真正面に座る親父には笑顔はない。その横にいる爺様も同じ・・・だがお袋と孝三郎はニコニコしているし、美涼は顔を赤くして俯いている。この雰囲気で聞かされる話は・・・・・・「総二郎、実は先ほど美和子が付き添って美涼さんを病院に連れて行ったのだがな・・・そこで美涼さんが妊娠していることがわかったのだよ」「・・・・・・・・・そう・・・ですか」「予定では来年の4月の終わり頃になるだろうとのことだ」それを聞いて奥歯を噛み締めた。計算す...
花より男子の二次小説サイトになります。特に類と 総二郎が大好きですべてハッピーエンドなります。
読むだけでもの足らず、とうとう自分で書いてしまいました。自己満足の表現不足とは思いますが、楽しんでいただけたらと思います。
「すごい・・・類のタキシード、これも真莉愛達が選んだの?それに2人とも可愛い服着てる~~!いつ、どうやって選んだの?信じられないんだけど!」「美央のドレスも美来が選んだってこと?」パパとママはずっとビックリしてばかりで、あたし達を見たり、自分達を鏡で見たりしてた。それは加代さんが全部お話ししてくれて、あたし達のお誕生日の前にはドレスを決めていたって聞いたらも~~~っとおどろいてた♪たくさんの白いドレス...
つくしのマンションを出るときには雨は上がっていた。ハーレーのシートもそんなに濡れてなかったし、特に問題ねぇって言うのに、つくしはタオルを持って来てあちこち拭いたりして・・・俺は「サンキュ!」と軽く礼を言い、ヘルメットを被る前に額にキスしてやった。たったそれだけなのにつくしは真っ赤になり、「外ではしないでよ!」と・・・周りには誰もいないのに、キョロキョロ見回して焦りまくり。そんな仕草は昔から変わっていなく...
5月5日・・・今日はパパとママのケッコン式だ。10時にチャペルに行って、パパとママ、そして美央ママとおじちゃんにお話しして、先にパパ達のお式、それが終わったら美央ママ達のお式。そしてみんなで記念写真撮って、13時からみんなでお食事会🧡どうやってチャペルまで行くのかというと・・・それはね・・・朝ご飯の時にパパがママにお話ししてた♪「えっ、西門さんが?」「うん・・・今朝早くにメールが入ってて、10時に都内のレストラ...
次に目が覚めたのは外が明るくなってから・・・布団の重みはなかったけど、隣に寝ている人の体温で温かかった。真夜中に起きた時と同様、乱れた前髪の奥にある閉じた目を見ながら、さっきの話を思い出していた。西門さんが私のことを本気だと言った。今までに見たこともない、真面目な顔で・・・確かにそう言った。私はそれを信じていいのだろうか・・・・・・と考えたけど、私も同じ気持ちだと伝えてしまった。だから今更悩むのも変だと、ほん...
次の日の朝、幼稚園に行く前の、朝ご飯の時・・・「えっ?!今日も類が連れて行ってくれるの?それ、藤本さんはOKしてるの?」「もちろん。つくしは気にしなくていいし、明日からは運転手に任せるよ」「あら、そう・・・・・・ふふっ、類も気になるのね~~」「まぁね、父親だからさ」「パパと行くの?おしごと、遅刻しないの?」「真音、それも心配要らないから」そんなお話があって、今日もパパの車で行くことになった。そして昨日と同じ...
私の意識が戻ったのは真夜中・・・隣には悪魔のような男が眠っていた。しかも暑いと思ったら、私の身体に巻き付くように・・・でもそれを動かそうなんて思わず、湿った足と腕をそのままにした。私の肩に顔をくっつけてるから横を向けばこの人の髪の毛に触れる。その感触を味わうかのように少しだけ頬を寄せ・・・するとピクッと彼が動いたから、慌てて目を閉じた。でもそんな行動はすぐにバレて、「身体は大丈夫か?」・・・・・・そんなウソっぽ...
玄関でパパと別れてから、まこちゃんといっしょに中に入ったけど、ここではまず制服から遊び着に着替えるために「こうい室」ってところにいくの。そこは男の子と女の子は別々だから、あたしはソロソロと1人で中に入った。そうしたら何人かのお友だちが着替えてて、自分のロッカーに脱いだ制服をいれたり、持って来たカバンから連絡帳出したりして、キャアキャアとにぎやかだった。それにわかんない子もいるから、先生が1人ついて...
本文中にR表現を含んだ部分がございます。苦手な方はご遠慮下さい。パスをかけておりませんので閲覧は自己責任でお願い致します。*-*-*-*-*-*-*-*-*-* -*-*-*-*-*-*-*-*-*-* -*-*-*-*-*-*-*-*-*「じゃあ今度こそ本気で感じさせてやろうか?」「えっ・・・・・・どういう・・・」「判ってるクセに聞き返すんじゃねぇよ!」ガチガチに強張っている牧野の身体を抱き上げ、声を出す間も与えずにベッドに押し倒した。そしてすぐに覆い被さり、抵抗...
教室に入ったら、そこには小さな机がたくさんあった。前にみらいちゃんの保育園で見ていたから知っていたけど、今度からあたしの「席」があるんだ~ってドキドキ♪あの保育園は教室のうしろに木で出来た棚があって、かべにはいろんな色の折り紙のかざりがあったけど、ここはちょっとちがう。おっきなピアノに、棚にはちゃんと扉がある。絵本がたくさん並んでるし、白いレースのカーテンもあるし、すみっこにはソファーみたいなのも...
あの日と同じ匂いのする部屋・・・・・・平静を装って足を踏み入れると、牧野は俺のあとに付いてきた。そして目も合わせずにキッチンに向かい、形ばかりのもてなしなのか、アイスコーヒーを無言でテーブルに置かれた。自分のものも用意しており、そのグラスを持ったまま俺に対して身体を横向きにして座り・・・まるで拒否されてるように思ったが、それも仕方ない。俺は着ていたライダースジャケットを脱ぎ、床にバサッと置いた。そしてあの...
「真音、真莉愛~~~、支度できたの~?パパが車で待ってるわよ~!」「は~~~~い、できましたぁ~♪」「まりあちゃん、早く行こう!」「うん、まこちゃん!あ、ひろ君に行ってきますって言わないと!」「早くしよ?ママが鬼になるよ?」「「急げ~~~~!!」」こうして弟のひろ君に「行ってきます~」をして、車に行ったらまこちゃんの言うとおり、すっごく怒られた。でもママのお小言には慣れてるし、車の中では幼稚園のこ...
土曜日・・・この日も先週と同じく、今にも雨が降りそうな日だった。予報では午後から大雨・・・嫌でもあの時のことを思い出して身体が疼いた。この湿度、この気温、この部屋・・・彼が触れた場所、稲光で光った目、いつもと違う乱れた髪・・・荒い息づかい、知らなかった腕の力、払いきれない男の重み・・・「馬鹿・・・・・・なに考えてるのよ」やっぱり住み続ける事は無理かもしれないと思いながら、片山課長から聞いた江戸川のマンションをネットで...
「ほぎゃあああああぁ~~~~!!」「うわああぁ~~~ん!!ひろ君が泣いてる~~~~~!!」「まりあちゃんまで泣くことないじゃん・・・」「ママ、ママ~~~~!ひろ君がぁ~~~~っ!!」「はいはい、今行きますよ~~。お腹空いたのかな?それともおむつかな?」「まりあちゃんがお腹すいてるんじゃないの?」「まこちゃん💢!それはちがうよ!!」ママとひろ君がおうちにもどってきて、それからおうちはにぎやかになった。そ...
その週の金曜日・・・結局、西門さんからの電話もメールもなかった。それは彼もあの夜を後悔しているからだと思い、私はその日のうちに彼の電話番号を消し、LINEもブロックした。これでもう連絡が来ることもない。ただ、そうなるとマンションに来る可能性もあるから、やっぱり引っ越そうと思った。「来る可能性って・・・何を期待してるのよ、私・・・」あれから毎日、夜になるとテーブルにスマホを置き、それを眺めている・・・何かの通知が来...
クリスマスが来たらあたしとまこちゃんは4歳になった。その時にも美央ママ達が来て、クリスマス会といっしょにお誕生日会もしたんだ~~。そしてお正月には今まで見たことがない「おせち」って言うのを食べたり、「かがみもち」って言うのをかざったり。それに「初もうで」にも行って、ママの赤ちゃんが元気に産まれますようにって頼んできたよ♪そこで買った「たこ焼き」・・・すっごくおいしかった🧡加代さんには「タイ焼き」をおみ...
日曜日の午前中は何も考えられず、ただただぼんやりと過ごした。唯一したことと言えばシーツの洗濯・・・でも天気が悪くて干すことも出来ず、痛む身体で外出してコインランドリーで乾燥のみを行った。その時も誰かに歩き方を見られてる気がして恥ずかしく、首の周りもすごく気になった。「・・・この痕、明日には消えるのかしら・・・」そう言いながら首を触り、思い出すのはやっぱり夜のこと・・・そしてこの先で西門さんに会ったらどうすれば...
11月のおわり頃、みらいちゃんのおばあちゃんからお電話があった。「明日、美来とそちらに伺います」って・・・それを加代さんから聞いて、ケッコン式をするチャペルを決めにいくことになったの♪そして、その日のお昼過ぎ・・・「あれ?今日も3人でお出掛けなの?」「あっ、ママ。えっとね、今日はねみらい・・・」「なんでもないの!加代しゃんがケーキ食べに行こうって!」「そ、そうなんですの~~~。つくし様は類様に外出を控えるよ...
朝帰りの俺を出迎えたのは鬼のような顔をしたお袋だった。その理由は・・・今日の午後、「見合い」があるからだ。先日お袋が俺に渡した釣書の女、桜井美涼。赤坂の料亭でその女と会い、いつものように適当な話をして別れるだけ・・・ただ今回はお袋が本気になっていて、俺にも自分と同じテンションを求めてくるのが鬱陶しかった。「どういうつもりなの、総二郎さん!」「・・・何が?」「何がじゃないわよ!夜遊びなんてして、そんな姿を誰...
「美央?!」「美央さん、大丈夫ですか・・・・・・って・・・えっ!!」美央ママ?!どうしたの~~~💦バーベキューを食べようとしたら、きゅうに美央ママがお口を押さえてお部屋にもどっちゃった・・・でもすぐに戻って来て、ちょこっとはずかしそうにしてた。そうしたらママが「もしかして?」って・・・「本郷さん、知ってたの?」「・・・・・・いや、あの・・・えっと・・・」「くすっ、焼くの交代するよ。ほら、美央のところに行ってやったら?」「美央...
雨はまだ降り続いているが、その勢いはなくなった。俺はぼんやりと暗い部屋の天井を見つめたまま・・・・・・汗でベタベタしている身体を、生暖かくてジメっとした空気に晒していた。牧野は俺に背中を向けて寝ている。本当に寝ているのか、寝たフリなのかはわからないが、スマホも時計も手元にないから時間もわからない。ただカーテンの向こうがほんの少し明るかったから、おそらく夜明け前・・・微かに車が走る音が聞こえていた。**『まさ...
ママは病院に行って、赤ちゃんが生まれるのが来年の1月のおわりって言われたみたい。そうしたらすぐにパパが「1月31日はダメだから!」って言ってたけど、どうしてダメなのかと聞くと・・・それは司お兄ちゃんのお誕生日と同じだかららしい。ママは「そんなこと言われても~」って言ってたけど、パパはブスッとした顔で腕組みしてた。「ぱっぱ、どうしてだめなの~~?」「ぼくと、まりあちゃんもお誕生日は同じだよ?」「それは...
停電が解消されるまでの間、この酔っ払いを1人にするわけにもいかず・・・俺は牧野の部屋の窓際に立って外を見ていた。相変わらず稲光が町を照らし、雷鳴も耳に届く・・・もちろん雨は銃弾みたいな音で窓硝子を叩いた。そして暗闇にも目が慣れてきて、この部屋の大きな家具ぐらいはわかるようになった。牧野はまだ酔いが覚めずに苦しそうにしていて、時々大きな溜息を吐きながら壁に凭れていた。その様子を見ていると、やはりベッドに寝...
美央ママが来るって言う日・・・あたしはドキドキしながら待ってたの。だって、春になる前にお別れしたたんだもん。今までそんなに会わなかったことがなかったから、なんてお話しようかなって・・・「まりあちゃん、サッカーしようよ」「うん、まこちゃん」「真莉愛も真音も、もうすぐお客様が来るんだから服を汚さないのよ?」「「は~~~~い!!」」美央ママが来るまでもう少し・・・それまではまこちゃんと遊ぼうと思って、お庭でボー...
お盆が終わったら、お仏壇前のお盆飾りのお片付け。まずお位牌と香炉など仏具を仏壇に戻し、盆飾りや盆提灯を片付ける。盆棚の上に置き、季節の食べ物などをお供えするのに使った真菰ござ、お菓子を置くために使った蓮の葉、精霊牛馬、盆花はお清めしてから庭に埋める。毎年使用する絵柄の盆提灯は丁寧にたたんで箱に入れて仕舞い、供養膳の器も専用の箱に仕舞う。これも全部お嫁さんの仕事なので、私が責任持ってやるんだけど・・・...
旅行がおわると、パパがあたしをお部屋に呼んだの。まこちゃんは呼ばれてなかったんだけど、一緒にくっついてきたから、ママも合わせて4人でのお話・・・いったい何だろうと思ったら、美央ママをここに呼んでくれるって・・・「ぱっぱ、それほんとう?」「みぃちゃも来る~~~?」「あぁ、美来ちゃんも来ると思うよ。その前に、真莉愛にお話ししたいんだ」「・・・・・・・・・・・・」「まいあに?なんだろう~~」「ぼくはいいの?」「うん、真音...
「サッちゃん、そろそろ精霊馬(しょうりょううま)を作ろうか」「そうですね・・・では厨房でキュウリとナスをもらってきます。薫様、瑞樹、一緒に行きましょうか」「「あ~~~~~い♪」」サッちゃんが精霊馬にするお野菜を取りに行く間も、男親2人はこの部屋の前の廊下で口喧嘩を続けていた。総二郎は家元夫人に、野田さんは前田さんに怒鳴られればいいと思っていたら・・・「総二郎さんっ!!いつまで遊んでいるの!もうすぐ後援会...
「真音~、真莉愛~、起きてくれるかな~?」そんな声が聞こえて、目をあけたら・・・ママがあたしの目の前にいた。まこちゃんも寝てたみたいで、おとなりで目をこすってる・・・パパはもう先にお泊まりするところに行ったみたいで、まこちゃんは車から出たらあたしを置いて行っちゃった。そのお泊まりするところは、「ほてる」ってのとはちょっとちがう・・・古い木で出来てて、ちょっとコワい感じ。それに2階もなくて、お庭に木がいっぱ...
「つくし様、それではお盆飾りのお手伝いをしますわ」「うん、助かる~~!まだ1人じゃ出来なくて~」お盆飾り・・・お盆初日に間に合うよう、8月に入ったらしても良かったんだけど、色々と忙しくてまだ終わっていなかった。しかも西門家では、これはお嫁さんの仕事ってことで、一昨年までは家元夫人がしていた。その時に私も一緒に飾り付けて、「来年からはよろしくね」って言われたんだけど・・・結構ややこしい。この時期にはお仏壇...
「ママ・・・お迎えにきて・・・・・・まいあ、ひとりぽっちなの・・・・・・もう、ぱっぱもいなくなっちゃった・・・」あたしが呼んだのは美央ママ・・・美央ママならあたしのことを1番だって言ってくれるもん。みらいちゃんがいるけど、それでもきっとあたしが1番だって・・・だって、あたしのママは美央ママだもん!あたしぐらいある草で前が見えない・・・それがバチバチ顔にあたって痛い・・・ここがどこかわかんなくて、どこに出るのかわかんなくて、こわ...
「あのねぇ、アメンボさん、た~~くさんいたよ」「この前見たときにはいなかったのにね~~」「そうなの?じゃあ最近お引っ越ししてきたのね~」「薫様、お池に落ちないようにして下さいませね?瑞樹、ちゃんと薫様の手を持ってるのよ?」「だいじょうぶだよ~、おばちゃん」「みずき、ちゃんと見てるもん♪」「・・・つくし様、申し訳ないのですが、少し手を上げていただけますか?」「あぁ、はいはい」着物を仕立てるためにサッちゃ...
「真音、真莉愛~~~、支度できたの~?パパが車で待ってるわよ~!」「は~~~~い、できましたぁ~♪」「まりあちゃん、早く行こう!」「うん、まこちゃん!」あたしの名前は花沢まりあ。もう「まいあ」じゃなくいて、ちゃんと「まりあ」って言えるようになったんだよ♪そして今日は、あたしとまこちゃん・・・真音お兄ちゃんが英徳学園幼稚舎に入園する日🧡まこちゃんとお揃いの制服着て、髪にも赤いリボン付けてもらって、今からパ...
私のお茶室に入ったら、近くに誰もいないことを確認して静かに障子を閉めた。そして真ん中に座り、広げたのは幸福屋の新作涼菓🧡オレンジ&グレープフルーツとコアントローのゼリーに、マスカットリキュールのゼリー。それにいろんな果肉ゼリーが乗っけられたプリン・・・いずれも小さめだから食べたって平気だもん♪「これ、栄養補給というか、ただの糖分摂取じゃ・・・」「いいのいいの!幸福屋さんにはちゃんとカロリー計算して特注して...
美央が無事に出産を終え、翌日に少しだけ電話で話したが、やはり傷口の痛みが強そうだった。それでも嬉しさは十分に伝わり、和代も美来も病院で弟に会い、すでに抱っこしたそうだ。「えっ!美来ちゃんが生まれたての赤ちゃんを抱っこ・・・怖くなかったですか?」『ホントに怖かったですよ!落とすかと思って起き上がろうとしたけど、身体が動かせなくて・・・』「あはは・・・美来ちゃんでも怖いなら、うちはもっと怖いわ・・・」『ぬいぐるみ...
薫が生まれてから3年後の夏・・・今じゃすっかり西門の生活ににも慣れた私。今日は家元夫人であるお義母様が外出してるから、の~~~~~んびり過ごしていた。なんたってお義母様がいたら、薫にベッタリでマジで大変なんだもん・・・・・・まぁ、嬉しいことだけど!「つくし様、冷菓をご用意しましたよ~~」「あ、サッちゃん♪ありがとう~~、一緒に食べようよ♪」「えへへ///そう言ってもらえるかなって思って自分のも持って来ました」「...
新年、類達は自宅で静かに過ごした。理由はつくしが臨月だから・・・予定日が1月30日なのですでにお腹は大きく、子供達もそれを見ては不思議そうにしていた。「「・・・・・・・・・・・・」」「どうしたの、2人とも・・・そんなにママを見つめてるけど、何かヘン?」「ママ、おなかいたくないの?」「こんなにおっきいけど・・・あかちゃん、おなかの中でなにしてるの?」「あはは!まだお腹は痛くないよ。何してるんだろうねぇ?生まれてくる前の...
1人じゃ歩けなくなった牧野を連れてビルを出て、手配したタクシーに乗り込んだのは22時45分。牧野に住所を聞くとM町だと言うから、とりあえずそこに向かった。が、詳しい住所を聞こうにも牧野はすぐに爆睡・・・仕方なく鞄を開けて、運転免許証を探した。それはすぐに見つかり、その住所を見ると確かにM町だったため、その住所を運転手に告げた。少し気分悪そうに顔を横に向け、タクシーが揺れるたびに眉間に皺を寄せている。たまに...
酷暑と言われた夏が終わって幾分過ごしやすくなった頃、花沢家に本郷達がやってきた。その頃にはつくしも美央も安定期に入っており、すっかり妊婦らしい身体になっていた。2人とも順調で、胎動も感じる頃・・・そのせいか話題はそのことばかりだ。それも仕方ないと類と本郷は仕事の話をし、子供達は芝生の庭で走り回って遊んでいた。「つくしさんは性別は聞かないの?」「ん~~~~、そうですね・・・楽しみにしようかなって思っていま...
西門さんに彼女がいるのかどうか・・・この人は女性に手を出すのは早かったけど、本命を作るイメージがなかったから思い切って聞いてみた。すると案の定「いない」との返事、それにホッとした自分がいた。その表情を悟られたくなくて、グラスに残っていたお酒を飲み干し、おかわりを強請る・・・あの”西門総二郎”にこんなことが出来る女は数少ないだろうと思うと、少し気分が良かった。すぐに出された同じカクテル、それを一口飲んだらほ...
コテージから帰った翌日の月曜日。類は仕事に出掛け、子供達は浜辺で拾った貝殻でフォトフレームを作っていた。その材料は昨日の帰り道、つくしの提案で100均に寄って購入したもの。フォトフレームに紙粘土、木工用ボンドにビーズやおはじきもいくつか選んだ。類は100均など初めてで、興味深そうに棚を眺めており、それは真莉愛も同じ。でも真音は何度も来ていたので、つくしにくっついた。何故紙粘土が必要かというと、直接...
食事が終わったら今度はバーへ移動することになった。その店もここから近いらしく、歩いて僅か3分のビル・・・会員制のお洒落な店で、中に入ったら大人っぽい雰囲気でドキッとした。オレンジ色の照明、流れてるのはジャズ。カウンターにいるのは素敵なバーテンダーさんで、お客様も品が良い人たちばかり・・・並んでいるグラスがキラキラ光り、棚には私の知らないお酒の瓶が並んでた。イケメンのスタッフさんが奥に案内してくれて、重苦...
海鮮バーベキューの準備中、急に美央の手が止まった。つくしはそれに気がつかず、背中合わせで他の食材の下拵えをしていた。「海老は塩だけで良いですよね~~」「・・・・・・・・・」「ホタテは殻のまま網焼きにして、バター醤油にしようかと思うんですけど~」「・・・・・・・・・」「美央さんは今、なにしてます?蟹ならもう焼くだけになって・・・・・・美央さん?」ここで美央の返事がないことに気がついたつくしが振り向くと、美央は包丁を持ったま...
牧野が誰か知らない男と話している・・・それを見た瞬間、自然と足が速くなった。目は2人だけを追い、ぶつかりそうになった奴をどうやって避けたのかも覚えていない。ただイヤな予感がして下唇を噛んだ。そして2人に近づいたとき・・・「待たせたようだな」俺はわざと男に聞こえるように言った。するとそいつはちらっと俺を見てから、牧野に「待ち合わせってこの人?」と。その言い方にもイラッとしたが、牧野が気不味そうに、俺と目を...
つくしの妊娠はすぐに美央達に伝えられ、それは自分たちのことのように喜ばれた。そして昨日話したこの夏の予定について、「やっぱり安静にしたほうがいいのでは?」と心配され・・・「でも仕事にも行ってないし、ずっと家なんですよ?少しは外に出て気分転換したいです~~」『でも妊娠初期は怖くありません?』「1人じゃないし、過保護な類がいるから問題ないですって。それに双子はパパに任せるし、私はのんびりしますので~~」...
なんでもいいと言われても、そこはやっぱり気にしてしまう。土曜の朝っぱらタンスの中にある服を全部引っ張りだし、部屋中に広げて考えていた。「暗い色はまずいよね・・・かと言ってピンク系なんて私のイメージじゃないから西門さんも驚くだろうし・・・ベージュ系は仕事みたいじゃない?デニム・・・はカジュアル過ぎるかも。だってあの人の選ぶ店って、それなり・・・だもんね」そんなことをブツブツ言ってるとあっという間に昼になり、雨が...
15時のデザートタイムになった。子供たちにはピスタチオ・ミルク・いちご味の3色プリンに苺と生クリームが乗せられたものが置かれ、大人たちにはチョコケーキが置かれた。この時のつくしは気分が良くなっていたので、それを美味しそうに食べていた。類はつくしを見ながらまだ興奮気味で珈琲しか飲めず・・・そんな2人を眺めていた美央が「そろそろ出します?」とつくしにウィンクした。「あ!そうですね♪」「出すって何を?」「・・・...
牧野と別れてから自宅に戻ると、俺の部屋の前では使用人頭の志乃さんが困ったような顔で待っていた。この人はお袋の秘書のような役目もしており、俺が生まれる前から西門で働いてきた人・・・そして俺たち兄弟の教育係でもあった。この屋敷では数少ない俺の「味方」でもあり、両親との間を取り持ってくれる人・・・なぜなら、俺の「秘密」を知っているからだ。そんな志乃さんが「お帰りなさいませ」と言いながら近づいてきて、周りを気に...
「あんまり食欲がなくて・・・・・・ごめんね、私のことは気にしないで下さい」つくしがそう言った時に美央の表情が変わった。そしてニコッと笑って、本郷をチラッと見ると、本郷も「あ!」と・・・類はそれを見ても何のことかわからず、しばらくキョトンとしていた。この時間も子供たちは大人を無視して食事を続け、賑やかにしていたのだが・・・「つくしさん、もしかして?」「へっ///?」「そうなんじゃないの?」「・・・・・・え、えっと///」「...
忘れようとしても忘れられない・・・・・・私が1番初めにほんの少し意識したのは、まだ高校生の時だった。女性にだらしなく、出会う人みんなに声掛けて、それこそ「いつか刺されるんじゃないの?」って呆れてた。何を話してもおちゃらけてて親身になんてなってくれない。常に美作さんと連んでお祭り騒ぎで、道明寺がヤバい事をしても面白がってた。要領よくなんでも出来るし、当然頭は良い。運動神経も抜群で、出来ないスポーツはない。...
花沢家の中に入ると、子供たちはすぐにプレイルームに向かった。その元気な後ろ姿を見て、本郷と美央も目を細めていた。美来は去年の秋から転園を繰り返し、友達が出来ては別れていたからだ。しかも日野の家の周りには小さな子供はおらず、土日も家族と過ごすしかなかった。そんな中、久しぶりに保育園以外の友だちと再会して本当に嬉しそうだった。「うわぁ、おもちゃが増えてる~~!」「みらいちゃん、何して遊ぶ?」「木馬にの...
あれはいつだったか・・・・・・・・・もう何年前の事だろうか・・・と、ふと考える事がある。それは牧野が大学4年の時、司と別れそうだと聞いて、気になってあいつのアパートに行った日のこと・・・「まだ薄皮1枚で繫がってるんだよね~」と笑ってた。疲れ切った笑顔で・・・でも、その中に僅かな希望を見せて・・・でもそれから1ヶ月後、牧野は完全に司と別れた。いや、正確には道明寺から縁を切られた。やはり司の母ちゃんは牧野を認めなかった・・・...
美央たちが来訪する前日、つくしは双子と一緒に買い物に行くことになった。それは美来へのプレゼントで、真莉愛と真音とお揃いのものを買おうと言う話になったのだ。それに美央と本郷にも結婚祝いをしていなかったので、記念になるものを・・・。類は社長としての仕事が溜まっているので今日も出勤。だから加代を同行させて、代官山の店に行くことになった。「ホントにごめん、付き合ってやれなくて。帰りには何かデザートでも買って...
箱根の旅館で1泊し、翌日は箱根ロープウェイに乗ることにした。海賊船・ロープウェイの乗り放題パスを購入し、早雲山駅から芦ノ湖湖畔にある桃源台駅までそれで行き、途中の大涌谷駅では美来の希望で「特製大涌谷カレー」を食べた。そして車窓から雄大な富士山を見ながら、桃源台で降りると次は箱根海賊船で遊覧。「お婆ちゃん、あっちが乗り場みたい~!」「あら、そう?まぁ、大きな船じゃない~」「早く早く~~!」「よ~~し...
日野市で暮らす美央・・・今は本郷美央となり、5月からは午前中のみ近所のパン屋でパートをしていた。そして午後になると自動車学校に行き、技能講習を受けたり、自宅でオンライン学科教習を受けていた。和代も短時間の仕事をしているし、美来は保育園に行っているため、その空き時間に車の免許を取ろうという話になったのだ。美来を保育園に通わせるためには母親が勤務していないと難しい。それに1人で家にいると、余計な事を考え...
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真正面に座る親父には笑顔はない。その横にいる爺様も同じ・・・だがお袋と孝三郎はニコニコしているし、美涼は顔を赤くして俯いている。この雰囲気で聞かされる話は・・・・・・「総二郎、実は先ほど美和子が付き添って美涼さんを病院に連れて行ったのだがな・・・そこで美涼さんが妊娠していることがわかったのだよ」「・・・・・・・・・そう・・・ですか」「予定では来年の4月の終わり頃になるだろうとのことだ」それを聞いて奥歯を噛み締めた。計算す...
「この池を作った時、大型の鯉飼育には水深3mが良いといわれてな。でも今では1mでも良いと言う話じゃったから、そこまで水を入れてないのだよ」「あぁ、それで水面までの距離があるのですね」「大型の鯉は深さより広さだと聞いて、池を拡張したのが3年前でな~」「・・・あの💢!!」「「「・・・・・・・・・」」」俺たちが庭池談議をしているとき、不意に聞こえてきた怒りの声・・・振り向いたら牧野が頭に水草付けてこっちを睨んでて、慌て...
イベントから10日が過ぎ、9月になった。まだ暑さは続いているが、この頃から宗家は茶会が増え、毎週末爺様は亭主を務めてくれた。それだけではなく、弟子の稽古に炉開きや口切りの打ち合わせや準備も手伝ってくれて、それはかなり助かった。親父もあれ以来おとなしくリハビリを続け、最近ようやく家元限定の仕事である「免状の発行」などを行えるようになった。茶を点てる動きの方はまだ人前では行わず、自分だけで確かめている...
「花沢さん!私、花沢の社員って設定ですか?」「うん。そうじゃないと朝から夜まで勤務って言われたか困るでしょ?あんただって事務仕事があるだろうし、花沢の社員がお手伝いってことになったら時短出来ると思うし」これは初めから思っていたこと・・・何日間勤務するかもわかんないのに、牧野を何時間も借りることになったら三毛猫の手も大変だろうし。でもそれを彼女に話してないとは思わなかった。(←自分のことである)「あぁ、...
どうやって帰ったのかも覚えていない・・・気がついたら私はマンションの駐車場に停めた車の中にいた。もう外は薄暗く、外で遊ぶ子どももいない。助手席には今日買った物があるけど、その中身も覚えてない・・・その下にイベントのパンフレットがあるのを見て、また大きな溜息を吐いた。本当に綺麗な人・・・着物がとてもよく似合っていた。ただ、妊婦さんには見えなかったけど、それも目立たない体質なのかもしれないし。・・・と言うことは妊...
花沢さんの家を見ていたから驚かなかったけど、この家もかなり広い・・・って、そんなことはどうでもいいんだけど!!急に現れたお爺さんの後ろをついていく花沢さんの袖を引っぱり、「どういうことですか?!」って睨み付けると・・・「え、なにが?」「私が花沢物産総務課の人間って事ですよ!」「あぁ・・・言わなかったっけ?」「言ってませんよ💢!!」←一応小声「ん?どうかしたのかね?」「「なんでもありませ~~ん」」振り向いたお...
オープニングセレモニーが終わり、控え室に戻ったのは11時45分。すぐに実演に入る団体もあったが俺たちの実演までにはかなりの時間がある。だから今から昼食を取ることになり、弟子が配られた弁当を俺たちの前に置いた。ここで美涼が手洗いに行くと席を立ち、流石にそれには付き添えないのでここで待つことに・・・彼女がいなくなってから、弟子にセレモニーの間の事を聞くと・・・「美涼様は初めのうち、ステージの横で総二郎様を見...
「「「「・・・・・・・何があったんだ?・・・・・」」」」「皆さんっ!私のせいじゃありませんから!!」こんな日に限って全員がほぼ同じ時間に帰社してきて、事務所のど真ん中にある冷凍庫を見て目がテン。そのうえ私が中にアイスを入れてたから、ドアを開けてまた目がテン。社長が「もしかして、これが今回の依頼料?」って言うから、両手をブンブン振って今日の出来事を説明した。そうしたらまたまた4人の目がテン、口がポカン・・・「日当...
イベントが開催される商業施設につくと、弟子2人が道具類一式を抱え、俺は美涼を伴って7階にある控え室に向かった。そこは広い部屋をパーティションで区切っただけの控え室・・・ホテルやイベント専用の施設じゃねぇからそれも仕方がない。案内するスタッフについてそこに入ると、何処からともなく「総二郎君じゃないか」と声がかかり、俺は軽く一礼して通りすぎた。その時に美涼もにこやかに挨拶し、皆が驚いてる・・・それも感じてい...
藤本が執務室に戻ってきたらすぐに自分のデスクの上を片付けた。それを見て「どうかしたんですか?」と言われたけど、彼の顔を見ずに答えたのは・・・「篠田産業に行ってくる」「え!急にどうしたんです?」「篠田会長から呼ばれただけ。1人で来いって言われたから藤本は残って仕事してて。急ぎのメールがいくつか来ていたから、それを片付けてくれると助かる」「私が行かなくてもいいんですか?」「・・・あの美人秘書に会いたいのかも...
「今週の土曜日、出勤になったんだ」「あ、そうなんだ・・・」「辞める前に少しぐらいは協力しようかと思ってね。印刷部にも急がせてる案件があってさ~~」「うん、わかった・・・お疲れだね」木曜日の夜にそんな話をされて、私はサイドボードの上にあるカレンダーを手に取った。そこで日にちを確認すると、その土曜日は8月24日・・・・・・この日付に覚えがあり、少し考え込んでると・・・・・・思い出した。前に先輩に頼まれて行った商業施設で...
「それでは会長、本日は楽しい時間をありがとうございました」「・・・(楽しそうに見えなかったが)・・・いや、こちらこそだよ。あの件、よろしく頼むよ」「・・・わかりました。またご連絡差し上げます」そう言って会長を見送ったのは20時30分。俺の後ろに立つ藤本も深々と頭を下げていたけど、会長秘書がモデルかと思うような美人だったとは・・・道理でこいつの機嫌が良いと思った。そしてタクシーが見えなくなるとホッと一息・・・今度...
妊娠を知ってから3週間が過ぎ、8月も後半・・・毎日が猛暑で朝から身体が怠かった。それでも朝早くに起きて朝食を作り、そのお皿を洗い終わった頃に・・・「じゃあ、行ってくる。車の運転、気をつけてね」「うん、行ってらっしゃい。今日から15時で終了だからそんなに心配しなくてもいいよ」「心配するよ、今はまだ安定期じゃないんだし」「・・・・・・ありがとう」「早く帰るから。君が好きなチーズケーキ、買って帰るからね」「楽しみに...
「・・・日が暮れるの、早くなったよね~」「専務、いいから書類に目を通して下さい。いつまで夕日を眺めてるんです?」「・・・もうすぐ業務終了だね」「なに言ってるんですか、この書類の報告期限は今日ですよ」「・・・・・・・・・・・・・・・」「明日出来ることは今日しなくていい、なんてのは通用しません」今はもう9月・・・とは言えまだまだ猛暑で、仕事のやる気なんてどこにもない。そんなことを藤本に言ったら殴られそうだから、仕方なくデスク...
約束した1時間はとっくに過ぎた。このまま知らん顔しようかと思ったが、そのあとのお袋の小言が鬱陶しい・・・だから30分遅れで美涼の部屋に向かった。あいつのために作られた離れは俺の部屋とはそんなに遠くなく、さっさと歩けば30秒もかからない。それなのに足が重く、随分長く歩いたかと思うほど・・・その離れの灯りが見えると、深い溜息が漏れた。嫌なことは早く終わらせようと思い、ノックをすると返事の代わりに美涼が出迎え...
裏口と言われたけど私のアパートのドアよりもめっちゃ綺麗なドア。そこにあったインターホンを押すと、すぐにカチャッと開いて、これまた綺麗なお姉さんが「いらっしゃいませ」と言ってニコニコと・・・彼の後ろにいる私を見たらクスッと笑ったんだけど、それはどういう意味だろう?その前のニコニコとは違い、若干悪意を感じたのは気のせいか?1歩中に入ると、流石に裏口って感じで、スタッフさんの傘とか通勤用の派手な靴?とかが...
「牧野さん、無理しないでね?」「はい、大丈夫ですよ~」「小さな物でも箱で持つと重いから、牧野さんは軽いものにしてね~」「台車、使わせてもらってますから」ふぅと息を吐きながら品出し・・・先輩スタッフさんが気を遣ってくれるけど、有り難いような、心苦しいような・・・まだまだ実感がないから気が引けてしまう。それよりも昨日の夜、片山さんが変なことを言い出したから気になって・・・**「よし・・・そろそろ茹でようかな・・・」2...
病室を出ながら通話をタップし、「急用?」と聞くと・・・『今、どちらですか?』「どうして聞くの?」『もしも会社に近い場所においででしたら、寄っていただけたらと思いまして』別に急いでる様子でもないのに、その言い方。しかも藤本だって休みのはずなのに・・・と、思った瞬間、嫌な予感がした。だから素直に「花沢総合医療センターにいるけど」と答えると、『それなら結構です』と言って、速攻切られた。「・・・・・・なんなんだ💢」お...
親父が騒ぎを起こした翌日、西門には美涼とその母親が来ていた。そして親父を見舞い、爺様にも挨拶・・・前日とは打って変わってお袋の機嫌は良かった。俺はと言うと・・・「本当にいいのですか、総二郎様」「別に・・・いいんじゃね?これで親父の気持ちが安らぐのなら・・・」「でも、その気はないとあれほど言ってらしたのに」「・・・俺が西門に出来ることはこのぐらいだからな・・・」「総二郎様、そんな言い方は・・・」「志乃さん、そんなに心配...
私が持ってたお見舞いの花を凛々花さんに渡したけど、そのお礼は当然花沢さんに向けられた。しかも私が渡すときは無表情だったのに、彼に向けた笑顔は極上・・・人間、こんなにも瞬時に顔を変えられるのかと驚いたくらいだ。花沢さんはそんなことも気にせず、側にあった椅子に座ってダンマリ。それでも凛々花さんは嬉しそうに「昨日までは苦しかったんですけど~~」と、自分の体調のこととかを話してた。それに対して花沢さんは「は...
「もしかして・・・そんな毛利に真実を話されたら困ると考えていたのは・・・佐藤、お前じゃないの?」「なるほど・・・毛利さんから5つのネックレスの事を聞き、そのメンバーも喋らせ、最終的には毛利さんを・・・ってことですか」「うそっ!佐藤さん、本当なんですか?ホントにそんな事をしたんですか?!」既に佐藤は諦めた感じがあった。自暴自棄というか、自分の未来が崩れ落ちたと言うか・・・そんな心のうちが読み取れたのは、こいつが自...
総二郎が特別に予約してくれたみかん農園は伊豆の国市にあり、お昼ご飯を食べたところからそんなに離れていなかった。だから14時には到着し、そこで農園のおじさんに出迎えられ、さっそくみかんの木の近くまで案内してもらった。どうやら予約の時に「必要なものを全部用意して欲しい」と頼んだらしく、鋏と軍手を手渡された。しかも長靴まで・・・それを見て総二郎が「靴も?!」って言ってたけど、勿論木の下は地面・・・しかも少し湿...
つくしが録音した音声を聞いても、佐藤は納得しようとはしなかった。それどころか自分の首を押さえて・・・「あいつと俺に血縁関係なんてない!あいつはこの20年間、俺をずっと疎ましく思って・・・子供の時には容赦なく暴行をしたんだ!その証拠がこの首の傷跡だ!庭で遊んでいた時、ほんの少し車に傷が付いたってだけで・・・それだけで俺を何度も殴り、転んだ拍子に生け垣に突っ込んで首と背中に大怪我したんだ・・・!一応病院には行った...
クリスマスが終わって、26日には居間に置いてたツリーを片付けた。昨日までとは違って気温も上がり、今日は凄くいいお天気・・・予報では明日も明後日も晴れだった。「つくしちゃん、雪が積もらなくて良かったわねぇ~」「本当ですよね~、雪だとお買い物大変だし」「あら、そうじゃないわよ・・・明日、お出掛けでしょう?」「・・・///・・・はぁ・・・まぁ、そうなんですけど、本当にいいんでしょうか・・・宗家は行事が沢山あるんじゃないです...
「この野郎!やっぱり俺を騙してたのか!!」「きゃああああぁっ!!」「佐藤君、やめなさい!!」この俺がいる前で佐藤が立ち上がり、つくしに向かって拳を振り上げた。勿論こんな事を許すはずがなく、佐藤の身体が応接室のテーブルに乗りかかったところでその腕を掴んだ。そして俺の方に顔を向けさせ、逆に俺の右ストレートを喰らわせた!興奮しすぎて隙だらけの佐藤は避ける事もせず、それを顔面に受けて吹っ飛び、止めようとし...
「いらっしゃいませ、西門様。ご案内申し上げます」このホテルの上層階にある展望レストラン・・・そこの特別席は一般のフロアとは別になっていて、ウンザリするほど豪華で広々とした部屋だった。そこに2人分の席が用意され、天井にはシャンデリア、部屋の隅には薔薇のアレンジメントと大人っぽいクリスマスツリー、カーテンが全開で東京湾が一望できた。椅子もテーブルも見るからに極上品・・・お皿もカトラリーもキラキラで、変に緊張...
火曜日の10時・・・予定通り俺は「急遽美作商事に行く」と言い、藤本を連れて執務室を出て行った。・・・と言うのは表向きで、執務室から休憩室を通り過ぎ、いつもの俺専用応接室で待機。当然藤本はその話を秘書室でしており、俺と一緒に外出すると言って社用車のキーも持ちだした状態で応接室に居た。その時に藤本はつくしに資料探しを命じて、つくしも資料室に行ったフリをしてこの部屋に来ていた。この外出の予定時間は1時間。つまり...
家元夫人と伽耶さんがいないと判っていても、正門の前に立つのは憚られる。だから脇道を出た所で待ってると、1台のタクシーがやって来て、門の前で停まった。誰かが降りてくるのかと思って隠れたけど、どうやら今からお客さんを乗せるよう・・・もしかして家元かな?って思ったけど、家元なら宗家の車で出掛けるはず。だから西門に来ていたお客さんが帰るのかと思い、尚更引っ込んだ。そうしたら門の向こうから出て来たのは若い男性・...
月曜日・・・私はクタクタ状態で出勤した。何故なら、類が土曜日から泊まっていたから・・・・・・1度許したら容赦なくなり、日曜日は一歩も外に出ることなく、部屋で襲われまくった。そして言ったのは、「洗濯機、やっぱり業務用にしたら良かったんじゃないの?」・・・確かに日曜日の朝からシーツを2枚洗い、真夜中に類が帰ったあとも洗濯機の準備をした。それを洗ったのは今朝で、サンルームにはシーツが4枚も・・・病院か保育園か!ってぐら...
あきらと類が帰った後、ズキズキする頭を抱えたまま仕事をした。それは殆どが年末挨拶の客の相手・・・親父と考と一緒に並んで、もう何組の客と話したか判りゃしない。その中にはさり気なく西條の話をするヤツも居て、その度に「ご心配かけます」とだけ返していた。伽耶のことが報道された時につくしの名前は出なかったが、『知人女性を誘拐監禁して危害を加え』とあったので、その知人女性と俺の関係を探るヤツも・・・それには親父が「...
早めにランチを済ませ、つくしを連れて古い都営住宅に来たのは13時過ぎだった。そこは5階建て・30世帯が入居できる建物で、全部で5棟あった。俺が聞けたのはこの町の都営住宅だと言うことだけで、何棟の何号室かなんて事は判らない。しかも住んでいたのは毛利君子だろうけど、相手の男の名前も知らない。ただ、兄が養子に迎えたの言うのだから「佐藤」という名前の男だろうと言う事ぐらい・・・そんな程度しか情報がないのに、...
テーブルの上の料理は殆どなくなった。そしてお約束のデザートは私も用意していたけど、総二郎達も買って来てくれたから、小さなケーキが沢山並んだ。それを食べるのは勿論私が中心で・・・でも私が作ったガトーショコラも3人が美味しそうに食べてくれた。それが終わった頃に美作さんが目で合図したかと思うと、花沢類が小さなバッグからガサゴソと何かを取り出した。それは美作さんも同じで、私がキョトンとしてると・・・「はい、牧野...
その日の夜、俺は再び神崎に電話をした。用件は「もう少し詳しく毛利吉弘の事を聞きたい」と言うこと・・・・・・まだ加代には内緒にして欲しいと付け加えて。もう彼は花沢の職員じゃないし、頻繁に連絡を取っているわけじゃない。だから『それは構いませんが・・・』と些か不審がっていたので、この時には俺が調べている本当の理由を教えることにした。お婆様の葬儀の日に盗まれたネックレスのことそれを部屋から持ち出した俺が襲われたこ...
「つくしちゃん、その人達何歳だっけ?」「やだ、お婆ちゃん。総二郎と同じ歳ですから28・・・誕生日まだだから27歳ですよ」「あぁ、そうだわね!じゃあお酒も飲むわねぇ~~、急いで注文する?」「自分達が飲みたい物を買って来ますよ、きっと!それよりも新しいお箸ってありましたっけ?」「それなら食器棚の右端の引き出しにあるわ」「あ、ハンガーも出しておかなきゃ、コートが掛けられないかも!」これから美作さんと花沢類...
木曜日、朝礼の時から佐藤さんは私の事をガン見してる。でもそれにはすぐに反応せずに、午前中は会議室で、午後に行われる会議のセッティングをしていた。今日は本社役員と大阪、福岡、札幌にある関連会社との合同Web会議・・・それ専用のパソコンと、正面にはモニターにスピーカーにマイク。これの接続方法は聞いたんだけど、難しくて今日もこんがらがってた。当然のように誰かに助けてもらわないといけないんだけど、今の時点で手の...
24日のクリスマスイブ・・・この日も夕方まで仕事の予定だった。その仕事も年末年始の行事や初釜の準備が殆どで、生徒の大半はもう稽古納めをしている。だからそこまで忙しいわけじゃなく、事務的な事が多かった。しかもお袋が不在だから、何故か婦人会のアレコレを俺が代行することに・・・・・・とは言え、観劇や食事会に付き合うわけではなく、時々行っていた婦人会の茶話会に出るぐらい。そして今日はそのクリスマス茶会・・・茶道にもク...
俺が帰宅したのは20時で、その頃にはつくしは加代と食事を済ませ、リビングで少々ぐったりしていた。聞けば今日のディナーはフレンチで、久しぶりのフルコース。でもつくしは殆どマナーを忘れていたらしく、カトラリーもマトモに使えずドジを連発し、加代から「もっと頻繁においでなさいませ!」と怒られたらしい。俺にとっては嬉しいことだけど、つくしにとっては地獄・・・「お肉の味が判んなかった」って真っ青な顔してたから笑...
『お久しぶりです・・・総二郎様』その声を聞いて深いため息を1つ・・・一体今頃なんの話があるのかと、俺はスマホを耳に当てたままベッドに倒れ込んだ。しかもどう答えいいのか判らない。お元気でしたか・・・なんてのは嫌味だろう。何か用ですか・・・そう言っても良かったが、そんな事は聞きたくもない。掛けてくるな!・・・これが本心だが、あんな弱々しい声を聞かされたら怒鳴ることも出来ない。しかもこいつは間違いなく起訴される・・・前科...
つくしからの報告は22時だった。今日はランチだけで夕食は自分1人でマンションで食べたって・・・それを聞いてホッとした。何故報告が遅くなったのかと言えば、俺の方が午後からの仕事が(怒りの為に)進まず、残業になったから・・・それを言うと、『でも顔には出てなかったよ♪』って褒めてくれた。「つくしはすごく動揺していたけどね・・・」『あはは!焦っちゃって、類をランチに誘ったりして、馬鹿だよね~』「てか、行かせたくなか...
12月22日・・・私は崇子さんと一緒に街の中を歩いてた。何処を見てもクリスマスイルミネーションで、それを見ながら「可愛いわねぇ」「あれ、素敵ですね」って言葉ばっかり・・・そしてとあるお店に行くと、「こんにちは~」と言って中に入った。それは私と仲良くしてくれた、小さな本屋のおばちゃんのお店だ。「いらっしゃ・・・・・・まぁ、牧野さん?!牧野さんじゃないの!」「あはは!奥さん、お元気そうで~」「あなた、今は北海道じ...