今季は両リーグ最速30セーブに到達
何とか抑えてほしいゲームで中日の絶対守護神ライデル・マルティネスがセーブを挙げた。
7月31日のヤクルト戦(バンテリンドーム)。先発は本拠地初登板の育成出身右腕・松木平優太だった。6イニング無失点の奮闘からリリーバーへと渡ったバトンを受けたのこそ竜の絶対守護神。1点差を逃げきって3年連続30セーブの節目を迎えた。
「(松木平の)初勝利がかかっていたからね。フォアボールを出してドタバタしてしまったけど、ゼロに抑えられてよかった。初勝利に貢献できてうれしいよ」
先頭の村上宗隆にフルカウントから四球を与える。セットポジションから走者に気を配り、けん制を続ける。ホセ・オスナを153キロ直球で右飛に打ち取ってまず一死。武岡龍世を直球で3球三振に仕留めて、あと一死。松本直樹を決め球のスプリットで遊ゴロに封じてゲームを締めた。
「自分にとってもチームにとっても大きな仕事。1点差でセーブを挙げられるのはうれしいね。神様のおかげで到達することができた。とにかくケガをしないように、8月も頑張るよ」
球場を後にしたのは全ナインの最後。試合終了から1時間半たっていた。治療して、トレーニングして、「やることがたくさんあるんだ」。ベストのパフォーマンスを発揮するために、最善だと思う準備に徹する。
3年契約の3年目を迎えた。キューバ政府から育成契約での派遣を受けた2017年から8年目の夏。押しも押されもせぬクローザーへ球団もできる限りの誠意を尽くす。
すでに、外国人最初となる残留交渉をスタートさせている。キューバ選手と日本球界とは、プレーヤーの希望が所属球団選びに大きく反映されるからだ。
活躍を振り返る。3年契約を結んだのは2021年オフ。その年、49試合登板で23セーブ、防御率2.06だった。翌22年は防御率0.97でセーブ王に輝く39セーブを挙げている。23年は同0.39で32セーブを挙げた。防御率2年連続0点台。強烈な数字を残して、契約最終年に入っている。
今季は両リーグ最速30セーブに到達した。失敗しないクローザーとして獅子奮迅の働きを演じている。再契約となれば、現状の2億円プラス出来高からの大幅アップは必至となる。
右腕が移籍も含めて考えているとしたら、最大のネックが年俸なのは違いない。米国ならば亡命の必要がある。国を捨てる考えがない理由の一つは、ナショナルチームへの思いが強いから。亡命せず異国でプレーし、大金を得る選択肢が日本で、これまではドラゴンズだった。
日本国内で、直近の外国人クローザーとの契約例を挙げるなら、ソフトバンクのロベルト・オスナ。右腕は昨オフ、4年契約を結んだ。出来高などを含めて総額40億円規模の大型契約。マルティネスとは懸け離れた大金で、日本球界史上最高年俸とも言われている。
ちなみに、竜の歴史で過去最高額は08年のタイロン・ウッズで6億円。そこから、大幅なジャンプアップがなければ、移籍となる。
マルティネスは来季のことについて「まだシーズン中。目の前の試合に集中して投げたい」とコメントする。
これまで中日で投げてきた。3年前時点での優先事項、判断基準で残留となった。活躍し続け、判断基準が変わり、移籍を考えるのはアスリートとして当然のこと。中日球団は残留への可能性を模索し、右腕はベストな選択だと納得するまで考える。
シーズンも残り50試合を切った。マルティネスがいる幸せをかみしめながら、竜党は勝利の瞬間も右腕の動向を注視する。
文=川本光憲(中日スポーツ.ドラゴンズ担当)