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2019/04/01

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  • 続・相続者たち/44

    それからふたりは、気分転換をしようと、テラスに出て夜気にふれることにした。テラスに出るなり夜空を見上げたウンサンが、感嘆のため息を漏らしながら欄干に凭れた。「凄い星の数ね。綺麗すぎて感動すらするわ」タンは笑いながら空を見上げている背中を見つめ、プールサイドに置いてあるような両足を投げ出して座れる籐のソファーベンチに腰を下ろし、寒さ対策で持ってきたブランケットを膝にかけてゆったりと凭れた。「この前み...

  • 続・相続者たち/43

    ウォンの助力があって実現した短期の留学だからこそわずかな時間も無駄にしたくない気持ちが強かった。利き手が不自由なことで生じるデメリットを限りなく抑えたい一心で姉のウンソクを頼るつもりでいたウンサンだったが、デメリット受け入れてでも恋人のタンの傍にいたい気持ちのほうが上回り、結局は邸宅に戻ってきた。ソヒは、タンに連れられて戻ってきたウンサンを見た瞬間、明らかに不服そうな顔をした。しかし、タンの強い希...

  • 続・相続者たち/42

    立ち止まったタンは、ウンサンと硬い表情で向き合った。「本気で言っているのか?」「足の捻挫が治るまででいいの」タンは信じられないと言わんばかりに、宙に視線を彷徨わせた。どうしても受け入れがたいタンは、両手を腰に置きながら険しい表情だ。「実は、オンニのことだけど、わたしがタンと一緒に暮らしていること知らないのよ。友達と一緒だと言っているんだけど、当然、オンニは女友達だと思っているわ」「まさか、俺と住ん...

  • 続・相続者たち/41

    後になって、ユン・チャニョンと去っていくウンサンをただ手をこまねくことしかできなかったことを何度も後悔したからこそ、タンは追いかけた。「チャ・ウンサンっ!」タンが邸宅を飛び出すと、丁度、ハリムの運転で車は動き出していた。車の助手席に沈んだ表情で俯いて座っているウンサンの横顔が見えた。どんなにタンを気遣い強がってみても、離れがたい気持ちがあるのは明らかだ。「チャ・ウンサンっ、待つんだ!」呼び止めるタ...

  • 続・相続者たち/40

    すぐさまタンは攻撃的な表情から、温和な表情に戻して、ソヒを置き去りにしてウンサンに歩み寄った。「どこに行っていた?起きたら部屋に居ないし、探しに行くところだっだぞ」「病院と薬局に行ってきたの」ウンサンは至って冷静に言った。またもや何も言わず一人で行動したウンサンに落胆したタンは、目を閉じて嘆息した。もう怒る気力もなかった。「まさか自転車で行ったわけじゃないよな?」昨日の今日で、そんなことはあり得な...

  • 続・相続者たち/39

    素人ゆえにはっきりとした判断はつかないが、患部の腫れ具合や激痛を考えると、よくてヒビが入っているか、最悪、骨折しているだろう。数日もすれば治る打撲なら一安心だが、そう簡単には済まないとウンサンは予想していた。ヒビや骨折に一番効く薬は、とにかく安静にすることだ。湿布で炎症を抑え、鎮痛剤を飲んで、痛みにひたすら耐えることこそが、一番の治療法だった。ヒビなら、衝撃や負荷を与えなければ、三週間ほどで回復す...

  • 続・相続者たち/38

    いつの間にか眠ってしまったウンサンは、腕の痛みで目を覚ましたが、タンのベッドに居る状況を呑み込むまでに数秒ほど時間を要した。状況を把握したウンサンは弾かれたようにベッドから起きたが、急に体を動かしたことで左腕に激痛が走った。ウンサンは顔を歪めて、左腕をお腹に抱えた。通常、一回二錠のところを効き目が不安になり四錠も服用したのに、痛みはなかなか治まらない。ウンサンは、ベッドの周辺を見渡し、サムの友達か...

  • 続・相続者たち/37

    急いで部屋に戻ったが、ウンサンは変わらず眠ったままだった。硬い表情でベッド脇に静かに腰を下ろしたタンは、もう一度ケガの具合を確認しようとして、ブランケットから出ている左腕の袖を肘上まで慎重に捲り上げた。タンは、車内で見たことが嘘であってほしかった。それが無理なら、憶えているケガの症状よりも軽いものであってほしかった。だが、記憶していたそれよりも明らかに酷く生々しい状態にタンは思わず酸素を求めるかの...

  • 続・相続者たち/36

    「ハリムって、チャニョンみたいね」「チャニョンって、誰だい?」「わたしが唯一、何でも話せて、あなたの言った、素直になれる相手。大切な親友よ」「彼以外に、大事な人がいたんだね」一本道を直進しながら愉快そうに笑ったハリムに、ウンサンは、自然な表情で語りかけていた。「チャニョンって、わたしが横道にそれそうになるとすぐに察して、軌道修正してくれるの。正論を理路整然と語ってわたしを黙らせ、あっさり素直にさせ...

  • 続・相続者たち/35

    午前中のサイン会を滞りなく終えて、出版関係者との夕食を兼ねた打ち合わせから帰宅する途中、眠気覚ましにコーヒーを購入しようとしてコンビニに立ち寄った。そこでパク・ハリムはまたしても独りでいるウンサンを目撃してしまった。ハリムは、待望していた四度目の偶然の再会を喜びながらも、こんなに早くその機会が訪れるとは予想すらしていなかったことだ。ウンサンの姿を見つけて嬉しくてたまらないハリムは声をかけずにはいら...

  • 続・相続者たち/34

    救急車で緊急病院に搬送されたソヒは階段から転落した割には意識もはっきりしていた。念のため、CT検査など一通りの診察を受けた結果、一番心配していた頭部への外傷や異常は見られず、肩や背中の軽い打撲と左足首の軽度の捻挫ということだった。大事に至らなことに安堵してタンとウンサンは打撲の痛みを我慢しているソヒを病院から連れて帰ってきた。三人は邸宅に入るなり、階段を前にして一斉に立ち止まった。すぐに、ウンサンが...

  • 続・相続者たち/33

    ソヒの姿を見るなりウンサンは後ろから羽交い絞めのようにして抱きついていたタンを強引に引き離した。力づくで追いやられたタンは何事もなかったような涼しい顔のウンサンを物言いだげな顔で睨んだ後、見るからに不満そうに両手をポケットに突っ込み、傍らに立った。ソヒのお目当てであるタンは、ウンサンとの楽しいひと時を中断せざるを得なくなり、腹立たしさのあまりソヒと視線を合わせようともしない。「ソヒさん、いらっしゃ...

  • 続・相続者たち/32

    ジェイと手分けして探しているタンの頭に浮かぶことは悲観的なことばかりだ。もしかしたら、手当たり次第に食べすぎて気分が悪くなり化粧室に籠っているのかもしれない。その帰り道、広い邸宅で迷子になり帰れなくなっている可能性もある。その程度のことなら笑い話になる。だが、リビングから出ていく姿を見られ、不純な動機を持った男に後をつけられていたら笑い事では済まなくなる。食べすぎとはまったく関係なく、ウンサンに興...

  • 続・相続者たち/31

    中学の頃、特別視されていたことでいつかはキム・タンと友達以上の関係になれると思い込んでいた。けれども、いつの間にかイ・ボナと付き合い始めたことで、その期待は見事に裏切られた。ソヒはその時に、待っていても欲しいものは手に入らないということを身に染みてわかった。キム・タンに振り向いてもらうために手段を選ばないと決めていたソヒは、口から出まかせを言ったのだ。部屋を出たソヒは、思っていた以上にショックをう...

  • 続・相続者たち/30

    タンは、またしても置いてきぼりにされて、横目でにらみながら不貞腐れた。「あー、まったくなんだよっ」ウンサンはよほどお腹が空いているのか、4人掛けのゆったりとした白いソファに腰を下ろすと、タンのことなど気にせず、先に料理に手を付けていく。ロスに来てから、ウンソクの手料理以外は、大したものを食べていない。自分の作る料理は不味いとは言わないが、プロのものとは見た目も味付けも比較にならない。タンは、周囲の...

  • 続・相続者たち/29

    タンのパートナーとして同伴することになったウンサンは、緊張した面持ちでジェイの邸内に足を踏み入れた。ウンサンは、韓国屈指の財閥であるキム家のロスやソウルの大邸宅に暮らしていたこともあり、どれほど豪華な邸内でも驚くことはないと思っていた。けれども、世界に目を向ければ予想を遥かに超える大豪邸はあるのだと嫌というほど思い知らされた。キム・タンと手を繋ぎながら邸内に入ったウンサンは、周りを見渡しながら唯々...

  • 続・相続者たち/28

    ウンサンは傍にいたソヒに笑いかけて、停めている車まで案内した。赤い車の前に到着するなりソヒは、沈んだ表情でため息をついてウンサンを見遣った。「わたし、この頃、後部座席に乗るとどうしても酔ってしまうの。ふたりに迷惑をかけたくないし、助手席に座らせてもらえたら助かるわ」「いいわよ。わたしは座れるならどこでもいいから」まったく気にしていないウンサンは明るく笑顔で言った。ソヒは、あっさりと席を譲ったことに...

  • 続・相続者たち/27

    タンは歩道で仲良く笑い合っている三人が気になってしかたない。特に、イケメンのジュンが加わり、恥じらうようにはにかむ表情が増えたウンサンには苛立つばかりだ。いまのタンは、頭の中はウンサンしかない。憮然としているタンは、通りの向こう側に居るウンサンばかりを見つめ、目の前で真剣な顔をしているソヒの話は完全に上の空になってしまう。「タン、実は、もう一つ相談があるの」「ああ」「ロスに来たのはいいんだけど、ち...

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