「悲劇と喜劇に両またかけて」と、オビ広告は謳っている。池内紀解説“ちくま文学の森13旅ゆけば物語”。表紙は安野光雅。そこに高浜虚子「斑鳩物語」が収録されていた。これ40年の大昔から懸案だった本。秀作とはいえないが、そこそこおもしろかった。上・中・下に分かれ、小説とも長めの写生文とも読める。旅館のスタッフお道サン、お髪サンの方言が巧みでリアル。法起寺の塔に内部からこわごわ登るあたりも読ませる。「斑鳩物語」は本書で約20ページ。決着のつけ方がうまくいっていたら、秀作といわれたかもしれない。国内・海外ふくめ二十数編の紀行文・エッセイ・小説が収めてある。「斑鳩物語」高浜虚子~旅ゆけば物語より