台風が過ぎた翌日、大きな水たまりが、道いっぱいに広がっていました。 そこに、ひとりの女性が通りかかりました。 白い日傘に白いワンピース。サーモンピンクの新しい靴を履いています。 「いやだわ。どうしましょう」 女性は水たまりの前で立ち止まりました。 何しろ道の端から端まで水たまりがあって、よけることもできません。 途方に暮れる女性を、空の上から台風と太陽が、腕組みをして見ています。 「台風さん、あなたが大雨を降らせたせいで、あの女性が困っていますよ」 「あそこは、もともと水はけが悪いんだよ。まあ、俺もちょいとやり過ぎたが」 「お気の毒に。ワンピースも靴も濡らしたくないでしょうな」 「おしゃれして、デートかな?」 「どうでしょう、台風さん。ひとつ勝負をしませんか?」 「勝負とは?」 「あの女性が、水たまりの向こう側に行けるように手助けをするのです」 「おもしろい..