「よう、」 一応ドアをノックして、だけど返事を待たずに部屋に入る。鍵はかかっていない。そもそも鍵なんてついてすらいない。「けーとさん、」 俺の姿を認めて、 室内にいた男は、ふわりと笑う。見慣れた笑顔。曇りのない、表情。どうしてなのか、驚いた様子は無い。連絡もしないで訪問したのにな。 窓辺の空気が僅かに揺れた。思わず向けてしまった視線をそこからずらす為に「最近肩凝るんだよなぁ」と独りごちながらそのまま首を左右に動かす俺。不自然じゃないよな。 その奥にある大きな窓から入ってくる柔らかな陽の光で室内は明るい。バルコニーがついているんだっけ? 室内はパイン材の白いフローリング。全体的に新しい匂いがする…