「大きな音がしますよ」

 国内最大の暴力団「6代目山口組」が分裂することが決定的になり、離脱したグループが「神戸山口組」を結成することが明らかになった際に、6代目山口組系の幹部がその後の見通しを語った言葉だ。

 ここで言う「大きな音」とは銃声のことを意味していた。

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 組織の規律を乱し、勝手に出て行った神戸山口組に対して、拳銃の使用をいとわない制裁が加えられるということだ。分裂直後は双方とも静観の構えだったが、次第に巨大組織同士の間で止まらぬ事件の応酬が続き、間もなく7年となる。

 なぜ組織は分裂し、双方の組で8人もの死者を出すことになったのか。警察当局は「カネと人事の問題だった」と指摘している。

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「上納金」に不満を募らせていた?

 6代目山口組は2015年8月に分裂した。実はこの年は6代目山口組にとって創立100周年の記念すべきメモリアルイヤーだった。年始の1月25日、100周年を祝う行事が神戸市内の6代目山口組総本部で開催され、稲川会や松葉会、会津小鉄会など友好団体の代表者らが出席。この日は6代目山口組組長の司忍が73歳となる誕生日でもあり、それも相まってさらなる盛り上がりを見せていた。

6代目山口組の司忍組長 ©時事通信社

 だが、不満を募らせていた6代目山口組の一部の「直参」と呼ばれる直系組長たちはすでに離脱することを決めて、行動をともにする勢力の拡張を水面下で画策していたのだった。

 不満とは警察当局が「上納金」と呼ぶ会費などカネをめぐる問題だった。毎月の上納金は傘下の2次団体で約100万円とされ、このほかに盆暮れや司の誕生日に、傘下組織全体で5000万円や1億円といったカネが贈られていた。

6代目山口組はツートップを弘道会出身者で独占

 分裂前には約70もの2次団体が所属していたために、毎月の上納金だけでも莫大なカネが6代目山口組組長にもたらされることとなっていたのだ。

 カネの問題のほかに指摘されていたのが、司の出身母体で名古屋市に拠点がある「弘道会」による強権的な組織運営だった。運営の実務を担っているのは、司と同じ弘道会出身の6代目山口組若頭の高山清司。それまでトップである組長とナンバー2の若頭は、別の組織から登用し権力バランスが取られてきたが、6代目山口組ではツートップを弘道会出身者で独占していたのが実態だった。