chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
arrow_drop_down
  • 【旧作】新教養主義宣言【斜め読み】

    山形浩生,2007,新教養主義宣言,河出書房新社.(3.23.25)「日本的四畳半ウサギ小屋的せまさ」に行き詰まっている現実も、ちょっと物の見方を変えれば可能性に満ちている。文化、経済、情報、社会、あらゆる分野をまたにかけて、でかい態度にリリシズムをひそませた明晰な日本語で、いま必要な新たなる“教養”を読者の脳裏にたたき込む。二十一世紀の日本人必読の書。自頭が良く、博覧強記でならした人のエッセイは、読み応えがあり、読んでて楽しいな。山形さんは、ポール・クルーグマンのインフレターゲット論をいち早く日本に紹介し、支持したことで知られているが、実質賃金の減少にともなう家計の逼迫に苦しむ中流階層を救うためにも、いまこそ、リフレ政策が必要だ。「消費税を7%に」という提言は、現在になぞらえると、さしずめ、「消費税を2...【旧作】新教養主義宣言【斜め読み】

  • 泣くほどの恋じゃない

    小手鞠るい,2012,泣くほどの恋じゃない,原書房.(3.21.25)京都の小さな塾で講師を務める凪子(なぎこ)。ふとしたきっかけから教え子の父親、黒木と付き合いはじめるが、いつからか会えない夜の耐え難い苦しみが凪子を襲う。そんな絶望の時間を埋めるため、凪子は筆を執った。他愛のない手紙を何通も、何通も―一文字一文字が、一秒一秒の寂しさを埋めてくれた。だが、小説家になるという果てしない夢を抱いた、まさにそのとき残酷な運命が凪子を絡めとることに。主人公の凪子は、離婚歴のあるシングル。凪子の相手の黒木は、既婚者で、毎日、凪子のもとに通う。黒木は、家庭を壊さないようにしながら、凪子を愛人にしているわけだが、それならそれで、凪子を「都合の良い女」として利用している黒木の卑しい心性をきっちり描いてくれなければ、女を、...泣くほどの恋じゃない

  • 天使の子

    小手鞠るい,2014,天使の子,河出書房新社.(3.21.25)心揺さぶられる衝撃の愛のかたち。28歳のわたしがアメリカ留学中に出会った彼。惹かれあう2人だが彼にはある秘密があった―。実話を元にして書き下ろされた問題作!互いに思いを寄せ合うカオリとダニエル。しかし、ダニエルは、重度の障がいをもつ妹、クリスティーナをレイプした容疑で逮捕されてしまう。クリスティーナが産み落とした「天使の子」の父親は、はたして誰なのか?最後まで、謎解きの好奇心を刺激してやまない、構成の妙がひかる作品だ。天使の子

  • メタボラ

    桐野夏生,2007,メタボラ,朝日新聞出版.(3.21.25)破壊されつくした僕たちは、“自分殺し”の旅に出る。なぜ“僕”の記憶は失われたのか?世界から搾取され、漂流するしかない若者は、日々の記憶を塗りかえる。孤独な魂の冒険を描く、まったく新しいロードフィクション。沖縄を舞台にした長編小説。崩壊家庭で育ち、父が自死した香月雄太。柏崎の工場で請負労働に従事するが、そこでの人間関係に絶望し、沖縄で集団自殺をはかるも、練炭が焚かれる車内からひとり逃げ出す。記憶喪失となった雄太は、ジャングルをさまよい、昭光(ジェイク)と出会って、キンジとして沖縄で生きていく。家庭崩壊、貧困、飢餓、暴力、最底辺労働、同性愛・・・絶望の底をさまよう雄太の心情がとてもよく描かれている。冗長な作品であるが、全編、ロードムービーを観ている...メタボラ

  • 大学教授こそこそ日記

    多井学,2023,大学教授こそこそ日記,三五館シンシャ.(3.20.25)ベストセラー日記シリーズ最新刊!【当年62歳、学生諸君、そろそろ私語はやめてください】S短大で4年、T国立大で5年、そして現在勤務するKG大で24年。33年にわたって大学業界で奮闘する現役教授による、怒りと悲哀と笑いの記録。なんか、自分の半生と重ね合わせて読んでしまい、少々、切なくもあった。なにより身につまされたのが、薄給の短大から脱出すべく、公募に落とされまくり、最終面接まで呼ばれるもあえなく不採用となるくだり、だ。わたしの場合、K国立大で2年助手を務め、13年間、KK私立大に勤務した。その後、CJ私立大に異動し22年、現在に至る。KK大は、創業者一族が同族支配するグループ大学の一つで、教職員組合をつくり抵抗したものの、イヤなこと...大学教授こそこそ日記

  • 調査する人生

    岸政彦,2024,調査する人生,岩波書店.(3.19.25)長い年月をかけて対象となる社会に深く入り込み、そこで暮らす人びとの人生や生活を描くフィールドワーカーたちは、自分たちの人生もまた調査に費やしている。生活史調査で知られる著者が、打越正行、齋藤直子、丸山里美、石岡丈昇、上間陽子、朴沙羅の卓越した6人のフィールドワーカーたちと「調査する人生」を語り合う。他者の人生を聴き取り、記録に残すという作業は、その人の一回性の経験が、その人が生きた時代状況とどう切り結んだのか、理解する、という試みである。理解するために、ただただ理解するためにひたすら聴く。記録していくべきは、その人の主観的に生きられた世界のあり様であり、そこに事実誤認があったとしても、統計調査におけるデータクリーニング、データエディティングのよう...調査する人生

  • 【旧作】死者に語る──弔辞の社会学【斜め読み】

    副田義也,2003,死者に語る──弔辞の社会学,筑摩書房.(3.18.25)人が死んだとき、残された者は、去っていった者にどのような言葉をおくるのか。弔辞はまず、なによりも弔辞を読む人間による文章作品である。しかし、そこにあらわれるのは、故人の人柄、故人への思いだけではない。それは短い伝記であり、短い現代史でもある。また、「死者」の存在をどのように扱うか、という文化的な問題をうかがうにも好個の資料である。政治家・経営者・宗教家・文学者などの弔辞を精緻に読み解き、「日本人の死生観」を捉えなおす論考。岸信介、浅沼稲次郎、松下幸之助、矢内原忠雄、田中耕太郎、原民喜等へ捧げられた弔辞の内容分析から、生者が死者を弔う心情、宗教規範との関連、弔辞が詠まれた背景にある時代状況について考察される。なぜ、われわれは死者に語...【旧作】死者に語る──弔辞の社会学【斜め読み】

  • 1984 フクシマに生まれて

    大野更紗・開沼博,2014,1984フクシマに生まれて,講談社.(3.18.25)難病体験を綴ったエッセイ『困ってるひと』が大好評を博した大野更紗。福島の原発を通して、中央と地方の関係に切り込んだ『「フクシマ」論』が高く評価された開沼博。同じ1984年に福島で生まれた注目の若手論客二人が、「3.11」「原発」「難病」「オウム」などを切り口に、六人の職者と語り合う!難病と生存権、ソーシャルビジネスの可能性、被災地域での医療、ジャーナリズムの責任等々について、各界のスペシャリストと、大野さん、開沼さんとが語り合う。この生きづらい社会を変えたい、その思いは、大野さん、開沼さんともに共通しているが、このお二人は、シビアな現実主義者であり、無責任な絵空事は語らない。社会はなかなか変わらないだろうけれども、自分にでき...1984フクシマに生まれて

  • 【名作】天の魚──続・苦海浄土【再読】

    石牟礼道子,1980,天の魚──続・苦海浄土,講談社.(3.17.25)「苦海浄土」に続き、魂の詩人・石牟礼道子が、生死のあわいにある人々へむけて綴った、現代の鎮魂の記。ーー豊饒なる不知火海から、天の水と天の魚を奪い生活を破壊し、やがて20数年にわたって人間の命を破壊しさった、世紀の受難というべき水俣公害。ついにチッソと直接交渉を実現、解体する日常との闘いが残された患者漁民の観たものは何か?「東京の空の美しゅうございました……」は、誰でも望む言葉であって、誰でも云えない言葉になった。80年代の日本の現実、必読の一冊。チッソの島田社長と、チッソ本社に乗り込んで籠城した水俣病患者とのやり取りが激烈だ。患者たちは、いざり、のたうち回りながら、血判状をしたため、同胞の命と生活を奪ったチッソの責任を追求する。ひとび...【名作】天の魚──続・苦海浄土【再読】

  • 近代の呪い

    渡辺京二,2013,近代の呪い,平凡社.(3.16.25)「進歩」の帰結として人は何を失い、何に呪縛されるようになったのか。『逝きし世の面影』の著者が、宿年のテーマを平易な言葉で語る、注目の講義録。フランス革命が、自由、平等、博愛を実現するための民衆蜂起であったなど、少しは歴史を学んだ者であれば、信じようもないだろうが、革命によって実現したのが、都市と農村の自治共同体、ギルド(職人組合)等の中間集団の解体であって、それは、フランスのみで起こったものではなく、おおよそ、近代化なるものは、絶えず、家族、親族集団も含め、中間集団を溶解せしめていく社会変動なのであった。エミール・デュルケムが、その必要性を主張した、中間集団の再生は、「まるで砂粒」(ウェルナー・ゾンバルト)、「甲羅の剥がれた蟹」(カール・マンハイム...近代の呪い

  • 誰もいない

    小手鞠るい,2012,誰もいない,幻冬舎.(3.15.25)もうひとつの「家」に帰る彼を、今日も見送る杏子。病身の妻を持つ彼の訪れを、ひたすら待つみずき。彼女たちは、“男の嘘”を許しながら、自らも秘密を重ねていく。それは破滅か?前進か?家族ある男を愛してしまった女に必ず訪れる“あの苦しみ”が、二人の“恋濃き女”を静かに狂わせた―。恋愛小説家・小手鞠るいが禁断の恋の、強烈な官能と孤独を描き切った衝撃作。小手鞠さんが世で言う「不倫」を好んでネタにするのは、独身男女の恋愛、性愛を描くのより、人間の汚らしさや業の深さをリアルに表現することができるからだ。じゃあ、あなたに質問。「奥さんのいる人とつきあっている女」が浮気をしたら、それはやっぱり裏切りになる?もしもそうであるならば、奥さんのいる人が奥さんと寝たら、それ...誰もいない

  • 君が笑えば、ラブ・オールウェイズ

    小手鞠るい,2015,君が笑えば,中央公論新社.(3.14.25)幼なじみだったNYのジャズピアニストと岡山のシングルマザーは、互いに人生の曲がり角を迎えていた。そこに影を落とす男性写真家。微妙な年齢を迎え立ちすくむ者たちが選んだ未来とは―。ジャズセッションのような高揚感を放つ傑作長篇!ジャズのスタンダードとピアノとが交互に流れながら、母と娘、友人同士とを引き裂き、再びつなぎ合わせるいくつかの恋愛譚が折り重なっていく。音楽が背景に聴こえながらストーリーにどっぷりつかれる小説なんて、そうそうあるものじゃない。MichaelBublé-WhenYou'reSmiling[OfficialAudio] 小手鞠るい,2014,ラブ・オールウェイズ,祥伝社.(3.14.25)1991年、アメリカで生まれ育った美亜子...君が笑えば、ラブ・オールウェイズ

  • 言うに言えない異臭問題

    下駄車の半年点検のために日産ディーラーへ行く。できるだけクルマには乗らないようにしている──クルマは環境・資源を食い散らかし下手すれば生き物を殺傷するゴミ──ため、半年で1,000kmも走行していない。店内の窓のブラインドが全開で陽の光が眩しい。天井からは不快な宣伝文句が流れており、電子書籍を読むのがはかどらない。4WDのe-power車に興味がないこともないのだが、一気に買う気が失せる。待つこと一時間。整備士が来て点検内容を説明する。うっ・・・臭い・・・。すさまじい口臭・・・。こういうとき、悩むのが、「臭ってますよ」と言うと、まちがいなく当人を傷つけることになるけれども、言わないなら言わないで、ほかの客が、お店あるいは本社に苦情を言うかもしれず、そうなると、当人はもっと傷つくことになる。こういうの、店長...言うに言えない異臭問題

  • テルアビブの犬

    小手鞠るい,2015,テルアビブの犬,文藝春秋.(3.13.25)道端で倒れ伏す犬を助け、共に暮らし始めた少年。同じ年に生まれた一人と一匹は無二の親友となるが、人と犬の寿命の差は残酷だった。日本版「フランダースの犬」の誕生!第二次世界大戦で両親をなくした少年、ツヨシ。幼い彼の前に現れたのは、虐待同然に働かされ、捨てられた大型犬だった。ツヨシはその犬に「ソラ」と名付け、家族同然に生活を共にし始める。生まれて初めて平穏な日々を過ごすことになった犬が心に宿した、飼い主への感謝と愛。しかし、別れのときは刻一刻と近づいてくる――。「犬の愛」が最後に行きつくところとは、いったいどこなのか。「フランダースの犬」へのオマージュとして描かれた、傑作長編小説。何があっても、あなたを愛します。なぜならわたしは、「あなたの犬」だ...テルアビブの犬

  • 毒母は連鎖する──子どもを「所有物扱い」する母親たち

    旦木瑞穂,2023,毒母は連鎖する──子どもを「所有物扱い」する母親たち,光文社.(3.12.25)理不尽な仕打ち、教育虐待、ネグレクト……。子どもを自らの所有物のように扱い、生きづらさなどの負の影響を与える「毒親」。その中でも目に見える形ではなく、精神的で不可視なケースが多い「毒母と娘」の関係にフォーカスし、その毒への向き合い方とヒントを探る。毒母に育てられ、自らもまた毒母になってしまった事例など、現代社会が強いる「家庭という密室」の闇に、8人の取材から迫る。「毒母」にこころと身体、人生をぼろぼろに破壊された女性たち、8人の経験と苦悩とが、詳細に紹介されている。前編の第一章は、不機嫌を撒き散らす父親とびくびくおどおどするばかりの母親の、機能不全家庭で培われた毒。第二章は、〝愛情"という言葉で分かりにくく...毒母は連鎖する──子どもを「所有物扱い」する母親たち

  • 朝日ぎらい──よりよい世界のためのリベラル進化論

    橘玲,2018,朝日ぎらい──よりよい世界のためのリベラル進化論,朝日新聞出版.(3.12.25)朝日新聞に代表される戦後民主主義は、なぜ嫌われるのか。今、日本の「リベラル」は、世界基準のリベラリズムから脱落しつつある。再び希望をとり戻すにはどうすればいいのか?現象としての“朝日ぎらい”を読み解いてわかった、未来に夢を与える新しいリベラルの姿とは。自ら既得権益にまみれ、それを死守しながら、「きれいごと」だけを言う偽善的なリベラル。米国大統領選で、ヒラリー・クリントンやカマラ・ハリスがドナルド・トランプに破れた一因も、リベラルの欺瞞が毛嫌いされたことにあるのだろう。日本でも、リベラルを謳うメディアは、「マスゴミ」と呼ばれ、蛇蝎のごとく嫌われている。知価社会では、知能の水準が、SES(社会経済的地位)を左右す...朝日ぎらい──よりよい世界のためのリベラル進化論

  • いきなりはじめる浄土真宗、はじめたばかりの浄土真宗

    レヴィナスの思想と、宗教、とくに仏教、浄土真宗の教義とがクロスする議論は、けっこう刺激的であった。わたしたちは、みな、生まれて、「あらかじめ成立しているわけのわからない世界」に放り込まれる。世界の成立に「つねに遅れている」わたしたちは、自らの知恵の及ばぬ世界に立ち向かうために、自らを超越した存在に依拠せざるをえない。それを信心と言うのであれば、だれもが宗教的であらざるをえない。往復書簡というかたちで、わかりやすく解説された、仏教、浄土真宗の入門書だ。内田樹・釈徹宗,2005,インターネット持仏堂1いきなりはじめる浄土真宗,本願寺出版社.(3.11.25)『浄土真宗(について学ぶこと)をいきなりはじめる体験型入門書』を、『「自分の知らないこと」をたねにして本を書くのは「あり」です』と豪語するウチダ先生が手が...いきなりはじめる浄土真宗、はじめたばかりの浄土真宗

  • 再び、立ち上がる!──河北新報社、東日本大震災の記録

    河北新報社編集局,2012,再び、立ち上がる!──河北新報社、東日本大震災の記録,筑摩書房.(3.11.25)あの日、一瞬にして街が消えた。そして大切な人が…自らも被災した河北新報社は、その直後から各地を丹念に取材し、被災した人々を励まし続けた。300日間の苦闘を描く、魂のドキュメント。東日本大震災から14年。14年前のあの日は、職場の送別会にあたっており、会場でスマホで刻一刻と伝わってくる惨状に戦慄していたことを思い出す。その後、原発が爆発し、大津波が街を破壊する動画が次々に公開され、被災者でもないのに極度の鬱状態に陥り、体重が5キロ減った。震災関連本にはできるだけ目を通すことにしていたが、いま読みそこねていた本書を通読し、南海トラフが遠くない将来に動く可能性が高まっているなか、執念深い取材にもとづく震...再び、立ち上がる!──河北新報社、東日本大震災の記録

  • ナチュラル・ウーマン、ポケット・フェティッシュ

    松浦理英子,2007,ナチュラル・ウーマン(新装版),河出書房新社.(3.10.25)「私、あなたを抱きしめた時、生まれて初めて自分が女だと感じたの」―二人の女性の恋は、「男と女ごっこ」を拒絶し自分たちに合った性愛を手探りするうちに、捩れて行く。至純の愛と実験的な性を描き、発表当時から年を追うごとに評価の高まった異色の傑作が、待望の新装版で甦る。主人公、容子と花世、夕記子、由梨子との性愛を描く。容子の揺れ動く繊細な心情がよく表現されている。容子は、性愛の相手を自分ひとりで独占しようとは思わない。そのことが、「わたしのことを好きではないのではないか」という花世の疑念を生み、容子は花世にサディスティックな嗜虐を受ける。性愛に排他性を必要としない容子は、ポリアモニストなのであろう。そこいらへんのわかりあえなさは...ナチュラル・ウーマン、ポケット・フェティッシュ

  • 【名作】親指Pの修業時代【再読】

    松浦理英子,1995,親指Pの修業時代上・下,河出書房新社.(3.10.25)主人公、一実は、親友、遙子が自殺したあと、自らの右足の親指が、ペニスに豹変していることに気づく。一実は、「親指P」に嫉妬し憎悪する正夫と別れ、世で言う性行為を「仲良くすること」(に過ぎない)と捉える盲目のピアニスト、春志と同衾する。一実と春志は、フリークスによる見世物興行、「フラワー・ショー」に参加する。フリークスの一員、保の下腹部には、結合双生児の弟、慎のペニスが生えている。保は、そのペニスを、興行で、加虐というべきか、自傷というべきか、ひどく痛めつける。春志は自らに性加害をなす生沼に連れ去られ、一実は、フリークスの一人、映子と同衾するが・・・。障がい、ファロセントリズム(男根中心主義)と性器結合主義、支配と従属、愛着と恋情、...【名作】親指Pの修業時代【再読】

  • 犬身 上・下

    松浦理英子,2020,犬身上・下,朝日新聞出版.(3.9.25)上幼い頃から「犬になりたい」と切望する八束房恵は、玉石梓という理想的な犬の飼い主に出会い、「あの人の犬になりたい」と願うようになる。そこへ謎の男・朱尾献が現れ、「犬化願望を叶えてやる代わりに魂をよこせ」と契約を迫る。第59回読売文学賞受賞作。本の雑誌が選ぶ文庫ベストテン第1位(2010年度)下梓の飼い犬・フサとなった房恵だが、彼女の実家は決定的に崩壊していた。性的虐待を続ける兄、息子ばかり偏愛する母親。一方、まるで梓が書いているかのような、兄との性的関係を告白するブログが公開され…さまよえる犬の魂は何処に行くのか?愛する人、玉石梓の犬になりたいと願う「種同一性障害者」、八束房恵。房恵は、朱尾献に魂を明け渡す契約を交わし、念願の犬、フサとなる。...犬身上・下

  • 【旧作】へらへらぼっちゃん【斜め読み】

    町田康,2003,へらへらぼっちゃん,講談社.(3.8.25)三年間、なにもしないで時代劇ばかりみていた。テレビの中では毎日のように悪人が誅せられ、善人が希望に満ちて旅立っていく。進展しないのはわたしだけ。ただただ、朝が来て昼が来て夜が来て、喰らい酔って眠りこけていたのである―。町田康にかかれば、日本語はこんなにおもしろい。瞠目のエッセー集。町田康、町田町蔵時代のエッセイ集。パンク歌手から小説家へ、その端境期にあった町田さん、その現在にも引き継がれている、酩酊しながら書いているとしか思えない文章のセンスがひかる。INU"つるつるの壺"言葉を思い浮かべ、選び、組み合わせていく、その抜群のセンスは、パンクス時代からいかんなく発揮されていたのであった。【前編】小説家・町田康に聞く、学校では教えてくれない詩の読み...【旧作】へらへらぼっちゃん【斜め読み】

  • 働く女性に贈る27通の手紙

    小手鞠るい・望月衿子,2018,働く女性に贈る27通の手紙,産業編集センター.(3.7.25)会社勤めを経てフリーになったライターと、現在はアメリカ在住、出版社勤務経験のある小説家・小手鞠るいが、自らの経験を赤裸々に綴りながら、「女の人生と仕事」について一年間手紙を交わした。計27通にもなった手紙は、仕事に行き詰った時、漠然とした不安を抱えている時など、きっとあなたを励ましてくれるはず。すべての働く女性に贈る一冊。働くということには、自身の能力を高めなんらかの成果を得る、また、仕事をとおして他者のニーズを充足することによる自尊心、存在証明の獲得、そして、収入を得て生活を成り立たせること、この二つないし三つの意義がある。小手鞠さんと望月さんが仕事に込める思いも、この職業的意義に尽きるが、恋愛や結婚、子育て、...働く女性に贈る27通の手紙

  • 曲がり木たち、あなたにつながる記憶のすべて

    小手鞠るい,2016,曲がり木たち,原書房.(3.5.25)「主人公たちの人生が、いつしかある小さな公園で交差する全5篇を収録した胸に迫る連作短篇集。書き下ろし。「ある事故」で突然障害を負った幼馴染への心の葛藤を描く「小さな木の葉に宿る一本の木」他、「生きづらさ」を抱えた主人公たちの人生が、いつしかある小さな公園で交差する全5篇を収録した胸に迫る連作短篇集。書き下ろし。不思議な公園にぽつんと佇む優しい形をしたベンチ。きょうもここで待っている。あの人を。あなたを―見えない、歩けない、居場所がない、コミュニケーションができない。心の傷や生きづらさを抱えながらも、健気にしなやかに生きる愛すべき人々の「普通の」物語。「障がいと人生」をテーマとした短編小説集。障がい当事者の人生が、樹木の佇まいとともに語られていく。...曲がり木たち、あなたにつながる記憶のすべて

  • ラストは初めから決まっていた、今夜もそっとおやすみなさい

    小手鞠るい,2021,ラストは初めから決まっていた,ポプラ社.(3.5.25)担当編集者からのメッセージ『空と海のであう場所』で読者のハートをわしづかみにした著者の、純度100パーセントの恋愛小説です。失恋中の人は癒され、慰められ、恋愛中の人は励まされ、勇気をもらえます。恋愛なんて自分には縁がないと思っている人にも、過去の恋愛をなつかしみたい人にもおすすめします。おまけに、読み終えたあとには「恋愛小説の書き方」がマスターできている!という前代未聞の恋愛小説。人を好きになるって、こういうことだよなぁ、と、男性読者である僕もしみじみ感動してしまいました。今日マチ子さんの装画にもご注目を!岡大の教室から巣立って、聖徳太子ゆかりの地、奈良・王寺町へ飛んでいく。「恋人の聖地」で、ことりを待ち受けていたのは…。純度1...ラストは初めから決まっていた、今夜もそっとおやすみなさい

  • 族長の秋

    ガブリエル・ガルシア=マルケス(鼓直訳),2025,族長の秋,新潮社.(3.4.25)無人の聖域に土足で踏みこんだわれわれの目に映ったのは、ハゲタカに喰い荒らされた大統領の死体だった。国に何百年も君臨したが、誰も彼の顔すら見たことがなかった。生娘のようになめらかな手とヘルニアの巨大な睾丸を持ち、腹心の将軍を野菜詰めにしてオーブンで焼き、二千人の子供を船に載せてダイナマイトで爆殺したという独裁者――。権力の実相をグロテスクなまでに描いた異形の怪作。奇妙奇天烈な独裁者、「大統領」の物語が、改行なしに、話者を変えながら、延々と続く。「大統領」が、ラテンアメリカの国々に実在した独裁者たちをモデルにしているのは明らかだが、「権力」を嗤うガルシア=マルケスの諧謔が全編にわたって冴え渡っている。族長の秋

  • ゼロ年代の想像力

    宇野常寛,2011,ゼロ年代の想像力,早川書房.(3.3.25)かつて社会は「大きな物語」に支えられていた。その効力が失われた今、私たちはどう生きていくべきなのか。ゼロ年代に生まれた想像力は新たな物語を提示しえたのか――。文学、アニメ、ゲームからテレビドラマまでを縦横無尽に論じ、停滞する「批評」を1冊で再起動させた、宇野常寛による衝撃のデビュー評論。2008年の単行本版発売以降、3.11後までを総括する、4万1千字の語りおろし原稿を追加して待望の文庫化。膨大な数のアニメ、小説、テレビドラマ、映画、ゲームを参照しながら、2000年代の価値と思想のあり方を探求する。情報化は、あらゆる知を平板なデータに置き換えた。わたしたちは、日々、巨大なデータベースから、検索したり、リンク先を参照することで、断片的な情報を引...ゼロ年代の想像力

  • 【旧作】ジェネレーションX──加速された文化のための物語たち【斜め読み】

    ダグラス・クープランド(黒丸尚訳),1995,ジェネレーションX──加速された文化のための物語たち,角川書店.(3.2.25)ビジネス・エリートたちの拝金主義にうんざりし、都会を逃げ出した男女三人。砂漠のバンガローで独立した暮らしを始めた彼らは、自分たちの人生の価値を発見する。20世紀の終わりの、そして新しい次の1000年の始まりの世代―ジェネレーションX。その精神的生活を完璧にとらえた、注目のカルト・ロードノベル。巷で増殖するX世代のバイブル、待望の文庫化。著者のクープランドとわたしは同世代(「ジェネレーションX」)だ。経済の高成長期に青年期、中年期を生き、物質主義に染まりきった親世代──ベビーブーマー世代を軽蔑し、ロバート・マートンの社会適応スキームでいう「撤退」のライフスタイルを選択した若者たち。本...【旧作】ジェネレーションX──加速された文化のための物語たち【斜め読み】

  • カクテル・カルテット、つい昨日のできごと──父の昭和スケッチブック

    小手鞠るい,2010,カクテル・カルテット,ポプラ社.(3.1.25)過ぎた恋を切なく思い出し、現在の恋に身を焦がす。ままならない思いに苦しみながらも、そこにもまた甘美な感覚が潜むのを発見する―甘いだけでも、苦いだけでもないのが恋。カクテルもまたしかり。さまざまなカクテルに寄せて、4人の男女の恋模様が描かれる物語。とてもおしゃれな恋愛小説。わたしは酒が飲めないのでカクテルのことはまるでわからんちんなのだが、雰囲気だけは楽しめた。笑遠い遠いまるで前世のように遠い若き日、福岡天神のシャレオツなレストランの、仄暗い室内に灯るテーブルランプに胸ときめかしていた、まだ可愛らしかった頃の自分。笑小手鞠さんの恋愛小説、好きだな。既婚の女も、男と同様、婚外恋愛するから。ジェンダー平等を貫くフィクションは、清々しくて実に良...カクテル・カルテット、つい昨日のできごと──父の昭和スケッチブック

  • 情事と事情、いちばん近くて遠い

    小手鞠るい,2022,情事と事情,幻冬舎.(2.26.25)「すべての愛には、裏がある。」恋愛小説の名手が描く、大人たちの上品で下品な恋愛事情、その一部始終。著書メッセージ:「不倫に嫌悪感を抱いているあなたにも、不倫小説が大好きなあなたにも」だらしない女ときちんとした女。女癖の悪い男と誠実な男。天使と悪魔。結婚と不倫。純愛と情事。あなたは、どっちが好きですか。私はもちろん、だらしない女と、女癖の悪い男と、悪魔と、不倫と、情事です。だって、おもしろいじゃないですか、読むのも書くのも。きちんとした女と誠実な男が結婚したって、つまらない家庭しか築けませんよ。「幸福な家庭はどれも似たようなものだが、不幸な家庭はそれぞれに不幸なものである」と語ったのはトルストイですが、私はこう言いたい。「恋愛を描いた小説はどれも似...情事と事情、いちばん近くて遠い

  • 猿の見る夢

    桐野夏生,2016,猿の見る夢,講談社.(2.26.25)定年前の果てなき足掻きと優越。終わらない男たちの姿を、現代社会を活写し続ける著者が峻烈な筆で描き切る!「週刊現代」人気連載。これまでで一番愛おしい男を描いた――桐野夏生自分はかなりのクラスに属する人間だ。大手一流銀行の出身、出向先では常務の席も見えてきた。実家には二百坪のお屋敷があり、十年来の愛人もいる。そんな俺の人生の歪(ひず)みは、社長のセクハラ問題と、あの女の出現から始まった――。還暦、定年、老後――終わらない男”の姿を、現代社会を活写し続ける著者が衝撃的に描き切る!週刊現代読者の圧倒的支持を得た人気連載が、ついに書籍化!薄井正明、59歳。元大手銀行勤務で、出向先ではプチ・エリート生活を謳歌している。近く都内に二世帯住宅を建築予定で、十年来の...猿の見る夢

  • 男の愛──俺たちの家

    町田康,2025,男の愛──俺たちの家,左右社.(2.25.25)海道一の暴れ者、その下積み時代。喧嘩に博打に恋に明け暮れ、次郎長の旅は続く。次郎長こそは男のなかの男。兄弟分の盃を交わしたい。抱かれたい。という男たちが日本中から殺到して凄いことになった。大好評シリーズ第二弾!元パンクス、町田町蔵あらため町田康による、清水次郎長の一代記、第二弾。喧嘩に博打、そして男色・・・すこぶる調子の良い漫談風のストーリーが展開する。任侠と男色は親和性が高い。次郎長に「抱かれたい」と参集する男衆のむさ苦しさが臭い。笑あいにく、次郎長は、見目麗しい可憐な男の子が好みなのだが。町田流のもっと過激な内容を期待する向きもあるだろうが、それでも、じゅうぶんにパンクであり、ハチャメチャ、だ。男の愛──俺たちの家

  • 【名作】冷血【再読】

    トルーマン・カポーティ(佐々田雅子訳),2006,冷血,新潮社.(2.25.25)カンザス州の片田舎で起きた一家4人惨殺事件。被害者は皆ロープで縛られ、至近距離から散弾銃で射殺されていた。このあまりにも惨い犯行に、著者は5年余りの歳月を費やして綿密な取材を遂行。そして犯人2名が絞首刑に処せられるまでを見届けた。捜査の手法、犯罪者の心理、死刑制度の是非、そして取材者のモラル。様々な物議をかもした、衝撃のノンフィクション・ノヴェル。緻密な取材により収集された膨大な情報に基づき、殺人犯のディックとペリー、惨殺されたクラッター一家、捜査官のデューイ、事件が起こったホルカム村の人々、裁判官、弁護士、陪審員等々、数多くの人々の言動と人となりが実に細やかに描かれている。物語は、クラッター一家とホルカム村の人々の穏やかな...【名作】冷血【再読】

  • 父として考える

    東浩紀・宮台真司,2010,父として考える,日本放送出版協会.(2.24.25)娘ができて初めて見えた日本社会の問題点とは?若者の非婚や少子化をいかに乗り越えるか?育児体験の比較から、教育問題や男女のパートナーシップのあり方までを論じ、「子ども手当」など保育支援策を検討。ツイッターなど新メディアを利用した民主主義の新たな可能性まで、今日の知的課題をも浮き上がらせる白熱の討論。宮台さんが言うところには、なるほどそうだよねと共感する部分が多いと同時に、それ、ちがうくね?と疑問をもつところもある。一つは、性愛(の経験)の価値の称揚が過剰じゃね?ということ。あんたが性欲モンスターなだけでっしゃろい。笑もう一つは、家族の価値の称揚についても過剰じゃね?ということ。たまたま、自分が配偶者や子どもに恵まれた者のポジショ...父として考える

  • 働き方は「自分」で決める

    古市憲寿,2014,働き方は「自分」で決める,講談社.(2.23.25)若き企業家たちの生態系に飛び込んで、絶望の国の幸福な若者たちの「働く」意味を考える。29歳、気鋭の社会学者、渾身の労働論!単行本『僕たちの前途』改題・大幅改稿!著者待望の初文庫!・“働く”ことに殺されてはならない。・組織に入らず、起業もしない就職だってある。・他人を使わず、使われないで生きる。下流でもなく、ホリエモンでもなく。草食でもなく、肉食でもなく。僕たちがつい当たり前だと思ってしまう「会社に雇われて働く」という生き方は、時代に限定されたものに過ぎない。いま最も支持を集める29歳の気鋭の社会学者が若き起業家たちの生態系に飛び込んで、若者たちの働く意味を考える。文庫版オリジナル特典として、人気ロックバンドSEKAINOOWARIとの...働き方は「自分」で決める

  • 古市くん、社会学を学び直しなさい!!

    古市憲寿,2016,古市くん、社会学を学び直しなさい!!,光文社.(2.22.25)「社会学って、何ですか?」気鋭の若手社会学者・古市憲寿のあらためての問いに、日本を代表する12人の社会学者たちが熱く答える。社会学は、役に立つのか?社会学は、誰のためにあるのか?社会学者には、今、何ができるのか―?私たちが現在抱える諸問題に、研究者たちがそれぞれの専門分野から切り込みながら、社会学の面白さ、難しさ、社会学こそが教えてくれる「ものの見方」を伝える。社会学の新たな入門書。「社会学ってなんですか?」という古市さんの問いに12人の社会学者たちが答えているが、そこにとくに斬新でわかりやすい回答はない。「総合社会学」、「残余の社会科学」、「連字符社会学」、この三つで社会学の学問的定義について説明できるのは、わたしの学生...古市くん、社会学を学び直しなさい!!

  • だから日本はズレている

    古市憲寿,2014,だから日本はズレている,新潮社.(2.22.25)勘違いを生み出す「幻想」の正体とは?リーダー待望論、働き方論争、炎上騒動、就活カースト、クールジャパン戦略……「迷走」し続けるこの国を29歳社会学者が冷静に分析。日本人が抱える「夢」の害悪を鋭く突く。リーダーなんていらないし、絆じゃ一つになれないし、ネットで世界は変わらないし、若者に革命は起こせない。迷走を続けるこの国を二十九歳の社会学者が冷静に分析。日本人が追い続ける「見果てぬ夢」の正体に迫る。わたしはTVも見ないしラジオも聴かないので、古市さんがマスメディアでどのようなことを言ってるのか、まるで知らない。その発言は、ときどき「炎上」するようであるが、本書を読む限り、しごく妥当なことを言っている。本書の批判と揶揄の対象は、たまたま時代...だから日本はズレている

  • 乱れる海よ

    小手鞠るい,2022,乱れる海よ,平凡社.(2.21.25)アメリカ在住の日本人ライターが、引っ越し作業中にふと手にした一冊の本。それは50年前に起こった世界的事件を追うことになる入り口だった──。半世紀前の1972年5月30日、イスラエルのテルアビブ空港で起こった乱射テロ事件。起こしたのは3人の日本の若者たちだった。彼らはなぜ遠い異国の地でそんな事件を起こしたのか。それは崇高な使命からだったのか、それとも別の残虐非道な目的からだったのか。そして、短い生涯で主人公・渡良瀬千尋が遺したものとは。恋愛小説の名手にして、多数の受賞歴を誇る名作『ある晴れた夏の朝』の著者が拓く新境地!著者からのコメント恋愛小説ではありません。歴史小説でもありません。今から約50年前に、世界で初めて空港で乱射事件を起こして、その後の...乱れる海よ

  • 望月青果店、お母ちゃんの鬼退治

    小手鞠るい,2011,望月青果店,中央公論新社.(2.20.25)母は私を許してくれたのだろうか?夫の誠一郎、盲導犬の茶々とアメリカで暮らす鈴子。岡山にある実家「望月青果店」には、もう5年戻っていない。ふいに訪れた停電の夜―故郷に置いてきた記憶がよみがえる。捨ててきたはずの故郷と母、交わされた約束。みずみずしくて甘酸っぱい、家族の物語。『レンアイケッコン』以来、3年ぶりの書き下ろし長編。毒親を地で行く母親との確執、盲目のピアニストである夫との穏やかな暮らし、そして、かつて想いあっていた隆史との切ない思い出。主人公、鈴子が抱える、寂しさ、切なさ、苦しさが高解像度で伝わってくる。恋愛小説としても、親子の葛藤を描いた家族小説としても、文句なしの傑作長編小説だ。小手鞠るい,2022,お母ちゃんの鬼退治,偕成社.(...望月青果店、お母ちゃんの鬼退治

  • 未来地図

    小手鞠るい,2023,未来地図,原書房.(2.19.25)奈良の小さな町で、中学教諭として再出発した久児(ひさこ)。しかし、心に巣くう暗い過去が、幸せになろうとする彼女にブレーキをかける。自分で捨てておきながら、探し続けてきたものとはなんだったのか――愛と再生の物語。大人の鑑賞に耐えうる恋愛小説の傑作。ハッピーエンドで終わる恋愛譚は、おしなべて鼻白むだけのことが多いが、本作はちがう。こころに深い傷を負った主人公、久児が、同じく傷を負った直巳にこころを開くくだりが秀逸だ。ストーリーで読ませるだけでなく、美しく、奥深い言葉が読む者の琴線に触れる。未来地図

  • 闇の子供たち

    梁石日,2004,闇の子供たち,幻冬舎.(2.18.25)貧困に喘ぐタイの山岳地帯で育ったセンラーは、もはや生きているだけの屍と化していた。実父にわずか八歳で売春宿へ売り渡され、世界中の富裕層の性的玩具となり、涙すら涸れ果てていた…。アジアの最底辺で今、何が起こっているのか。幼児売春。臓器売買。モラルや憐憫を破壊する冷徹な資本主義の現実と人間の飽くなき欲望の恐怖を描く衝撃作。映画の方がより注目を浴びた本作であるが、原作、映画ともども、ノンフィクションかフィクションか、物議をかもした作品である。幼児売買、幼児売買春、臓器売買・・・裏社会に通じた作者であればこそ、フィクションであるとは言え、裏を取ったうえでのこの内容であるのだろう。エイズを発症してゴミ捨て場に遺棄され、帰り着いた故郷で親に火をつけられて焼かれ...闇の子供たち

  • ポイズンドーター・ホーリーマザー、白ゆき姫殺人事件

    湊かなえ,2018,ポイズンドーター・ホーリーマザー,光文社.(2.17.25)女優の弓香の元に、かつての同級生・理穂から届いた故郷での同窓会の誘い。欠席を表明したのは、今も変わらず抑圧的な母親に会いたくなかったからだ。だが、理穂とメールで連絡を取るうちに思いがけぬ訃報を聞き…。(「ポイズンドーター」)母と娘、姉と妹、友だち、男と女。善意と正しさの掛け違いが、眼前の光景を鮮やかに反転させる。名手のエッセンスが全編に満ちた極上の傑作集!自らの母親が「毒親」であることを告発する娘も、その「毒親」からすれば「毒娘」であるのかもしれない。ハラスメントや犯罪の加害-被害関係においてつきまとう、「当事者は嘘をついているかもしれない」という問題を、表題作はみごとにえぐり出している。湊さんの作風は、劇画、映像向きの、スト...ポイズンドーター・ホーリーマザー、白ゆき姫殺人事件

  • 告白、少女

    湊かなえ,2010,告白,双葉社.(2.16.25)「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」我が子を校内で亡くした中学校の女性教師によるホームルームでの告白から、この物語は始まる。語り手が「級友」「犯人」「犯人の家族」と次々と変わり、次第に事件の全体像が浮き彫りにされていく。衝撃的なラストを巡り物議を醸した、デビュー作にして、第6回本屋大賞受賞のベストセラーが遂に文庫化!“特別収録”中島哲也監督インタビュー『「告白」映画化によせて』。映画と比べて、原作のインパクトはどんなもんかなと思いつつ読んでみたのだが。映画「告白」劇場予告「見たまんま」理解できる映画と違って、小説の出来は、言葉の一つ一つが喚起するイメージの豊穣さに左右される。この手の小説であれば、どうしても桐野...告白、少女

  • 光源

    桐野夏生,2000,光源,文藝春秋.(2.14.25)あんたら、ふた言目には「いい映画」って言うけどさ。俺は映画の奴隷じゃねえよ。『柔らかな頬』から二年。「狂乱」を求めて、光を発し続ける男女を鮮烈に描く。桐野作品には、本書のように、ストーリー展開は地味で、ひたすら人間のドロドロした欲望を事細かに描きつくすものがあるが、そこいらへんは、小説になにを求めるのかによって評価が分かれるところだろう。わたしは、衝撃的な出来事をはさみながら、人間の情念を細部にわたって描きつくす作品が好みなんだが、そうそう自らの好みがすべて充たされるわけではない。光源

  • 身分社会、ザイム真理教と闘う!

    森永卓郎・深田萌絵,2024,身分社会,かや書房.(2.14.25)身分社会の頂点の一つは財務省。森永卓郎は、財務省に下僕のように扱われる「植民地」で長く働いた。深田萌絵はFランクの美術短大卒業後、就職では企業に歯牙にもかけられず、非正規という最低ランクの仕事に就いた。しかし、早稲田大学政経学部卒業後は、あちこちから引っ張りだこだった。その後は身分社会の頂点の一つの外資に。見たのは人間性最低の欲望の世界。現代の身分社会のレベルの低さを頂点と底辺を極めた2人が語り合う。現代は「業績主義」の社会であると思われているが、生まれ(生得属性、身分)と生育環境とが将来の「業績」に強く影響し、その「業績」は同時に属性(身分)に転化し、権力と貨幣資本の圧倒的不平等による支配−服従の関係が生成される。なにもかもあらかじめ与...身分社会、ザイム真理教と闘う!

  • コモングッド──暴走する資本主義社会で倫理を語る

    ロバート・B・ライシュ(雨宮寛・今井章子訳),2024,コモングッド──暴走する資本主義社会で倫理を語る,東洋経済新報社.(2.13.25)著者のライシュがこれまで展開してきた「新しい資本主義」(政府か市場かの二者択一ではなく、市場メカニズムの根幹となる市場のルールそのものを見直してサテナブルな資本主義を構築する)から一歩進んで、「よき市民社会をつくるためには、何が必要か」に焦点を当てた本。50年ほど前から、富と権力をもつ一握りの人々が、さらに多くの富と権力を手中に得ようと、社会に広がる「信頼」を搾取し始め、かつてはコモングッドと定義され、履行されてきた暗黙のルールが浸食されることになった。「私はどんな手段を使ってでも可能な限りの富と権力を手中に集める。慎み深く責任を持つなんていうのは負け犬がすることだ」...コモングッド──暴走する資本主義社会で倫理を語る

  • 絶望ハンドブック

    坂口恭平,2024,絶望ハンドブック,エランド・プレス.(2.12.25)苦しみの底で見つけたものは?『生きのびるための事務』著者がおくる、こころの深淵の歩き方。坂口さんは、双極性障がいの当事者。自我が、躁と鬱状態に引き裂かれ、平常もしくは躁状態の坂口さんが、鬱状態の自分に、延々と問いかけ続ける。気が滅入るような、終わりのないモノローグ。双極性障がい当事者の苦しみがひしひしと伝わってくる。目次第1章絶望の分析絶望へのアプローチ絶望とはなにかほか第2章絶望の渦中で絶望状態の苦しみ脱出1日目ほか第3章絶望の変調絶望と現実道具としての絶望ほか第4章絶望と生きる原点に戻る絶望の世界ほか付録絶望状態のメモ絶望ハンドブック

  • 死にたい気持ちに触れるということ──ソーシャルワーカーが見ている景色

    加藤雅江,2024,死にたい気持ちに触れるということ──ソーシャルワーカーが見ている景色,大月書店.(2.12.25)「困りごと」や「死にたい気持ち」を抱える人たちが話してくれた厳しい現実。その声を、ソーシャルワーカーとして受けとめ、地域で安心できる居場所づくりにも取り組む著者が、とくに若い世代に向けて語りかける。「死にたい気持ち」に取り憑かれている人々に向けて、また、絶望の極みにあった過去の自分自身に向けて、自問自答を繰り返す。延々と続くモノローグを読んで、こころがふっと軽くなる人もいるのだろう。「居場所」とて、そこに強制力がはたらけば、苦痛の場でしかなくなるというのは、そのとおりだろうな。目次はじめに1ソーシャルワーカーという仕事2「自殺」について思うこと3死にたい気持ちに触れるということ4「困りごと...死にたい気持ちに触れるということ──ソーシャルワーカーが見ている景色

  • 【旧作】魂にふれるアジア【斜め読み】

    松井やより,1992,魂にふれるアジア,朝日新聞社.(2.12.25)アジア諸国における貧困、性搾取、児童労働、戦争犯罪、人権弾圧、環境破壊等の問題を告発し続けた松井さんの功績は計り知れない。松井さんが活躍していた1970-80年代には、日本も含めた先進国企業による、グローバルサウスの人々の搾取に対し、直接行動で対抗する運動があった。「東アジア反日武装戦線」もその運動体の一つで、1974年、三菱重工爆破事件を引き起こす。本書でも、アジア諸国の人々を搾取し、環境を破壊して、人権抑圧に加担する企業として、三菱グループのそれが挙げられている。三菱グループの企業だけが、搾取、抑圧、破壊の加害者であったわけではない。しかし、「三菱的なるもの」への嫌悪と忌避は、ずっとつきまとってきた。反吐が出る。「三菱重工」のたかが...【旧作】魂にふれるアジア【斜め読み】

  • 【旧作】あやかしの鼓(夢野久作怪奇幻想傑作選)【斜め読み】

    夢野久作,1998,あやかしの鼓(夢野久作怪奇幻想傑作選),角川書店.(2.11.25)鼓作りの男が想い焦がれた女性へ、嫁ぐ時に贈った自作の鼓。その音色は尋常とは違い、皆を驚かせた。それは恐ろしく陰気な、けれども静かな美しい音であった…。夢と現実とが不思議に交錯する華麗妖美な世界。表題作をはじめ、その粋を集めた夢野文学の入門書ともいえる決定版の一冊。いやあ、おもしろかったね。江戸川乱歩と並び称される夢野久作であるが、『ドグラ・マグラ』の印象が強すぎて、「とっつきにくい」作家として敬遠されてきた向きがある。しかし、こと短編小説に限れば、独特の韻を踏む文体にいつしか引き込まれること必至で、そこに醸し出される奇々怪々な人間と世界の描写は、他の追随を許さない。他の作品も読んでいこうと思う。楽しみだ。【旧作】あやかしの鼓(夢野久作怪奇幻想傑作選)【斜め読み】

  • 手段からの解放

    國分功一郎,2025,手段からの解放,新潮社.(2.10.25)「楽しむ」とはどういうことか?『暇と退屈の倫理学』にはじまる哲学的な問いは、『目的への抵抗』を経て、本書に至る。カントによる「快」の議論をヒントに、「嗜好=享受」の概念を検証。やがて明らかになる、人間の行為を目的と手段に従属させようとする現代社会の病理。剥奪された「享受の快」を取り戻せ。「何かのため」ばかりでは、人生を楽しめない―。見過ごされがちな問いに果敢に挑む、國分哲学の真骨頂!第一章で展開された論文を、第二章の、東大での講話で解説するという構成。「享受の快」までもが、「目的のための手段」と化し、人間の実存が蝕まられているという指摘は、ハーバマスの「生活世界の植民地化」テーゼを想起させるが、本書では、「なにかのためにするのではなく、かつそ...手段からの解放

  • ギャンブル脳

    帚木蓬生,2025,ギャンブル脳,新潮社.(2.10.25)「次こそ当たる!一発逆転!!」。いい加減な予想は、期待を通り越してやがて確信へと変わっていく。そんな時、ヒトの脳ではいったい何が起きているのか。脳内にあふれるドーパミン、二度ともとには戻らない思考回路、ついには薬物中毒よりも深刻な依存状態に…。ギャンブル依存症の患者とその家族の苦しみに、長年向き合ってきた作家にして精神科医が多くの臨床例と最新の知見から解き明かす、恐怖のスパイラル。本書では、人は、どうやってギャンブル依存に陥るのか、とてもわかりやすく解説されている。また、帚木さんは、ギャンブル症を蔓延させる国や警察の作為、無作為について、手厳しく批判する。ギャンブル依存だけでなく、買い物依存、窃盗癖、痴漢、盗撮等、「やめるにやめられない」嗜癖疾患...ギャンブル脳

  • ジオラマ、ロンリネス

    桐野夏生,2001,ジオラマ,新潮社.(2.9.25)ベルリンのガイドで生計を立てる、美貌の男、カール。地方銀行に勤める平凡な会社員、昌明。金のため男に抱かれることに疲れ始めた、カズミ。退屈な生活。上下運動を繰り返す、エレベーターのような日々。しかし、それがある時、一瞬にして終焉を迎える。彼らの目の前に現れた、まったく新しい光景。禁断の愉悦に続く道か、破滅の甘美へと流れゆく河か。累卵の如き世界に捧げる、短編集。九編の短編小説集。人間のこころの不条理、隠微さ、醜悪さを描く試みを、桐野さんは、石ころを剥がして、その下にうごめく生き物たちを観察することに喩える。子供の頃、地面に埋まっている石ころを剥がす遊びに夢中だったことがある。見たところ何の変哲もない石の下に、地上とは全く違う世界が存在しているのが面白くてな...ジオラマ、ロンリネス

  • 「女子」の誕生、女子のチカラ

    米澤泉,2014,「女子」の誕生,勁草書房.(2.7.25)「子ども」や「主婦」と同様、「女子」も近代社会が生み出した存在であり、その「女子」の内実がどう変容してきたのか、それを主にファッション雑誌から探り出し、読み解こうという米澤さんの問題意識は、まことに正道を行くものだ。「女子」がもっとキレイにカワイくなろうとするのは、男のためではない。鏡に映った自分に萌えるため、あるいは、「気分をあげる」ため、である。階層上昇婚を当て込む女子大生をターゲットにした『JJ』等の「赤文字」系ファッション誌はとうに姿を消した。「きさまいつまで女子でいるのか」という問いへの答えは、「いつまでも」、である。コスメや衣服で武装し、「女子」という「鎧」を身にまとう女たちは、おそらく、一生、「わたしに萌える」。年齢や役割、ライフス...「女子」の誕生、女子のチカラ

  • 母親になって後悔してる、といえたなら──語りはじめた日本の女性たち

    髙橋歩唯・依田真由美,2024,母親になって後悔してる、といえたなら──語りはじめた日本の女性たち,新潮社.(2.7.25)どん底の状態はずっとは続かない。NHK「クローズアップ現代」からの書籍化。「母親なんだから」と我慢を強いられ、自らの「理想の母親像」に縛られ、理不尽な目に遭っても口をつぐんできた――「後悔」を口にした日本の女性たちは、どのような人生を歩み、何を経験してきたのか。切実な想いを丁寧に聞き取った、社会現象になった話題書『母親になって後悔してる』の「日本版」というべきインタビュー集。本書は、オルナ・ドーナトの『母親になって後悔してる』に触発されて編まれた、母親業を降りたい、母親なんかにならなければよかったという思いをもつ女性たちへのインタビューの記録である。育児による心身の疲弊、仕事を断念せ...母親になって後悔してる、といえたなら──語りはじめた日本の女性たち

  • 人間標本

    湊かなえ,2023,人間標本,KADOKAWA.(2.6.25)蝶が恋しい。蝶のことだけを考えながら生きていきたい。蝶の目に映る世界を欲した私は、ある日天啓を受ける。あの美しい少年たちは蝶なのだ。その輝きは標本になっても色あせることはない。五体目の標本が完成した時には大きな達成感を得たが、再び飢餓感が膨れ上がる。今こそ最高傑作を完成させるべきだ。果たしてそれは誰の標本か。――幼い時からその成長を目に焼き付けてきた息子の姿もまた、蝶として私の目に映ったのだった。イヤミスの女王、さらなる覚醒。15周年記念書下ろし作品。蝶のような「美少年」を殺して「標本」にする。それだけだと、たんなる猟奇譚になってしまうが、最後、真相が二転三転し、思わぬ真犯人が明らかになる。わたしは、ミステリー小説として楽しんだが、「美少年」...人間標本

  • 死神

    田中慎弥,2024,死神,朝日新聞出版.(2.6.25)うだつの上がらない「作家」である私の人生の折々に登場してくる、死神。中学二年生で初めて出会ったあいつのことだけは、これまで作品には書けなかったのだが……。芥川賞作家が描く「死」と「家族」。ユーモラスにして、痛烈な新境地。本作は、希死念慮に取り憑かれた人間の想念を描いた作品だが、言葉や句読点をもう少し工夫すれば、さらっと読める佳作になってたんじゃないかな。あと、もう少し、毒気が欲しい。凡庸の域を超えられていない。死神

  • 【名作】ライ麦畑でつかまえて【再読】

    J.D.サリンジャー(野崎孝訳),1984,ライ麦畑でつかまえて,白水社.(2.5.25)前に読んだのは、村上春樹訳だったが、この野崎孝訳も良い。ドロップアウトを繰り返す17歳の少年、ホールデンが呪詛のように紡ぎ続ける、偽善と虚飾にまみれた大人たちと、その予備軍たる同輩への、汚らしい誹謗の言葉──機関銃のように吐き出されるそれらの言葉は、『桃尻娘』の榊原玲奈や、『チェリー』のニコ・ウォーカーのそれを彷彿とさせる。作品の基本的性格を単純化して言えば、子供の夢と大人の現実との衝突ともいえるだろう。いつの世にも、どこの世界にもある不可避的現象だ。純潔を愛する子供の感覚と、社会生活を営むために案出された大人の工夫との対立。子供にとって、夢を阻み、これを圧殺する力が強ければ強いほど、それを粉砕しようとする反撥力は激...【名作】ライ麦畑でつかまえて【再読】

  • 民主主義ってなんだ?、民主主義は止まらない

    2000年代終わりから2010年代にかけて活性化した、反貧困、反原発、反安保法制の運動は、非階層性の水平的なネットワーキングを特徴とする「新しい社会運動」であった。先人が構築した民主主義を継承し、未来世代にバトンを渡す──その理想に燃えた若者たちが、民主主義と立憲主義の理念と内実を問いながら、ネットワークのノードとしての役割を果たし、安保法制に対抗する情宣、デモ等の活動を展開していく。高橋源一郎さん、内田樹さん等、1960-70年代の社会運動に参画した先行世代の、若者たちへ注ぐまなざしがとてもあたたかい。高橋源一郎・SEALDs,2015,民主主義ってなんだ?,河出書房新社.(2.4.25)安倍政権の暴走に若者が立ち上がった。この国の未来を諦めないために。自由と民主主義を実現する社会に向けた新たなマニフェ...民主主義ってなんだ?、民主主義は止まらない

  • 社会を変えるには

    小熊英二,2012,社会を変えるには,講談社.(2.3.25)現代日本において「社会を変える」とはどういうことなのか?歴史的、社会構造的、思想的に考え、新しい可能性を語る500ページ。〈私はしばしば、「デモをやって何か変わるんですか?」と聞かれました。「デモより投票をしたほうがいいんじゃないですか」「政党を組織しないと力にならないんじゃないですか」「ただの自己満足じゃないですか」と言われたりしたこともあります。しかし、そもそも社会を変えるというのはどういうことでしょうか。〉(「はじめに」より)いま日本でおきていることは、どういうことか?社会を変えるというのは、どういうことなのか?歴史的、社会構造的、思想的に考え、社会運動の新しい可能性を探る大型の論考です。社会変動、民主主義、社会運動の変容について、史実に...社会を変えるには

  • 私に萌える女たち

    米澤泉,2010,私に萌える女たち,講談社.(2.2.25)一九七〇年に産声をあげた女性グラビア・ファッション誌は、二〇一〇年で四〇歳になった。その女性誌に先導されて、大きく生き方を変えてきた日本の女性たち。恋愛・仕事・結婚・出産・美貌―女が望むすべてを手に入れて、強く美しく生きる、たとえば黒田知永子、松田聖子や黒木瞳。もちろん、ごくごく普通の女たちも。二一世紀のポスト・モダンガールの生き方を女性誌の変遷を通して分析する。1970年代以降の女性誌の変遷をたどりながら、女性の価値観とライフスタイルの変容を分析する。キーワードは、「私萌え」。夫も子どもも「いつまでもきれかわいい私」を演出する道具でしかない。「子道具」。笑このように、四〇年の歳月を経て、女性たちは結婚も仕事も出産も美貌も、すべてをあきらめなくな...私に萌える女たち

  • 砂に埋もれる犬、インドラネット

    桐野夏生,2021,砂に埋もれる犬,朝日新聞出版.(1.31.25)貧困と虐待の連鎖――。母親という牢獄から脱け出した少年は、女たちへの憎悪を加速させた。ジャンルを超えて文芸界をリードする著者の新たな傑作。予定調和を打ち砕く圧倒的リアリズム!小学校にも通わせてもらえず、日々の食事もままならない生活を送る優真。母親の亜紀は刹那的な欲望しか満たそうとせず、同棲相手の男に媚びるばかりだ。そんな最悪な環境のなか、優真が虐待を受けているのではないかと手を差し伸べるコンビニ店主が現れる――。ネグレクトによって家族からの愛を受けぬまま思春期を迎えた少年の魂は、どこへ向かうのか。その乾いた心の在りようを物語に昇華させた傑作長編小説。人は、虐待を受けて育った子どもが、逆境を乗り越えて、真っ当な人生を送る、そんなストーリーを...砂に埋もれる犬、インドラネット

  • 妊娠したら、さようなら──女性差別大国ニッポンで苦しむ技能実習生たち

    吉水慈豊,2024,妊娠したら、さようなら──女性差別大国ニッポンで苦しむ技能実習生たち,集英社インターナショナル.(1.31.25)なぜ、技能実習生の赤ちゃん遺棄事件は続くのか――。妊娠を理由に職を追われ、帰国させられる外国人の労働者たち。ベトナム人を支援する女性僧侶が、妊婦の悲しみと苦しみに寄り添った記録を綴る。ベトナム人の「失踪」が相次ぎ、「奴隷労働」と国際的に批判された外国人技能実習制度。その廃止は決まったけれど、近年は技能実習生が孤立出産に追い込まれ、赤ちゃんの死体を遺棄する事件が立て続く。どうして「悲劇」は繰り返されるのか?新制度が始まれば、もう起きない?マタハラが許されないこの時代、まるで妊娠したことが罪であるかのように仕事をやめさせられ、日本から追い出される数多くのベトナム人女性たち。寄る...妊娠したら、さようなら──女性差別大国ニッポンで苦しむ技能実習生たち

  • 「ふつうのLGBT」像に抗して──「なじめなさ」「なじんだつもり」から考える

    森山至貴,2024,「ふつうのLGBT」像に抗して──「なじめなさ」「なじんだつもり」から考える,青土社.(1.30.25)「もうLGBTなんてふつう」って言っておけばいいと思ってない?「ゲイコミュニティ」になじめないゲイという立場に留まることから見えてくる、うわべだけのセクシュアルマイノリティ理解を脱するための処方箋。わりと簡単なことを難解な言葉で言い表そうとすることにより、読む側の思考が切断されてしまう難はあるものの、マイノリティに一見配慮しているかのような言説の偽善、マイノリティが隔離されてしまう「居場所」というゲットーの息苦しさ等、よく考え抜かれて指摘されているように思える。「わたしはわたしでしかない」のに、ゲイ、トランス等のカテゴリーに回収されてしまうことへのイライラ、怒りが、ビシバシ伝わってく...「ふつうのLGBT」像に抗して──「なじめなさ」「なじんだつもり」から考える

  • クロスオーバーイレブン

    いやいやいや、なんとも懐かしい。クロスオーバーイレブン1986(1986/05/某日)「真夜中のコーヒーブレイク(?)」NHK-FMまだまだ音源が高価な希少品で、FM雑誌の番組表を見て、お目当ての楽曲をカセットテープにせっせと録音していた、あの時代。パイオニア、ソニー、ダイアトーン(三菱)、トリオ、オーレックス(東芝)、サンスイ等々、幾多のメーカーがこぞってオーディオ機器を量産していた、あの時代。深夜のFM放送は、居間にあったパイオニアのオーデイオ機器ではなく、もっぱら自室のラジオにかじりついて聴いていた。「クロスオーバーイレブン」の語り手は、津嘉山正種さん。多感であったあの頃の自分を久しぶりに思い起こして感傷に浸るwあの頃のラジカセから流れる音楽の、なんと眩しかったこと。自我が音に乗って溶け出して宇宙に...クロスオーバーイレブン

  • メメント・モモ──豚を育て、屠畜して、食べて、それから

    八島良子,2024,メメント・モモ──豚を育て、屠畜して、食べて、それから,幻戯書房.(1.29.25)そこに理由を見出すのは、きっと人が生きやすくなるためでしかない。なぜこのようなことをするのか、命懸けで考えていきたい。コロナ禍の瀬戸内海・百島。愛豚と向き合った333日の記録。行政と折衝を重ね、どう屠ったか。アーティストの八島さんは、子豚を貰い受け、約一年、200kgを超すまで育て上げて、屠殺し、肉を食らう。人は、通常、ペットを食べることはできない。「仲間は食べてはいけない」という禁忌は、「近親者とは性交してはいけない」というインセスト・タブーともども、普遍的なものであるが、八島さんは、あえて、この禁忌を犯す。八島さんは、自らの月経痛についてたびたび言及している。食べ、飲み、排泄するモモの世話をする八島...メメント・モモ──豚を育て、屠畜して、食べて、それから

  • HemiSync

    自室で流す音楽は、あいかわらず、ロック、レゲエ、ジャズのジャンルからアーティスト/アルバムごとに再生しているんだが、久しぶりに、数日前から、夜間、HemiSyncを流している。HemiSyncは、瞑想し、深層意識にアクセスして、変性意識状態を実現するための音楽だ。HemiSyncCosmicConsciousness RelaxingMusicwithHemi-Sync®FrequenciesforExpandedAwareness#binauralうーん、目をつぶってヘッドフォンかイヤホンで聴いたら、効果あるのかもしれないけど、もっぱら、なからリスニングなんで、変性意識に到達するなんて、どうも無理っぽい。でも、まったく耳障りでなく聞き流せる音なんで、受験や資格取得の勉強の環境音楽としては良いのかもしれな...HemiSync

  • 日本の文脈,現代霊性論

    内田樹・中沢新一,2012,日本の文脈,角川書店.(1.28.25)『日本辺境論』の内田樹と、『日本の大転換』の中沢新一。野生の思想家がタッグを組み、いま、この国に必要なことを語り合った渾身の対談集。アタマの切れるお二人なだけに、文句なしにおもしろい。丁々発止というより、論点、話題があっちこっちに飛んで──それが「おばさん」的なのだそうだがポリコレ的にそれはまずいと思うぞ──わけわかめになりそうになりながら、共鳴、共感するほかない、ふわっとした結論に着地する。内田さんの、贈与=人間始原論には、心底、共鳴する。内田(前略)すべての人間的営為は、突き詰めれば、「贈与と反対給付」によって構成されている。労働もそうなんです。労働は労働するに先立って、すでに贈与を受けたことに対する返礼なんです。等価物の交換じゃない...日本の文脈,現代霊性論

  • 最終講義──生き延びるための六講、街場の憂国論

    内田樹,2011,最終講義──生き延びるための六講,技術評論社.(1.27.25)人間はどのように欲望を覚えるのか、どうやって絶望するのか、どうやってそこから立ち直り、どうやって愛し合うのか…。2011年1月22日、神戸女学院大学で行なわれ、多くの人々に感銘を与えた「最終講義」を含む、著者初の講演集。超少子化・超高齢化時代を迎えて日本の進むべき道は?学びのスイッチを入れるカギはどこにある?窮地に追いつめられた状況から生き延びる知恵とは?…いまを生きるための切実な課題に答える。学問の楽しさというものは、自らの知性──脳と身体が最高のパフォーマンスを達成し、自らを縛り付ける常識、認識枠組み、価値前提を自ら打ち壊すことにある。(前略)どうやったら学びのモチベーションを高く維持できるか、そのためには使えるものは全...最終講義──生き延びるための六講、街場の憂国論

  • スムージーとフレンチトースト

    スムージー。いちご、ブルーベリー、バナナ、ハチミツ、牛乳をミキサーにかけて出来上がり。フレンチトースト。両方とも、簡単にできて、おいしい。スムージーとフレンチトースト

  • 貴様いつまで女子でいるつもりだ問題

    ジェーン・スー,2014,貴様いつまで女子でいるつもりだ問題,幻冬舎.(1.26.25)未婚で子なしの女の人生、それもまた悪くはない──このジェーン・スーさんといい、酒井順子さんといい、彼女たちは、アラサー、アラフォー世代シングルの背中をポンと叩いて励ましてくれる頼もしい存在だ。刺すような男の視線から逃れられるアラサー以降は、女性にとって、なんて生きやすいのだろう──そんな実感が、鮮度の高いネタとともに繰り出される軽妙洒脱な筆致から伝わってくる。目次貴様いつまで女子でいるつもりだ問題女子会には二種類あってだなていねいに暮らしオブセッション私はオバさんになったが森高はどうだ三十路の心得十箇条エエ女発見や!カワイイはだれのもの?メガバイト正教徒とキロバイト異教徒の絵文字十年戦争隙がないこと岩の如しファミレスと...貴様いつまで女子でいるつもりだ問題

  • ナニカアル、残虐記、リアルワールド

    桐野夏生,2010,ナニカアル,新潮社.(1.23.25)昭和十七年、南方へ命懸けの渡航、束の間の逢瀬、張りつく嫌疑、そして修羅の夜。波瀾の運命に逆らい、書くことに、愛することに必死で生きた一人の女を描き出す感動巨編の誕生。女は本当に罪深い。戦争に翻弄された作家・林芙美子の秘められた愛を、桐野夏生が渾身の筆で灸り出し、描き尽くした衝撃の長篇小説。評伝小説と呼ぶには、あまりに脚色、創作の部分が大きく、これは、作家、林芙美子の、「こうであった、ありえたかもしれない」人生を描いた、フィクションとして読むべきものであろう。一気に読ませる筆力はさすがというほかない。「ナニカアル」(桐野夏生)−−作家・林芙美子の大いなる謎桐野夏生,2004,残虐記,新潮社.(1.24.25)失踪した作家が残した原稿。そこには、二十五...ナニカアル、残虐記、リアルワールド

  • 「ふつう」の私たちが、誰かの人権を奪うとき──声なき声に耳を傾ける30の物語

    チェ・ウンスク(金みんじょん訳),2024,「ふつう」の私たちが、誰かの人権を奪うとき──声なき声に耳を傾ける30の物語,平凡社.(1.24.25)「一縷の望みにかける思いで電話しました。どうか助けてください」読み書きができず告訴状を提出できない老齢の囚人、精神病院に閉じ込められた外国人労働者、人望が厚い上司から受けた性暴力、コーチの体罰に耐えるスポーツ選手……韓国・国家人権委員会で働く調査官のもとへ届く、悔しさを抱えた人々の訴え。人権を守るために、私たちはいったい何ができるのか?現役の調査官が出会った人々の姿を描く、心揺さぶるノンフィクション。「時に裏切られ、騙されても、市井の人々の痛みと悲しみに寄り添う。人権とは、人間の尊厳とは何かを何度も問い直しながら」──望月衣塑子さん(ジャーナリスト)法律と制度...「ふつう」の私たちが、誰かの人権を奪うとき──声なき声に耳を傾ける30の物語

  • 子どもを森へ帰せ──「森のようちえん」だけが、AIに置き換えられない人間を育てる

    宮台真司・おおたとしまさ,2024,子どもを森へ帰せ──「森のようちえん」だけが、AIに置き換えられない人間を育てる,ホーム社.(1.23.25)ニッポンの教育は、ここから――。いま「森のようちえん」という幼児教育のスタイルが、世界的に注目されています。いわゆる野外保育であり、子どもたちは大人の指示にただ従うのではなく、自然環境に誘われるままに自由に動き回ります。それには日本の里山の環境も、じつにフィットするのです。気候変動や民主主義の機能不全など、国内外でさまざまな課題が立ち現れる中、「森のようちえん」の実践には、世の中を変える可能性があります。それはなぜでしょうか?本書は、社会学者の宮台真司さんと、教育ジャーナリストのおおたとしまささんによる師弟対談をもとに、葭田昭子氏、坂田昌子氏、関山隆一氏らユニー...子どもを森へ帰せ──「森のようちえん」だけが、AIに置き換えられない人間を育てる

  • 書いてはいけない、マンガ 誰も書かない「真実」 日航123便はなぜ墜落したのか、官僚生態図鑑

    『書いてはいけない』では、ジャニー喜多川による1,000人近い少年への性加害とその隠蔽、財務省主導の超緊縮財政政策、そして自衛隊による日本航空123便撃墜(疑惑)と米国従属による日本経済の失速、以上が取り上げられている。『マンガ誰も書かない「真実」日航123便はなぜ墜落したのか』は、『書いてはいけない』第3章とほぼ同一の内容。『官僚生態図鑑』は、本来、非常に優れた資質、能力をもつキャリア官僚(財務省官僚を除く)が、フリンジ・ベネフィットを喪失したがゆえに官僚自らの利益にかなう愚かな政策を推進している現況を指摘する。わたしとしては、ほとんどすでに知っていることばかりであったが、このような極めて真実に近い重大なことがらが未だに広く知られていない事実に戦慄する。森永卓郎,2024,書いてはいけない,三五館シンシ...書いてはいけない、マンガ誰も書かない「真実」日航123便はなぜ墜落したのか、官僚生態図鑑

  • 【旧作】女から生まれる(アドリエンヌ・リッチ女性論)【斜め読み】

    アドリエンヌ・リッチ(高橋茅香子訳),1990,女から生まれる(アドリエンヌ・リッチ女性論),晶文社.(1.21.25)地球上の人間はすべて女から生まれる―。そのことは、女を理想化し、母性神話をはびこらせる一方、女が自分自身の生き方を選択する自由を奪ってきた。男中心の社会のなかで、制度化された「母性」がかかえこむあらゆる問題を検討し、産む性としての女のからだとこころを解放する視点をあきらかにする。3人の息子の母としての体験を問いなおし、歴史的文献を緻密に分析して、「あたらしい古典」としていまや世界中で大きなインパクトをもって読みつがれる、リッチのフェミニズム「母性論」の名著。詩人、アドリエンヌ・リッチは、本書で、月経、性行為、妊娠、出産、授乳・・・自らの身体と向き合い、詩的言語を駆使して父権制に取り込まれ...【旧作】女から生まれる(アドリエンヌ・リッチ女性論)【斜め読み】

  • 文化系女子という生き方──「ポスト恋愛時代宣言」!

    湯山玲子,2014,文化系女子という生き方──「ポスト恋愛時代宣言」!,大和書房.(1.20.25)腐女子とリア充は両立できる!文学、コミック、音楽、ファッション、アート…気がつけば文化系女子ばかり!!!文化系・肉食系バイリンガルの湯山玲子が間違った文化系女子に喝ッ!!!世にはびこる文化系女子図鑑。現代文化と教養についてのキレキレのエッセイ。いま、いちばんイタいのは、カネと権力に執着する男と、そうした下賤な男に貢がれるのを最大の喜びとするクズ女だろう。人生を楽しむノウハウを知る賢い人は、野卑な欲望から脱却し、文化、教養の世界で遊ぶ。そして、そこで学んだ教養を、俗世での高貴な欲望に昇華させる。楽しく美しく生きるとはどういうことか、本書には、文化、教養を極めた人にしかわからない世界が展開されている。目次第1章...文化系女子という生き方──「ポスト恋愛時代宣言」!

  • 女子と貧困──乗り越え、助け合うために

    雨宮処凛,2017,女子と貧困──乗り越え、助け合うために,かもがわ出版.(1.20.25)原発事故母子避難、シングルマザー、キャバ嬢、育児ハラスメント、進学めざす生活保護の女性…くらしとたたかいの現場から。全編取材・書き下ろし。女性の貧困、そのさまざまなかたちが八つの事例に集約されている。たんに事例を紹介するわけではない、雨宮さんが貧困当事者と向き合い考えたことが、当事者の語りと交錯し、力強いメッセージを読む者に突きつける。孤立と冷笑のまえに屈することなく、声を上げること、クレームを申し立てること、そして連帯することの大切さをあらためて思い知る。目次1「自分が適当に育てられたから、自分の子どもはちゃんと育てたかった」―原発事故による自主避難者の加緒理さん。子ども時代の貧困と、事故後の困難2「不幸比べも我...女子と貧困──乗り越え、助け合うために

  • さよなら!ハラスメント──自分と社会を変える11の知恵

    小島慶子編著,2019,さよなら!ハラスメント──自分と社会を変える11の知恵,晶文社.(1.19.25)財務省官僚トップによるセクハラ問題、医学部不正入試問題、スポーツ界を揺るがす数々のパワハラ、アイドルに対する人権無視…。問題は至るところに噴出し、平成の終わり、私たちはやっと目覚めようとしている。そもそも、ハラスメントとはどういうことなのか?なぜハラスメントが起きるのか?ハラスメントのない社会にするために何が必要なのか?自分にできることは何か?ハラスメントと社会について考えるためのヒントを、小島慶子が11人の識者に尋ねる。ハラスメントの在りようは、いまの日本を写し出す鏡でもある。すこしずつ、前に進むために、みんなでいっしょに考えよう!2017-2018年の#MeToo運動以降、セクハラ、性暴力被害を受...さよなら!ハラスメント──自分と社会を変える11の知恵

  • 人間の土

    サン・テグジュペリ(田中稔也訳・挿絵),2024,人間の土,明月堂書店.(1.18.25)「精神の息吹が粘土に吹き渡ってこそ、人間は創りだされるであろう」サン=テグジュペリが『人間の土』を通じてしみじみと訴えたヒューマニティは、今を生きる若者たちの心に果たして届くだろうか。ぜひ届いて欲しい。繰り返される戦争と虐殺の時代に新たな連帯を模索し新世代に贈る祈りの書。まだ飛行機が危険極まりない存在であった時代、サン・テグジュペリは、定期郵便機のパイロットとして、数多くの生死の危険に身を晒した。墜落死した友を悼み、サハラ砂漠に不時着し死に直面した自らの経験を回想する。生命を蕩尽する戦争を憎む一方で、たんなる土くれに終わらぬべく、生死を賭けた飛行に、生命の炎を燃焼させる。話し言葉に近い、思い切った訳文が見事だ。目次第...人間の土

  • 責任

    浅野皓生,2024,責任,KADOKAWA.(1.18.25)雪の深夜の当直中、刑事の松野徹は不審車両に遭遇し職務質問する。運転手の藤池光彦は急発進、徹は追跡するが車は交差点に突っ込み、光彦と通りかかった車の家族四人が死亡する大惨事となる。警察への批判が強まりかけたとき、光彦が事故直前に強盗致傷事件を起こしていたと判明、非難は遺族に集中した。冤罪を疑う光彦の両親から再捜査を嘆願された徹は、自責の念に誘われるように引き受けてしまう。新事実など出てきようがない、はずだったが―。第44回横溝正史ミステリ&ホラー大賞優秀賞受賞作。第一章では、過去の事件の真相を追う刑事、松野徹が主人公であるが、唐突に徹は死に、第二章では、徹の娘、莉帆が主人公となる。そして、事件の裏に、妹を性虐待された兄、藤池光彦の復讐劇があったこ...責任

  • 苦情はいつも聴かれない

    サラ・アーメッド(竹内要江・飯田麻結訳),2024,苦情はいつも聴かれない,筑摩書房.(1.17.25)「美しく書かれ、すっかり惹きこまれた。まさに今、私たちに必要なテキスト。」――アンジェラ・Y・デイヴィス「感動的であり、連帯の源でもある。抗議し、変化のために闘う勇気を与えてくれる。」-ジル・クロージャー、教育社会学「強くお薦めする。上級学部生から教員、専門家まで。」――『チョイス』誌「大学における権力とその濫用についての、慎重かつ洗練された分析。」-バハラク・ユセフィ、カレッジ&リサーチ・ライブラリー組織内のハラスメント、性差別、人種差別に対して声を上げた人々は何を経験するか。本書では大学に苦情を訴えた学生や教授陣など60名以上への調査をもとに、組織・制度・権力が苦情を阻止し無力化するメカニズムを解き...苦情はいつも聴かれない

  • 自分を傷つけることで生きてきた──自傷から回復するための心と体の処方箋

    村松英之,2024,自分を傷つけることで生きてきた──自傷から回復するための心と体の処方箋,KADOKAWA.(1.17.25)学生のうち10人に1人が自傷経験がある時代。なかなか自傷から抜け出せず、大人も自傷する傾向にある。しかし、社会的には自傷に対する偏見もあり、たとえ回復しても友人や家族に言い出せなかったり、傷を隠しながら生きなければならない。著者の村松英之は形成外科医としてリストカットの患者の治療を行いながら、2022年には、日本自傷リストカット支援協会を設立。患者のサポートのほか、医師への啓蒙活動を行ってきた。本書は、当事者へのインタビューを通して、心と体の守り方を紹介する。自傷はいまを耐え抜くための唯一の方法、なかったことにされる「大人の自傷」、回復後こそ大きくなる「傷跡の問題」。大丈夫、あな...自分を傷つけることで生きてきた──自傷から回復するための心と体の処方箋

  • 予告された殺人の記録

    ガブリエル・ガルシア=マルケス(野谷文昭訳),1997,,新潮社.(1.16.25)町をあげての婚礼騒ぎの翌朝、充分すぎる犯行予告にもかかわらず、なぜ彼は滅多切りにされねばならなかったのか?閉鎖的な田舎町でほぼ三十年前に起きた幻想とも見紛う殺人事件。凝縮されたその時空間に、差別や妬み、憎悪といった民衆感情、崩壊寸前の共同体のメカニズムを複眼的に捉えつつ、モザイクの如く入り組んだ過去の重層を、哀しみと滑稽、郷愁をこめて録す、熟成の中篇。表紙の絵は、ジェームズ・アンソールの『仮面の中の自画像』。アンソールは、小学生のときに美術館で見て衝撃を受けた画家だ。そのアンソールの絵にふさわしい、禍々しい、ある殺人事件の記録が本書である。創作よりも、1951年に実際に起きたルポルタージュ寄りに書かれた作品であるので、ガル...予告された殺人の記録

  • 百年の孤独

    ガブリエル・ガルシア=マルケス(鼓直訳),2024,百年の孤独,新潮社.(1.15.25)世界46言語に翻訳され、5000万部を売り上げている世界的ベストセラー。宿業を運命づけられた一族の、目も眩む百年の物語。1820年代からの100年間の、マコンドという地でのブエンディア一族の盛衰を描く。入植、内乱、バナナ農園労働者の虐殺、古屋敷をさまよう死者の霊、150年を生きる老婆・・・おびただしい数の人物が現れ、奇矯な人生を生き、死んでいく。リアルな世界にありえないできごとが挿入され、現実と空想の境界が次々に破壊されていく。マジック・リアリズムの傑作だ。ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』読み解き支援キット池澤夏樹制作百年の孤独

  • 愛着障害と複雑性PTSD──生きづらさと心の傷をのりこえる

    岡田尊司,2024,愛着障害と複雑性PTSD──生きづらさと心の傷をのりこえる,SBクリエイティブ.(1.14.25)親との不安定な愛着を抱えた人は、未解決な心の傷である『愛着トラウマ』に苦しんでいる人が少なくない。深刻な虐待だけでなく、心理的な支配を長期にわたって受けつづけ、主体性を侵害されることで、「複雑性PTSD」を生じてしまうのだ。本書では、愛着障害のなかでも、愛着トラウマとそのもっとも深刻な状態である複雑性PTSDについて解説するとともに、克服の極意と最新アプローチをわかりやすく紹介する。愛着障がいと複雑性PTSD。主に親による不適切な関わりが愛着障がいにつながり、障がい当事者は、安全基地が欠落していることから、さらなる虐待や暴力の被害を受けやすくなり、愛着障がいに加えて複雑性PTSDを負ってし...愛着障害と複雑性PTSD──生きづらさと心の傷をのりこえる

  • 瞳のなかの幸福、私たちの望むものは

    小手鞠るい,2019,瞳のなかの幸福,文藝春秋.(1.13.25)カタログ会社で働く35歳の編集者、妃斗美。婚約を破棄された過去を持つ彼女は、これからひとりで生きていくために、大きなものを買って、小さなものを拾った。手に入れたふたつの“幸福”は、彼女に何を与え、何を奪っていったのか。弟から「早く結婚しろ」と無神経なおせっかいを受ける主人公、妃斗美。妃斗美は、2つの大切なものを手に入れる。自分の家とねこ。こんな小さな生き物に、こんなにも大きな力が宿っているなんて。これはマジックだ。これは愛のマジックだ。こんなにも小さくて軽くて、ふわふわしててあたたかくて、やんちゃで愛情深くて、野性味たっぷりの美しい生き物がただそばにいてくれるだけで、人はこんなにも満たされて、こんなにも幸せになれるものなのだ。これが魔法でな...瞳のなかの幸福、私たちの望むものは

  • 天使に見捨てられた夜 (新装版)

    桐野夏生,2017,天使に見捨てられた夜(新装版),講談社.(1.12.25)AVでレイプされ、失踪した一色リナの捜索依頼を受けた村野ミロは、行方を追ううちに業界の暗部に足を踏み入れた。女性依頼人が殺害され、自身に危険が及ぶ中、ようやくつかんだリナ出生の秘密。それが事件を急展開させた…。乱歩賞受賞直後に刊行された圧巻の社会派ミステリー。「ミロシリーズ」第2弾!女性探偵、ミロが主人公のハードボイルド小説シリーズ、第二作。ろくでもない男への情愛に自らを傷つけながら、隣人のゲイ、「トモさん」との友情を育むミロのこころの成長が印象に残る。最後は、あっと驚くような結末に至る。極上のサスペンスが味わえる作品だ。天使に見捨てられた夜(新装版)

  • ポリティコン 上・下

    桐野夏生,2014,ポリティコン上・下,文藝春秋.(1.10.25)上理想社会の実現を目指し、東北の寒村に建設された唯腕村は、もはや時代遅れとなったユートピア思想の残滓である。村の人間関係に倦み、強烈に女を求める青年・高浪東一は、謎の男と村に流れ着いた美少女・マヤを我がものにしようともがき、自らの運命を狂わせてゆく。理想郷を舞台に繰り広げられる、絶望郷のごとき愛憎劇!下村の理事長となった東一は、危険なビジネスに手を染め、マヤとも愛人契約を結ぶ。だが、心の渇きは癒されず、あるまじき手段で関係を断ち切ってしまう。十年の後、都会の片隅に沈んだヤマは、憎むべき東一の成功を知る。再会した二人を待ち受けるのは、破滅か新天地か―。性愛の暗部を容赦なく抉った衝撃作!本作の主な舞台である唯腕村は、武者小路実篤等による「新し...ポリティコン上・下

  • 家父長制の起源──男たちはいかにして支配者になったのか

    アンジェラ・サイニー(道本美穂訳),2024,家父長制の起源──男たちはいかにして支配者になったのか,集英社.(1.10.25)《各界から絶賛の声、多数!》家父長制は普遍でも不変でもない。歴史のなかに起源のあるものには、必ず終わりがある。先史時代から現代まで、最新の知見にもとづいた挑戦の書。――上野千鶴子氏(社会学者)男と女の「当たり前」を疑うことから始まった太古への旅。あなたの思い込みは根底からくつがえる。――斎藤美奈子氏(文芸評論家)家父長制といえば、“行き詰まり”か“解放”かという大きな物語で語られがちだ。しかし、本書は極論に流されることなく、多様な“抵抗”のありかたを丹念に見ていく誠実な態度で貫かれている。――小川公代氏(英文学者)人類史を支配ありきで語るのはもうやめよう。歴史的想像力としての女性...家父長制の起源──男たちはいかにして支配者になったのか

  • なぜ働いていると本が読めなくなるのか

    三宅香帆,2024,なぜ働いていると本が読めなくなるのか,集英社.(1.9.25)【人類の永遠の悩みに挑む!】「大人になってから、読書を楽しめなくなった」「仕事に追われて、趣味が楽しめない」「疲れていると、スマホを見て時間をつぶしてしまう」……そのような悩みを抱えている人は少なくないのではないか。「仕事と趣味が両立できない」という苦しみは、いかにして生まれたのか。自らも兼業での執筆活動をおこなってきた著者が、労働と読書の歴史をひもとき、日本人の「仕事と読書」のあり方の変遷を辿る。そこから明らかになる、日本の労働の問題点とは?すべての本好き・趣味人に向けた渾身の作。日本人の読書と労働の歴史を読み解くユニークな論考。まあまあおもしろかったのだけど、長時間労働に縛り付けられたら、とてもとても本を読む余裕などもて...なぜ働いていると本が読めなくなるのか

  • 引き裂かれた自己──狂気の現象学

    R.D.レイン(天野衛訳),2017,引き裂かれた自己──狂気の現象学,筑摩書房.(1.8.25)世界から隔絶されているように感じられ、絶望的な孤独のなかで自分自身が分断されていく―統合失調症とはそうした病である。しかし、患者の世界に徹底的に寄り添い、彼らの声に真摯に耳を傾けていくなかでみえてくるのは、苛烈な現実に身を置かざるをえなかったひとりの人間が、それでもなんとか生きようと苦闘する、その姿である。従来の精神医療のあり方に疑問を抱き、反精神医学運動の旗手となった異才の精神科医R.D.レイン。その主著にして、ドゥルーズ=ガタリらの現代思想や、今日のサブカルチャーにも多大な影響を与えつづける古典的名著。統合失調症の治療となると、もっぱら抗精神病薬の処方である昨今であるが、オープンダイアローグ、妄想・幻覚・...引き裂かれた自己──狂気の現象学

  • ユリゴコロ

    沼田まほかる,2014,ユリゴコロ,双葉社.(1.7.25)ある一家で見つかった「ユリゴコロ」と題された4冊のノート。それは殺人に取り憑かれた人間の生々しい告白文だった。この一家の過去にいったい何があったのか―。絶望的な暗黒の世界から一転、深い愛へと辿り着くラストまで、ページを繰る手が止まらない衝撃の恋愛ミステリー!各誌ミステリーランキングの上位に輝き、第14回大藪春彦賞を受賞した超話題作!快楽殺人に取り憑かれた女性、彼女は自分の母なのか?末期がんの父親をもつ主人公は、快楽殺人とその衝動を綴ったノートを発見し、読み耽る。父親のトラウマとなった男の子の死は、快楽殺人者、母の所業であった。そうとも知らず、父は母と一緒になり家族をつくる。幾重にも張り巡らされたできごとの伏線、それが新たなできごとによって徐々につ...ユリゴコロ

  • 海を抱く──BAD KIDS

    村山由佳,2003,海を抱く──BADKIDS,集英社.(1.7.25)超高校級サーファーであり誰とでも寝る軽いやつと風評のある光秀。一方、まじめで成績優秀、校内随一の優等生の恵理。接点のほとんどない二人がある出来事をきっかけに性的な関係をもつようになる。それは互いの欲望を満たすだけの関わり、のはずだった。それぞれが内に抱える厳しい現実と悩み、それは体を重ねることで癒されていくのか。真摯に生きようとする18歳の心と体を描く青春長編小説。二人の主人公、恵理と光秀──高校生の女の子と男の子の繊細なセクシュアリティのありようが、とてもリアルに描かれている。大人の鑑賞に耐えられる青春小説の傑作だ。過去の記憶と重ね合わせ、甘酸っぱく切ない感傷に浸れるかもしれない。海を抱く──BADKIDS

  • マタハラ問題

    小酒部さやか,2016,マタハラ問題,筑摩書房.(1.6.25)働く女性が妊娠・出産・育児を理由に退職を迫られたり、嫌がらせを受けたりする「マタニティハラスメント(マタハラ)」。労働局へのマタハラに関する相談は急増し、いまや働く女性の3人に1人がマタハラを経験していると言われている。本書は「NPO法人マタハラNet」代表による「マタハラ問題」の総括である。マタハラとは何なのか。その実態は、どのようなものなのか。当事者の生の声から問題を掘り下げる。以下は、小酒部さんが立ち上げたNPO、「マタハラNet」に寄せられた、マタハラ発言の数々である。「相談なしに妊娠するな」「堕ろす覚悟で働け」「妊娠するとわかっていたら、君なんか雇わなかった」「妊娠したの?迷惑だ」「あなたがどうなろうが私は知らない。妊娠は自己責任だ...マタハラ問題

  • 【旧作】お姫様とジェンダー──アニメで学ぶ男と女のジェンダー学入門【斜め読み】

    若桑みどり,2003,お姫様とジェンダー──アニメで学ぶ男と女のジェンダー学入門,筑摩書房.(1.6.25)コレット・ダウリングの『シンデレラ・コンプレックス』が刊行され、話題をよんだのは一九八二年。すでに二十年以上になるが、その間、「白雪姫」「シンデレラ」「眠り姫」などのプリンセス・ストーリーは、ますます大量に生産され、消費されている。大量に消費されるからその影響力も絶大である。本書では、ディズニーのアニメを題材に、昔話にはどんな意味が隠されているかを読み解く。いつの間にか思い込まされている「男らしさ」「女らしさ」の呪縛から、男も女も自由になり、真の男女共同参画社会を目ざす。若桑さんは、勤務先の女子大での授業、「ジェンダー文化論」にて、学生に、ディズニーのアニメ、「白雪姫」、「シンデレラ」、「眠り姫」を...【旧作】お姫様とジェンダー──アニメで学ぶ男と女のジェンダー学入門【斜め読み】

  • 【旧作】性と愛の日本語講座【斜め読み】

    小谷野敦,2003,性と愛の日本語講座,筑摩書房.(1.6.25)「恋愛」という言葉が近代になってつくられたことはよく知られている。では「恋人」はどうか。徳川時代には「情夫・情婦」というのがあったが、それはどういう意味で使われたのか?「情欲」や「不倫」はいつ頃生まれたのか?また「逢い引き」は?本書では、『太陽の季節』『チャタレイ夫人の恋人』等の文学作品、各時代に流行った歌謡曲やマンガ等を材料に、時に外国語との比較を交えながら、性と愛にまつわる日本語の意味の由来や変遷をたどり、日本語の面白さを発見していく。色恋、セクシュアリティに関連する言葉、その変遷をたどる。小谷野さんは、冒頭、「パートナー」という言葉への違和感を吐露しているが、わたしも同じように感じてきた。パートナーという言葉には、「たんに排他的な性交...【旧作】性と愛の日本語講座【斜め読み】

  • マンゴーと手榴弾──生活史の理論

    岸政彦,2018,マンゴーと手榴弾──生活史の理論,勁草書房.(1.5.25)沖縄戦の最中に手渡された手榴弾と、聞き取りの現場で手渡されたマンゴー。「こちら側」と「あちら側」の境界線を超えて行き来する、語りと記憶と「事実」。ストーリーの呪縛から逃れ、孤独な人生について、過酷な世界について、直接語り合おう。「約束としての実在論」へ向けた、ポスト構築主義の新しい生活史方法論。構築主義の極北には、価値相対主義の断片、その集積のみが残る。調査対象者の語りがすべてかぎかっこに括られ、いかなる一般化、普遍化も禁欲されるとすれば、提示されるものは、個別的にして一回性の断片のみである。「構築されたもの」を削ぎ落としたあとに、それでも残る「本質」を希求する、というわけでもない。断片に宿る普遍性をできるだけ盛ることなく提示す...マンゴーと手榴弾──生活史の理論

  • 日本いまだ近代国家に非ず

    小室直樹,2015,日本いまだ近代国家に非ず,ビジネス社.(1.4.25)政治家の本分は、国民に最低生活、心身の安全、私有財産を保障、保全すべく、立法、既存法令の改正、廃止を行うところにあり、行政官僚の役割は、法令に則り細則を定め、公僕としてつつがなく法令を執行するところにある。ところが、日本では、政治家には立法の能力も意欲も欠落しており、官僚が、省益と自らの昇進をかけて、政治家を操り立法行為までをも担う。ないがしろにされるは、国民の生活、生命、財産、である。家産官僚制の残滓を引きずったまま、いまだ近代官僚制の鉄則さえ遵守されず、公益が官僚共同体の私益に蹂躙される現実が、小室政治学によって鮮やかに解き明かされている。目次プロローグ誤解だらけのデモクラシー理解第1章大いなる資質を具えた政治家とは―田中角栄だ...日本いまだ近代国家に非ず

  • 小室直樹 日本人のための経済原論

    小室直樹,2015,小室直樹日本人のための経済原論,東洋経済新報社.(1.3.25)稀代の社会科学者にして数多くのベストセラーを輩出した小室直樹氏。その経済論の代表的著作『小室直樹の資本主義原論』と『日本人のための経済原論』を合本して復刻。経済学の基本、日本経済、日本社会の問題点を、博覧強記の著者が古今東西の逸話を取り混ぜながら解説。目指すところは「あなた自身が経済学者になれ」。著者の数ある著作の中で、まず最初に手にしたい小室思想の入門書。『ハゲタカ』著者・真山仁による解説文掲載。『資本主義論』と『経済原論』の合本、総700ページ近い大著。現代経済学の最良のテキストであるとともに、資本主義の駆動原理、官僚制の逆機能等、経済を活性化あるいは沈滞させる社会的要因についての考察がひかる。小室先生の経済学には、社...小室直樹日本人のための経済原論

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、faketkさんをフォローしませんか?

ハンドル名
faketkさん
ブログタイトル
Blog FakeTK
フォロー
Blog FakeTK

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用
  翻译: