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2017/11/17

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  • 36

    二人の心は前世が支配していく。誤解が生じていると分かった時点から齟齬を解消させたくて仕方なかった。「蒔乃姫。 私は出会った時からずっと姫をお慕いしておりました。」「私も同じです。 楓弥様。」「初めてお会いしたのは姫のお城でした。あの時、一番端に座っている姫に一目で恋に落ちました。 私がまだ11歳の頃です。そこから無謀にも姫を妻にするために頑張ってきました。」「ありがとうございます。」つくしは頬を染...

  • 35

    「もしかして、、、牧野って蒔乃姫?」類がつくしを見ながらポツリと言葉を漏らす。つくしはその言葉に目を見開き類を見た。そして確認するように問う。「もしかして、、、楓弥様?」つくしの声色は夢の中で何回か聞いた蒔乃姫の声色だった。会話を交わしたのは数えるほどだが、体調の悪い蒔乃は声も小さく尋ねる様な声だった。類は思わずつくしを抱きしめる。何故だか分からないが体が自然に動いた。ずっと探していた物を見つけた...

  • 34

    類とつくしは、ゆっくりと見て回る。そして笠原家の墓がある寺では、一つ一つじっくり見る。だが楓弥の名前は見つけられなかった。丁度昼前だった事もあり、次の場所へ歩きながら近くのそば屋に入る。今日は小机城周辺の散策を予定している為、まだまだ歩く。外は暑いし定期的に水分補給をしているものの、そろそろ冷房の利いた部屋に入りたいと思っていたところだ。入ると同時に二人は同じ言葉が漏れる。「「涼しい、、、」」あま...

  • 33

    類とつくしは連絡先を交換した物の、お茶の稽古の時に纏めて話をすれば済む事と特に連絡を取らなかった。そしてお茶の稽古もきちんと行った。「牧野は茶道は初めてだと分かったが、畳の歩き方とか座り方とか本当に誰かに教わっていないのか?凄く綺麗なんだが?」「教わってはいないけどテレビとかで見た事があるからかな?」つくしは夢の中の蒔乃の仕草がそのまま行動として出ていると分かっているが、それを話すことは出来ず誤魔...

  • 32

    つくしの住むマンションに到着し、つくしは車から降りる。すると類も降りて来た。「俺もお爺さんに挨拶しておこうと思って。ついでに神奈川のお寺巡りを一緒にする事の了承も貰っておいた方が良いだろ?」「確かにそうですね。 ありがとうございます。本当は一人で行こうと思っていたんですけど、類さんがいてくれると心強いです。」「俺も。」こうしてつくしは類を伴いマンション内へ入った。そして玄関の鍵を開けると大きい声で...

  • 31

    つくしと類はジッと中庭を見る。苔の生えた石の上に光の筋が当たりキラキラしている。類は何度も見てきた庭だが、確かに魅了されても無理は無いと分かる。それにここの庭はなんとなく楓弥がいた時代を思い出させる。「あのさ。 あれから何か発見した事ある?」「まだその段階まで行っていないんです。小田原城は北条系なので北条系の城やお寺をピックアップしているんですけど、小さな城は載っていなくて。」小さな城、、、蒔乃と...

  • 30

    つくしは図書館へ通い続けている。日本史コーナーの本が借りられているのを見ては、もしかして類さんでは?と思いながら、まだ借りていない本を手に取った。今日は初めての茶道の稽古へ行く日の為、図書館でゆっくり出来ない。サッとその本を借りる手続きを済ませると駐車場へと向かった。つくしは電車通学の為、駐車場へ足を運ぶことは無い。初めて見る駐車場は遊園地並みに広かった。「広い、、、」思わず声に出すほど呆けてしま...

  • 29

    月曜日、、、総二郎は盛大に後悔していた。元気のない総二郎を見て、F3はすぐに土曜日に行われた先代の知り合いの孫の茶道に関して何かあったと分かる。司と類はあきらに視線を送り、あきらが代表して総二郎に声をかけた。「何かあったのか? もしかしてお前のお茶が不味いと言われたのか?」「いや、、、とりあえず美味しいとは言われたけど。」「けど?」「はぁ、、、」総二郎は深い溜息を吐いた後、ゆっくりと話し始めた。「...

  • 28

    つくしは手にしていたお椀を下に置くと、ゆっくりと後ろを向く。そこには見事な中庭が見える。苔の生えた灯篭を見ると何時からそこに置かれていたのか分からないほどだ。「見事な中庭ですね。」「まあな。」「近くで見ても良いですか?」「あぁ。」つくしはすぐに中庭へ近づき座って眺める。それを見て総二郎は自分のお茶は中庭に負けたと分かる。もちろん全然別物で比べられる物ではないのだが、それでも茶器を見るでもなく、お茶...

  • 27

    土曜日。つくしは祖父と共にお茶を頂きに出かけた。どこかの茶房だと思っていたつくしは、到着した家を見て驚く。茅葺屋根の門がありその奥に歴史ある家が見え隠れしている。ぐるりと木の塀で覆われた場所はかなりの広さの敷地だと分かる。「誰かの家? 凄く古風な家だけど。」「ここは茶道家の家なんだ。」「茶道家? 茶道を職業にしている人の家って事?」「そうだ。 西門流で古くからある名門だ。 ここでお茶を頂こうと思っ...

  • 26

    学校が始まり、つくしは定期的に図書館へ足を運んでいた。あれだけ混雑していた図書館も当初の人数に戻っていた。あれ以降、類を見かけなくなったからだろう。そんなある日の夜、祖父が話しかけてきた。「つくし。 今週の土曜日は空けておいてくれ。」「良いよ。 どこか行くの?」「あぁ。 つくしが喜ぶ場所だ。」「あたしが? どこだろ?」「美味しい抹茶が飲めるところだ。」「へぇ。 おじいちゃんが太鼓判を押すぐらいだか...

  • 25

    海岸の散歩を終えた類が別荘に戻ると直ぐに夕食となった。それを食べながらも三人はやはり今日のウインドサーフィンの話になる。「風もねぇのにジッとボードの上に立つのは難しいだろ?」「風があった方が難しいんじゃね?」「まあ明日の勝負はあきらと類で良い勝負なんじゃね?」「だろうな。」あきらは決して運動神経が悪い訳では無い。サーフィンもそうだが波が無いとボードの上には乗れない。それと同じ原理だろう。「まっ、俺...

  • 24

    円覚寺の後その周辺の寺を巡り16時には鎌倉のホテルまで送ってもらった。「今日はありがとうございました。」「いや。」「ではこれで失礼します。」「ん。」二人は連絡先も交換することなく分かれる。それは呆気ないほどに。同じ様に小田原攻めに関して調べているし今後も何か情報があれば教えて欲しい所だが、調べているのは北条家の事ではなく夢でみた楓弥と蒔乃の事だ。何か得られる物はないと互いに感じていた。それ以外に類...

  • 23

    東慶寺についた二人は早速中へ入る。「鎌倉はお寺とか一歩中に入るとタイムスリップしたような景色が広がっていますね。」「あぁ、それは俺も感じた。」二人は入り口から奥に続く景色を見て感嘆の息を吐く。奥へ進んでいくと山門があり茅葺の屋根だ。「昨日から訪れている場所も全て茅葺の屋根でした。」「趣があるし、ここを昔の人が訪れていたと思うと凄いよな。」「ここは戦国時代は尼寺だったんですが知っていますか?」「ん。...

  • 22

    つくしは鎌倉歴史文化博物館を出た後、近くにある北条雅子が祭られているという浄福寺へ向かった。小田原城は北条家の城だ。という事は楓弥と蒔乃も北条家ゆかりの墓に埋葬されていても不思議ではないと考えたからだ。そこは徒歩で行ける近さだ。そして墓を一つ一つ見て回る。かなりの年月が経っている為、お墓に苔が付いている物ばかり。北条雅子の墓は案内板のようなものが立っているが、他の墓には何一つ書かれていない。もちろ...

  • 21

    「じゃあ行ってくる。」「気を付けてね。」「本当に大丈夫か? ひとりで電車に乗れるのか?」「当たり前じゃない。 それよりも久しぶりのゴルフで無理しないでね?日中は暑くなりそうだから水分補給も忘れないでね。」「あぁ。 じゃあ何かあれば連絡するように。」「分かった。 じゃあね。」つくしはホテル前で祖父を見送ると、すぐに駅へ向かって歩く。まずは鎌倉歴史文化博物館だ。類は何時になく早く起きた。それにはF3も驚...

  • 20

    つくしは祖父と報国寺の竹林を感慨深く見ていた。鎌倉時代からあったと言われている為、もしかして楓弥も来た事があるのでは?と思いを馳せる。その為、竹林の隙間に楓弥の面影を探してしまう。そんな自分に思わず笑いが漏れる。どれだけ楓弥を恋しがっているのかが分かるからだ。すると、茶席と書かれた案内板が見えた。「つくし。 抹茶が飲めるぞ。」「もう要らない。」祖父が笑いながら尋ねてくる為、つくしも笑いながら返事を...

  • 19

    類は司の車で逗子へ向かっていた。車内ではトランプゲームに興じていたのだが、ふと総二郎が呟いた。「そう言えば逗子に行く前に一条恵観山荘へ行ってみねぇか?」「どんなところだ?」「国の重要文化財に指定されててな。江戸時代に京都にあった皇族の茶室なんだが鎌倉に移転されたんだ。すっげぇ趣のある場所でさ。」総二郎は熱く語るが三人はそれほど興味が湧かない。「今から逗子へ行ってもウインドサーフィンだろ?明日もだろ...

  • 18

    類は自宅で借りた本に目を通していた。もちろん既に小田原攻め付近は読んでいる。ただその後に生き残った可能性のある小姓三人の名前がないか調べていた。楓弥は森沢楓弥のはずだ。だが幼名の為、城主の名前は違っている。その名前が分からない。楓弥は『父上』と呼んでいたし、周囲は『城主様』『殿』など敬称で呼んでいた。すると扉がノックされ、幼馴染の三人が入ってきた。「よぉ。」突然の訪問に類はあからさまにムスッとした...

  • 17

    つくしは真剣に本を読んでいた。それで分かった事だが、記憶の中では楓弥達は豊臣軍が攻めてくるため武士たちは小田原城へ向かい、城は無人にすると言っていた。という事は城に勤めていた武士は全員小田原城へ行ったはずだ。だが本によると小田原城に籠城した物は五万六千ほどとある。つまり楓弥達の城には一体どれくらいの武士がいたのか?更に蒔乃が生まれ育った城は、楓弥の城よりも更に規模が小さかったはず。それを考えると、...

  • 16

    類は初めて図書館に足を運んだ。すると控えめな驚喜の声がする。流石図書館を利用する人たちだけあり弁えている、、と思いながら目的の場所を探す。周囲をぐるりと沢山の本や蔵書などで埋め尽くされ、しかも専門分野まである。それは漫画本以外なら全て揃っているほどの量だ。利用している人は大学生が多いが、高校生の姿もチラホラみられる。中央には数多くのテーブルも有り、そこに本を手に取り勉強している者、専門分野を調べて...

  • 15

    トイレを済ませ手を洗いながらも、先ほどの愛子の言葉が頭から離れない。母を亡くした後も、父との会話は乏しかった。ずっと泣いているあたしを慰める事すらなかった。そして少し落ち着いた頃に義母と愛子を連れて来た。それはまだ四十九日も終わっていなかったと記憶している。突然の紹介だった。『父さんはこの人と再婚するから。 そして愛子はつくしの妹となる。同学年だけどつくしの方がひと月早く生まれたからね。 これから...

  • 14

    つくしは祖父と共に日本に帰国した。以前住んでいた家は息子夫婦が使っている為、六本木の賃貸マンションに移り住んだ。二人は翌日には祖母と母のお墓参りに行った。そこで偶然父である晴男に会った。「ご無沙汰しています。」「あぁ。 仕事の方は順調らしいな。」「はい。」「これからも息子のサポートを頼む。」「もちろんです。」晴男は祖父の元秘書、そして息子の康が社長に昇格した時から社長秘書として傍にいる。その晴男は...

  • 13

    城へ戻ると、出立の準備を終えたしずがやってきた。「若君。 どちらへ行かれていたのですか?」「蒔乃が誰かに殺されたと聞いたから確かめに行ってきたのだ。」「まあ、蒔乃の方が?」しずの演技とも思える驚き方に楓弥は眉をあげる。「今は城下もかなり荒れています。 金目の物でもあると思ったのでしょうか? 山越えは賊が多いと聞きますし。」山越え?なぜ蒔乃が山越えの途中で襲われたと知っているのだ?「凄く残念ではあり...

  • 12

    頼んでいた短刀が出来上がったのはそれから約二か月後だった。少し小ぶりな短刀は柄と鞘に綺麗な牡丹が描かれとても美しい仕上がりになっていた。それを手に夕食後蒔乃の寝所へ向かった。先ぶれも無く突然向かったのだが、蒔乃は笑顔で向かてくれた。その笑顔にドキンと音を立てた。「これを。」蒔乃は不思議そうに短刀を手に取り大切に胸に抱きしめた。もし、、、ここに刺客が来たらこれで少しでも応戦し時間を稼いでほしい。必ず...

  • 11

    部屋に戻るとすぐに床に入り布団を頭からかぶった。今見た蒔乃の姿が信じられなかった。あれほど大切にしたいと思っていたのに、自分が壊してしまった。だがやっと自分の物になったという優越感も湧く。少なくともあのような綺麗な体を隆正殿に渡さなくて良かった。蒔乃は私の妻だ。私だけの妻だ。ただ初めての閨事だったのに明りの灯った中でしてしまった事は申し訳なかった。それでもこれで蒔乃の事をお飾りの正室と呼ぶものはい...

  • 10

    それからさらに一か月後。城下に出た私は突然何者かに切りかかられた。それを傍にいた者が返り討ちにしたのだが、袖口を切られ切り傷のような軽い怪我を負った。その為、すぐに城内へ戻り治療を行い、その日はそのまま部屋で休む事になった。こうして自分の命を狙う輩は今までも数多くいた。それは城内に居ても同じだった。弟を城主にしようという勢力が私を亡き者にしようと虎視眈々と狙っている。どこにいても気が抜けない日々だ...

  • 9

    蒔乃の部屋から出て自室に戻ると直ぐに布団に入った。おかしいぐらい体が火照っている。目を閉じると蒔乃の白い肌と赤い小さな唇が思い出される。旅の疲れで疲労の色を濃くしながら、熱がありながら、、、それでも初夜を迎えよう頑張る健気な姿。普通は初夜を迎える前に女中によって体を慣らすらしいが、それを拒んだのは私自身だ。蒔乃の体に女であろうとも触れさせたくなかった。しかも私と交わる部分なら尚更だ。既に押さえきれ...

  • 8

    類は15歳を迎えた翌朝、飛び起きた。あまりにも衝撃な夢を見たからだ。しかも今もはっきり覚えている。それはまるで自分が夢の中の楓弥になったような心情で、辛く悲しく後悔溢れる物だった。だがあくまでも夢の中の物語。すぐに忘れるだろうと気にも留めていなかったのだが、翌日になっても忘れられなかった。こんな事は初めてだった。そんな時、やってきた総二郎に尋ねてみた。「あのさ。 総二郎は夢を見る?」「あぁ。 見るぜ...

  • 7

    初めての閨事の翌日、蒔乃は高熱を出し床から起き上がれなかった。その蒔乃に対し、体調を窺いに来たしずは相変わらずネチネチと小言を言った。「たった一度の閨事で熱を出されては、万が一赤子を身籠られたときにはどうなるのでしょうか?これでは若君も怖くて二度と触れられません。それを考え、今後は先に体調確認をされて寝所にお越しくださいとか、そもそもお体に障るので寝所には来ないでくださいと言った内容の文を書かれて...

  • 6

    蒔乃が嫁いで10か月が過ぎた。その日、突然蒔乃に訪問客が来た。相手はハトコにあたる同じ小田原藩に属する城主の中森隆正だ。楓弥は既に城下へ出ており、対応できるのは蒔乃しかいない。しかも中森の目的も嫁いだ蒔乃の様子伺いだと言う。寝ていた蒔乃は急いで身支度を整え、謁見場所へ向かう。「おぉ、蒔乃。 元気にしていたか?」「はい。 隆正殿もお元気そうで何よりです。」「あぁ。 私は元気だ。 今から小田原城へ向か...

  • 5

    再び部屋に戻った蒔乃は自然に瞳から涙が零れ落ちる。「申し訳ありません。」古参の侍女は頭を下げるが彼女が悪い訳では無いことぐらい分かっている。それにあの内容が本当の事なのだろう。小姓の三人と気楽に雑談をしていた。その小姓の一人の姉がしずだ。自分の専属侍女として付くぐらい楓弥様との関係も良好。どちらかと言えば自分を見張るためにつけたのかもしれない。間者ではないかと疑うのは当たり前の行為だ。だからこそ妻...

  • 4

    蒔乃はそれから文を書いた。体調が悪い事をしずから聞いているのか全く会いに来てはくれない。もちろん日々忙しい公務を行っているのは分かっている。でも体調が少しでも良い事を知らせる事で、伸びている閨事が行えるかもしれないという気持ちだ。文は体調を考慮し短い物にした。季節の挨拶と楓弥の事を思う気持ちと自分の体調の事などだ。同じ城にいると言うのにこうして文を送ると言う事に寂しさも感じるが、それでも初めて楓弥...

  • 3

    父上からの突然の結婚命令。しかも相手は楓弥様。驚きはしたものの嬉しさの方が勝ったのは否めない。だがそれを顔に出す前に説明があった。「突然で驚いたと思うが世情が緊迫してきてな。相手の楓弥殿はまだ元服も済まされておられないが、共に同盟を強化しておこうとなった。もちろんお前も体が弱いという事もありすぐに側室を娶られるだろうが、出来るだけ楓弥殿に応えなさい。」「はい。」それぐらいは分かっていた。自分は一応...

  • 2

    つくしは14歳を迎えた日の夜、悲しい夢を見た。それはテレビかネットで見たドラマか何かのように鮮明に映し出された。普通は目が覚めると忘れている事が多いが、その夢だけは色鮮やかに覚えており時間が経っても消える事は無かった。「どういう事?」つくしは上半身を起こしたまま呆然とする。心に灯った恋心やその後の悲しみなどが自分の胸に突き刺さり、起きた時には涙を流す程に姫に感情移入している。「有名人なら日本史の中...

  • 1

    黄泉の国そこでは数人の神様が浄化された魂を新たな命として送る作業が行われていた。人は亡くなると魂は黄泉の国へ行く。そこで全ての記憶が浄化すると光り輝き浮遊する。それを新たな命として地上界へ送っていた。そんな中、既に430年ほどの月日が経っていながら浄化しない魂が二個あった。それなのに魂は光り輝きとても済んだ色をしている。もちろん初めての事。死してなお記憶を持ったまま光り輝いているのだから。しかも二...

  • 似た者親子

    類はつくしの部屋でまったりと過ごしている。机の上にはつくしの好きな炭酸飲料とポテトチップスがあり、つくしはポテトチップスを箸のような物で摘まみ口に入れている。この箸のような物は100均で買った。手を汚すことなくポテトチップスが食べられ重宝している。「はい。類。」「ん。」つくしはポテトチップスを箸のような物で摘まみ、それを類の口に入れている。もちろん類も口を開け美味しそうに頬張る。「いろいろな味があ...

  • 54

    類が話した通り、麗は嬉々としてつくしの元を訪れた。そしてあっという間に式の日取りと場所を決め、ドレス選びへと進んだ。そんな中、兄の誠と徹がつくしの元を訪れた。「つくし。花沢さんとの式が決まって良かったな。」「おめでとう。」「うん。類のご両親がフランスへ行く前に挙げようと急遽決まってね。まさか誠兄ちゃんの式より先になるとは思わなかった。是非出席してね。」「ありがとう。必ず出席する。」「それと突然だが...

  • 53

    風呂からでたつくしに類はペットボトルの水を差し出す。「ありがと。」「それを持ってそのまま部屋へ行こう?」「うん///」一階の電気を消した後、類が差し出す手を取り二人は二階へと向かった。そして奥の類の部屋へ入る。つくしは毎日掃除をしているが、こうして類のベッドで寝るのは初めてだ。類はまっすぐベッドに連れていくと腰かけた。その隣をポンポンと叩き、つくしもストンと座る。「喉乾いてるだろ?先に飲む?」「うん...

  • 52

    「ただいま。」「お帰りなさい。」つくしはキッチンから急いで玄関へ向かう。何時もは類の車の音で帰宅が分かり、玄関まで迎えに出ていたが今日は何も音がしなかった。その為、突然玄関が開き類の声に驚いた。二人は何時ものようにハグと軽いキスをする。だが今日は類が腕を中々緩めず、更に力を増し抱きしめた。「どうしたの?何かあった?」つくしの声は類を心配する物で、自分の事はおざなりだ。そう言う性格である事を既に熟知...

  • 51

    本村は焦りながらもやんわりと嗜める。「確かにつくしの母親ではありませんが、それでも私の妻です。それをそちらの女性という言い方はいくら花沢さんとは言え如何な物かと。」類とつくしが結婚すれば自分は義父になり、その妻である美代子も多少なりとも親戚付き合いが発生する。それこそ親戚の集まり等があれば、当然同伴する為つくしに近づけるなというのは無理だ。類は視線を本村に戻す。「つくしさんと同棲を初めてから、本村...

  • 50

    山下から電話を貰った類は、すぐ田村に指示を出す。「政治家の本村にアポを取って欲しい。その時に妻と同席して欲しいと伝えて。出来れば今日中に会いたい。」「畏まりました。確認してまいります。」それから数分後、田村が執務室に入ってきた。「18時に本村事務所でお待ちしていますとの事です。」「分かった。悪いけど俺の今日のスケジュールを調整して欲しい。」「はい。」「それと車を用意しておいて。今日は俺の車はここに...

  • 49

    季節は6月になろうとしていた。玄関先では何時もの愛情表現をしていた。軽くハグをしながら「行ってきます」「行ってらっしゃい」と挨拶を交わし、そっとキスを交わす。少し慣れたのか、つくしは照れた表情を見せるものの真っ赤になることはなくなった。類としてはそろそろ次の段階へ進みたくて仕方ない。「あのさ、、つくし。」「ん?」「そろそろ、、、一緒に寝ようか?」「えっ?」「あっ、一気に体の関係とか言うんじゃなくて...

  • 48

    気持ちが通じ合い恋人同士になったが、類の部屋で一緒に寝る事は拒まれた。類としても急に進めるつもりはない。もちろん意識するし暫く我慢することになるが、先にやっておきたいことがあった。自室へ入った類はすぐにあきらに電話をかけた。『おぉ類か。 なんだこんな夜中に? 喧嘩でもしたのか?』「いやその逆。 牧野と気持ちが通じ合い恋人同士になった。」『つまり俺の出る幕は無いと釘をさすために電話をかけて来たのか?...

  • 47

    「類さん。あたし自分の母親を殺しているんです。」――母親を殺している?類はつくしの言葉の意味が分からない。母親は不慮の事故による溺死だ。「牧野の母親は溺死だ。それは事故として新聞にも載っていた。」類の表情は明らかに狼狽えているが、しっかりつくしを見つめている。その瞳を見ることが出来ず、つくしは視線を下へおろす。「そうです。母は溺死です。町内会のバーベキュー大会があって、あたしは母に連れられて行きまし...

  • 46

    翌日、類は出張から帰ってきた。前回と同じように夕食を持っている。それをダイニングテーブルの上に置き、つくしがお茶を持ってきて食べ始めたところで麗の訪問を告げた。すると類はあからさまに驚いた表情を見せた。「えっ!母親が?」「はい。フランスへ行く前に一度会ってみたかったと言っていました。」類は何も聞いていなかった。「それで他には?気に障る言葉を言われたりしなかった?」「そのような事は何も。庭の野菜を見...

  • 45

    「大胆ですよね。見合いを断るつもりだったのに、自分の方から同棲を申し込んだんですから。」「えぇ。確かに大胆だわ。普通はお付き合いをして欲しいと頼むわよね?」「はい。でも類さんがこの家で一人暮らしをしていると聞いた時、家事をするストレスも感じているのでは?と思ったんです。」「家事をするストレス、、、」麗はハッとする。類は、この家に佳代が通っていた事を敢えて話さなかったのでは?そこには自分はストレスを...

  • 44

    「行ってきます。今夜は早めに戸締りをして早く寝る事。」「分かってます。」「あっ、でも夜に電話するからそれまでは起きてて。」「分かってます。気をつけて行ってらっしゃいませ。」「ん。行ってきます。」類は軽く手を振り、待たせていた花沢の車に乗って出張へ出かけた。今回は北海道。一泊二日の予定だ。つくしは類が出かけた後もいつも通り家事を熟す。掃除、洗濯の後、庭の野菜に水をやり今日は肥料もパラパラと撒いた。そ...

  • 43

    類は23時ごろに自宅に戻ってきた。つくしはすぐに出迎える。「ただいま。」「お帰りなさい。どうでした?」つくしの表情は心配気だ。そんなつくしににっこりと笑いかける。「息子さんの悩みも無事解決した。」それを聞き、つくしはホッとする。「良かった。やっぱり類さんにお任せして良かった。」「ん。これからもどんどん頼ってよ。」「はい。それで、、少し悩みの内容を聞かせてくれても良いですか?」「ん。」「その前にこれ...

  • 42

    衝撃な言葉にあきらと総二郎は固まる。そして頭の中には『同棲中』という言葉と共にアレコレが浮かんでしまう。どう考えても若い男女が一つ屋根の下で何もないとは思えないからだ。その為、二人は意気消沈した。それを見て類は誤解していると分かる。「仕事は家事全般。つまり俺の身の回りの世話をしてもらい対価を払っている。」二人はその言葉に再び固まる。身の回りの世話という部分がどこまでの世話か模索しているようだ。類は...

  • 41

    「俺の場合は、母親のマナースクールに本村さんが通っていた事がきっかけだ。」ここで類はつくしとあきらの接点を知った。お稽古の一つにマナー教室をあげていたが、それはあきらの母親の教室で、母親と妹達と仲良くしていた訳か。もちろん三人も牧野を気に入って家族総出で牧野を落としにかかっている。「あそこには数人の講師がいるんだが母親は月に一度講師をしている。その時は妹達も連れて行き学ばせているんだ。そこで妹達と...

  • 40

    なんとか二人は落ち着いてきた。「ちなみに今日は本村さんは来ねぇぞ。」「えっ?どういう事だ?」総二郎の言葉にあきらは驚く。今日という日を楽しみにしていたし、これに賭けていた。あきらの表情に総二郎は危ない所だったと安堵する。と同時に『息子さん』というのがあきらだと分かった。それに本村さんがこの場に来たならば、あきらの怒涛の攻撃にいつの間にか連絡先交換&お付き合いという関係になった可能性がある。それだけ...

  • 39

    そうしてあっという間に5月17日になった。「じゃあ行ってくる。」「よろしくお願いします。」「ん。とりあえずきちんとアドバイスしてくるから安心してて。」「はい。」こうしてつくしは類を見送った。後は類さんに一任するしかないが特段心配はしていない。いろいろな知識があるし、丁寧にアドバイスをしてくれる。それに前向きな言葉を投げかけてくれ一切嫌な気持ちにならない。だからきっとあきらさんの悩みもすぐ解決するは...

  • 38

    類は社長室を訪れた。「社長。フランスへの異動の件ですが、私はもうしばらく日本で過ごすことにします。」「という事は、ライバルを蹴散らすという事か?」「そのつもりですがまだ他にもライバルがいるみたいです。それに牧野にとってフランスへ行くことが最善な方法なのか分かりません。言葉も通じないだろうし環境も変わります。私も仕事へ行くのでずっとついていられません。それを考えると負担が大きいような気がします。」類...

  • 37

    GWも開け、類は仕事へと向かった。それを見送った後、掃除洗濯を終わらせ花壇の野菜の手入れをする。きゅうりも順調に上へと伸びてきている。ただ重さがありネットからずり落ちそうになっている為、固定するようネットと茎部分をひもで結ぶ。トマトも大きく育ってきており支柱に紐で括り、脇芽を摘み取る。ピーマンとなすびも枝が伸びそこにも支柱を立てる。それぞれ順調に花が咲き、キュウリは一本食べごろに実った。それを収穫す...

  • 36

    残りのGWは自宅で過ごす。庭の野菜の成長を見ては笑い、一緒に買い物へでかけて献立を考えて類も手伝ったり。そんなのんびりとした時間が二人にとっては心地良い。そんな中、つくしはあきらの件をそろそろどうにかしようと考えていた。一度食事をしながら悩み事を聞いて欲しいと言われているが、どういう話かも分からないし深刻な悩みの場合良いアドバイスも思い浮かばない。その点、類さんならば良いアドバイスが出来るのではない...

  • 35

    5月2日類とつくしは予定通り埼玉県秩父の羊山公園へ向かった。GW期間中で多少混んでいるが、それでもまだマシなようでスイスイと進むことが出来た。そして目的地に到着した二人は唖然とした。「芝桜が、、、ほとんど散ってる?」「みたいだな。でも少しは残っているんじゃない?」昨日の大雨により花が散ったようだ。「すみません。まさかこんな事になっているとは、、、」「自然が相手だから仕方ないと思う。でもほらっ、入園料...

  • 34

    「牧野は愛されて生まれて来たと俺は思う。少なくとも牧野を生んだ母親は父親の事を愛していた。でなければ母親が牧野を生むはずがないだろ?好きな人の子供だから生みたかったんだよ。片親になろうとも生まれてくる子供に苦労を掛けるけど、それでも愛する人との子供だから生みたかったんだと思う。だから生まれてこなければ良かったと考えるのは止めたほうが良い。」「ありがとうございます。」「もちろん本妻からすれば疎ましい...

  • 33

    食事をとりながら、つくしはキッチンの上に置いていた物をテーブルに持ってくる。「これ、、類さんへお土産です。」「お土産?どこに行ったの?」類は紙袋を覗くと、日本酒の箱が見える。「茶会です。」「茶会に行ってお土産、、、」類はプッと吹き出すがすぐに「ありがと。」とお礼を述べる。「茶会が開催されたホテルの売店で買いました。本当はデパートで何か買おうと思ったんですけど偶然マナー教室の先生に出会って、GWの特別...

  • 32

    翌日、つくしは午前中に祖母の施設へ向かった。するとそこに義母と誠とその婚約者の緒方真理子がいた。「つくし!元気だったか?」「うん。」つくしは入り口で立ち止まり頭を下げる。誠はすぐに婚約者を伴いつくしの元へ向かう。「つくしさん。突然引っ越しさせてごめんなさいね。」「とんでもないです。リフォームはどうなりましたか?」「順調よ。後一か月程で終わると思うわ。それも含めておばあさまに報告しに来たの。」真理子...

  • 31

    20時を少し回ったころ、つくしは帰宅した。駅から自転車を押して自宅まで帰ったのだが、確かに人通りは少なく外灯も少なく暗い。しかもこんなに遅くなるとは思っておらず、自宅の外灯もつけておらず真っ暗だ。その為、スマホの明かりを頼りに自宅の鍵を開けた。自宅に荷物を置くと直ぐに外に出て洗濯物を取り込む。そして急いで雨戸を閉めた。ここに来てこうして夜中に外に出るのは初めてだ。周囲が山に囲まれのどかな場所だが、...

  • 30

    総二郎は上手い言葉が見つからず、とりあえず料理を食べ終えた事から茶を点てる事にする。「じゃあお茶を点てようか。」「はい。ありがとうございます。」総二郎はスタッフに声をかけると、すぐに弟子が茶道具を持ってきた。お湯は電気ポットの物を持ってきている。「流石にお湯は電気ポットの物だけど、是非飲んでほしい。」「ありがとうございます。」総二郎は畳に座ると茶道具を開き準備をする。つくしもその前に正座するとじっ...

  • 29

    ホテル内の和食レストランの前で待っていると、総二郎が弟子を連れてやってきた。その格好は和装だ。時間はまだ16時30分にも満たない。「ごめん。待たせたか?」「いいえ。私もさっき来たところです。」「じゃあ入ろうか?」「はい。」弟子とは入り口で別れ、総二郎がつくしを伴い中に入った。総二郎の姿に店員がすぐに個室へと案内する。広々とした畳の個室で、テーブルの下は掘り炬燵になっている。「本村さん。ちょっと時間...

  • 28

    先ほどまで総二郎が座っていた席に家元夫人が座り、つくしは背筋を伸ばす。「本村さん。お久しぶりです。おばあさまはお元気?」「はい。今日はお招きいただきありがとうございます。祖母は元気です。」「そう。突然辞められたから驚いたのよ?」「申し訳ありません。引っ越すことになり教室に通えないので辞めさせていただきました。」「そうなんですってね。この後、総二郎と話をされるんですよね?」「はい。何か壁にぶち当たっ...

  • 27

    つくしが茶会の開かれるホテルに到着するとかなりの人がロビーにいた。そのほとんどが着物姿だ。既に13時を回っており受付は長者の列だ。つくしは少し時間を潰すためにトイレへ向かった。そこで身だしなみをチェックしていると茶会に招待されていると思われる女性が入ってきた。つくしはワンピースの為、茶会に出席すると思われていないのか会話は続けられている。「流石西門流のお茶会だけあって凄い人ですね。14時からの部の受...

  • 26

    こうしてつくしと偶然再会した今がチャンスだ!色々聞き出そうと夢子は思う。「つくしちゃんから見てあきら君はどういう人に見えるかしら?」「優しいお兄ちゃんという感じです。いつも微笑みながら話を聞いてくださり、さり気なくアドバイスをしていただいたこともあります。」つくしの答えに夢子はガッカリする。『優しい』はまだしも『お兄ちゃん』という単語は頂けない。出来れば『優しい男性』と言って欲しかった。でも『優し...

  • 25

    4月29日類は早朝から福岡出張へ向かう。つくしも早く起きおにぎりとペットボトルのお茶を持たせる。「車の中ででも食べてください。」「ありがと。」「気をつけて。」「ん。牧野も早朝からご苦労様。この後、もう少し寝ると良い。」「はい。」つくしは類を見送るために玄関先へ出る。そこには花沢の車が既に待機していた。一泊以上の出張の場合、本宅から車を手配している。運転手もつくしの姿を見るとぺこりと頭を下げた。その...

  • 24

    その日、類が帰宅してからつくしは話を切り出した。「花沢さんはGWの予定はどうなっていますか?」「あぁ。ちょうど5月の予定を控えてきたところ。GWから国内出張が始まり時には一泊することもある。」類は胸ポケットから予定表を取り出しテーブルの上に置く。「見ても良いですか?」「どうぞ。その為に持って帰ってきたんだから。」つくしはマジマジと予定表を見る。そこにはびっしりと予定が記入され、遠い所は一泊二日の予定で...

  • 23

    GWを10日後に控え、類は自分のスケジュールを調べた。出張などはあらかじめ決められている。近場なら突然の変更はあり得るが泊りとなると宿の手配なども有り、早々スケジュールの変更はない。もちろん今までたいして気にも留めなかったが、今は同居人がいる。毎日食事を作ってくれているし、泊りがけの出張の場合は出来るだけ早く伝えておきたい。それを見るとGWの前半は一泊二日で福岡出張がある。それ以降も5月は泊まりの出張...

  • 22

    つくしの元へ長男の誠がやってきた。庭で苗の様子を見ていたつくしは、急いで玄関へ向かう。「誠兄ちゃん!」「元気か?」「うん。元気!突然どうしたの?」誠はつくしの様子を窺いながら家や周囲を見渡す。こうしてつくしが暮らしている家を目の当たりにしたのは初めてだ。引っ越しは弟の徹が手伝い、かなり小さな家だと話を聞いていた。まさにその通りで、花沢の御曹司は少し変わっていると思わざるを得ない。「花沢さんとは仲良...

  • 21

    類とつくしはホームセンターへ向かった。その入り口には沢山の花の苗が置いている。それを順に見て回る。「へぇ。沢山の花があるな。」「花の形が似ていても大きさが違うし値段もいろいろですね。」「だな。品種改良して名前が増えたのかも?分からないけど。」「初めてですから失敗しても気兼ねが無い安い物にしましょうか?」それを聞き類は笑いが漏れる。「失敗って。花を植えて水をあげるだけだろ?」「あたしもそう思うんです...

  • 20

    季節は冬から春へと変わっていた。類とつくしは穏やかな日々を過ごしていた。それは類が想像していたよりも穏やかだ。朝は起きると朝食が用意され、帰宅すると夕食が用意されている。3月頃までは22時から23時という遅い時間に帰宅していたが、必ず待ってくれていて一緒に食事をとる。それが今は20時までに帰れるようになりホッとする。食事をしながら今日あった一日の出来事を話すのだが、それは牧野が主になって話す。俺の...

  • 19

    月曜日類は6時に起きる。何時もは6時半に起きるところを朝食をとるために30分も早く起きた自分に苦笑する。一階に降りると既に朝食が食卓に用意されていた。それは昨夜の事。『明日は何時に仕事に行かれますか?」』『7時過ぎ。』『では6時頃に起きられますよね?朝食は洋食で良いですか?いつもはコーヒーだけと言っていたので。』起きられますよね?と疑問形ながら決定事項だった。三食食べさせるという義務を背負っているか...

  • 18

    スーパーに到着した二人。つくしはすぐにカートを手に取る。「俺が押すから。」「ありがとうございます。」つくしはカートを類に託すと店中に入った。入ると直ぐに野菜コーナーだ。その中で本日のお買い得品をチェックする。「ジャガイモが安い。肉じゃがにしようかな。」肉コーナーへ行ってもお買い得品をチェックする。「スペアリブが安い。買っておこう。」魚コーナーも同じように本日の目玉を注目している。類にしてみればそれ...

  • 17

    日曜日つくしはスッキリと目覚めることが出来た。外はまだ薄暗い。急いで布団を畳むと部屋の隅に置く。そして静かに階段を降り顔を洗うと洗濯機のスイッチを押す。洗濯機が回っている間に朝食の準備に取り掛かる。と言ってもサラダとスクランブルエッグとパンにヨーグルトという簡単な物だ。準備を終えると時計を見る。時刻はまだ7時前。勝手口から外に出ると明るくなり始め周囲の様子が伺える。東京都内だというのにシーンとし物...

  • 16

    「夕食が出来ましたよ~。」その声にリビングからダイニングテーブルへ移動する。そこには魚料理を中心にした和食が用意されていた。「お口に合うか分からないですけど、EDを治すには食事も大切らしいんです。特に高脂肪、高塩分はダメなんです。今まで外食で済まされていたようですが、まさにダメダメ食事だったみたいです。」「そうなんだ。」確かに外食は高カロリー、高塩分にまちがいないだろうけど、そもそもEDじゃないんだよ...

  • 15

    自宅に着いた二人。つくしはすぐに物干し竿を庭に置く。そして買い物袋を手に家の中へ入った。「すみません。予定していた時間をかなりオーバーしていますね。」「そう。だから心配になってさ。」類はそう告げながら、自分の行動がおかしい事に気づく。何で心配になった?単に使用人として一緒に住むだけの間柄。きちんとメモを残しているしスマホがあれば道に迷う事も無い。それなのに、、予定時間を30分過ぎたからと言って探しに...

  • 14

    昼食の後片付けをした後、つくしは掃除道具をチェックする。納戸がありその中に仕舞われていた。既に食事を終えた類はソファーで惰眠をむさぼっている為、掃除機は明日にすることにし風呂掃除へ取り掛かる。一人暮らしをしているにしてはかなり綺麗だ。しかもお風呂の掃除道具は納戸に仕舞われていた。つまりかなり几帳面な性格だと分かる。つくしが過ごしていた祖父母の家では、お風呂の掃除道具はお風呂の隅に置いていたからだ。...

  • 13

    スーパーで買い物を終えた後、つくしは自転車に乗り家へと向かって漕いでいたのだが途中から登り坂となり、自転車を降り押して歩く。「良い運動になりそう。」口から出るのはポジティブな言葉だ。無事自宅を出て一人暮らしではないが住む場所が見つかった。これで義母は文句を言わないだろうし、この先一人暮らしをする時もスムーズにいくだろう。それに兄が結婚し子供が生まれたら父や兄達もあたしに構うことはなくなるはず。やっ...

  • 12

    翌日、二番目の兄の徹が軽トラを手配し迎えに来た。そこに自転車と少量の荷物を乗せる。「これだけ?」「うん。断捨離していたらこれだけになって。」「お前なぁ。相手は花沢物産の御曹司だろ?服とか大丈夫か?」「うん。」「お金は持ってるか?何か必要なものがあれば花沢さんが買ってくれるとは思うけど万が一の為にも必要だろ?」徹は自分の財布を取り出し現金を手渡そうとする。それをつくしが止める。「大丈夫。あたしだって...

  • 11

    類は仕事を終え急いで指定された店に向かった。店内に入ると既に二人は始めており、ニヤリと笑みを浮かべた。「それで見合いはどうなった?」類は辟易とした表情で空いている席に座る。「どうもこうも、かなり心配された。」あきらと総二郎は大笑いを始める。嘘とはいえEDの御曹司は悲壮漂う哀れな男性として見合い相手に映ったと分かったからだ。「そう言うしかねぇよな。」「言葉では心配を口にし、心の中では驚きと躊躇いがせめ...

  • 10

    つくしは類の家から自宅に戻った後、すぐ父親に報告した。『花沢類さんの家に一緒に住む事になったので土曜日にこの家を出ます。』その報告に父親は一瞬間があった後、、『そうか。良かったな。』と突然の同棲宣言に戸惑いつつもホッとした返事があった。だが土曜日には用事があり引っ越しの手伝いが出来ないと言われ、代わりに二番目の兄の徹を寄越すと言われた。だったら自転車を持っていきたいのでトラックで来て貰えば助かると...

  • 9

    その夜、あきらと総二郎から電話があり報告は1月5日の初出の後でとなった。初出は忙しいと拒んだが二人が納得するはずもなく、類はこの経緯をどこまで話すべきか悩み数日を過ごした。まずは父親に牧野つくしという人物の事を確認してからだと思いながら。そして1月5日を迎えた。類は少し早めに出社し社長室へ向かった。すると父親に満面の笑みで迎えられた。「さっそく報告に来てくれたのか?」「そんなに良い報告ではないのです...

  • 8

    運転手は類が女性を伴い乗り込んだことに内心ビックリした。だが表情には出さずそのまま類の自宅へと車を発進させる。そうしながらも後ろの二人の会話を漏らさぬよう聞いていた。「一応東京都だけど周囲を山に囲まれてる場所だけど。」「はい。」揺るがないな。「駅まで徒歩30分だけど。」「自転車に乗れるので大丈夫です。」お嬢様が自転車で駅まで?「車は?」「免許はあるんですけど車は持ってないです。」免許は持っているんだ...

  • 7

    類は過去の失恋により恋愛が恐くなり、それを見かねた父親が見合いの席を用意したと判断する。「恋愛に否定的って事?失恋したとか?」「いいえ。恋愛をした事がありません。ただ家庭を持ちたくないだけです。」「なんでそこまで?でも恋愛ではなく政略結婚させられるかもしれないけどそれで良いの?」「いえ。きっと政略結婚も無いと思います。今回は父の気まぐれだと思っていますから。」きまぐれ?俺との見合いが?そんなにハー...

  • 6

    つくしは診断書を手に取る。そこにはED(勃起障害)と書かれている。「大学を出てからこの状態。だから誰とも付き合っていないし付き合おうとも思わない。何も知らない父親は色んな女性との会食の場を設けてくれるけど、そもそもこんな体では結婚は出来ない。相手にも失礼だからね。だからこの話は、、、」「ずっと一人で悩まれていたんですか?」つくしは類の続く言葉を遮り尋ねる。これはすごく大変なことだ。確か御曹司はまだ2...

  • 5

    1月3日。つくしは11時20分にメープルへ到着した。そしてフランス料理店へと向かうと入り口のボーイに告げた。「花沢様で予約している者ですが。」「伺っております。こちらへどうぞ。」つくしは緊張しながら歩く。メープルは父親の仕事の関係で何度か訪れた事はあるがそのどれも会議室だった。その為、高級レストランに緊張している。というのもドレスコードがあるからだ。そこまで厳しい物ではないが女性はワンピースやスー...

  • 4

    あきらは初めて他人に自分の気持ちを打ち明け、照れた表情を見せながら話す。「母親のマナー教室へ通っている女性なんだけど、いつの間にか妹達と仲良くなっててさ。俺に色々聞かせるから一度見てみようかと教室を覗いた時に妹に紹介されたんだけど、俺に取り入ろうとはしないし自分をアピールもしねぇ。単なるお兄さんという扱いでさ。マナー教室は美作の名前は一切出していねぇし、そこのオーナーが美作商事の社長夫人とも書いて...

  • 3

    類とつくしの会食の日取りが決まった。それは年明けの1月3日だ。聡はすぐに類に社内電話をかける。『類。1月3日にメープルで会食をするように。』「この前、話していた人?」『そうだ。』やっぱり、、と類は思う。あの時は相手が断る可能性があると示唆していたが、やはり断る事は無かった。つまり相手の女性も会食の相手が俺だと聞いて乗り気になったんだろう。「食事をするだけで良いんだよな?」『もちろんその後に気が合うな...

  • 2

    聡は本村と別れた後、すぐに類の執務室へ向かった。「何?」「まだ日程は決まっていないが会食へ行ってもらうことになるからそのつもりで。」「また?」類はあからさまに嫌そうな顔を見せる。「もちろん会食の場すら断られる可能性もあるがな。」「断られる?」類にしてみれば考えられない事だ。花沢物産御曹司との会食を断る女性がいるとは思えない。何時も俺が嫌がっているからそう言えば乗り気になると考えているとしたらお粗末...

  • 1

    12月末。花沢物産本社ビルに政治家の本村が秘書二人を引き連れやってきた。そして会議室で社長の聡と面会した。「こんにちは。いつもお世話になっています。」「こちらこそお世話になっています。」二人は固い握手を交わす。「今回の選挙も無事当選できました。ご挨拶が遅れて申し訳ありません。」「いえ、こちらは大したことはしておりません。」二人はどっしりとソファーに腰を下ろす。「かねてより伺っていました道路拡張工事...

  • 62

    結婚式類は緊張の面持ちでつくしが入ってくるのを待っていた。参列席には類とつくしの家族その後ろにあきら、総二郎、桜子夫妻、滋が座っている。するとドアがバンッと開き、司が入ってきた。皆はつくしが入ってくると思っていた為、驚く。「お前なぁ。来るならもう少し早く来いよ。」「悪りぃ。さっき着いたばかりで、これでも車を飛ばしてきたんだぜ。」「こっち来いよ。」あきらと総二郎は司を自分たちの真ん中に座らせると、類...

  • 61

    類とつくしは結婚式の為、東京へ向かった。そして挙式前日には、花沢家の好意でつくしは家族水入らずでホテルで一泊することになった。久しぶりの再会に、つくしは晴男、千恵子、そして進と順にハグをする。「つくし、おめでとう。」「元気そうで良かったわ。」「まさか姉ちゃんが花沢さんと結婚するとは思わなかった。」「それはあたし自身が思ってること。人生何があるか分からないね。」三人はつくしが一段と綺麗になり笑顔でい...

  • 60

    夕食は楽しい物となった。久しぶりの豪華なディナーにつくしは舌鼓を打つ。「美味しい。それにやっと生野菜が食べられます。」「そういえば向こうでの食事はどういう物だったの?」「ヤム芋を蒸した物を潰してマッシュポテトにしたり、おかずは缶詰が多かったです。でも類さんがカップ麺を持ってきてくれてそれはそれは凄く美味しくて。」「日本では塩分が高いとか良いイメージを持たれないカップ麺も、ナイジェリアでは貴重な物だ...

  • ありがとうございました

    『今、幸せ?』の作品に沢山のコメントありがとうございました。期間が短く最後まで読めなかった方からもう一度公開を望む声がありました。また最後まで読まれた方からも、もう一度読み返したいというお声も多数ありました。一度きりの公開と決めていましたが少し考えますね。今日も石川県で大きな地震があり、何時どこで起きるか分からない状況。物価が上がり、食材も信じられない価格になり、今月から電気代も上がるとか。「やっ...

  • 59

    司と楓の会談から一週間後、キャサリンの陣痛が始まった。司は仕事中だったが急いで病院へ駆けつける。そこにはキャサリンの母親もいた。『そろそろですね。』『司さんも待ち遠しいでしょう?』『はい。どちらが生まれるか楽しみです。』司はドキドキしていた。子供が生まれる事でやっと白黒つけられると思っているからだ。《どちらが生まれるか楽しみ》というのは、自分の子供かそうでないかという意味で言っている。もちろん母親...

  • 58

    類は仕事を終えると直ぐつくしの病院へ向かった。コンコン『はい。』つくしの声が聞こえ類はそっとドアを開ける。「俺。」「いらっしゃい。仕事はどうだった?」「順調。社員もやる気満々で発売を待つばかり。」「何とか成功させたいね。」「是が非にでもね。」類は近くの椅子に座るとつくしの手を握る。「ご飯は食べた?」「うん。」「言葉はどう?」「全く分からない。医師は英語で話してくれる人もいるけど看護師はほとんどフラ...

  • 57

    翌日、類は会社へ向かった。ブラックソープの商品は既に完成している。それをどう販売するかの最終確認だ。一部は桜子の会社のパッケージで作り、それは既に日本へ送っている。販売方法はそれぞれ好きな方法で売り込む事になったが、発売日だけは合わせる事にした。『販売日は今日から二週間後。日本に送ったSAKURAKOと発売日は同じ。中の商品も全く同じ。パッケージだけが違う事は承知の通り。つまり、、負けるわけにはいかない。...

  • 56

    フランスに着き、救急車に乗って病院へ運ぶ。スムーズに移動が出来るのは両親が根回しをしてくれたおかげだ。その最中も、つくしはしきりに申し訳ないと謝っていた。だがどこかホッとした表情にも見える。それは類も同じだ。病院内の個室に運ばれ、簡単な検査が行われた後やっと二人っきりになった。「痛い所はない?」「大丈夫。痛み止めが点滴に入っているから。」「あんたの事だから中途半端で仕事を放りだしたとか思うなよ?あ...

  • おしらせ

    我が家のブログにお越しいただきありがとうございます。以前少し連載しました『あんた、誰?』という作品ですが、似たような作品があると指摘を受け取り下げました。そこから指摘部分を修正していたのですが、このまま公開するのもどうかと悩んでいました。ですがこの作品に費やした時間があまりにも長く(修正も含め)、このまま埋もれさせるのもどうかと思い期間限定で公開させていただきます。全部で182話あります。期間は3...

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