でも使用可能。手軽に面白い画が撮れる
望遠レンズを活用して、最短4cmの距離で最大倍率約2倍の大きさで撮影できるテレマクロモードでは、動画撮影にも利用できる
カメラアプリからテレマクロモードを起動すると、焦点距離が120mmで固定され、マニュアルフォーカスによる撮影が行なえるようになる。最短撮影距離が4cmと、被写体に至近距離まで寄せる必要がないため、自分やスマホの影が映りこみにくいほか、近づきづらい被写体も撮影しやすい。
フォーカスの合っている部分の色が変わるピーキング機能があるものの、マニュアルフォーカスでかつ120mmという焦点距離は結構シビア。バーをスライドさせてフォーカスを合わせたあとに、バーから指を離した際にフォーカスがズレてしまうため、とくに動画撮影の場合はスマホ用ミニ三脚を用意したい。
スマホのマクロ撮影というと、広角レンズや超広角レンズについている印象があり、ここまでの大きさで撮影しようとすると、魚眼レンズのような画になったり、自動でデジタルズームが使われて荒い仕上がりになったりするので、ここまで綺麗に撮れると面白い。
フルHD+化は英断。様々なコンテンツを楽しみやすいアスペクト比に
ディスプレイ解像度が4KからフルHD+になったことで、一番恩恵を受けた部分が消費電力。その余裕が生まれたことにより、強い日差しの元でも画面の視認性が上がる「サンライトビジョン」という機能が新たに追加された。
従来は明るい場所では画面の輝度を上げることで対処していたが、画面全体の輝度をそのまま上げてしまうと、もともと明るい部分が白飛びしてしまうほか、コントラストも弱くなり、立体感が失われてしまう。サンライトビジョンでは、画面に映っている内容をAIで分析し、画面の明るい部分はそのまま、暗い部分だけをピックアップして輝度をあげることで、映っているもののバランスを崩さずに画面を見やすくできる。もちろん、この機能を備えた上で連続駆動時間も倍以上に増えている。
会場では、4KディスプレイのXperia 1 Vとともに同じ動画を再生している展示などもあったのだが、フルHD+になっても、スマホのサイズでは遜色ないように感じる。
アスペクト比もこれまでの映画視聴を最優先としていた21:9から変更。しかし、何故19.5:9というアスペクト比になったのかというと、これはTikTokやYouTube Shortsなどの縦型動画を最大サイズで表示可能でかつ、これまで重視していた映画鑑賞の際も、21:9の映像がで黒帯が出る箇所を最小限に抑えた比率が19.5:9だったのだそう。
また、このアスペクト比の変更で大きく変わったのが、動画撮影時のUI。これまでは16:9の撮影時でも、余白の部分に各パラメータを表示したままにできたが、今回は撮影時のプレビュー画面もディスプレイを広く使う使用となったため、各項目のボタンは表示させておき、パラメーターは変更時にポップアップさせる形に変更となった。
頑なにこだわっていた外観の部分で変化はあったものの、実際に触ってみると、中身は妥協のない強いこだわりを感じるいつものXperia 1シリーズといった印象。現代のニーズにあった形に姿を変えつつも、クリエイターの使いやすさに寄り添っているほか、望遠側の焦点距離の延長や、とくにイヤフォンジャックのアップデートがされているところなどには、ソニーらしさが強く感じられる。必要な人にはしっかりと寄り添ってくれるスマホだろう。