Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ノット/東響

2023年07月17日 | 音楽
 ノット指揮東響の定期演奏会。エルガーのヴァイオリン協奏曲とブラームスの交響曲第2番というオーソドックスなプログラムだ。

 エルガーのヴァイオリン協奏曲は5月に三浦文彰のヴァイオリン独奏、沖澤のどか指揮読響で聴いたばかりだ。率直にいうと、あれほど淡々として一本調子なヴァイオリン独奏は聴いたことがないと思った。いったい何のためにこの曲を弾いているのかと。

 それにくらべると、今回は神尾真由子のヴァイオリン独奏だったが、三浦文彰とは対照的に“濃い”演奏だった。どこを取っても濃厚な表現だ。だが、正直にいうと、だから良かったかというと、かならずしもそうとは言い切れない自分を見出す。三浦文彰の演奏に退屈したのに、それとは真逆の神尾真由子の演奏にも満足できないのはなぜか。エルガーのヴァイオリン協奏曲は意外に難しい曲なのかもしれない。

 オーケストラはどうだったかというと、わたしは沖澤のどか&読響が懐かしくなった。自然な呼吸感が一貫していて、穏やかで無理をせず、それでいて表現に襞があった。一方、ノット&東響はなぜか記憶に残るものが少なかった。沖澤のどか&読響と同じ方向をむく演奏だったのだが。

 ブラームスの交響曲第2番は、この曲の一面を際立たせた演奏だった。冒頭の低音弦楽器の音から、それに続くホルンその他の音まで、すべての音が柔らかく、そっとあたりを気遣いながら発音された。その後、音楽が高まるところでも、冒頭に確保された柔らかい音のテクスチュアが維持された。

 当然予想されるように、そのテクスチュアは第2楽章でも維持され、また多少動きのある第3楽章でも(とくに注目されるトリオの部分でも)維持された。そうであるならば、第4楽章は前3楽章とはコントラストをつけて、エッジのきいた目の覚めるような演奏を展開するのかと思いきや、やはり基本的には同じテクスチュアが維持された。コーダのトランペットやトロンボーンの音も、もちろん充実した音だったが、一貫して維持されたテクスチュアに乗るものだった。

 弦楽器は14‐14‐12‐10‐8の編成だった。第1ヴァイオリンが16ではなかった点が特徴だ。結果、第1ヴァイオリンが細めに聴こえた。オーケストラ全体の音響に第1ヴァイオリンが君臨するのではなく、全体の音響が丸いボールのように聴こえた。個別の奏者では、ホルンの1番奏者の上間さんの安定した演奏がすばらしかった。また4月に東京シティ・フィルから移籍したフルート1番奏者の竹山さんも実力発揮だった。
(2023.7.16.サントリーホール)

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