「前も話したかもだけど大谷翔平選手や藤井聡太棋士や芦田愛菜さんみたいなお化け遺伝子を持つ人たちの配偶者はもう国家プロジェクトとして国が専門家を集めて選定するべきなんじゃないかと思ってる。
お父さんはそう思ってる。
#個人の見解です」
RADWIMPSの野田洋次郎氏のこのツイートに、次のように反応した人がいる。
「『これぞ優生思想』という考え方をここまで無邪気に開陳できてしまうのは無知ゆえだと思う一方、私だって無知ゆえにトンデモ発言をしてしまっていることはあるかもしれない。そう思うとゾッとする。」
ベストセラー『五体不満足』の著者、乙武洋匡氏だ。
乙武氏の一般的なイメージは、2016年の「不倫騒動」の前は「聖人君子」、後は「ゲス野郎」といったところだろうか。
しかし、障害者の間でのイメージはかなり違う。「不倫騒動」よりはむしろ「健常者に都合の良い障害者像」や「障害に起因する問題を、社会の側ではなく本人のやる気や周囲の思いやりに回収してしまう考え方」の象徴として22年間にわたって批判され続けてきた。
乙武氏自身、「障害者の代表」とみなされることを避けるため、障害や差別などに関連する話題には口を閉ざしていた時期もある。そんな彼が今「優生思想」に言及したのは何故なのか。
乙武氏と同じく身体障害者手帳1級を所持する重度脳性麻痺者のライター、ダブル手帳(@double_techou)がインタビューした。(#1~#3の#1/#2を読む)
◆ ◆ ◆
「おそらく野田さんは優生思想というものをご存じなかった」
――物心ついて以来、周囲から常に「乙武さんみたいになれ」と言われ続けて育ちました。よろしくお願いします。
乙武 きっと、ご迷惑をおかけしてきたと思います。
――恐縮です。野田氏のツイートを「これぞ優生思想」と批判された意図を伺えますか。
乙武 おそらく野田さんは優生思想というものをご存じなかったんだと思います。ですから野田さんへの批判というよりはむしろ「私も他の分野では無知ゆえにこういったとんでもない発言をしてしまっているかもしれない」という自戒の念に重点を置いてツイートしました。
また、優生思想が社会でこれだけカジュアルなものになってきていることにゾッとしましたね。「それがどのような考え方で、なぜ批判されるべきものなのか」ということをしっかりと伝えていかなければいけないな、と感じました。
――京都で起こったALS患者への嘱託殺人も優生思想に関連する事件として報道されています。どう見ていますか。
乙武 大久保愉一(よしかず)容疑者の「年寄りはさっさと死ぬべきだ」といった考え方は、直接的に優生思想かというとちょっと違うと思います。遺伝子に優劣をつけ、優秀な人々の子孫をより多く残そう、子孫を残すのにふさわしくない人々は子どもをつくらないようにしよう、というのが本来の優生思想なので。