俳句は日々の日記であり、世界のイメージであり、心の表れです。
河童忌や緑は揺れれどきみは来ず古池やひなたに河童胡瓜の香神田川、河童となりてクワァクワァア梅雨明けや河童ベッドか地の下か捌かれし河童まわりくる皿乾き
春を噛むきみのからだのあたたかさ ブラウスのブルー春の波池の端 天の雲、ぼたもちの色のこりおり 昼も夜も天をわけつつ春すすむ 春の襟、濡れた昨夜のかおりあり …
言の葉のいざなうままに枯れゆかむ愛しさに泡を流しつ泡となり日に月に未生の時のひかりかな先に行く囁き夜空揺らしけり月のごと白腕落ちて眠りたり
マント蹴りヒール響かすソラミゾレバスを待つマントのなかで長いキスマント羽織れば白鳥座渡りゆく焼き芋をマントくるんでホッホッホマントくるまり凍る星抱いている
舞う銀杏バイクが時を疾走す銀杏葉の音なく降りて振りかえる舌のうえ秋の香りの重なりてひと色に銀杏天地を染めにけりランドセル銀杏とびだしハメハメハ
見あげれば頬を銀杏滑りおつ銀杏落つ裾揺らしゆく風は金銀杏さらさら子等の背でささやけり雨に濡れ銀杏音なく息を吐く銀杏舞来て二枚噛む明日かおる
空さきて振りくる銀に時は無し銀杏ながれゆく先の闇に娘立つ泣きたしと金の銀杏の川に立つ都市のアスファルト銀杏の裏表夜の水銀杏ときみをながしゆく
イースターわたしどれから生まれたのイースターいのち受けとる手いろいろイースター額の印うれしけりイースターびっしょり濡れきみを抱くスカートをイースター卵右左
からだの隅に塩かおる四月尽四月尽時をパレットで擦り付けるきみの白ワンピース溶かす四月尽地の渇き天へのぼりゆく四月尽四月尽ガサッと空をめくりたり
夏雨や赤花濡れてすれちがう夏雨やいくところなしドガの白夏の雨我と黒石濡れており靴音なき道迷いけり夏の雨夏雨や星と我かなし動悸する
衣更脱いで脱いでもきみは空唇あふれるシャツを干す衣更葬儀の熱のこりきみと衣更 キスするところすこし残る衣更パステルの襟キラキラと衣更
葉桜の色が満たしたバスに乗り葉桜ゆらしあゆみくる夏しずか葉桜擦れすれる衣きみに触れたり青い指さき触れていく葉桜や一夜にて身は葉桜に染まりたり
息とめる地ひかりあふれ立夏かな立夏ひらにあるれるブルーを握りしめ立夏目に天のパステルふりそそぎブルーとピンク立夏アイス並び溶け立夏絹のキスでまだいかんかな
季かわり天張り替える春の雷春雷や花弁それぞれ濡れている春雷に鎮まり揃って首あげる春の雷浅緑の地につきささり春雷やカーテン肩を隠したり
何待つか忘れるほどの朧月朧月モノクロドレス頬のごと朧月一夜おぼろの夢のなか朧月盃をゆらし渡りけりあの夜の肌を触れるごと朧月
ヒールの汗も冷えている春驟雨春驟雨セレナーデから泡の夢一日すべて星に沁む春驟雨ポツポツ天がひとりごと春驟雨春驟雨歩道の花なまめかしく
名忘れし勿忘草に空があり勿忘草ブルードレスとすれ違い勿忘草花弁濡らして声聞こえ唇に勿忘草をうつしとり勿忘草夢とからだを染めにけり
影ノワールのあざやかさ四月尽パステルが都市に染みこみ四月尽四月尽青が星を満たしけり天透けて背に地ひんやり四月尽四月尽天ガサッとめくれ目覚めけり
花時やピンクの風が足染めて花時やいのちあつめ一気に果てぬ花時を駈けぬけていく娘かな花時や天をレースがおおいけり振りむけば落ちていく夕花時や
春光や天のひらよりあふれけり春光を子午線はまっすぐ青し春光の大路にいでし赤ヒール春光や銀を降らせ満たしたり春光や波ときみ踏む星の音
洗う骨青きほそさや啄木忌啄木忌厠も海も裾濡らしふるさとは忘れ去るもの啄木忌ふるさともキムチも寒し啄木忌恋の染み干せど乾かず啄木忌あわれあわれなれもあわれ啄木忌
あたたかさゆるりとまるくさくらもちさくらもち噛みてまた来る季節知るショールの香のかすかありさくらもちさくらもちまだ残る手の柔らかささくらもち耳たぶの味夜明けかな
藤の花身まかせたまま散りにけり頬に藤昨夜の髪のやわらかさ水面の藤乱れおり夜雨過ぐや金の尾の水を打ち藤乱れたり老いし身の思いだす夜の藤の艶
陰は濡れ色乱れたり白躑躅躑躅水面よりゆらゆら消える目閉ず躑躅降りつづけて万華鏡どこまでも赤の躑躅に埋もれ寝る林檎飴躑躅にほそく透きとおり
ひらに光のみ残れり放哉忌あたたかき石のやさしき放哉忌ひとなき道を引かれ行き放哉忌放哉忌魂は青に染められたし放哉忌口を閉ざしてまた一日
春昼の陽のたかさで揺れる夢ひかり降る万華鏡の春昼や額に空の粒春昼のキス青い絹人みな纏う春昼や春昼やひらに蕾のあたたかさ
雲のなか鳥まるくなる霞草霞草俯く顔をかくしけり霞草天と地星が揺れており霞草ひかりにキラキラ川に入り綿飴のごと霞草が駆けてくる
春夕や紅変えコート裾軽し春夕魚の目の奥はまだ青フラミンゴ空燃やしたり春夕や春夕やバス手すり我染まりけり春夕やオリーブのごと沈みゆき
月朧河かすむなか渡るかな月朧紅に触れたり野芥子原月朧襟もと頰にあたたかく果実切る黄色の袖や月朧月朧ゆられしうちにひとりなり
春霰遠きより母聞こえたり知らぬバス飛びのり屋根に春霰春霰口をあふれるポップコーン春霰パラパラだけがきこえおり春霰地を磨りガラスおおいたり
日めくりに果実の香あり夢見月夢見月川面も空も青に透けスカートの組んだ素足や夢見月夢見月ショールにひかり積もりたり夢見月ヒール鳴る道露ひかる
朝の地は枝垂桜で濡れておりまだ生きむ枝垂桜の肌触り頰枝垂桜に染めて走り来る枝垂桜雫を淡く染めにけりくぐりゆく枝垂桜の万華鏡
花冷えや地をおおいたる天の銀花冷えや肘窩に刺さる指ピンク射手座とのぼりきみ見たし花冷えに口合わせ移しとるきみの花冷え目も指も言葉も透けり花冷えや
春雷朝の雫の蕾かな春雷やひかり天に満ちあふれ春雷や足は聞こえず赤い傘春雷地にひびき紅はうすくひく春雷や今朝の化粧ながしさり
春衣空を羽織りて魂透けて大路を浮きながれ春衣静かなり春衣背と胸まるく触れ銀の風春衣触れし指は千切れながれ行き春衣脚おおきくひらき星駆ける
神触れし木の芽はひかり溢れさせ木の芽夢が沁みプリズムの朝子のスカートまわり木の芽ロンドの輪木の芽落つ思い晒され朝の青生きんかな着飾った朝の木の芽喰む
花の陰きみのまるみの藍残る花の陰消えしひと待ち地にキスす花の陰地のさらさらに頰かさね花の陰夜にくぐりて身透けいく既に無きひとの色なり花の陰
春嵐グリーンドレスが駈けぬける天の声聞こえぬ日あり春嵐 枯れた身に色振り撒いて春嵐春嵐バス待ちならぶコートの背春嵐舌から舌へ花弁かな
春雨や脚までピンクおおわれて春雨や時のつめたさ僧おおいちょっと待ってブラウスの蔭も春雨傘は過ぎテーブル春雨の青に春雨や銀の簾の揺れる朝
行きつ戻りつ時を待つ春の宵春の宵声まで甘い色を帯び春の宵袖にヴィトンかすかなり春の宵過ぎし紅ワインの香ありかなしむ生きる見分けれぬ春の宵
そよ風に寝息さらさら清明や清明や子オバーの歯で噛めるかな屈原の歳指足らぬ清明や清明や祖父ちまき二本ポッケ入れ天地青肌いろいろの清明や
蜃気楼あおい蜜のシャングリラ蜃気楼砂と空コバルトに舞い蜃気楼あたたかユーラシアの風篆刻文字の船浮かぶ蜃気楼オレンジ屋根に眠りけり蜃気楼(2021.04.02)
若芽はや窓に金銀綾揺らす若芽と伸び比べ娘つまさきで西国へ若芽金の羽広げたり紅すぼめ天にキスする若芽かな若芽星色染まり紅の朝
春めけり空脱いだ背に星あふれスカートに風と日差しと春めいて香に誘われて黄の波春めけりピンクブラウス果実咥え春めけり春めきて砂漠の風と笛誘う
恋猫の盲目になり屋根駆けるスカートの揺れに眼を閉じ恋の猫家と墓なく恋猫で終わりたし恋の猫艶声に細き眼ひらき恋猫の草に傷当て夢に入り
すソーダ舐める紅きらり春昼寝春の夢水底およぐ星の群れ春寝ざめシェラザードショールの香春寝入り星めぐりきて巣鴨かな春の眠り笑いしのびこむ日あり
路地出れば彼岸の風のあたたかさ彼岸餡あまきこと天高きこと日差しあたたか彼岸花天を見て手に手とり赤に染まりし彼岸かな父の姿勢で揺れて立つ彼岸花
夕べの香ある脚陰や春うららうららなりアイスの跡の紅きらら頰をそめたり銀と藍河うらら春うららピンクの襞の波乱れうららなりショールがすぎる窓の外
雪解けや星座てんてん地を覆い夢と星乱れくずれる雪解けやみどり銀ほそい水の音雪解けや雪解けに笑みきらめく赤マフラー雪解けて眼ターコイズグリーンなり
糸桜天使残したひかりありピンクリボン少女くぐる糸桜唇噛めばさららざわめく糸桜糸桜夕べはげしく乱れたりオフェーリア髪をほどいて糸桜
初花の笑い寂しさくぐりたり初花に染まりしきみの朝のキス夜の初花透きし指青水晶に初花やグリーンドレスファドに揺れ初花の夢口なかにもも淡く
塩辛いぼたもち口に雨の中虹の玉ひとつぼたもち苦さかなぼたもちのかなしみ隠し帰りたりぼたもち遥かに死見えて箸止まる甘しかなし噛む歯は無しぼたもちや
TomoHaiku、春の河星こぼす指かがやけり春の河水面ゆらしきみの春のつぶやきや川面絹のさらさら春ユーラシアドレス染め春の河コバルトブルー春の河都市おおいた…
タンポポは魚座の泡へのぼりゆき23度かたむく春にミモザ舞う春分やブルーネグリジェ漂えり脚透けて瓦からから駆ける春林檎ゼリー春分の滴りけり夜、魚の泡タンポポの丸…
泥と死を靴ひかり行く終戦日終戦日タバコ吸う間に走りすぎ終戦日ハンバーガーを歯は囓るしかたなしきみ語り終え終戦日終戦日魚ながれる夜空かな
きみの声天でささやく長崎忌長崎忌神の足跡まだ続き長崎忌百合揺れる夢きみを呼ぶ 鐘管楽器天を割る長崎忌きみ受けよ灯籠の我長崎忌
鳥と風叫びつずける広島忌広島忌天に新たなひかり待つきみがいる星探し生く広島忌広島忌木々くぐりきみの声聞く広島忌きみの笑顔の空にあり
あさがおのかたさなめらか夜の泡ひかり受けあさがお吹けり天の笛キスきみのあさがお海の香りあり西茜あさがおならびグラス鳴るあさがおにあのねあのねと赤帽子
地を吹く喉や青ガラス慰霊の日慰霊の日真紅の鳥と舞いあがる慰霊の日風そよか居ないきみ朝発ちしかな影残る慰霊の日引く波に声聞こえたり慰霊の日
夏至劔はしり裾よりしろい足瞼閉じ青に抱かれる夏至のきみ夏至花芯アドバルーン揺れ伸びて星と陽と生まれくる夏至眠り入り夏至天に濡れた足跡きみ帰る
口と空星びっしょりと桜桃忌桜桃忌罪をまとめて口ふくむ桜桃忌父子ならんで種飛ばす桜桃忌天の振り子は遅くなり神田川老い沿いあるく桜桃忌
梅の実のかたさなめらかきみの肩青信号梅ほのか甘し裾ゆれるひれ伏してキスす地はきみの梅の香ラッパと口笛西茜梅の種梅硝子叩いて醒める昼の夢
秋分にこころの色かわりたり秋分遠きふりかえれる歳になり秋分知らぬ子の笑みを祈りたり秋分知りて胸青さすきとおる地下鉄の母の手やさし秋分日
赤きみな枯れよ風言う獺祭忌獺祭忌無花果にワインを注ぎたり獺祭忌もぎたての実の重さ知る獺祭忌地刻み翔びたつ翼聞く咽喉つまりまだ語りたし獺祭忌
街路に一葉時の向こうが見える一葉夜の雫残りて空は絹地とともに雨に叩かれ一葉あり一葉一葉避けてあゆむ嵐後あたたかく虫の痕ある一葉かな
俯いてハングルの地の白むくげ恋文やむくげの揺れる朝の風思いより高きでむくげ見あげおり見上ぐむくげに陽もしろくひろがりて街灯にむくげの群れのあふれ出て
夜をかきよせる指の跡秋の空秋の空魚の鰭がふるえてる綾となり色いろいろの秋の空秋の空波音かすか揺らしたり足音駆ける窓の隅に秋の空
八月尽皮を残してまだ生きる死とよろこびの声掠れ八月尽レクイエムとつぜん響く八月尽八月尽風今日より色を変え八月尽闇ふりかえり炎見る
濡れている赤カンナなが日に買えりカンナの雄蕊折りゆく指の赤さ渋谷裏夢にならびて紅カンナ夕空にまっすぐ茜のカンナ立つ赤坂をひとつ曲がれば赤カンナ
秋澄めば枯木の影に横になり秋澄みて風のかたちに息を吐く娘のきみ来るまぼろしの秋が澄む古い黒鍵たたきながら秋が澄む三歩先で新たに秋澄んでいく
天地洗い秋はじまる手はポッケに夢の雨秋かおるまで聞いている羊羹に虫の来ぬ秋しずかなり口閉じて歩むさきは秋なにもなし胸埋めたくて青い杯秋こぼす
葡萄青い星それぞれ隠しおる青い記憶のまま葡萄もがれたりふところに葡萄隠してまくらもと葡萄噛む口一日の重さあり葡萄剥く光うまれる暗さかな
夕焼けが路地駆けぬけて胸あつし靴止まる夕焼け鳥と飛びたくて夕焼けに苺クリーム溶けて来る夕焼けに列車の音八分音符夕焼け挟んだ日記煙草すいこむ
身爽やか忌日の風にあらわれて闇すべて地に沁みた朝爽やかさ鳶ちぎり空爽やかに吹かれゆくきみの背の透ける道爽やかたどる重ねし暦の爽やかに吹かれおり
桃割れど生まれる子なし月見えず赤いミニ桃の白切るイタリアン桃固し忌日のひとに切りわたす桃を蟻が這っている救急車流星のごと桃に傷腿にキス
電線鳴る蝉の地から聞こえくる蝉の声の細さよ卒塔婆の列蝉ひきづられアボカドサラダ掬うシッ夜耳奥で鳴っている蝉の声赤日傘蝉のどしゃ降り回りゆく
野分に黙りくだかれただ立てり野分爪青も傷のみ地に空に歩けばちりぢりの地図野分跡野分の夜闇集まりて駆けぬける野分下天と地息をとめている
摺りあしの服擦れている盆休み動かぬ盃に盃合わせ盆休み盆休みパシフィック渡る茜雲天のラッパ足とまりたる盆休み帰る道たどれぬままに盆休み
敗戦日タバコ一本に神霞む敗戦日ハンバーガーの汁溢れしかたなし神おおらかに敗戦日敗戦日裂かれた魚の風にゆれ敗戦日空閉じて地水に沈む
濡れた髪カレーの国の雲のごと雷や髪おおうスカーフ黄色夕立や髪にからむ煙の青虹色のヒール手に髪かきあげる夏の風髪乾くまで神田川
胸にキス柘榴味する夕暮れよアイスティー胸の形に透きとおり烏賊釣れば胸裂く記憶列をなし胸のなか西茜見し帰り道胸ひろげ蝶の少女のほそい腕
紅ひろがれり夢の波空の蓮蓮揺れて雲流れゆく鳥の跡蓮に光降りたる日の夜は深く蓮の葉のかさかさなれば鳥眼閉じる蓮の実の並んだ氷のとけており
鐘鳴りて影立ちあがる長崎忌長崎忌白百合に露鳥涙長崎忌花枯れるまで光刺す鳥一声で終わりたり長崎忌灯籠の先もまた闇長崎忌
立秋や溶ける道に影細く立つ時過ぎる首落とし立つ立秋なりアスファルト鳥の声なき朝立秋飛ぶものなし立秋のブルーの星や立秋や鳥声かれ魚ひとつ打つ
夏透けて天への梯子銀の足過去未来万華鏡夏透ける罪夏透けて星誕生の声を聞く刃銀額切る夏透けている時を駆ける青い影夏透ける
銀の空黒文字ならぶ広島忌広島忌天の弦の音我黙す幻の星を見あげる広島忌広島忌ブルーの空にきみの声広島忌星の波立つ音を聞く
種を噛むきみの向日葵空ゆらす向日葵に記憶のきみがならびおり向日葵といっしょになみうつ銀河かな首落とす向日葵と立つ隅田川向日葵と見あげる天と青い星
暑き日や傘の陰銀の鳥飛ぶなめくじの動かず三日暑き日や暑き日やマングローブが覆っている暑き日や猫の木陰桃源郷暑き日や昼寝を赤い虫が飛ぶ
梅雨明けや扉たたいてとおりすぐ梅雨明けよ二十歳の肩の丸さかな夢の水紋しずかなり梅雨明けへ撒く霧を梅雨明けゆらりのぼりくるスーツ肩濡れ梅雨明けのしのび足
きみによりそい蝿と僕横丁へ手する蝿渋谷回り乾き固く蝿落ちる終わりはプリン匙のなか星見えるか蝿に尋ね駅を出る蝿西瓜帰りのきみのかおり追う
河童忌や列車は人なく名知らぬ地へ雷に生死わからぬ河童忌の夜河童忌やクラッカーにカマンベールのせ河童忌や想い屋根空より高く地と身震える河童忌まだ生きむかな
冷夏のなかを走る子の足しずか冷夏の底くねって鰭で叩きたりレモン歯にしむ冷夏の太平洋西瓜割る地もまた白い冷夏かなサザン鳴るとなりでキスを冷夏にも
帰る床なければ蝶と軒のした蝶の青南からまっすぐ線を引く蝶の右ひだり上下と時を待つ夜の灯のそのうえまでも蝶のぼる蝶ひらりほそい足首は見えもせず
抱く耳のかたい世界を噛んで寝るピアスの耳のはるかまで藍ふかし屍の足耳の奥へはしり去り青はずかしげ地に落ちる耳透けて夏を聞く耳にひろがる南北線
蟾蜍黙る煙草に火がついて家流されて蟾蜍遠く鳴く雨打ちつづけ悟りしか蟾蜍蟾蜍銀に濡れつつ月をこゆ蟾蜍仇待ちつつ石になり
浴衣中鬼灯と我軽く揺れ鬼灯口に赤赤とした月空に鬼灯と一緒に帰りしもの明かし透かし見る鬼灯怒る顔ならぶ星取ったよ幼女鬼灯握りしめ
地と身を冷やす冷酒の透けたブルー冷酒黒きものを洗い流したり冷酒ながるる夜氷河削りゆく音青冷酒星屑かけら踏み帰る冷酒底にのこりし陽に咽喉焼いて
波わけて人魚降りくる七夕や七夕に星を踏む音さらさらと七夕にベッドに溢れる砂の音七夕に夏濡れたままはしりくる七夕やなんどもめぐる水の星
白夜の旅人をひかり迷わして獣が純白失う白夜の日千年の青流れ落つ白夜かな春白夜をあたたかさが駆けてくる白夜の銀の高きまで声とどきたり
梅雨寒や鬼が列島をはしりぬけ待ち人の白い顔出す梅雨寒や梅雨寒や国凍え鳥戻り来ず眠りでは梅雨寒の海渡りたり梅雨寒箒は記憶を掃き集め
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