2023年09月01日
北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二
[洋上風力発電と漁業 海外の経験#52 米国 NJ州 クジラ座礁問題等を受け洋上風力支持急落]
日本での先行する欧米の洋上風力発電の漁業分野との共栄、相乗効果等の成功体験は、ほとんどが開発事業者による切り抜き発信で、実際に漁業分野の情報にアクセスしていくと様々な問題が報告されている。
米国北東部ニュージャージー州では、クジラの座礁問題等を受け、洋上風力発電プロジェクトに対する市民の支持が急落していると、同国漁業界紙が伝えている。
モンマス大学が行った最新の世論調査では、洋上風力発電プロジェクトについて、2019年の同調査と比較した時、支持が急落していることが分かった。
2019年の調査では支持が76%だったが、最新の調査では54%まで低下、14%だった反対が40%まで上昇している。
この支持層の低下は、リゾート沖に見えるタービン群の将来の景観が、地域の夏の観光経済にどのような影響を与えるか等について、長い論議が続いた後に起こった。
2022年12月からニュージャージー州とニューヨーク州の海岸でクジラの座礁が相次ぎ、洋上風力発電プロジェクト反対派は、これを、調査を行っていた船舶と作業に関連付けている。
モンマス大学の世論調査のまとめによると、住民の10人中4人は洋上風力発電プロジェクトが州の夏の観光経済に悪影響を与える可能性があると考えている。
また、約半数が海岸に大量に打ち上げられるクジラと関連付けており、さらに、洋上風力発電プロジェクトが州の大幅な雇用増加につながると考えている市民はほとんどいないとしている。
加えて、クジラ座礁への懸念から洋上風力発電プロジェクトに対する疑問が生じており、調査対象者の約半数が風力発電プロジェクト調査作業要因である可能性があると考えていて、特に、20%はそれを確信していると指摘している。
2023年1月半ば、米国北東部沿岸に、2ケ月間たらずで7頭の死んだクジラが打ち上げられていることから、洋上風力発電プロジェクトを停止するよう求める声が高まった。
漁業関係者は、クジラが打ち上げられたのが、洋上風力発電所が原因だと断言することはできないが、言えることは、この2ケ月たらずの間に、ニュージャージー州に打ち上げられた7 頭のクジラはすべて、ニュージャージー沖の風力発電所の地質作業が最も強まっている期間だと指摘した。
ニュージャージー州選出上院議員ビンス・ポリスティナは、クジラの死因を特定できるまで、洋上風力開発に関連するすべての作業を一時停止する必要があると語り、7頭のクジラの死が単なる偶然であるとは信じがたいと言及した。
米国海洋大気庁(NOAA)は、これまでのところ、ニュージャージー州とニューヨーク州での最近のクジラの死のほとんどを占めている種はザトウクジラだが、洋上風力発電開発作業の影響かは判明していないとした。
しかし、この沿岸沖合における数少ない変化は、洋上風力発電所開発のための調査活動で、爆撃のような音で海底を叩いており、激しい音がクジラの聴覚器に損傷を与える可能性があることが知られており、浅瀬への座礁の可能性が指摘されている。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます