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映画レビュー、俳優論など映画のことを中心としたブログ

最新映画や海外ドラマ、Netflix配信作を中心とした映画レビュー。アカデミー賞予想記事も有り。半期毎に総括ベストテン記事も書いています。「ドラマも同じくらいの熱量で見ていなければ今の映画は語れない!」が最近の信条です。

長内那由多のMovie Note
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2017/03/20

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  • 『関心領域』

    異色の宇宙人侵略映画『アンダー・ザ・スキン』から10年、ジョナサン・グレイザーが帰ってきた。最新作『関心領域』は2023年のカンヌ映画祭でグランプリを獲得。アカデミー賞では作品賞はじめ5部門にノミネートされ、2部門に輝いた。その国際長編映画賞受賞スピーチで、グレイザーはイスラエルによるパレスチナ侵攻と、ハリウッドの新イスラエル姿勢を真正面から批判。『関心領域』のポストクレジットシーンとも言うべき決定的瞬間であった。示唆に富んだタイトルであり、観客にも自身の関心領域を幾重も拡大することが求められる映画だ。第2次大戦下、アウシュビッツ強制収容所の真隣りに暮らす所長ルドルフ・ヘスと家族の日常を盗み見るかのような本作には、観客を怠惰にさせる安易な説明は一切登場しない。カメラは各部屋の一点に置かれ(グレイザーの名を...『関心領域』

  • 『ドライブアウェイ・ドールズ』

    2021年にジョエル・コーエンが単独監督作『マクベス』を発表して以来、事実上コーエン兄弟としての活動停止しているジョエルとイーサン。インタビューによればケンカ別れでも何でもなく、互いに興味の方向性が変わったことに由来する、キャリアと年齢に起因したごく自然な活動停止だという。今回、弟イーサンの単独作『ドライブアウェイ・ドールズ』が発表されたことで、逆説的にコーエン兄弟というユニットの作家性が解き明かされているのが興味深い。振り返れば彼らの作風はシリアスとコメディ、クラシックフィルムとパルプノワールといったいくつもの対極的な要素が同居し、フィルモグラフィには犯罪劇もあればドタバタコメディも並ぶバラエティの豊かさだった。『マクベス』を観る限り、どうやらシネフィル気質の作風は兄ジョエルの趣味で、パルプノワールやナ...『ドライブアウェイ・ドールズ』

  • 『ありふれた教室』

    2023年のアカデミー賞で国際長編映画賞にノミネートされたこのドイツ映画は、学校教諭が見たら卒倒モノのスリラーである。小学校の低学年を担当するノヴァク先生は校内で多発する窃盗事件を受け、自身の財布を囮に監視カメラを設置する。果たせるかな、カメラには財布を抜き取ろうとする腕が映っており、ノヴァク先生は疑わしい人物を告発するのだが…。本作が長編4作目となるトルコ系ドイツ人監督イルケル・チャタクが義務教育の現場に象徴するのは戦中、戦後から現在へと繋がるドイツ史そのものだ。授業中、突如として押しかけてきた教員たちが男子と女子を選別し、財布を置いて移動を強要する様はまるでナチスによるユダヤ人狩りのようだ。学級委員を呼び出して疑わしい生徒を密告させようとする場面は戦後、東西冷戦によって監視社会となった東ドイツの秘密警...『ありふれた教室』

  • 『悪は存在しない』

    前作『ドライブ・マイ・カー』でアカデミー作品賞はじめ4部門でノミネートされ、国際長編映画賞を受賞。一躍、日本を代表する映画作家となった濱口竜介の最新作は180分の前作から一転、わずか106分に凝縮され、文字通り観客を煙に巻くミステリアスな作品だ。長野県の山深い田舎町にグランピング場の建設計画が持ち上がる。企画、運営に携わるのは東京に本社を置く芸能事務所で、拙速な計画がここまで通ったのはどうやら政府の助成金を見込んでのことらしい。住民集会にはろくろく権限もない担当者が2名派遣されるばかりで、住民たちからの理路整然とした質問にも答えることができず、自ずと場は紛糾していく。見るべき場面はいくつもある本作だが、意外なことに最大のハイライトがこの説明会のシーンだ。『ドライブ・マイ・カー』でも繰り返された“素読み”を...『悪は存在しない』

  • 『アイアンクロー』

    1980年代に必殺技“アイアンクロー”で人気を博したエリック・フォン・ファミリーの伝記をショーン・ダーキンが監督するとなれば、通り一遍の実録映画になるはずがない。冒頭、寒々しいモノクロームで映し出される現役時代の父フリッツのヒールぶりに、スコセッシとデ・ニーロの傑作『レイジング・ブル』が頭をよぎるが、ダーキンが撮るリングは禍々しいまでに気味が悪い。後に“呪われた一家”と呼ばれる彼らにまるで何かが取り憑いているかのように見えるのだ。フリッツは6人の男子に恵まれるも(映画では1人省略されている)、5人が病死や自殺によって命を落としたのである。ダーキンは息子たち1人1人のキャラクター性よりも、フリッツを頂点とする家庭構造にこそ注目している。トレーニングから食事の管理はもちろん、プロモーターに転身したフリッツは息...『アイアンクロー』

  • 『かくしごと』

    絵本作家の千紗子は長年、絶縁状態にあった父がアルツハイマーに冒されたことを知り帰郷する。父はすでに我が娘もわからなく、やり場のない怒りを抱えた千紗子の介護は芳しくない。そんなある日、彼女は事故で記憶を失くした少年を保護。自分の子と偽り、共同生活を始めるのだが…。北國浩二の小説『嘘』を『生きているだけで愛』の監督関根光才が自ら脚色した本作は、原作のトーンを捉え切れているとは言い難い。文学調の書き言葉を役者に喋らせるだけのメソッドが確立されておらず、特異なシチェーションにリアリティを持たせることに失敗している。関根の演出、脚本の不手際を父親役の奥田瑛二、医師役の酒向芳ら偉大なる名優たちの自然主義的演技が救っていることが唯一の慰めだろう。『かくしごと』24・日監督関根光才出演杏、奥田瑛二、中須翔真、佐津川愛美、...『かくしごと』

  • 【ポッドキャスト更新】第53回 5月公開作リキャップ『マッドマックス:フュリオサ』『ありふれた教室』

    5月の劇場公開作を振り返り。シリーズ最新作『マッドマックス:フュリオサ』を楽しみにしていた長内。ところがどうにも歯切れの悪い感想で…本作はジョージ・ミラーにおける『ファントム・メナス』?アベンジャーズ初期メンバーはみんな小悪党に転向中?アニャ・テイラー=ジョイのフィルモグラフィにおける共通点とは?(13:50頃より)ドイツ映画『ありふれた教室』は学校教諭は卒倒モノの1本。あらゆる描写にドイツの歴史が内包されている?現代ドイツ社会の縮図そのもの?劇中で言及される不寛容方式とは?音声はこちらからもお聞きいただけます番組内で言及している各作品のレビューはこちら『マッドマックス』『マッドマックス2』『マッドマックス/サンダードーム』『マッドマックス:怒りのデス・ロード』『サラブレッド』『クイーンズ・ギャンビット』...【ポッドキャスト更新】第53回5月公開作リキャップ『マッドマックス:フュリオサ』『ありふれた教室』

  • 『世界の人々 ふたりのおばあちゃん』

    第96回アカデミー短編ドキュメンタリー賞ノミネート作。結婚によって親戚同士となった2人のおばあちゃんは意気投合。まるで姉妹のような仲睦まじさで、互いの連れ合いが先立った今は一緒に暮らしている。眠る時はなんとベッドも同じだ。2人は人生観も死生観もまるで異なるが、人間がひとつ屋根の下で共に暮らすにはさほど重要でないのかも知れない。コロナ禍のロックダウン中に撮影された本作は孫ショーン・ワン監督が祖母たちへの愛を込めた、微笑ましいプライベートフィルムである。『世界の人々ふたりのおばあちゃん』23・米監督ショーン・ワン※ディズニープラスで配信中※『世界の人々ふたりのおばあちゃん』

  • 【ポッドキャスト更新】第52回 本当に悪は存在しないのか?『悪は存在しない』『アイアンクロー』

    舞台も終わり、見逃していた映画をガンガン観ている長内が4月劇場公開作を振り返り。1980年代に活躍したプロレス一家“フォン・エリック・ファミリー”を描く『アイアンクロー』は、実録伝記モノだけどホラー?監督ショーン・ダーキンのデビュー作『マーサ、あるいはマーシー・メイ』とおなじく“カルト”集団についての映画?実は映画では描かれていないもう1人の兄弟が存在する?(9:30頃より)濱口竜介監督の最新作『悪は存在しない』が公開。なぜ村の住人は全員、棒読みで喋るのか?『ドライブ・マイ・カー』にも登場した濱口監督の演技メソッドにはいったいどんな意味があるのか?本作はイタリアのある気鋭映画作家の作品と似ている?本当に悪は存在しないのか?音声はこちらからもお聞きいただけます番組内で言及している各作品のレビューはこちら『戦...【ポッドキャスト更新】第52回本当に悪は存在しないのか?『悪は存在しない』『アイアンクロー』

  • 【ポッドキャスト更新】第51回 『リプリー』光と影のイタリア

    TVシリーズを最終回までネタバレ有りでお喋りする“TVシリーズ雑談会”。今回はNetflixから配信中のリミテッドシリーズ『リプリー』を取り上げます。本作の主役は実はロバート・エルスウィットによるカメラ?なぜ全8話モノクロしたのか?脚本家として名を馳せたショーランナー、スティーヴン・ザイリアンの作風とは?この春はアンドリュー・スコット祭り?『ワーニャ』での凄さも解説。なぜリプリーは何度もカラヴァッジョの絵画を見ているのか?原作を同じにする映画『太陽がいっぱい』との決定的違いはなにか?今回のリプリーはソーシャルメディア時代の“並列化”された存在?ダコタ・ファニングが最終回で見せた巧みさとは?フレディ役で視聴者に違和感を残す俳優はなんとあの人の子供?上半期ベストの1本です!音声はこちらからもお聞きいただけます...【ポッドキャスト更新】第51回『リプリー』光と影のイタリア

  • 『猿の惑星 キングダム』

    20世紀フォックスのレガシーとも言うべき人気タイトル『猿の惑星』シリーズ最新作も、ディズニーの買収によって例外なく傘下20世紀スタジオからリリースされた。そう、この星を支配しているのは人間でもなければ猿でもなく、金を持ったミッキーマウスに他ならない。偉大なる名優アンディ・サーキスと監督マット・リーヴスによる前3部作(リーヴスが参加したのは2作目から)が目覚ましい成功を収めて間もないにもかかわらず、ディズニーは『スター・ウォーズ』同様、金のなる木に次の果実を実らせる必要があった。だが諸作同様、なんとも青にがく、不作である。『猿の惑星』シリーズの醍醐味とは時に薄ら寒くなるほどの風刺性であり、必ずしも親子で楽しめるファミリーアドベンチャーではないだろう。前作から数百年を経て猿たちの社会は細分化し、始祖とも言うべ...『猿の惑星キングダム』

  • 【ポッドキャスト更新】第50回 『シュガー』私立探偵ほど素敵な商売はない

    TVシリーズをシーズン最終回までネタバレ有りでお喋りする“TVシリーズ雑談会”。今回はAppleTV+で配信中の『シュガー』について。重大なネタバレは21:30以後に行っているため、そこまでは聞いてくれても大丈夫。ハードボイルド映画の韻を踏んだ、“映画についてのTVシリーズ”?映画と共に生きる人の目から世界を描いている?映画批評は人を救うのか?エイミー・ライアンの起用は出世作となったあの映画からの“引用”?TVシリーズ見ずして映画を語れない時代であることは、シュガーも承知?音声はこちらからもお聞きいただけます【ポッドキャスト更新】第50回『シュガー』私立探偵ほど素敵な商売はない

  • 『異人たち』

    2023年に亡くなった脚本家、山田太一の代表作『異人たちとの夏』を『荒野にて』『さざなみ』のアンドリュー・ヘイが現在のロンドンを舞台に脚色、監督した本作は、原作にヘイの作家性が接近、肉薄し、まるで山田と対話するかのような理想的な映像化である。ロンドンの中心部、人気のない高層マンションに暮らす脚本家のアダムは、これまでのヘイ作品の主人公と同様、寄る辺のない孤独に苛まれている。アダムの新作のテーマは”両親”。しかし彼らはアダムが12歳の頃、交通事故で他界してしまった。両親の面影を求め、郊外の生家を訪ねるとそこには亡くなった80年代当時の姿のまま、2人が暮らしている。数十年ぶりの再会に喜び合う3人。アダムはゲイである自身のセクシャリティを両親はどう思っていたのか確かめようとしていく。1973年生まれ、今年51歳...『異人たち』

  • 『バティモン5 望まれざる者』

    2019年の長編監督デビュー作『レ・ミゼラブル』でカンヌを圧倒し、脚本を手掛けた2022年のNetflix映画『アテナ』で世界中の度肝を抜いたラジ・リは、今や“フランスのスパイク・リー”とも言うべき重要監督の1人だ。フランス郊外団地に追いやられてきた人々の烈火のような怒りを撮らえるラジ・リは、再び自身が生まれ育った街モンフェルメイユの団地“バティモン5”を舞台に、現代フランス社会の問題を炙り、文字通り映画を発火直前までヒートアップさせていく。冒頭、団地を空撮するダイナミズムが今や“フランス郊外団地映画”とも言うべきジャンルを確立したラジ・リならではスペクタクルだ。カメラが団地の一室に入り込むと、そこでは葬儀が行われている。様々な国籍の多様な文化が凝縮され、移民二世、三世が新たなフランス社会を築く中、行政は...『バティモン5望まれざる者』

  • 【ポッドキャスト更新】第49回 天下統一の夢『SHOGUN 将軍』

    TVシリーズをネタバレありで最終回までお喋りする“TVシリーズ雑談回”。今回はディズニープラスで配信中のFX作品『将軍』について。本エピソード収録後、FXはエミー賞獲得を目指してリミテッドシリーズから連続ドラマシリーズへとカテゴリーを変更。日本人俳優の歴代最多ノミネートが実現?いやいや、主要部門の独占受賞もあり得る?シリーズの魅力を興奮気味に解説する長内(今回、鼻詰まりがひどく、お聞き苦しくてスイマセン)。しばしば『ゲーム・オブ・スローンズ』と比較される本作。鞠子さまはデナーリスを供養した?藪重さまは実はシオン枠?そして何処にも当てはまらないのが藤さま!?GOTとの決定的な違いは真田広之が象徴する洗練と夢幻美?最終回、なぜ按針は夢を見ているのか?音声はこちらからもお聞きいただけます【ポッドキャスト更新】第49回天下統一の夢『SHOGUN将軍』

  • 【寄稿しました】『ピークTV 米ドラマの黄金期』(寄稿しました)

    共同通信社を通じて『ピークTV米ドラマの黄金期』という全6回の短期連載を寄稿しています。ここ約10年を振り返り、今からでも観るべきTVシリーズ12本を紹介していきます。第1回Netflixの躍進『ストレンジャー・シングス』『ザ・クラウン』第2回“ニュークラシック”の誕生①『ブレイキング・バッド』『ベター・コール・ソウル』第3回“ニュークラシック”の誕生②『ゲーム・オブ・スローンズ』『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』第4回映画スターの誕生はTVシリーズから『トゥルー・ディテクティブ』『クイーンズ・ギャンビット』第5回新たなる物語、複雑化する文脈『パチンコ』『地下鉄道』第6️回PeakTVは終わったのか?『メディア王華麗なる一族』『一流シェフのファミリーレストラン』埼玉新聞4/11より愛媛新聞4/12より茨城新聞...【寄稿しました】『ピークTV米ドラマの黄金期』(寄稿しました)

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