第6章 ライン交換した相手の女性の名前は石川洋子さんといいます。泊まっている海辺のホテルというのは、正式には海辺の憩い・陽光、というらしいです。二人はラインのみならず、電話も取り合っていますし、食事さえもう二回も出掛けていました。最初の電話が石川さんから掛かってきたときには、人間もネコもびっくりしました。長年起居を共にしてきて、おじさんのスマホの電話が、そのベルが鳴るのは初めてのことだったのです。おじさんのものの着信音はまさしく昔からあるベルの音で久しく聞いていなかった者にも私にとっても鋭い警告音のように聞こえたものです。何の音かとおじさんがたじろいでいる間に電話のベルは取られないまま切れてしまいました。手中にはされていましたから、その直後に二度目のベルが鳴ったときには、おじさんは一度スマホを落とすので...連載小説「私の名前は舞」第6章ー石川勝敏・著