洋上風力発電と漁業 海外と日本の経験

Offshore wind farms and fisheries
”洋上風力発電と民主主義”

洋上風力発電と漁業 海外の経験#49 米国 魚と漁業者を台無しにする 欧州の経験から学ぶべき

2023-08-18 15:59:47 | 日記

 

2023年08月18日

北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二

[洋上風力発電と漁業 海外の経験#49 米国 魚と漁業者を台無しにする 欧州の経験から学ぶべき]

日本での先行する欧米の洋上風力発電の漁業分野との共栄、相乗効果等の成功体験は、ほとんどが開発事業者による切り抜き発信で、実際に漁業分野の情報にアクセスしていくと様々な問題が報告されている。

米国海洋大気庁(NOAA)高度回遊性魚種諮問委員デヴィッド・シャリット(米国クロマグロ協会会長)は、米国政府が洋上風力発電の開発を急ぐあまり、魚と漁業者を台無しにしていると言及し、同国が、この分野で数十年先行している欧州の経験から学ぶべきだと指摘している。

欧州初の洋上風力発電所は32 年前に建設され、それ以来、116 施設となった。

欧州の洋上風力発電が海洋環境に及ぼす影響への取り組みは極めて遅かったが、ここ10年間で、これを取り返しつつある。

近年、欧州の科学者たちは、洋上風力発電プロジェクトによる海洋生態系の変化を認定するためのさまざまな方法を開発、これらを採用している。

調査は、ストレス因子となるタービン、音響、電磁場などの物理的存在と動的影響、表層魚と底魚の生息地、食物連鎖などを評価するように設計されており、多くの場合、将来の洋上風力発電所建設エリアをグリッドで系統的に調査し、その境界を越えてある程度の範囲まで拡大して行われている。

そうすることで、洋上風力発電プロジェクトの稼働後に再調査されたときに得られるデータと比較するために非常に重要な基準線が確立されることになる。

海洋生態系に対する洋上風力発電プロジェクトの短期、中期、長期的な影響を定量化することは、常識となりつつある。

これを現在の米国のアプローチと比較した時、まったく及ばないものとなっている。

米国のすべての洋上風力発電プロジェクトを管理する海洋エネルギー管理局(BOEM)は、建設前に調査を義務付ける計画はないと繰り返し述べている。

米国政府は、洋上風力発電プロジェクトが魚や漁業者に及ぼす潜在的な影響への備えを怠っており、非常に不確実な結果を受け入れることを好み、洋上風力発電開発の重要な生物学的、生態学的、社会経済的影響を無視している。

大規模な洋上風力発電と海洋生態系は根本的に相容れないという事実を認識する必要がある。

米国東部沿岸沖合のいくつかの洋上風力発電プロジェクトではすでに建設が始まっている。

これらのプロジェクトの一部は、およそ2028年までに稼働する予定となっており、すでに一部の開発事業者は、漁業者の生計に与える悪影響を相殺するための将来の補償について、BOEMと予備的な協議を行っている。開発事業者は、補償を可能な限り低く抑えるために全力を尽くすことに間違いはない。

漁業者は自分たちの主張を裏付けるデータの提供を求められるだろうが、現状を見た時、必要なデータは得ることが出来ないと予想される。

海洋生態系に対する洋上風力の影響を定量化するための基準となるデータが存在しない場合、魚と漁業者、そして実際には国家が不利益を被ることに帰着することになる。

NOAA、BOEM、そして全ての洋上風力発電開発事業者が基準となるデータの必要性を認識していることは明らかで、2020年に“オーシャノグラフィ”(Oceanography)に発表されNOAAが配布したリポート“洋上風力発電が魚や漁業に及ぼす影響の背景の設定”でも、最も適切な証拠を入手するには、データ・ベース設定の改善が決定的に必要だと指摘している。

しかし、BOEMは、このデータ・ベースの改善を確立する代わりに、NOAAから得た既存のデータを使用して、風力発電開発プロジェクトの区域を決定している。

BOEMが使用しているデータは、資源評価や漁業管理に使用するために開発されたもので、意図された目的にはまったく適していない。

主要な漁業法であるマグナソン・スティーブンス法は、魚やその生息地へ有害な影響を与える漁具の使用、浚渫やエネルギー開発などの非漁業活動を禁止している。

この法の保全目標は、潜在的な悪影響から海洋環境を保護するという、より広範な目標と一致している。

洋上風力発電プロジェクトのプラスとマイナスの両方の影響を正確に定量化するために不可欠な、海洋生態系に関するデータが、現在、絶望的に欠如しているということは、科学的不確実性の最小限の閾値をはるかに超えていることを意味しており、これらを満たすデータ・ベースを確立することで、はじめて海洋生態系に対する影響を理解することができ、まだリースされていない沿岸沖合区域に関する将来の意思決定を可能にするのである。

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