日本中に広まって欲しい「非カリスマ型リーダー」の教育改革! 

なぜシブヤの小学2年生はタブレットを使いこなせるのか

日本中に広まって欲しい「非カリスマ型リーダー」の教育改革! 
「なぜシブヤの小学2年生はタブレットを使いこなせるのか?」

 

 「学校で1人1台のタブレットが配布されたって聞くけど、うちの学校使ってる様子がないんだけど」

「子どもが学校から端末もちかえってきたけど、遊んでばかり」

 

 子ども1人に1人1台の端末を配布する「GIGAスクール構想」。コロナ禍により、オンライン授業の需要が高まったことで、計画は前倒しで進められ、文部科学省は2020年度内に98%の地方自治体が端末配備を完了見込みとしている。

 しかし、ハードの整備は進んでも、活用状況は学校によってかなり差があるのが現状だ。中には、ほとんど使っていないという学校もあるという。

 

 そんな中、全国的に注目を集め、関係者からの視察がやまない自治体がある。東京の渋谷区だ。 

 ある小学校の2年生の教室では教師の指示で子どもたちが筆箱やノートを出すように、タブレットを取り出す。子どもは自分で起動させると、指示されたアプリを立ち上げ、教師の話に耳を傾け、時には子ども同士で話し合いをしながら、学んでいく。視察した人の多くは「こんな小さい子どもたちがタブレットを使えるんですか?」と驚くのだという。

 そんな視察者の問いに対し、「この学校だけではありません。区内26の小中学校の授業で、タブレットが日常的に活用されています」と答えるのが、「なぜシブヤの小学2年生はタブレットを使いこなせるのか?」の著者で前渋谷区教育長の豊岡弘敏氏だ。

 

 と、言われてもその名前にピンと来る人は少ないはずだ。何せ豊岡氏は、東京都の中学校・体育教諭として入職後、都教委の人事部の行政職、いわゆる「裏方」を長くつとめた人物。メディアに露出するタイプではまったくない。

 そんな「非カリスマ型リーダー」は、まず2006年に区内の中学校の統括校長として国に先駆けICT改革に着手。その手腕を買われ、渋谷区教育長として改革に挑んだ。と聞くとかなりの辣腕をふるったようだが、本書を読めばそうではないことが分かる。

 今の教師はとにかく忙しい。新しい取り組みに対しては「また負担が増えそう」と身構える。だから豊岡氏はトップダウンでICTを押し付けるのではなく、教師が「おもしろそう」と思える仕掛けをつくった。



・「渋谷ブランド」確立に向けた教師のモチベーション喚起

・外部に見られることで教師と子どもの成長を促す「研究発表会」

・「みんな一緒」にタブレットを使ってみる「渋谷タブレットの日」の制定


などなど、豊岡氏が考えた具体策は「ボトムアップ」がベース。部下を「叱らない」「ダメ出さない」「見捨てない」というのが基本スタンスだ。

 突然やってきた端末に戸惑う教育関係者はもちろんのこと、部下をマネジメントする立場のビジネスパーソンにもお勧めの一冊。あなたのお子さんの担任の先生にも、一冊プレゼントしてはどうだろうか。

 

■著者プロフィール

豊岡弘敏(とよおかひろとし)

1960年大分県大分市生まれ。文教大学卒業後、東京学芸大学大学院教育学研究科修士課程修了、東京都公立学校中学校教員、練馬区教育委員会指導主事・統括指導主事、葛飾区立桜道中学校校長、小金井市教育委員会指導室長、東京都教育委員会人事部主任管理主事を経て、2016年渋谷区立上原中学校統括校長、2018年渋谷区教育委員会教育長に就任、2021年3月任期満了。

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