★★☆☆☆
あらすじ
奴隷だった戦士は奴隷主を殺して自由の身となり、途中で出会った集団に加わって聖地に向かう。93分。
感想
異教徒らの娯楽のために戦わされていた片目の奴隷戦士が主人公だ。隙を見て異教徒たちを殺し、自由の身となる。相手の腹を掻っ切って内臓を全部出すなど、序盤は残虐なシーンが多い。マッツ・ミケルセン演じるこの主人公は、一切言葉を発することもなく、いざ戦いが始まるとまるで野獣のようだった。
自由の身となった主人公は、放浪の途中で出会ったキリスト教の集団に加わり、舟で聖地を目指すことになる。ここから船上のシーンがしばらく続くのだが、皆がじっとうずくまっているだけの変わりばえのしない映像を延々と見せ続けるのは、なかなか根性が座っているなと感心してしまった。余程の確信がないと出来ることじゃない。
この後続く旅も、たっぷりとした間と独特の映像センスで描かれていく。セリフも説明もほぼ無いので、ストーリーは映像から読み取っていくしかない。だが中盤くらいから分かりづらくなってしまった。北欧神話を題材にしているらしく、個人的に苦手なジャンルだったこともあって、付いていくのがかなりしんどかった。
聖地にたどり着けば良いことが待っているとか、ここが聖地じゃないなら土地を奪って聖地にしてしまえばいいとか、キリスト教徒らの身勝手ぶりが際立つ物語となっている。そもそも「異教徒」という言葉自体、彼らの自己中心的な見方だ。しかし、そうやって彼らは勢力を拡大してきたのだろう。
そして次第に凶暴さは影を潜め、どこか神聖さを感じる存在となった主人公は何者だったのだろうと考えてしまう。キリスト教徒らを惑わす存在だったとも、懲らしめる存在だったとも言える。その役割を終えたからあの結末となったのだろうか。あるいはキリスト教徒でもなく異教徒でもない主人公は、彼らの争いの中でそうならざるを得なかったのかもしれない。
構図の決まった美しい映像の連続で、ニコラス・ウィンディング・レフン監督らしさが詰まった映画ではあるのだが、いつも以上に冗長さを感じてしまった。90分の映画なのに、体感的にはとてつもなく長かった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 ニコラス・ウィンディング・レフン
出演 マッツ・ミケルセン/ゲイリー・ルイス/ジェイミー・シーヴェス
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