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  • 鈴木秀美/東京シティ・フィル

    鈴木秀美が指揮する東京シティ・フィルの定期演奏会。先にプログラムを書いておくと、モーツァルトの「ドン・ジョバンニ」序曲、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番(ピアノ独奏は小山実稚恵)そしてシューベルトの交響曲第8番「ザ・グレート」。わたしの好きな曲ばかりなので、楽しみにしていた。「ドン・ジョバンニ」序曲が始まると、12型の弦楽器のノンビブラートの音が耳に飛び込んできた。一人ひとりの音が透けて見えるようだ。指揮者によっては冒頭の和音の低音を長く引き伸ばすこともあるが、鈴木秀美は短く切る。慣習を洗い直してもう一度組み立てた演奏だ。だが主部に入ってからは、演奏の基本は変わらないが、アンサンブルに荒さを感じた。鈴木秀美の身中からほとばしる躍動感はあったが。ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番では、オーケストラは「ドン...鈴木秀美/東京シティ・フィル

  • 東京都美術館「デ・キリコ展」

    東京都美術館で「デ・キリコ展」が開かれている。ジョルジョ・デ・キリコ(1888‐1978)の生涯にわたる作風の変遷をたどる展覧会だ。デ・キリコの作品は「形而上絵画」といわれる。形而上絵画が生まれたのは1910年代だ。時あたかも第一次世界大戦の真最中。形而上絵画は戦争が生んだ不安の表現のひとつだった。だが、デ・キリコの難しい点は、そのような作風が第一次世界大戦の終結後も、折に触れて繰り返されたことだ。後年生まれたそれらの作品(新形而上絵画といわれる)をどう捉えるかは、人によって異なる。本展には「大きな塔」(1915?)という作品が展示されている(残念ながら本展のHPには画像が載っていない)。81.5×36㎝の縦長の作品だ。画面いっぱいに5層の塔が描かれる。塔は暗赤色だ。各層ごとに何本ものベージュ色の円柱が並...東京都美術館「デ・キリコ展」

  • 関心領域

    映画「関心領域」は5月下旬の公開後、約1か月たつ。関心のある人はあらかた観てしまったのかもしれない。わたしが行った日は雨の降る寒い日だったこともあり、観客は10人足らずだった。上映終了も間近いのか‥。ともかく間に合って良かった。いうまでもないが、本作品はアウシュヴィッツ強制収容所の所長だったルドルフ・ヘスとその家族を描く映画だ。ヘスの住居は強制収容所に隣接する。塀を隔てたむこうは強制収容所だ。ヘスとその家族はそんなきわどい住居で贅沢な暮らしをしている。ヘスはともかく、妻と子どもたちは強制収容所で何が行われているか、まるで知らない様子だ。関心領域の外なのだ。関心領域(TheZoneofInterest)とは恐ろしい言葉だ。だれにでも関心領域がある。自分の生活を支える領域だ。恐ろしいのは、その外側に広大な無関...関心領域

  • マトヴィエンコ/東響

    若手指揮者のドミトリー・マトヴィエンコが東響に初登場した。マトヴィエンコは2021年のマルコ国際指揮者コンクールの優勝者だ。同コンクールのHPを見ると、コンクール時点で30歳、ベラルーシ出身とある。モスクワ音楽院に学び、ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー、ウラディミール・ユロフスキー、テオドール・クルレンチス、ワシリー・ペトレンコの各マスタークラスを受けた。2024/25のシーズンからデンマークのオーフス交響楽団の首席指揮者に就任予定。周知のことだが、今回の東響初登場に当たって、当初発表のプログラムはツェムリンスキーの「人魚姫」とストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」だった。只者ではないプログラムに注目したが、後に「人魚姫」がラヴェル2曲に変更された。がっかりしたというのが正直なところだ。1曲目はラヴェル...マトヴィエンコ/東響

  • ヴァイグレ/読響

    ヴァイグレ指揮読響の定期演奏会。1曲目はウェーベルンの「夏風の中で」。わたしの大好きな曲だが、演奏は少し勝手がちがった。絵画的な要素が(視覚的な要素といってもいい)皆無なのだ。冒頭の弱音は驚くばかりで(わたしはワーグナーの「ラインの黄金」の序奏が始まるのではないかと思った)、以後も弱音のコントロールが徹底している。だがそこからの音の広がりがない。弱音の部分と強音の部分が二項対立的になり、その間のグラデーションがない。ヴァイグレが感じるこの曲はこうなのだろうか。2曲目はモーツァルトのピアノ協奏曲第12番。わたしの偏愛する曲だ。以前持っていたLP(ブレンデルのピアノ独奏、マリナー指揮アカデミー・オブ・セントマーティン・イン・ザ・フィールズの演奏)を何度聴いたことだろう。今回数年ぶりに聴いて、心の故郷に戻ったよ...ヴァイグレ/読響

  • 原田慶太楼/N響

    原田慶太楼が振るN響のAプロ。プログラムはオール・スクリャービン・プロ。それだけでも凝っているが、加えて選曲が、スクリャービンが神智学に傾倒する前の曲ばかり。一捻りも二捻りもしたプログラムだ。1曲目は「夢想」。スクリャービンが書いた2作目のオーケストラ作品らしい(小室敬幸氏のプログラムノーツより。ちなみにオーケストラ作品の一作目は、2曲目に演奏されるピアノ協奏曲だ)。演奏時間約4分の短い曲だが、魅力的な曲だ。当時ショパンに倣ったピアノ曲を書いていたスクリャービンが、同じ音楽をオーケストラで書いた感がある。演奏も、たとえば弦楽器が大きく飛翔する部分など、N響の優秀さを感じさせた。2曲目はピアノ協奏曲。ピアノ独奏は反田恭平。会場が満席だったのは、反田人気か。キラキラ輝くような音色、あふれる情熱、夢見るような甘...原田慶太楼/N響

  • 大植英次/日本フィル

    ラザレフが振る予定だった東京定期が秋山和慶に代わり、プログラムもガラッと変わった。その秋山和慶が鎖骨骨折を起こしたので、急遽大植英次に代わった。プログラムは秋山和慶のものを引き継いだ。1曲目はベルクの「管弦楽のための3つの小品」。原曲は4管編成の巨大なオーケストラ曲だが、それをカナダの現代音楽作曲家ジョン・リーア(1944‐)が28人の室内アンサンブル用に編曲した。管楽器は2管編成が基本で、弦楽器は各パート2名だ。私見では、2名としたことがものを言っている。1名だとシェーンベルクの室内交響曲第1番のように各パートがソロ楽器のように動くが、2名だとそれなりの厚みがでる。この編曲はたいへんおもしろかった。原曲だと巨大なオーケストラが壁のように立ちはだかり、細かい動きは壁の中に埋もれるが、この編曲だと細かい動き...大植英次/日本フィル

  • 目黒区美術館「青山悟展」

    目黒区美術館で開かれている「青山悟展」。会期末ぎりぎりになったが、出かけることができた。同展は副題に「刺繍少年フォーエバー」とある。副題のとおり、青山悟(1973‐)は古い工業用ミシンを使って刺繍作品を作る現代美術家だ。チラシ(↑)を見ると、美しい都会の夜明けが写っている。写真のように見えるが、じつは刺繍だ。「東京の朝」(2005)という作品。本展にも展示されている。実物を見ると、なるほど刺繍だ。それにしてもなんて精巧なのだろうと思う。おもしろいのは、クシャクシャになった上記のチラシが、刺繍で作られ、本展に展示されていることだ。思わず笑ってしまう。チラシとは本来、その役目を終えれば(=本展が終われば)、用がなくなるものだ。だが刺繍で作られたチラシは、本展が終わっても、作品として残るだろう。消えゆくものの記...目黒区美術館「青山悟展」

  • 世田谷美術館「民藝」展

    世田谷美術館で「民藝」展が開かれている。柳宗悦(1889‐1961)らが提唱した手作りの日用品に美を見出す民衆的工藝=「民藝」。本展では着物、茶碗、家具などが展示されている。いずれも無名の職人が作ったものだ。個性を競う芸術家の作品ではない。野心とは無縁のそれらの品々を見ていると、一種のさわやかさを感じる。本展は3章で構成されている。第1章は1941年に日本民藝館で開かれた「生活展」を再現したもの。テーブル、椅子、食器棚などを配置して生活空間を作り、そこに茶碗などをさりげなく並べる。当時は画期的な展示方法だったらしい。第2章では民藝品を「衣・食・住」に分類して展示する。わたしは今回「衣」の品々に惹かれた。八丈島の黄八丈の着物「八端羽織」(はったんはおり)(江戸時代19世紀)がまず目に留まった。素朴な風合いが...世田谷美術館「民藝」展

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