家の近くに新しい本屋(ほんや)が開店(かいてん)したときのこと。今どき珍(めずら)しいと思ったので入ってみた。店内(てんない)はすごく狭(せま)く、棚(たな)に並(なら)ぶ本の数(かず)もごくわずかしかなかった。でも、見ていくうちに、どの本も自分(じぶん)の興味(きょうみ)をそそるようなものばかりだと気がついた。読(よ)みたいと思って読めずにいた本や、好(す)きな作家(さっか)の作品(さくひん)、それに何だかわくわくするような表紙(ひょうし)の本――。何だこの本屋は…。まるで、自分のために選(えら)ばれ、並べられたと錯覚(さっかく)してしまう。何だか嬉(うれ)しくなって、何冊(なんさつ)かの本を手に取るとレジに向かった。でも、レジがどこにもない。普通(ふつう)なら出入口(でいりぐち)の近くにあるはずなのに...1470「不思議な本屋」