親に虐待されて育った人が、親の過ちを繰り返そうとしない場合、当然のことながら、親を正しく憎み、正しく軽蔑することになる。
その憎しみが殺意にまで高じることもあるだろう。しかし、実際に殺してしまえば、長期にわたってムショ暮らしを余儀なくされるわけで、そのバカバカしさは、それが軽蔑すべき、卑劣、愚劣きわまりない者を殺したゆえとなると、なおさら大きいだろう。また、それ以前に、たいていの人は、人を殺す際の圧倒的な不快感とその記憶に耐えられまい。
そこで、「ハピネスエンディング株式会社」は「模擬葬儀」を設定、演出する。依頼者はそこで憎むべき親を葬り去り、罵り倒すことで、親と決別する機会とすることができる。
本作に登場する依頼者たちが親から受けた虐待の中身、これがなかなかにエグい。このエグさが本作最大の魅力だ。
大学2年生の智也は、ふとしたきっかけで「模擬葬儀」を行う「ハピネスエンディング株式会社」でインターンとして働くことになる。顧客は模擬葬儀を通じて、実親との関係を絶ちたいと考えているらしいが、穏和な家庭で育った智也には理解しがたかった。しかし、いざ実際の模擬葬儀に立ち会い、顧客たちが激白する様々な過去、親からの過干渉、体罰、性的虐待、レイプ……に戦慄する。智也は、事業に熱い想いを抱く社長の美香、ベテラン社員の山岸とともに客の要望を満たすサービスを提供するうち、一見物騒に思えたこの葬儀に、人の心を解放する効能があることを知る。
Twitter7万フォロワーの著者が描く、毒親からのサバイバル術!
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