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  • 成果は30年後に

    「今どきの希少人種」10月27日日本総合研究所主席研究員藻谷浩介氏が、『投票日の朝に「取られ放題」でいいの?』という表題でコラムを書かれていました。その中で藻谷氏は、『「あなたは税金を取られっぱなしでいいですか?」(略)いまどき朝から新聞を読んでいるような皆さんは、もちろん投票には行かれるだろうから、あなたの周囲の。どうも行きそうにない人にぜひ、そんな質問を投げかけてみてほしい』と書かれています。藻谷氏の言いたいことは、棄権をして政治家に税金を好き勝手に使われていいのか、ということなのですが、私は、「今どき朝から新聞を読んでいるような皆さん」という記述が強く印象に残りました。つまり、日曜日の朝だからといって新聞を読むことが習慣になっている人は少ない、まして毎朝新聞を読むという習慣をもつ人はもっと少ない、と...成果は30年後に

  • 私は偉大だ

    「自己評価高すぎ」10月26日『警察庁「闇バイト」の誘い文句発表』という見出しの記事が掲載されました。『首都圏を中心に相次ぐ強盗などで、警察庁は25日、一連の事件で逮捕された実行役らが応募した「闇バイト」の誘い文句を発表した。安易に応じないように注意を促し~』という趣旨の記事です。記事では、『日給5万円から』『即日払い』『20万円~都内某所』の例が挙げられていました。不思議でなりません。実行役の若者は、報道を読む限り、何の資格も特別な経験や能力もない人たちばかりです。政治家が最低賃金を時給1500円にと主張しても、20年代での実現は難しいと言われている現在、資格も経験も能力もない若者がどうして5万円手に入れられると思うのでしょうか。バカなのでしょうか。そんなに割のいい仕事があれば、競争率100倍以上に求職...私は偉大だ

  • 楽しくないの?

    「楽しくないの?」10月24日大学生が作る紙面「キャンパる」に、『「読書離れ」ってどう思う?』という見出しの記事が掲載されました。『若者は読書にどう向き合っているのか、首都圏の大学に在籍する2~4年生計8人に語り合ってもらった』という企画です。読む本の少なさ、スマホに時間が取られている実態など予想通りに話が続いていましたが、私が違和感を抱いた発言群がありました。『読書習慣がどうしても必要なものなのか疑問に思う』『深刻にとらえることにかえって違和感がある。読書はあくまでも趣味の一つという認識』『本は自分の意思で読む(略)集中力とか忍耐力とかはつくと思う』『読書習慣の欠如が集中力の低さにつながる』『自分だけが本を読んでいると目立つし、「意識が高い」と敬遠されそう』などです。彼らの発言は、読書の効用を巡ってなさ...楽しくないの?

  • 早期に開発を

    「研修に使いたい」10月24日大学生が作る紙面「キャンパる」に、『面接練習AIにお任せ中央大が新システム導入』という見出しの記事が掲載されました。『就職活動の早期化が進む中、忙しい学業と就活の両立を手助けしようと、この生成AIを就活に利用する取り組みが急ピッチで拡大している』ことを報じる記事です。記事によると、中央大の取り組みは、『正確にこちらの音声を認識し、的確な質問を投げかけてくれる。また面接指導だけでなく、終了後、即座に面接の出来について評価し、やりとりの文字起こしまで行ってくれる至れり尽くせりのシステム』だということでした。私はこの記述を目にし、当時これがあれば、と教委勤務時のことを思い出しました。私は、全国に先駆けてと教委が始めた「指導力不足教員研修」の担当者になりました。そこでも研修で大切だっ...早期に開発を

  • やってみたいという人は多いはず

    「位置付けを変える」10月23日『女子高校生コーチ養成急ピッチサッカー協会公認ライセンス年齢緩和』という見出しの記事が掲載されました。『日本サッカー協会公認の指導者ライセンスを持つ女子高校生が続々と誕生し、女性指導者が倍増しそうな勢いを見せている』県の現状と背景を報じる記事です。記事によると、日本サッカー協会は、『(指導者)養成講習会の受講年齢を「18歳以上」から「15歳以上」に引き下げた』ということです。これを受け、岡山県では、『23年度は45人の高校生がライセンスを取得、その全員が女子生徒だった』そうです。また、受講を積極的に呼びかけた和田敬氏は、『将来的に教員や指導者など、サッカーに関わる仕事を志す部員が多くいた。教える立場になることでサッカーの戦術などに対する視野や考え方も広がっていくと思った』と...やってみたいという人は多いはず

  • 余裕があれば楽しくなってくる

    「カスばかり?」10月23日『「公立先生いなさすぎ」中高生学び・対応に不信感』という見出しの記事が掲載されました。1面トップと3面を占める特集記事です。公立校の教員が足りず、学校への不信感さえもつ中高の実態を紹介し、背景や対応を考える記事です。記事では、『(欠員補充の影響で)たった1年間で4人の英語教員に教わることになった(略)先生が何度も交代しているのに、継続して学んだことや努力、それをどうやって公平に評価するんだろう』という高校生、『(不登校後の)別室登校が続いているのに、学校側が対応している形跡がない』『個別面談がしたければ「アポ」を取ることが必要』と不満をもつ中学生などの例が紹介されていました。大変な状況です。しかし今回私が引っ掛かったのは、そうした状況とは直接関係しないある記述でした。教育社会学...余裕があれば楽しくなってくる

  • いいところばかりではない

    「そもそもどうなの?」10月22日連載企画『田原総一朗の日本の教育の問題は何だ!?』は、県立土浦第一高校で民間人校長を務めているインド出身プラニク・ヨゲンドラ氏との対談の「下」でした。元江戸川区議で「よぎ」の愛称で呼ばれていた方でもあり、今回も文中ではよぎ氏と呼ばせていただきます。今回、田原氏は、インドと日本の学校教育の違いについて質問しています。よぎ氏の回答は、以下の通りです。『インドでは言語教育は基本的に小中学校で終えています。一方、日本では高校になっても、多くの時間を国語や英語に割いています。他の学問に振り向けることができれば、もっと専門的な知識とスキルを身につけられるはずです』『高校の勉強量が多いことです。小学校では、道理道徳やグループで動くことに時間を費やし(略)小中学校のしわ寄せで、高校で学ば...いいところばかりではない

  • 可視化できれば

    「実感」10月21日専門記者下桐実雅子氏が、『「ともに生きる」ための言葉』という表題でコラムを書かれていました。高齢者施設の在り方について研究調査してきた慶応大大学院生金子智紀氏の取り組みを取り上げたものです。その中に、とても印象に残る記述がありました。『転倒や誤飲など問題を再発させないノウハウは施設で蓄積され、共有される。でも、困難を乗り越えた経験や、良いケアができた実感などは共有されにくい(略)こうした「個人の蓄積」を可視化して広めたい』という記述です。前日も書きましたが、何かと不人気な教職ですが、苦労だけがあるのではなく、喜びや充実感、達成感や成長の実感などを感じ取ることも多いのです。私は、子供が嫌いでした。末っ子で甘やかされて育った私は、面倒を見てもらうことはあっても、誰かの面倒を見る、世話をする...可視化できれば

  • 正解は当たり前の中に

    「的外れ」10月20日『教員試験自治体に難題問間と人材獲得競争国が前倒し要請教委受験者の負担増懸念試験科目減らす動き』という見出しの記事が掲載されました。『低迷が続く教員の採用倍率をどうすれば好転させられるのか-。各地の教育委員会が教員採用試験のあり方に頭を悩ませている』という現状と問題点を報じる記事です。違和感だらけの内容でした。記事によると、『文部科学省は試験日程が遅いため民間企業や一般公務員との競合に敗れているとみて、2023年から2度にわたって翌年度の試験日程の前倒しを全国の都道府県・政令市の教育委員会に要請』しているとのことです。問題の本質を理解していない愚策です。かつて教員採用試験の倍率が高かったとき、試験日程は非常に遅かったのです。私の場合、都内S区の教委に面接で呼ばれたのは年を越した時期で...正解は当たり前の中に

  • 目撃者が被害者

    「眼中にない?」10月19日『教育現場に問題ないか?』という見出しの記事が掲載されました。『公立小学校に入学後すぐに不登校となった長男を持つノンフィクションライターの沢木ラクダさんが、これまでの葛藤の日々を発信している』ことを取り上げた記事です。ちなみに、沢木氏のご長男は、「HSC」(HighlySensitiveChild)、人一倍敏感な子供と思われるそうです。記事の中に、次のような記述がありました。『他の子が先生に怒られているのに自分が怒られているかのように感じたりするHSCの特性』です。記事では、HSC独自の感じ方のように書かれていますが、私はそうではないと考えています。私はこのブログで体罰問題を再三にわたって取り上げてきました。特に「体罰=愛の鞭論」を強く否定してきました。体罰を愛の鞭として肯定す...目撃者が被害者

  • 愛していないから

    「妄言」10月19日書評欄に、詩人渡邊十絲子氏による『「標本画家、虫を描く小さな体の大宇宙」川島逸郎著(亜紀書房)』についての書評が掲載されていました。その中にあった、文の大意とは全く関係のないある記述が印象に残りました。『身近な虫をまったく見たことがない人はいないと思うが、ではその虫を描けと言われたら、かなりの人がへんてこりんな絵を描いてしまう。それは絵がへただからではなく、その虫への愛が足りないからである』という記述です。言いたいことは分かります。しかし私はそれとは別に、こういう言い方をする指導力不足教員のことを思い出してしまったのです。子供に指示を出す、子供は取り組み始めますが、すぐにどうしていいか分からなくなる、あるいはうまくできないことに気づく、そしてうまくやりたいと考えて教員に質問したりヒント...愛していないから

  • 運動会は好きですか

    「運動会」10月18日『企業運動会人気のワケは』という見出しの記事が掲載されました。『日ごろ顔をつきあわせる人たちが、知らなかった一面をのぞかせるのが職場の運動会だ。昭和の時代にはやっていたと思いきや、根強い人気があるらしい。会社側のねらいは?従業員の反応は?秋本番、令和の企業運動会事情を探った』という記事です。記事によると、企業側としては、『日常を離れ、仕事と違った目的で同じ時間を共有する』『企業の統合には運動会がベスト』(合併・再編企業)『従業員は家族だ。大事にしよう』『社員同士、仲間同士の信頼関係を築く』など、予想された理由が挙げられていました。一方で、『離職を防ぐには、イベントの開催やおしゃれなオフィスなど報酬以外のメリットも重要』などの指摘もあり、人手不足の現状を実感させられる記述もありました。...運動会は好きですか

  • 面倒なことになりそうだ、でも…

    「教員失格」10月18日『困っている人行政につなぐサイト』という見出しの記事が掲載されました。『親から虐待を受けて複雑性PTSDを患う女性は「困難オンパレード」の経験から、困っている人と行政支援をつなぐウェブサイトを作った』ことを報じる記事です。その中にとても腹立たしい記述がありました。女性は『先生からも友達からも「何か深刻な事情がありそうだ」と思われた時点で、距離を置かれる。助けを求める発想は消えて、ひたすら耐えるしかない』と語っているのです。友達は仕方がありません。自身も子供で弱い立場ですし、世間知が乏しくどうすれば助けられるか分からないのですから、尻込みしても責めることはできません。でも、教員は違いはずです。違わなければなりません。子供の表情、仕草、服装、発する言葉など、教員は日常的に子供たちの様子...面倒なことになりそうだ、でも…

  • 損得に訴える

    「取り上げるべき考え方」10月15日『経済学賞米教授3氏ノーベル賞国家間の格差研究』という見出しの記事が掲載されました。『2024年のノーベル経済学賞を、米マサチューセッツ工科大のダロン・アセモグル教授(57)ら米大学の3氏に授与すると発表した』ことを報じる記事です。私が注目したのは、その研究内容です。記事によると、『国家間で格差が広がる背景に、政治や経済といった社会制度の違いがあると実証。国家の繁栄には民主主義的な制度が重要だとし、法の支配が乏しく、国民を搾取するような制度を持つ社会の成長は長続きしない』ことを明らかにしたということです。いちおう民主主義国をされる日本で暮らす日本国民の多くは、なんとなく民主主義国の方が暮らしやすいと考えてきたと思います。しかし近年、専制主義的な国、ロシアや中国などが勢力...損得に訴える

  • 2種類の常識

    「そんなものか」10月15日『全国の中学生に、さまざまな分野で活躍する人たちが語る「14歳の君へわたしたちの授業」』は、心理カウンセラー信田さよ子氏が語られていました。その中にいくつかなるほどと考えさせられる記述がありました。まず、『何かに頼るのはいいことです。弱い自分を恥ずかしがらず、「自分が悪い」という結論だけは絶対に避けてほしい』という言葉です。いかにもカウンセラーという感じがします。悪い意味で言っているのではありません。多くの日本人の大人は、弱い→頼る=迷惑=悪いというような考え方をもっており、それが知らず知らずのうちに子供に感染しているように思います。私は、都教委が初めてスクールカウンセラーを試験的に導入したときの数少ない受け入れ区の担当指導主事でした。初めてカウンセラーという職種の人と身近に話...2種類の常識

  • 決めるのはまだ早い

    「名言」10月12日人生相談欄で、作家高橋源一郎氏が、21歳男性の問いに答えていました。男性は、『これから就職活動をしていく中で、精神的に楽になる方法や持っておく考え方があれば教えていただきたい』と尋ねています。それに対して高橋氏は、定年を迎えた大学の元同僚の最後の卒業式での挨拶を紹介して回答に代えています。『これからあなたたちには、喜びよりも大きな苦しみが待っている(略)社会はあなたたちの夢や希望を実現させるために存在はしていません。あなたたちは、あなたたちを役に立つ「社会の駒」にしようとする者たちの荒波に投げ出されるのです。卒業3年以内の大学生の離職率が30%を超え、さらに多くの数の学生たちが不満や苦痛を抱えているのは、そのためです(略)どんな場所にいても「生き延びる」ことができる「知恵」を身につけて...決めるのはまだ早い

  • みんなの快は私の不快

    「どっち?」10月11日同志社大名誉教授浜矩子氏が、『経済政策「個別最適」の視点で』という表題でコラムを書かれていました。石破政権の経済政策について論じたものですが、私は経済とは関係なく、浜氏の次の記述に注目しました。『政府は、全体が良ければいいという「全体最適」を求めているのに対し、国民はあくまで自分の生活が良くなること、つまり「個別最適」を切望しています。政治家は国民個々の切実さや痛みを実感として受け止め、そのためにどんな施策が必要かを考えないといけません。国民の真の声を受けとめられるかが、選挙のプロセスの中で重要なポイントです』という記述です。私は、この指摘が、学校教育について考える際にも当てはまるのではないかと考えます。「全体最適」とは多数派の満足、統計調査上の数値などに親和性がある概念です。つま...みんなの快は私の不快

  • 自分は全体

    「不幸な出会い」10月8日連載企画『田原総一朗の日本の教育の問題は何だ!?』は、県立土浦第一高校で民間人校長を務めているインド出身プラニク・ヨゲンドラ氏との対談でした。元江戸川区議で「よぎ」の愛称で呼ばれていた方でもあり、今後文中ではよぎ氏と呼ばせていただきます。よぎ氏は、ご自身の経験から我が国の学校教育の問題点を意識し、校長職に就かれたようですが、私は、よぎ氏と我が国の学校の出合い方は不幸なものだったと感じました。よぎ氏の息子さんは、『中学校に進むと、丁寧な言葉遣いができないといった理由で、教室の外に立たされたり、部活動に入るのを拒まれたりするようになりました』そうです。これが、よぎ氏が我が国の学校教育に疑問を感じるようになったきっかけです。事実なのでしょう。でも、それは特異な例です。そんなおかしな指導...自分は全体

  • 排除で結束

    「すっきり」10月7日『「排除」を生まない社会に』という見出しの記事が掲載されました。「すき間の哲学」の著者で大阪大学大学院教授村上靖彦氏へのインタビュー記事です。その中にとても納得させられる記述がありました。「可視化された排除」を『多数派が少数派に不条理なレッテルを貼ることで「異質性」を強調し、自分達の「均質性」を維持しようとする動き』と定義なさっていることが一つです。もう一つは、排除された人への対応で必要なこととして、『かすかなSOSへのアンテナ(略)わずかなシグナルに気付くことが大切で、この姿勢がアンテナの感度を高める』と述べていらっしゃることです。学校で起こるいじめは、この排除の典型例です。いじめは、多数が少数(個人)に、嘘をついた、約束を破った、悪口を言った、一人だけいい子になった、仲間を裏切っ...排除で結束

  • 属人性の壁

    「属人的業務」10月5日『育休ためらう男性教員取得率9.3%公務員の半分以下』という見出しの記事が掲載されました。記事によると、『総務省によると、21年度の男性地方公務員の育休取得率は19.5%で、22年度は過去最高となる31.8%と初めて30%を超えた(略)一方、文部科学省の最新の調査では(略)9.3%の1603人にとどまった。21年度の男性地方公務員の取得率の半分だ』ということです。記事ではその理由として、『「教員不足」と「前例が少ないこと」』を挙げています。残念ですが、その分析は間違っていると思います。記事では、『女性教員は2万591人のうち97.4%の2万64人が育休を取得』というデータも示されています。教員不足が原因ならば、女性教員の取得率が非常にい高い事の説明がつきません。前例が少ないという理...属人性の壁

  • 誰のため?

    「目に見えにくい影響」10月4日論説委員小倉孝保氏が、『助ける側の笑顔』という表題でコラムを書かれていました。『人助けの要諦は、助ける側が楽しむことである』という書き出しで始まるコラムの内容は、米国の79歳の女性が山で転倒骨折したところに通りかかった3人の男女が彼女を背負って下山し病院まで付き添ったという話です。『痛くてつらい経験である。しかも、見ず知らずの若者の世話になった。その精神的負担を軽減したのは3人の笑顔だ』。3人は、『彼女の気を紛らわせようと昔の経験を聞かせてもらった』のだそうです。その話に興味をもち、ときには笑い、感心し、もっと知りたいと質問したのでしょう。そのおかげで彼女は辛さに耐えることができ、迷惑をかけてしまったという重い気持ちを抱かずに済んだのです。この話から何を感じ取るかは、人様々...誰のため?

  • 基本形の枠組みの外で

    「何が大変?」10月4日『教員給与の引き上げ負担減らす対策もさらに』と題された社説が掲載されました。そこでは、『小中学校の教員の半数以上が仕事に「満足している」と答えている』『小学校で64.5%、中学校では77.1%の教員が、国の指針で定めた上限の月45時間を超えて残業していた』『ワークライフ・バランスについては小中ともに約半数が「満足していない」と回答した』などの実情が紹介され、『状況を根本的に改善するには、教員1人あたりの負担を減らすことが重要だ』と書かれていました。その通りです。ここまでは全く正しい認識です。しかし問題はその先です。負担軽減を言うのであれば、教員にとって何が負担なのか、詳細に調査する必要があるはずです。それにもかかわらず、そうした調査は行われておらず、行う予定もないまま、文科省の『継...基本形の枠組みの外で

  • 場を覆う空気

    「自戒」10月3日『声を上げ「if」を想像する』という見出しの記事が掲載されました。NHK連続テレビ小説「虎に翼」の脚本家吉田恵里香氏へのインタビュー記事です。その中で吉田氏が語った言葉が強く印象に残りました。『差別的なことを言う人も、世の中が変われば少なくともその考えを口に出せなくなるはず。差別的なことを言えるのは、言っても大丈夫な社会だから』という言葉です。これは、教員が子供の問題行動に直面したときに思い出し、噛み締めるべき言葉だと思います。すぐ暴力を振るう子供がいます。差別的なことを言い他人を傷つける子供がいます。ルールを守らず責められても言い逃れする子供がいます。教員は、こうした問題行動を発見したとき、その子供に対して指導をするはずです。そのとき陥りやすいのが、その子供だけの問題として、叱り注意す...場を覆う空気

  • どうして怖い?

    「どうして怖い」10月3日『日中韓子ども童話交流2024水を得た仲間と紡ぐ物語』という見出しの記事が掲載されました。『日本、中国、韓国の小学生約100人が絵本作りなどを通して交流する』イベントについて報じる記事です。その中に、おやっ、と思わせられる記述がありました。参加した子どもの感想文中の記述です。『以前は、「外国はこわい」と思っていたのに、「いつか中国や韓国にぜひ行ってみたい」と考えるようになりました」』。小6男児が書いたものです。どうして「外国」は怖いと思うようになったのでしょうか。「外国」とはどこの国なのでしょうか。今回のイベントを通して印象が変わったのですから、中韓について怖いと感じていたと考えるのが妥当だと思われます。小学校で外国について学ぶのは、6年生の2学期以降ですから、学校で得た知識が基...どうして怖い?

  • 深く分け入ることもあっていい

    「得意?苦手?」10月1日オピニオン編集部小国綾子氏が、『刑務所ワークショップで』という表題でコラムを書かれていました。その中に、気になる記述がありました。『出所し、就職したり福祉施設に入ったりしても、そこで人とのつながりができないと、結局逃げ出し、再犯してしまう。しかも受刑者には人とのつながりを作るのが苦手な人が多いんです』という記述です。刑務官の言葉です。その通りだと思います。ただ、「苦手」という言葉に引っ掛かるのです。私の感覚がおかしいのかもしれませんが、苦手という言葉には、ハウツー的な、テクニックの問題的なイメージを抱いてしまうのです。鉄棒の逆上がりが苦手、改善するには腹を引き付けるちょっとしたコツを飲み込ませるのが有効です。水泳が苦手、顔を水につけ水への恐怖心を取り除くようにすれば克服できます。...深く分け入ることもあっていい

  • リアルタイム評価法は

    「米国流教員評価は?」9月30日『「滑り込み」の副作用注意自己効力感を大切に』という見出しの記事が掲載されました。中学受験の志望校選びについて、教育経済学を専門とされている慶応大教授中室牧子氏にインタビューした記事です。中室氏のお話には、『井の中のかわず効果』など興味深い内容がたくさんありました。ちなみに、『井の中のかわず効果』とは、『「第1志望の最下位」と「第2志望の1位」は、入試時点では僅差の実力にもかかわらず、入学後の成績は「第2志望の1位」の方が高くなる』という研究結果のことで、『子ども自身の自己効力感』によって説明できるというものです。要は、周りと比較して自身をなくすか自身を得るか、ということでしょう。言われてみれば納得です。この「井の中のかわず効果」よりも印象に残ったのは、『教員の付加価値』と...リアルタイム評価法は

  • 30秒ルール

    「30秒?」9月29日『容姿で自分の価値を決めない』という見出しの記事が掲載されました。『人は見た目ですか』という永遠のテーマに、コラムニストジェーン・スー氏が答える記事です。その中に気になる記述がありました。『「相手が30秒で変えられないものを指摘してはいけない」と。つまり、髪にゴミがついているのは指摘してもよいが、髪色や髪質を褒めるのもけなすのも間違っている。「今日のあなたはとても素敵ね!」はOKだが、「脚が長くてすてきね!」はNG』という記述です。分かりやすい表現です。国籍や肌の色、性別や障害などに基づいて他人を評価することは差別や人権侵害につながる、私もそうした意味で、「自分の努力で変えられないもので人を評価するな」ということを言ってきました。似ているような気がします。しかし、30秒というところに...30秒ルール

  • 同じ人間だ

    「普通ということ」9月29日『エンタメ業界労働環境改善のために「特殊な仕事」の認識まず脱せ』という見出しの記事が掲載されました。『過酷な労働環境や人権侵害が次々と明るみに出るエンターテインメントの世界で働く人々を守るために、何が必要なのか』という問題意識で書かれた記事です。その中にとても印象に残る記述がありました。『こうした実態が長年見過ごされてきた背景には、エンタメや芸術の世界は「特殊な仕事」という社会の認識があると思います。「優れた作品を世に出すためには、休みや寝る時間がなくてもいい」「普通のサラリーマンと違って当たり前」という思想は業界内はもちろん、世の中全体で改めなければいけません』という記述です。これは、エンタメを医師や教員に入れ替えても成り立つと思います。「教員は「特殊な仕事」という社会の認識...同じ人間だ

  • 自分で稼いで

    「職業とは」9月28日ナレーター近藤サト氏が、『沖縄の染織物で考えるもの作り「楽しくなければ」の含意』という表題でコラムを書かれていました。その中で近藤氏は、『今まで一流と評される職人に、その職業を選んだ理由を聞いたとき、ほとんどと言っていいほどの人が「好きで楽しくてたまらないからと答えていました」』と書かれていました。そして、昔、番組が面白かった時代のテレビマンについても、『寝食を忘れ、喜色満面で番組を作る人ばかりでした』と書かれているのです。どうやら近藤氏は、好きで楽しくてたまらない仕事に就くことで、成果をあげることが可能になるというお考えをおもちのようです。そうなのかもしれません。でも、私はそうした考え方には、大事なものが欠け落ちていると思います。仕事は個人が社会生活を送るうえで必要な「カネ」を得る...自分で稼いで

  • 科学で絶望

    「絶望させる?」9月27日日本大総合科学研究所教授早川智氏が、『異例の長寿IQ影響か』という表題でコラムを書かれていました。その中で早川氏は、戦国初期の武将北条早雲を取り上げ、『近年、中高年期の知能指数(IQ)の高さが寿命に関係するという研究結果が出ており、筆者は早雲の事例もこれに該当するとみる』と書かれています。さらに、『子ども時代のIQが高いほど、冠動脈性心疾患や脳卒中、がん、呼吸器疾患、消化器疾患などの死亡率が低い』『早期教育プログラムを受けた群は、受けなかった群よりも業績評価や収入が高い一方、犯罪率は低い』などの研究結果も紹介なさっています。私はこうした記述を目にすると、悲しくなってしまいます。それは、知能検査でIQが低かった子供とその保護者、家庭の経済状況によって早期教育プログラムを受けることが...科学で絶望

  • 偽装と切り捨てるのも……

    「有能な人」9月26日『NHK前理事再雇用』という見出しの記事が掲載されました。中国語ニュース問題で『10日に引責辞任した国際放送担当の傍田賢治前理事が、NHKメディア総局のエグゼクティブ・プロデューサーとして再雇用されていることが25日、複数の関係者への取材で判明した』ことを報じる記事です。記事によると、『辞任後わずか1週間での再雇用で、「偽装辞任」だ』という批判が挙がっているそうです。当然でしょう。一方、NHK幹部は、『傍田氏は国際畑での経験や実務能力が高い』『海外にいた知見を生かしてほしい』などとの理由を挙げ、問題はないとの見解を示しているようです。実際、傍田氏は、『モスクワ支局長やアメリカ総局長などを歴任』した国際通であるとのことです。また、中国語ニュースの事故も、生放送中の事故で辞任はもったいな...偽装と切り捨てるのも……

  • 学校や教育行政の課題ではない

    「「教育」問題?」9月25日社会部東京グループ深津誠記者が、『「公」教育の機能強めよ』という表題でコラムを書かれていました。以前もこのブログで何回か取り上げた、『難関大に合格する東京圏の高校出身者が増え、地方にある高校の出身者が減る「受験格差」が広がっている』ことに焦点をあてたコラムです。現状の詳細は重複するので避けます。ただ、気になる記述がありました。『保護者が子供を地元から出したがらない風潮もある(略)そのまま就職して古里に戻らないことが多いからだ』という記述です。深津氏は、我が国の公教育財政支出がOECD加盟国の中で最低レベルであることを指摘し、予算拡充を主張なさっています。その主張には賛成です。しかし、いくら予算を拡充しても、東京圏優位は覆らないと思います。それは、先に指摘したとおり、「大都会にそ...学校や教育行政の課題ではない

  • 早く成熟する子供たち

    「思春期」9月24日連載企画『共学別学私の場合は』の第4回は、千葉大客員教授木場弘子氏が登場しました。木場氏は、『入学して、異性の目を気にせず話し合える気楽さを感じました』『女子ならではの将来の不安などについて語り合えたのは励みになりました(略)卒業後の進路についての話をよくしていました』『男子がいたら恥ずかしくてできなかったかな、ということを思う存分やりました』『制服のスカートの下にジャージーをはき、「早弁」もしました』などと女子校のメリットをあげていらっしゃいました。おそらくその通りなのでしょう。私が不思議に感じるのは、女子高校にそんなにメリットがあるのであれば、どうして公立の女子中学校を設けようという自治体が出てこないのか、ということです。異性の目を意識する、ということは性的な成熟に関係していると思...早く成熟する子供たち

  • ダメなのは子供が悪いから?

    「どちらの在り方が」9月22日日本芸術文化振興会理事長長谷川眞理子氏が、『複数の視点共存する日本』という表題でコラムを書かれていました。その中で長谷川氏は、『日本文化はそれを伝えるときに、何がどうだとはっきり言語化しない』と述べていらっしゃるのです。またより具体的に、『いろいろな芸の道では、師の後ろ姿を見て学ぶ、ということになっており(略)最初は、廊下の雑巾掛けからなど、一見よくわからない修業というものもある。要は何が重要なのかを言語化して伝えることはしない。それは、毎日の暮らしの中で、習う側が体得していくことなのである』とも書かれています。私も古い日本人ですから、長谷川氏の言うことはとてもよく分かります。しかし、一方で、最近新聞で目にしたある記事のことが思い出されました。それは寿司職人の養成システムにつ...ダメなのは子供が悪いから?

  • 使わないと見えなくなる

    「辞書は楽しかった」9月21日書評欄に、宮崎哲弥氏の新著『教養としての上級語彙2』が取り上げられていました。副題を『日本語を豊かにするための270語』とするこの本への思いを著者である宮崎氏は、『戦後に「当用漢字」が制定されて以来、そこから外れた漢字や、その字を用いた難しい言葉が使われる機会が段々と減っていった。「多くの漢字を使えばいい、とは思っていません。でも、この思いを表すためにはこの言葉を使うべきだという場面では、ぜひ使ってほしいんです」』と語っていらっしゃいます。また、『表現したいことを言葉にするという順序ではなく、言葉を獲得することで、表現する世界が広がっていく。そのためにも、語彙を得るのは重要だ』とも話していらっしゃるのです。セクハラ、発達障害、ヤングケアラー、ある言葉が使われるようになって、物...使わないと見えなくなる

  • 脱線は事故

    「慕われる教員」9月21日連載企画『八雲を探して』第21回が掲載されました。小泉八雲の歩みを振り返る企画です。その中にとても気になる記述がありました。『若いころ、大きな影響を受けた学校の教師がいることはどこか誇らしい。教科書をなぞるだけの授業ではなく、時に脱線して経験談を交え、生徒の想像力を刺激して目を輝かせてくれたような』という記述です。八雲はこうした教員であったそうです。八雲のことはどうでもいいのです。「誇らしい」と評価される教員が、「教科書をなぞるだけの授業ではなく、時に脱線して経験談を交え、生徒の想像力を刺激して目を輝かせ」る教員であるという考え方にげんなりさせられるのです。授業において、脱線は評価されるべきものではありません。子供には「脱線」と思わせながらも、実は事前に練られた計画に沿って意図的...脱線は事故

  • 学びは業務ではない

    「そもそも論」9月20日『「PTA代行」が活況』という見出しの記事が掲載されました。PTAについて、『運動会の手伝いなど業務内容は変わらず、教育現場の人手も不足している。そんな中、PTA業務の代行サービスが活況』であることを報じる記事です。記事では具体例として、『(運動会の警備で)保護者を12人に減らし、新たに警備員1人に業務を外注する』という事例が紹介されていました。外注費は2万円、プロの警備員に2万円支払うことによって、20人近い人数を削減できたということです。2020年にサービスが始まった「PTA’S」という企業。『PTAと業務を請け負う企業とのマッチングを手がけ』ているそうですが、既に登録するPTAは全国で2000ほどだそうです。こうした動きに反対するつもりはありません。現実的対応だと思います。た...学びは業務ではない

  • 宣言「学校とは無関係です」

    「大本の問題」9月19日『岐路の中学生スポーツ地域で支える仕組み必要』という見出しの記事が掲載されました。いくつかたてられた「章」の中に、『部活の将来像明確に』と小見出しのつけられた章がありました。その中の記述にこそ、解決のヒントが隠されているように思いました。『部活動は、学習指導要領で、「学校教育の一環として、教育課程との関連が図れるように留意すること」と定められている。「民間色」が強まれば、収益性が重視され、「教育色」が薄まる可能性もある(略)文科省は、部活動を地域に委ねていくとの方針を掲げながらも「学校教育の一環」との立場は変えず、新しい時代に合った部活動の将来像は示していない』という記述です。全くその通りです。だからこそ、「部活は学校教育の一環ではない」という方針を打ち出しさえすれば、全てが劇的に...宣言「学校とは無関係です」

  • 民主主義の土台が崩れる

    「全体量は同じなら」9月18日『「月1冊も読まない」6割』という見出しの記事が掲載されました。『6割の人が1カ月に1冊も本を読まない(略)「本が売れない」と言われて久しいが、過去の調査で半数を超えることはなかった。ここまで読書離れが加速した要因は何なのか』という問題意識で書かれた記事です。記事の中で、評論家三宅香帆氏は、『読書離れの原因は、日本人の「長文離れ」というべき現象が起きていること』だと指摘なさっています。SNSによる影響で、長文離れが進行しているという指摘には賛成です。長文離れは、「深く考えること」離れと同義です。「ヤバい」「ウザイ」「マジ」といった単語の羅列では、単純な感情をぶつけ合うことはできても、自分と異なる生い立ち、立場、体験、価値観を有する人々との相互理解や共感は生まれようもありません...民主主義の土台が崩れる

  • 自分の親としての能力は?

    「能力と環境」9月17日『全国の中学生に、さまざまな分野で活躍する人が語る』連載企画『14歳の君へ私たちの授業』、今回は歴史家磯田道史氏が登場しました。テレビでもよく顔をお見掛けする磯田氏、とても考えさせられる内容でした。磯田氏は、過去の自分を振り返ります。『小学生の時、変わった子だと思われていました。興味があることにはのめり込むが、座って授業を聞くのは苦手。学校はつらい場所でした』。続いて高校時代。『学校の勉強はせずに、武士の家系だった江戸時代の先祖の歴史を夢中で読み解きました』。そして『京都府立大に入り、歴史を学びます。ただ、大学の図書館の本はすぐに読み終え、もっと読みたくて悩み、再受験して慶應大に移りました。でも、図書館にこもっていたら倒れてしまい、救急車で運ばれる生活でした』。私は、磯田氏の過去の...自分の親としての能力は?

  • 言葉が基本

    「書くと場」9月16日読者投稿欄に、共通した視点で書かれた2つの投稿が掲載されました。神奈川県大学生S氏の『「やばい」はやばい』と静岡県無職F氏の『美しい言葉を大切にしたい』です。S氏は、『現代人は「やばい」を使い過ぎている(略)自分の中のさまざまな表現が「やばい」に吸い取られているような感覚に陥る。「やばい」は恐ろしい言葉だ』と書かれています。F氏は、『「メチャメチャ(メッチャ)」と「やばい(やべえ)」だ。今、この言葉を聞かない日はない(略)日常の会話を通じて、人間の情緒や機微をも表現する美しい言葉を、殺伐としたこの時代にこそ大切にしていきたい』と書かれています。お二人の問題意識は共通しているように思われます。私も同じです。ただ、お二人のように、自分が気を付ける、心がけるということでは不十分だと考えてい...言葉が基本

  • ないものねだり?

    「焦点定まらず」9月16日連載企画『共学別学私の場合は』の第2回は、ソトコト編集長指出一正氏が語られていました。正直、戸惑いました。指出氏は男子校である高崎高校出身で、母校について語られており、その内容は次のようなものです。『「自主」「自律」を掲げる』『学校が生徒を大事にしようという気持ちが見て取れ、先生は成績の順位と関係なく生徒を可愛がってくれました』『制服はあったけど、私服登校も黙認されていました』『「自主カット」と称して、昼まで学校で勉強し、午後は釣竿を持って川に行っても許されました』。失礼ですが、単なる思い出話です。どれ一つとっても、だから共学が、だから別学では、という主張には結びつきません。共学だと、自主。自律を否定される、共学だと、教員は成績で生徒を差別する、共学だと私服登校は認められない、と...ないものねだり?

  • 新ハローワーク

    「救済策?ではないはずだし」9月16日『オリンピアンを先生に』という見出しの記事が掲載されました。『文部科学省が、オリンピアンやパラリンピアンらを教員として採用するための新たな促進策を始める』ことを報じる記事です。何だかよく分からない記事です。疑問だらけです。『高い専門知識を持つ社会人に教科を限定した免許を与える』特別免許制度を利用するようですが、なぜ、オリンピアンらなのでしょう。相撲、剣道、スカッシュ、アメリカンフットボールなど、五輪種目になっていない競技の日本チャンピオン、世界大会出場選手などは対象外で、オリンピアンらだけは特別に、という理由が分かりません。また、記事では、特別免許について、『多様な教員の受け入れを目的に~』という説明がなされていましたが、間違いではないでしょうか。多様な教員の受け入れ...新ハローワーク

  • 華やかさの影に

    「いいね!」9月14日書評欄に、『「そうか、これが創業なのか孤独に戦うパン職人永田の挑戦」大庭聖司著(全力舎)』についての書評が掲載されていました。『(創業者の)多くが創業当初の資金繰り難や家族とのあつれき、倒産の危機など「きれい事」ばかりではない苦労を味わっている』ことを描く小説です。著者は『中小企業診断士として創業を支援してきた』人物だそうです。書評氏の評価は『物語を通して「創業のリアル」を仮想体験できる異色のガイドブック』です。貴重な本だと感じました。我が国では今、「創業」が推しになっています。若者の生き方として、官庁や大企業などに入り、「寄らば大樹の陰」とばかりに組織に依存していきることを否定し、自分で道を切り拓いていく「創業」こそ、若者らしいチャレンジ精神に満ちた生き方であり、そうした生き方を選...華やかさの影に

  • 奴らは敵だ

    「今はどうだ?」9月13日『戦禍の記憶をたどる旅えん罪の記憶忘れるな』という見出しの記事が掲載されました。戦前の日本に暮らしたイタリア人ダーチャ・マライーニ氏「宮沢・レーン事件を考える会」の招待を受け来日した際に取材した内容を報じる記事です。ダーチャ氏の言葉の中にとても印象に残るものがありました。『軍国主義の政治は、敵を作り出すことで体制を維持する』です。「私たちを攻撃し、痛めつけようとする敵がいる。この敵を打ち破らなければ、私たちは不幸のどん底に落とされる。だから全力を挙げて敵と戦わなければならない。そんな危機のときに私たちの結束を乱し、敵を利する者たちが、私たちの身近にいる。そんな連中を許してはならない。我々はまず敵に通じているそんな連中を叩かなければならない。連中を叩くのは英雄的な行為だ」。こんな論...奴らは敵だ

  • 核を考える

    「努力する甲斐がない」9月12日ノンフィクション作家藤原章生氏の連載コラム『25年後のアフリカ』は、第13回を迎えました。『人間の魅力は核にある』という表題のコラムの中に、とても印象に残る記述がありました。『(私が親しくなる人は)外見も国籍も民族も職業も富も宗教も思想も、何もかもが違うが、みんな同じだ(略)人間に核のようなものがあるとしたら、そこが同じなのかもしれない。核が同じなら、属性は衣服のようなもの。右だろうが左だろうが、黒だろうが白だろうが、ひかれ合う大事な要素ではない』という記述です。分かるような気がしないでもありません。しかし、もし藤原氏の主張に同意してしまうと、核が違う人とは、どんなに努力しても真に分かり合ったり、好意を抱いたりすることはできないということになってしまいます。そして、あいつと...核を考える

  • ボーダレス時代の宗教教育

    「国際理解に不可欠な」9月11日『「隣人」の宗教理解する時』という見出しの記事が掲載されました。「ニューカマー宗教の現在地定着する移民と異教」の編著者、相愛大学客員教授三木英氏へのインタビュー記事です。記事の中で三木氏は、『外国出身者の宗教について『知らない』で済ませる時代はそろそろ終わりにしないといけない。より味わい深い人間関係を築くために必要なことだ』『外国出身者たちにとって「信仰」というものが、「多くの日本人がイメージする以上に大きな意義を持っていると理解する必要がある」』述べていらっしゃいます。なるほど、と考えさせられました。学校では、国際理解教育が行われています。地域に住む外国出身者と交流したり、食や衣服などの文化に触れたり、いくつかの単語を覚えてカタコトのやりとりをしたり、伝統的な踊りを覚えて...ボーダレス時代の宗教教育

  • フラフラフラ、浮気性?

    「計画的に目標を掲げて」9月10日精神科医香山リカ氏が、『心変わり恐れず楽しむ』という表題でコラムを書かれていました。その中で香山氏は、『「30代の頃の夢は会社員として頑張り持ち家を買うこと。でも、40代になって突然、外国で働きたくなり北欧で料理人の修業をしている」などという人もいるだろう。どちらかがウソ、幻だった、ということもない。どちらもその人にとってはまぎれもないホントなのだ。「心変わり」というのはあまり良いイメージの言葉ではないが、仕事や暮らし方、趣味などに関しては、どんどん心変わりしてもよいのではないか』と書かれています。ご自身も3年前のインタビューでは、大学の教員として頑張っていきたいと考えていたにもかかわらず、現在は地域医療で奮闘なさっている香山氏の、ご自身の体験に基づく言葉です。私も全く同...フラフラフラ、浮気性?

  • 不良品を押し付けられて、感謝しようがない

    「身近にあるのに」9月9日『エージズムどう乗り越える』という見出しの記事が掲載されました。『近ごろは「老害」という言葉がちゅうちょなく使われる気もする。知らず知らずのうちに、高齢者に冷たいまなざしを向けてはいないか。16日の「敬老の日」を前に、立ち止まって考えた』という記事です。記事では、『高齢者は老害化する前に集団自決、集団切腹みたいなことをすればいい』という経済学者成田悠輔氏の発言を紹介し、その発言が『若者から一定の支持を受けている』現状を問題視しています。また、その背景として、作家五木寛之氏の『海外旅行に繰り出すなど元気な人が増え、高齢者は庇護すべき弱者ではなくなったとして<「同情」に代わって生まれたのが、下の世代からの反感であり、「嫌悪」の感情なのでしょう>』という指摘を掲載していました。私が注目...不良品を押し付けられて、感謝しようがない

  • 都合よく使い分け

    「一人でOK」9月8日日本総合研究所主席研究員藻谷浩介氏が、『権力闘争とハラスメント「群れ」の論理再検証を』という表題でコラムを書かれていました。その中で藻谷氏は、9年前に行った教育者菊池省三氏との対話について紹介しています。『藻谷-ご著書の「学級崩壊立て直し請負人」には、「休み時間に自分がトイレに行きたくなくても、友達が行くから一緒に行くのが『群れ』の特徴」とありましたね。菊池-世間の空気で何となく行動してしまう。多くのいじめも「群れ」から始まります。だから、私はよく子どもたちに「ひとりが美しい」と言います。自分で考えて自分で行動できることが美しいと。柳田國男は「良き選挙民」を作ることが大事だと言っていました。それは「自立して集団の意思決定に加われる人」を育てなさいということです』。この部分を読んで、私...都合よく使い分け

  • 難しそう

    「今までしてきたこと、不足していたこと」9月7日書評欄に、大阪大特任教授大武文雄氏が、『「努力は仕組み化できる」山根承子著(日経BP)』についての書評を書かれていました。その中に次のような記述がありました。『意志が弱い人は、どうすれば、努力を続けられるだろう。第一に、目標設定とフィードバックである。頑張りを目に見えるようにして目標設定に活かすのだ。第二に、目標とする行動をどの程度やるつもりかを決めてもらうことだ。第三に、努力を自動化することだ。そのためには、2ヶ月続ければいいという。第四に、目標とする行動の必要性をきちんと理解してもらう教育だ』という記述です。子供に努力を続けさせる、担当する教科や場面は異なっていても、ほとんど全ての教員が、日夜苦闘している課題だと思います。体罰すれすれのガチガチの管理教育...難しそう

  • 評価権放棄

    「評価権」9月7日書評欄に、比較文学者張競氏による、『「短歌を楽しむ基礎知識」上野誠編(角川選書)』についての書評が掲載されていました。その中に、次のような記述がありました。『近年、ネット空間は作品発信のハードルを一気に低くした。もはや上手下手を気にすることはない(略)不特定多数向けに発信された短歌は見知らぬものに読まれ、あわよくばコメントや感想が返ってくることもある』という記述です。感想やコメント、というのは評価と言い換えることができます。つまり、全くの素人の「つまらない」作品でも、広く評価を仰ぐことができるということです。私はこのことから、学校における評価、主に教員が行う評価について考えさせられました。子供が作文や絵などの作品を提出すると、教員は一作品ごとに読んだり、鑑賞したりして、良い点、改善点など...評価権放棄

  • 存続させる理由はなくなっても

    「理由改変」9月6日読者投稿欄に、元教師W氏による『教員負担は金銭で解決しない』と題された投稿が掲載されました。その冒頭W氏は、『問題は給与ではなく、負担が大きすぎることにあるということを理解していない』と書き、『学校の外でのことについては、学校に責任を求めないという世の中になれば、かなり改善する』と述べられています。その通りです。私もこのブログで再三にわたり、W氏と同じ趣旨の主張をしてきました。そして、教員の負担が増す一方であるのは、過去の学校改革が、本来あるべきスクラップ&ビルドではなく、ビルド&ビルド、つまり新たな課題を持ち込むだけで、それに相当する時間と労力を要する課題を削減、見直しするという姿勢に欠けたことが原因であると考えています。これも何回も触れてきたことです。我が国の学校教育行政が、そうし...存続させる理由はなくなっても

  • 俺は○○だ

    「俺は○○だ」9月5日近事片々欄に、『「俺は知事だぞ」。それが何か?権威を振りかざし思い通りにしようとする。その傲慢な態度が自らをおとしめている』という言葉がありました。パワハラ言動で百条委員会が設置された兵庫県斎藤知事のことをさした言葉でしょう。自分は、○○であるという自覚、それ自体は悪いことではありません。それを公言することも責められるべきこととは限りません。大切なのは、「自分は○○である」の後に、○○として権利を主張するのか、○○であることに伴う義務を自覚するのか、という点です。私は知事だ、だからこそ県民の信頼を得るために李下に冠を正さず、瓜田に靴を入れずの精神で我が身を正していこう、ということであるならば、誰も非難しないはずです。学校教育の場にも、ミニ斎藤氏はいました。宴会に遅れて来て、既に飲食が...俺は○○だ

  • 趣旨の共有と継続

    「公立校の改革」9月2日『「当たり前やめた」をやめた中学校千代田区立麹町中「私服可」「定期テスト廃止」一転』という見出しの記事が掲載されました。記事によると、『麹町中は14~19年度、工藤勇一元校長の下で改革が進められ、定期テストや宿題、固定担任制を廃止、生徒の自主・自律を重んじて私服登校も許可した。こうした教育方針がメディアで大きく取り上げられ、区域外からの転入も相次いだ。生徒数は18年度の384人から21年度は570人に増えた。一方で一部の地域住民からは「伝統が失われた」など改革路線への反発もあったという。23年度に着任した堀越校長は、「麹町中の立て直し」を宣言。学校の配布資料や生徒らの話によると、23年度から定期テストが段階的に復活したほか、服装も24年度の新入生は「標準服」の着用を基本とし、上級生...趣旨の共有と継続

  • いつまでも制服、髪型では

    「露呈」9月1日『気候対策「自国は強化を」8割』という見出しの記事が掲載されました。『国連開発計画は、日本を含む世界77ヵ国で実施した気候変動についての意識調査を発表(略)日本について他国に見られない、ある特徴も浮かび上がった』ことを報じる記事です。記事によると、『(日本の特徴は)いくつかの質問で「わからない」と回答した人の割合の多さだ』『「あなたの国は気候変動にどの程度対応しているか」という問いでは(略)「わからない」は18%だった。「わからない」は国別ではロシア(19%)に次ぐ高さで世界全体では4%だった』ということです。また、『「あなたの国で気候変動対策に最も影響を与えたのは誰か」との設問で、日本では50%以上が「わからない」と答えた(略)世界全体では11%だった』という記述もありました。私はこの結...いつまでも制服、髪型では

  • 憐れみを施す

    「上から目線」8月31日連載企画、法学者谷口真由美氏と作家雨宮処凛氏の往復書簡、今回は谷口氏の担当でした。その中にとても印象に残る記述がありました。『人権は本来、権力にあらがう概念です。「下々」に身につけられては力のある側が難儀します。暴力による学校運営をする先生たちは、生徒に抵抗されては困る側。となると、いじめだって人権教育を通して無くすようにもっていくわけもなし。おかげで、「思いやりを持とう」とか「仲良くしましょう」とか曖昧な感覚や感情を強調し、「問題は心のありようで解決する」といった雑な道徳を説く先生が多かった』です。とても明解な分析です。端的にズバッと正鵠を射たというところです。私は、以前、このブログでも書いた、指導力があると言われていた教員の担任する学級でいじめがおきたときのことを思い出しました...憐れみを施す

  • そこにいるのに意識されずに

    「後ろめたさを捨てて」8月29日ノンフィクション作家藤原章生氏の連載コラム『25年後のアフリカ』は、第11回を迎えました。『ずっと受け身でいたいのに』という表題のコラムの中に、とても気印象に残る記述がありました。『何かを知るには受け身がいいと思うようになった。石のようにたたずみ、人々が語り出す言葉を静かに聞く。なぜなら、私が主観で人を選び問いを重ねれば、結果は恣意的な、「私」という狭い箱に収まったものになってしまうからだ』という記述です。そして藤原氏はさらに、『作家の曽野綾子が「私が好きなのは盗み聞き」と話していた。「浅草の仲見世通りの裏なんかで、人がなに話してるか聞くの、面白いですよ」。あんなにおしゃべり好きな人が、である』と書いてもいるのです。私は、受け身で盗み聞きをすることができるというのは、教員に...そこにいるのに意識されずに

  • 目の前にあるじゃないか

    「どうしたらいいか分からない」8月29日定例企画『開かれた新聞2024』は、『戦後80年へ記憶共有』という見出しで、いわゆる「8月ジャーナリズム」についての議論が行われました。その中に注目させられた発言がありました。佐藤東京社会部長の『新聞社の目的は、次世代に戦争の記憶をつなぎ、二度と戦争がおきないようにするにはどうするかであり、これは何年たっても変わらないところです』という発言と、鈴木学芸部長の『戦後80年の報道で問われるのは、「戦争を絶対に繰り返さない」という価値観を多くの人と共有できるかだと考えています』という発言です。佐藤氏の発言は素晴らしいと思います。でも、おっしゃっていることと実際の報道がかけ離れているのです。鈴木氏の発言には、強い不満を感じます。そして、鈴木氏の発言こそ、毎年繰り返されてきた...目の前にあるじゃないか

  • 妬みと嫉み

    「逆効果」8月28日『現場は「給料より仕事減・増員」教員給与上乗せ10%以上中教審答申』という見出しの記事が掲載されました。『中央教育審議会は27日、公立学校の教員確保に向けた総合的な方策を盛山正仁文部科学相に答申した』ことを報じる記事です。総合的な方策と言いながらも、記事では、『残業代の代わりに給与に上乗せ支給する「教職調整額」を10%以上に引き上げるなどの処遇改善』について多く取り上げられています。このことについて現職教員からさまざまな意見が寄せられていましたが、私は次の指摘が最も印象に残りました。『教職調整額を増やした場合、これまで以上に頑張ってほしいと管理職や社会全体から期待される可能性がある』という指摘です。全くその通りです。その結果、今回の上乗せは、教員の働き方改革に結びつくどころか、より過重...妬みと嫉み

  • 当事者性

    「意見表明権」8月25日『「共学」化共に生きるとは』という見出しの記事が掲載されました。『男女共同参画の推進や少子化を背景に進む「共学」化。賛否それぞれについて元教員や大学生の意見、「共生」の視点からの投稿などを紹介』する記事です。私は共学推進派です。しかし、ここでは自分の考えには触れません。気になったのは、大学生S氏の投稿です。S氏はご自身の経験として別学の長所を挙げられ、最後に『生徒自身に学校の未来を決める議論に参加する権利が与えられるべきだ。今後、生徒たちが納得できる結論が出ることを願う』と書かれていました。記事によると、『埼玉県教委は共学化を進める方針ですが、時期や道筋は未定です』とのことです。つまり、早くても2年後、おそらくは共学化は3年以上先の話になるということです。これは、今の高校生は皆卒業...当事者性

  • 自由な環境、柔軟な発想

    「自由な環境、柔軟な発想」8月24日『担当業務は「癒やし」』という見出しの記事が掲載されました。『システム開発会社「qnote」のオフィスには「猫社員」と呼ばれている猫がいる(略)犬や猫など動物のいる職場で仕事をする働き方が注目されている』ことを報じる記事です。『従業員はパソコンで作業をしながら猫をなでたり~』ということで、『猫の世話を通じて社員同士に積極的なコミュニケーションが生まれ、心の距離を近づけてくれる』『猫が仕事の邪魔をしてくれるのがちょうどいい気分転換にもなります』など、社員の評価も高いようです。同社の代表は、『仕事は我慢してかしこまることではなく、もっと自由な環境で、柔軟な発想でやったほうがいい』と話しています。なんだかいいことばかりのようです。私は猫が嫌いです。犬も鳥もハムスターも、生き物...自由な環境、柔軟な発想

  • 気に食わないのなら、どうぞお隣りへ

    「お断り」8月25日ノンフィクション作家河合香織氏が、『広がる名前非公表信頼こそカスハラ防ぐ』という表題でコラムを書かれていました。その中で河合氏は、『昨今、SNSに職員の名前や顔写真をさらされる、ストーカー行為をされるなど、利用者による迷惑行為「カスタマーハラスメント」対策の一環として、名前の表示を控える動きが広がってきている』と指摘なさっています。そう言えば、私の母がお世話になっていたグループホームもそうでした。さらに河合氏は『名前を開示しない方針は、医療界にも広がっている』ことを紹介し、『医療現場でのカスハラは深刻である』と述べていらっしゃるのです。私が注目させられたのは、その対策についての記述の中の一文でした。『百貨店やコンビニなど小売業では、悪質な場合は来店を拒否できるという基本方針が発表されて...気に食わないのなら、どうぞお隣りへ

  • 避けずに考える

    「タブー?」8月25日放送タレント松尾貴史氏が、『目を背けてきたものを見る』という表題でコラムを書かれていました。その中で松尾氏は、死体について『公の場で口にすると眉をひそめられ、あるいは聞かなかったことにされがちだ』と書き、『「死」が例外なく誰にも訪れることであるわりに、私たちにとってその現象は遠いものになってしまった』と述べられていました。その通りです。私は、2歳になったばかりのころ、父方の祖父を亡くしました。葬儀等の記憶は全くありません。同居していなかった母方の祖父が大学生のときに亡くなり、これが実質的に身近な人の死を体験する初めての機会になりました。次の身近な人の氏の直面したのは、母方の祖母が亡くなったときで、38歳でした。約20年に1回、それも同居していない祖父母の死、そのせいだけではないでしょ...避けずに考える

  • 教員だって人間なんだよ

    「書けないこと」8月24日書評欄に、『「義父母の介護」(新潮新書)』の著者村井理子氏へのインタビューが掲載されていました。『結婚以来、そりの合わなかった夫の両親。義母が認知症と診断され、義父が脳梗塞で倒れたことで、ケアに奔走することになった』著者の介護奮闘記です。記事の中にとても印象に残り記述がありました。『著者は「克明に書いたと言ってくださるのはうれしい」とほほ笑んだ。「というのは、隠していることもいっぱいあるから。書きたいけれど泣く泣く削った出来事がたくさんあります。介護って、書けないようなきついことが結構あるんですよね」』という記述です。私も認知症の両親の介護をしました。本当にきついです。もし介護日記のようなものを書くとして、書けないこと、書いてしまったら酷い息子だと非難されそうなことがたくさんあり...教員だって人間なんだよ

  • 椅子を手にすれば

    「椅子は…」8月24日『座って接客どうでしょう?』という見出しの記事が掲載されました。『接客中に座ってもいいですか-。従来立ちっぱなしだった仕事に、椅子を導入する企業が増えている労働環境を改善し、新たな人材確保や職場への定着につなげる狙い』による動きだそうです。記事によると、ドンキホーテ、ダイエー、アオキスーパー、大垣書店、杏林堂薬局、ポケットフーズなどの企業が導入を進めているということです。従業員の声としては、『これまで勤務中はずっと立ち仕事だった。疲労で足がしびれていたが、今は椅子に座って作業ができるため足腰への負担が減り、助かっている』など歓迎の声があがっているとのことでした。さて、教員の場合はどうでしょうか。教員といっても、校種ごとに違いがあります。幼稚園の教員は保育中ほとんど座っていることはなく...椅子を手にすれば

  • 禁〇教育

    「反対が怖い?」8月23日読者投稿欄に、大学生H氏による『お酒は本当に必要なのか』と題された投稿が掲載されました。その中でH氏は、『以前は、お酒は「飲むと楽しい気分になれる、大人のおいしい飲み物」』という認識であったことを告白し、しかし今は『お酒に対する考え方が変わってきました』と述べているのです。『飲みたいだけ飲み、周囲の人間に迷惑をかける人がいる』『駅のホームや路上に嘔吐物があったら嫌でも目につきます』とその理由を挙げ、『本当に必要なものなのだろうか、もうすぐ21歳になる私の頭の中で疑問が生じています』と書かれているのです。考えさせられる投稿です。煙草は体に悪いということで喫煙習慣が問題にされています。オーバードラッグの危険性も説かれています。それなのに、飲酒の弊害について取り上げられることが少ないよ...禁〇教育

  • 詐欺師の手口を知らなければ

    「関心をもってほしい」8月21日鬼籍に入られた方を偲ぶ夕刊の連載企画『会いたい2024夏』、今回は俳優宝田昭氏が取り上げられていました。『実体験に根差した反戦』というタイトルが付けられた記事は、11歳のときにソ連兵に撃たれたという衝撃的な話で始まっていました。反戦への強い思いをもって生きた宝田氏の軌跡を振り返る大変興味深い内容でしたが、一つ引っかかった箇所がありました。『強い口調でこう語っていた。<若い人たちにこれから求めるのは、間違っても戦争という道に興味を持つなと>戦争を知らない世代の一人として、宝田さんが残した言葉が身にしみた』という部分です。それでいいんでしょうか、というのが正直な気持ちです。もちろん、宝田氏の思いは理解できます。しかし、私は、若い世代の人たちには、「戦争」という現象に関心をもち、...詐欺師の手口を知らなければ

  • 実利主義の立場からも

    「流れとは違うけど」8月20日『全国の中学生に、さまざまな分野で活躍する人が語る』連載企画「14歳の君へわたしたちの授業」は、お笑い芸人又吉直樹氏の「国語」でした。その中で又吉氏は、『国語は学校だけじゃなくて一生使い続けます』と述べ、『いろんな本に触れるのがすごく大事です』『本を読むと考えが整理され、複雑で言葉にならない感情を理解できるようになる』『物語の登場人物のさまざまな思いに触れることが大事です』『想像力を養うことはすごく大事。人の気持ちを思いやり、物事を立体的にみられるようになる』などと書き、本、特に小説、物語を読むことを推奨なさっているのです。私は又吉氏の小説のファンではありませんし、お笑い芸人としてのセンスも好きではありません。でも、上記の又吉氏の言葉には全面的に賛成です。そしてこれは私だけの...実利主義の立場からも

  • 頭の片隅にも残らない

    「0.0001%のはずだが」8月20日いしかわじゅん氏の連載4コマ漫画「桜田です」を見て、考えさせられました。漫画を文章で説明するのは難しいですが、会話部分を書き出してみます。初老の管理職と中年の社員が、『戦争のニュースを見るたび日本は平和が続いていてよかったと思うよ』『あの敗戦以来まがりなりにも平和は続いてますからね』と話している。それを聞いた若手社員が『え…日本って戦争してたことあるんですか』『負けたの?』『え~っどことですか』『聞いたことな~い』とびっくりした表情。中年社員は茫然とした様子で『どこって……アメリカだろ…』。それを聞いた若手社員、中年社員に背を向けてヒソヒソと『陰謀論…』『都市伝説…』と囁き合う。漫画家は、世相を反映させ、「こういうことある」と思わせるよう努力しているはずです。「何を言...頭の片隅にも残らない

  • 管理される側

    「立場を変えて」8月20日読者投稿欄に、大阪府K氏の『徘徊対策最新技術必要では』と題された投稿が掲載されました。その中でK氏は、『認知症が原因で行方不明になる人が増え続けている』という事実を述べ、さらに『マイクロチップを入れることで迷子の子犬も難なく見つかる』という獣医の話を紹介なさっています。そして、『最新技術の利用で家族への負担が軽減するなら、これらの策も考えるべきではないか』と提案なさっているのです。K氏は、『「認知症家族の会」でサポーターとして15年余り活動している』そうで、深夜の徘徊への対応の難しさを熟知なさっている方です。それだけに、この提案には重みがあります。私も、認知症の母の深夜徘徊で、複数回警察のお世話になり、昼間にもたまたま知人が発見し連絡してくれたおかげで大事には至らなかったという経...管理される側

  • 戦争を後押しした私たち

    「今の自分に」8月17日学習院大教授井上寿一氏が、『被害視点だけで不戦守れず[戦争体験の継承]』という表題でコラムを書かれていました。その中で井上氏は、『民衆は被害者である一方、加害者として積極的に戦争に協力した。戦前の婦人運動家、市川房江が戦時中の戦争協力を問われて、戦後、公職追放となった』と書かれています。その通りだと思います。我が国の平和教育の偏り、弱点への端的な指摘です。さらに井上氏は、『直視すべきは、悲惨な戦争の現実だけでなく、被害者でもあり加害者でもあった前線と銃後の日本国民の戦時下の日常である。あの時代と今とを無関係とするならば、それまでだ』とも書かれています。戦争前夜から戦中に至る平凡な一般の国民、町内会長や婦人会の役員、学校の教員や官吏、子育て中の父や母、日清日露、第一次大戦といった明治...戦争を後押しした私たち

  • 囲い込みも丸投げも

    「複雑な思い」8月17日書評欄に、『「対談集あなたが子どもだったころ完全版」河合隼雄著(中公文庫)』についての書評が掲載されていました。同書は、『河合速雄は名うての聞き上手だった。その人が各界で活躍する16人に子ども時代を語らせた』本です。その中で、動物行動学者日高敏隆氏の章についての記述が印象に残りました。『3年生で登校拒否に。両親に理解されず、昆虫学の希望も否定され、自殺を考えた。しかし、担任教師が家に来て、親に「敏隆君は自殺を考えています。だから昆虫学をやらせてください」と告げ、救われる。しかもその教師は4年から別のリベラルな学校に転校させた。これを河合は評価する。「何でもかでも自分が指導したがる人は、本当の教育者ではない」』。特に最後の、何でもかでも自分が指導したがる人は、本当の教育者ではない、に...囲い込みも丸投げも

  • 異論だらけの平和教育を

    「思考停止」8月14日論点欄は、『「記憶の継承」の継承』というテーマで、3人の識者が、『戦争体験者から非体験者に、その体験を伝える「記憶の継承」は、平和学習などで繰り返しなされてきた。しかし、戦争の記憶を残す人々が減る中、さらに次の世代に教訓を継承する難しさが浮かび上がる』という現状を踏まえて、それぞれの見解を述べていらっしゃいました。その中で私は、次の2つの言葉が印象に残りました。明治学院大研究員古波藏契氏の『「二度と戦争を起こしません」と復唱させるだけの「修身教育」然とした平和教育の弊害』という言葉と、慶応大専任講師清水亮氏の『「記憶の継承」=「結論の継承」だった面がある。多くの場合、送り手も受け手も「平和の大切さ」といった結論が伝われば、継承ができたように感じていた』です。つまり、どのような記録や記...異論だらけの平和教育を

  • 受験勉強、いいね!

    「受験勉強への誤解?」8月12日連載企画『田原総一朗の日本の教育問題は何だ!?』は、前回に引き続き宇宙ベンチャー「ALE」社長岡島礼奈氏へのインタビューでした。『「グレー」の答えを導き出す』という見出しが付けられたインタビューの中で、岡島氏は次のような発言をなさっています。『日本の教育も変わってきたとは思います。最近、私立中学の入試問題を見たのですが、いろんな学校が答えのない問題を解かせています。ただ、教育格差の一つでもある。こうした私立中に進む選択肢があり、そこに行ける人は充実した教育を受ける一方、正解のある問題だけ解かせる教育はまだまだあります』。つまり、正解のない問題を解かせる教育=創造力を育む質の高い教育を行う名門私立中学校、正解が決まっている問題を解かせる教育=自ら考える力が育たない質の低い教育...受験勉強、いいね!

  • 削除・訂正の嵐が

    「大変な時代」8月10日『フワちゃん写真教科書削除申請暴言投稿「不適切」』という見出しの記事が掲載されました。『開隆堂出版は、2025年春から使用される中学技術・家庭の教科書に掲載していたタレントのフワちゃんの写真について、削除を求め文部科学省に訂正申請した』ことを報じる記事です。理由は、『お笑い芸人やす子さんに対するXの暴言』です。『投稿内容が不適切と判断した』とのことですが、何だか腑に落ちません。そもそもフワちゃん氏の写真掲載を決めた理由は、『衣服の働きや自分らしさについて考えさせるため、個性的な衣装に身を包ん』でいるということだったようです。今現在も、フワちゃん氏の個性的な衣装に変わりはありません。つまり、選定理由は今も生きている、有効であるということです。それにも関わらず、選定理由とは無関係な分野...削除・訂正の嵐が

  • かかりつけ教員

    「一人ずつ」8月8日谷口医院院長谷口恭氏が、『「コロナ11波」優れた対策とは』という表題でコラムを書かれていました。その中で谷口氏は、『コロナ流行前にはなかった新たな問題が医療界全体に重たくのしかかっている。それは「医師の分断による医療不信」だ』と書かれています。『「PCRはすべきか」「ワクチンは打つべきか」「マスクは有用か」「コロナ治療薬は信頼できるのか」といったテーマを巡り、医師の間でも意見が割れ、SNSには互いをののしり合うようなコメントがあふれている』状況を指しているのです。私は、ワクチン、マスク、治療薬全て有用派なのですが、素人のこと、本当のところは分かりません。ただ、谷口氏が指摘する分断状況は感じていました。その道の権威に、正しいのは~と一刀両断してもらえばスッキリするとも思いますが、そんな単...かかりつけ教員

  • 常識が違っている

    「前提となる常識が」8月6日精神科医香山リカ氏が、『一心不乱に手を動かす』という表題でコラムを書かれていました。その中で香山氏は、『私がいま仕事をしている小さな町では、多くの人が一生懸命やっているのが草取りだ(略)たいへんですね」と言うと、ある高齢の女性が話してくれた。「いいえ、先生。夫が亡くなって1人暮らしになって寂しい毎日ですが、外に出て無我夢中で手を動かしている間は、何も考えなくていいんです。「ああ、今日もよくやった」とクタクタになると、何だか自信も湧いてきて」』と、最近の体験を紹介なさっています。そして、この女性のように、無我夢中に何かする行為について『何も考えずに手を動かす。これが気持ちの安定につながることは、古くから知られていた。精神科では、薬による治療ができるようになる前から「作業療法」とい...常識が違っている

  • 自分が愛おしい

    「自分が愛おしい」8月5日英誌エコノミスト元東京特派員デイビッド・マックニール氏が、『障害者ニーズ想像して』という表題でコラムを書かれていました。その中でマックニール氏は、『誰もがいつかは障害者になる(略)私たちはいつかは人工の膝や補聴器が必要になるかもしれない。「10年後、20年後、30年後、どのようなけがや病気に見舞われるか、私たちの誰もわからない」』と書かれています。そして、だからこそ、『身体的、精神的にハンディキャップを持つ人を受け入れ、そのニーズに配慮した社会を作ることは、それ自体が良いことであるだけでなく、私たちみんなの利益につながる』と主張なさっているのです。全くその通りです。私もこのブログで同じような趣旨の主張をしてきました。しかし今回、マックニール氏のコラムを読んで、別の思いが浮かんでき...自分が愛おしい

  • 効き目がなくても止めてはいけない

    「共通点」8月4日欧州総局長宮川裕章氏が、『経済制裁本当に有効なのか』という表題でコラムを書かれていました。『米欧や日本が実施するロシアへの経済制裁には何の意味があるのだろうか』という問題意識の下、書かれたものです。非常に参考になりました。とはいっても、国際政治や軍事の面ではなく、教員の指導との共通点が多いという意味でです。記事では、経済制裁について、『効果は、短期的には限定され、効果の測定も難しい』『制裁の評価は、最初にどのような目的を設定するかによって変わる』『制裁を科した国への敵対心をあおり国民の結集に利用』『経済制裁にはシグナル機能と呼ばれるもう一つの狙いもある』『シグナル機能の対象は制裁相手国だけではない』などの記述がありました。経済制裁を、子供を叱る、注意する、罰する、などに置き換えて考えてみ...効き目がなくても止めてはいけない

  • 禍々しさの効果

    「新語」8月4日心療内科医海原純子氏が、『精神的ヤングケアラー』という表題でコラムを書かれていました。その中で海原氏は、『母親は感情的で気分に波があり気に入らないと子どもに当たったり家事をしなくなったりする。急に泣き出したりすることもあり子どもは母親をなだめたり機嫌をとったりするそうだ。世話で精神的に疲れて勉強が手につかない。父親に相談していたが、話を聞いている父親が披露しているのを見て子どもは父親が気の毒になり自分で抱え込んでしまう』という例を挙げ、この子供について『「精神的ヤングケアラー」とでもいうようなケース』と書かれています。「精神的ヤングケアラー」は海原氏の造語なのでしょうか。私は目にした記憶がありません。私には母親のネグレクトという感じがしたのですが。それはともかく、新しい概念が注目され、新し...禍々しさの効果

  • 秘密研究

    「どうすればいいのか」8月4日『17~19歳の55.7%皇室「関心ない」』という見出しの記事が掲載されました。『日本財団が17~19歳を対象に皇室に関する意識調査をした』結果について報じる記事です。記事によると、『日本財団は選挙権年齢の引き下げをきっかけに、2018年から18歳前後の若者の意識調査をしている。安定的な皇位継承に向けた皇族数確保に関する与野党協議が始まったため、初めて皇室をテーマにした』ということです。つまり、憲法改正や地球温暖化、基地問題や社会保障などの問題と同様、政治の大きなテーマについての意識を訊ねたということです。憲法改正以下の問題については、主権者として問題の重大さを理解し、自分なりの考えをもつために学校教育での取り組みが期待され、実際に様々な取り組みが行われ、報告・発表されていま...秘密研究

  • 全ての仕事に表もあれば裏もある

    「無理がある」8月3日人生相談欄に、26歳女性からの『人生設計ない自分に焦り』という相談が寄せられていました。『同棲のための引っ越しと転職を同時に進めています(略)人生を大きく動かすかもしれない決断なのに(略)しっかりとした人生設計がない自分に少し焦りを感じています』という内容です。回答者の作家高橋源一郎氏は、『わたし、生まれてこの方、何かを熟慮して決めた経験がない(略)どこへ進学するか。熟慮のしようがありません。だってどの学校も行ったことがないのだから。どんな職業を選ぶのか。熟慮のしようがありません。働いた経験がないから選びようがありません。以下同様です。やったことがないのに、みんなどうやって熟慮しているのでしょう。逆に不思議です』です。拍手したい思いです。高橋氏のお考えには違和感を覚えることが多かった...全ての仕事に表もあれば裏もある

  • 申し訳なかった、が出発点

    「時代は(悪い方に)変わった」8月3日『花火中止「燃えかす」火種』という見出しの記事が掲載されました。『夏の風物詩として人々を楽しませてきた花火大会。だが、中止を余儀なくされるケースが各地で相次いでいる』ことの現状を報じる記事です。記事では、中止に追い込まれて花火大会の事例が列挙されています。『鳴門市納涼花火大会(略)近隣住民から花火の燃えかすによる車の汚れなどに関する問い合わせが17件(略)会場付近には新たな住戸の建設が進む住宅街があり、屋根にソーラーパネルを設置する家々が増えた(略)パネルに関する相談は寄せられた』『船橋港親水公園花火大会(略)会場付近の港に停泊するプレジャーボートに汚れや焦げ付きの被害があった』『狭山市の納涼花火大会も、住宅や道路、車への燃えかす飛散』『兵庫県三田市の「三田まつり」(...申し訳なかった、が出発点

  • 差別に寛大は不要

    「教員の場合は?」8月1日ノンフィクション作家藤原章生氏の連載コラム『25年後のアフリカ』は、『もともと悪い人間はいない』という見出しで、北アフリカでの体験を綴られていました。その中に、『人それぞれだが、多くの場合、差別意識はその人の浅い部分からきている。気質や存在感など、その人をつくる核の部分よりもずっと外側を覆っているコロモに過ぎない。そう思っているからだろう。指導や政治信条、宗教と同じように、そんなものは一夜の経験で180度覆ると考えている(略)いくらアフリカ人差別を口にしても、私は「なんか言ってら」と思うだけで、この人を嫌いになることはできない(略)差別的な言葉に神経過敏になり身構えていた30代のころと、今の自分は明らかに違う』という記述がありました。ゴワゴワしたものを飲み込んでしまったような違和...差別に寛大は不要

  • 仮に時間が十分にあっても

    「時間だけでなく中身を」7月30日『教員授業研究時間限られ』という見出しの記事が掲載されました。全国学力テストで、『以前から指摘されてきた課題は残った。学校現場では「思考・判断・表現力」を育むための試行錯誤が続いているが、「多忙のため授業の研究に充てられる時間も限られる」と悩む教員もいる』という問題を掘り下げる記事です。記事では、『授業では教員側が話しすぎないように心がける。まずは問いを投げかけ、子どもに発話を促している(略)ただ難しさも感じる。30人前後に一斉に教える形式の授業ではどうしても児童の間に差が生じ、理解が浅い児童には最低限の「知識・技能」を教えるだけで終わってしまうこともある』という現役教員の悩みや、『生徒指導や校務の業務の負担が大きく、授業について考える時間の確保は簡単ではない』という現状...仮に時間が十分にあっても

  • 教室で向き合わなければ授業ではない?

    「共存」7月28日『動画配信を味方に』という見出しの記事が掲載されました。映画を劇場公開と動画配信することについて、『劇場と配信が客を食い合うのでは』という指摘に反論する記事です。その中に次のような記述がありました。『映画館で上映されるから映画が映画たるものになる。映画館がなくなれば、我々が配信するものは映画ではなくなり価値が下がってしまう』という動画配信側のスタッフの声が紹介されていたのです。動画配信であろうが、映画館での上映であろうが、映画の中身は同じです。当然、価値も同じと考えてしまいます。もちろん、映画館のスクリーンの大きさからくる迫力とか、最近では映画のシーンに合わせて椅子が揺れたりするものもあり、多少は視聴環境が異なることはあるでしょう。でもそれを言うならば、動画配信で見る方が、好きなときにト...教室で向き合わなければ授業ではない?

  • 今この子のために

    「手段はともあれ」7月27日書評欄に、精神科医斎藤環氏による、『「精神医療の専門性「治す」とは異なるいくつかの試み」近田真美子著(医学書院)』についての書評が掲載されていました。『ACT(包括型地域生活支援プログラム)で働くスタッフの語りに現象学的にアプローチする』ものなのだそうですが、正直良く分かりませんでした。ただ、とても気になる事例が紹介されていました。『ある看護師は、「幽霊が入ってくる」と訴える患者の保護室の扉に安倍晴明のお札を貼ったところ、幽霊が消えた』というのです。この行為に対し『専門的な医療行為とは言えない。しかしこうした「実験」が支援を豊かにすることもまた事実なのだ』という評価がなされていました。この看護師の行為は、医学的にナンセンスですし、科学性が皆無です。偏見や思い込み、迷信への依存を...今この子のために

  • 将棋とラグビーと星新一

    「遠近」7月27日『時代を超え、ヒントくれる』という見出しの記事が掲載されました。文芸評論家三宅香帆氏に本の魅力を聞いた記事です。その中に、三宅氏の次のような言葉がありました。『多くの子が抱えていたのが「どんな本を読めばいいのか」という悩みだった。対象図書に迷ったら、自分から「遠い」テーマの作品を選ぶことを助言する。例えば、体育嫌いだったら、スポーツ小説、理系嫌いなら理系の入門書(略)好きなことより、あえて苦手なことを選んだ方が、今までと違った考えや成長が得られやすい』。三宅氏は、読む本の選択について語られていますが、私は、子供への影響ということで言うならば、教員にも当てはまるのではないか、と考えてしまったのです。つまり、子供から「遠い」教員が、多様な気づきや成長を与えることができるのではないか、というこ...将棋とラグビーと星新一

  • それでも一部だが

    「時代?小中?」7月26日月1の連載企画、『ロスジェネ往復書簡』は、『吹き荒れた暴力に戦争の影』という表題でした。作家雨宮処凛氏は、ご自身の中学生時代を振り返り、『ヤンキーへの先生の「弾圧」はすさまじいものでした。とにかく暴力で支配する。新しい学年になるたびに、必ず1人のヤンキーをみんなの前でボコボコにし、「最初に1人血祭りに上げておけばおとなしくなるからな」と平然と言い放つ先生までいました』と書かれています。雨宮氏は昭和50年の早生まれ、昭和62年に小学校入学、平成5年に中学校入学という年齢です。私が、若手から中堅の教員時代に当たります。私は6年生を担任することが多く、中学校の教員とも小中連絡会等で顔を合わす機会がありました。また、平成6年には指導主事となり、指導訪問や研修会、指導室訪問等で中学校の教員...それでも一部だが

  • 効く人には効く

    「多様ということ」7月23日オピニオン編集部小国綾子氏が、『変われるよ』という表題でコラムを書かれていました。その中で小国氏は、「不登校生動画甲子園」昨年大会受賞者リセなさんについて取り上げています。リセなさんは、『不登校になったのは中学1年のとき』『登校できない罪悪感から、閉じこもりがちに』『オンラインゲームで知り合った友だちにも救われた。同世代の不登校の子らと親友になり、自分のアバターを思い切り好きな髪型や服装にして、何でも語り合った』などの経緯で今は通信制の高校に通い、『憧れていた「リアルな学校友だち」』もできたとそうです。セリなさんは、『今回は動画で何を伝えたい?』という小国氏の問いに、『「大丈夫、変われるよ」と伝えたい。学校に行かなくてもいっぱい選択肢はあるし、どこでも必ず友だちはできる。私はこ...効く人には効く

  • 正義病

    「絶対にやっている」7月22日真宗佛光寺派・大行寺住職英月氏が、『マミー』という表題でコラムを書かれていました。その中で英月氏は、和歌山カレー毒殺事件の死刑判決を疑う映画監督らの取り組みを取り上げています。私は以下の記述が印象に残りました。『事件の舞台になった場所にも行き、近所の人たちに聞き取り調査を行います。その熱心さには頭が下がります。けれども、ふと思います。もし私が近所の住人だったら、取材を受けただろうか?多くの人がそうであったように、インターホン越しに断ったのではないか。そうして断ったにもかかわらず、その音声や家の外観が映画に使われるのは嫌なものです』。私も今までに、耳目を集める事件後の報道で、取材を断られるシーンを見たことがあります。そのときは何も思いませんでした。でも、考えてみれば、取材を断る...正義病

  • もっと詳細な説明を

    「指導力って何?」7月22日『教員の指導力アップNIE実施で効果』という見出しの記事が掲載されました。『日本新聞協会は11日、教育現場で新聞を活用する「NIE」に取り組む学校を対象にした学習効果調査の結果を発表した』ことを報じる記事です。その中に、『教員の指導力が「大幅に伸びた」と答えた学校は4%。「伸びた」が39%、「少し伸びた」が48%だった』という記述がありました。もどかしい思いがしました。ここで言っている「指導力」とはどのような力のことなのかが、全く分からなかったからです。私は、NIEの活動を高く評価しています。ですから、「指導力アップ」ということを嬉しく読みました。ただ、NIEを取り入れると教員の指導力がアップしますよ、あなたの学校でも取り入れてはいかがですか、とアピールするためには、指導力につ...もっと詳細な説明を

  • 監視員常駐の学校

    「未来の学校」7月21日『そこが聞きたい舞台裏のハラスメント』という見出しの記事が掲載されました。『宝塚歌劇団の劇団員の女性が死亡した問題や、旧ジャニーズ事務所の性加害問題は、華やかなステージの裏に潜む構造的な「闇」を浮き彫りにした(略)こうした現状をどう受け止めているのか』という問題意識の下行われた、愛知県芸術劇場芸術監督唐津絵理氏へのインタビュー記事です。その中に気になる記述がありました。『スタジオや稽古場の閉じられた空間で、「先生と生徒」「先輩と後輩」といった上下関係のある人だけでレッスンや稽古が行われていることが、ハラスメントが生まれる原因の一つ(略)長年続く師弟関係を理由に、それが「指導」なのか「暴力」なのか判断するのが難しい(略)被害を受けた側が「おかしい」と思っても、第三者がいない閉鎖空間や...監視員常駐の学校

  • お前、ロリコンなの?

    「性犯罪と教員志望」7月21日『レオタード「当たり前」変える』という見出しの記事が掲載されました。体操の杉原愛子選手が、「アイタード」を着用するようになった経緯を紹介する記事です。ちなみに「アイタード」とは、『「スパッツ型レオタード」だ。太腿の上部までしっかりと生地で覆われ「短パン」のようになっていて、肌の露出が極力抑えられていた』衣装のことです。『スポーツ界では、ニユホームなどの競技ウェア姿を性的な視点で撮影され、それらの画像や映像がインターネット上で拡散される「盗撮被害」が深刻な問題になっている』ことを受けてのアイタード開発です。その記事の中に気になる記述がありました。『性的な意図をもって画像を拡散する心無い人たちの行動により、本当の「体操ファン」の男性がファンを公言しにくくなっている現状も耳にした』...お前、ロリコンなの?

  • 本音よりも「ウケ」が大事

    「認識違い」7月20日ナレーター近藤サト氏が、『情報の送りての不安救う街頭インタビューが「尊い」』という表題でコラムを書かれていました。その中で近藤氏は、街頭インタビューについて、『応じる人々は、それが一瞬にして公のものとなるからか、まずうそをつきません。ただ率直に思ったこと、考えていることを素直に話してくれます』と書かれています。えっ、と思いました。近藤氏が本当にこう考えているのだとすれば、それはとんでもない間違いではないか、と思います。今、テレビに映っている。私の話すことを多くの人が見聞きする。私のことを知っている人も見るかもしれない。おかしなことを言うと、頭の悪い人と思われてしまう。ちゃんとしたことを言わなければ。このことについて、確か新聞に載っていたっけ、誰かがコメントしていた、何と言っていたんだ...本音よりも「ウケ」が大事

  • 事前調整なし?

    「望ましいメッセージ?」7月20日『八王子の小中学校仏料理の給食好き嫌いせず食べよう柔道・高市選手がメッセージ』という見出しの記事が掲載されました。パリ五輪開幕に合わせ、同市の小中学校の給食でフランスにちなんだ献立が提供され、同市出身でパリ五輪柔道代表の高市未来選手が食に関するメッセージを寄せたことを報じる記事です。記事によると、高市氏のメッセージは、『たくさん遊んでたくさん勉強するには、たくさんのパワーが必要です!そのパワーを出すにはしっかりと好き嫌いせずに食べることが一番です!』というものだったそうです。このメッセージは今でも正しいのか、それが私が最初に感じた印象でした。かつては、給食時に、「食べ物の好き嫌いはいけません。出されたものは残さず食べましょう」という指導が行われていました。私は好き嫌いの多...事前調整なし?

  • 個性ではなく、自分探しという流行なのでは?

    「どちらの見方が…」7月19日論点欄は、『若者が辞める職場』というテーマで、『せっかく就いた職場に、若者たちが数年で見切りをつける。そんな早期離職の傾向が続いている(略)若者たちのライフスタイルや意識の変化が背景にあるのか』という問題意識で組まれた企画です。3人の識者の中で、リクルートワークス研究所主任研究員古屋星斗氏と金沢大教授金間大介氏の話を興味深く読みました。お二人とも、学校教育との関連で語っていらっしゃったからです。古屋氏は、『個性重視の教育の中で育った若者が、それぞれ目標を定め、なるべくありのままの自分でいたいと思う感覚は理解できる。その実現には、どこに転職しても通用するスキルを身につけることが必要だ』と述べていらっしゃいます。つまり、自分らしくあり続けるためのスキルアップ、スキルアップのための...個性ではなく、自分探しという流行なのでは?

  • 習得主義の上を行く

    「習得主義の上」7月18日専門記者田原和宏氏が、『新たな世界への扉』という表題でコラムを書かれていました。その中で田原氏は、『教育哲学者の林竹二さんは、「学ぶことは変わることだ」と説いた。学ぶことでものを見る目が変わり、生きる姿勢が変わる。ものの見方が変われば、世界も変わる』と書かれていました。全くその通りです。このことを逆にいうと、変わらなければ学んだことにはならない、になります。教員は様々な場面や機会に子供を指導します。指導する=学ばせると言い換えることができます。そうであれば、指導前と指導後で子供が変わらなければ、指導したとは言えないことになるはずです。我が国の学校では、特に義務教育である小中学校では、履修主義で進級、卒業認定がなされています。何も理解できなくても、その結果子供が何ら成長できていなく...習得主義の上を行く

  • 凡プレーヤーは名解説者

    「二流の人」7月18日川柳欄に、越谷市K氏の『一流のプレー二流が解説し』という句が掲載されていました。意味は明瞭、スポーツなどで現役時代に対した実績を挙げられなかった解説者が、現役の一流選手のプレーについて、偉そうに批評するという状況を詠んだものです。関脇までしか行けなかった親方が横綱の相撲を批判する、現役時オリンピックに出場できなかったにもかかわらず、メダリストのプレーを解説する、現役時代に一度も3割を撃ったことがない野球選手が大谷の不調の原因を分析する、そんな状況です。私は、この句を複雑な思いで見ました。自分のことを言われているという思いが半分、少し認識不足なんだけど、という思いが半分という感じで、です。私は、指導主事として、多くの授業を見て、指導講評してきました。校内研修や初任者研修、区市の研究部会...凡プレーヤーは名解説者

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