6月12日、小池百合子都知事は7月投票の都知事選挙に3期目を目指して立候補する意向を表明した。元側近から学歴詐称疑惑を告発される中、いま小池都知事は何を思っているのか——。疑惑の〈女帝〉と交流を持ってきた3人が語り合った。

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 田﨑 「文藝春秋」5月号に掲載された手記「小池百合子都知事 元側近の爆弾告発」が話題です。告発した小島敏郎氏は、元都民ファーストの会事務総長で、小池さんの側近中の側近。その彼が小池さんの“学歴詐称疑惑”の隠蔽工作に加担したと衝撃的な告白をしました。

 これまでも「カイロ大学卒」という学歴が詐称ではないか、と再三取り沙汰されましたが、2020年5月、前回の都知事選の直前に出た『女帝 小池百合子』(石井妙子著)で、カイロ時代の同居人だった北原百代さんが「卒業していない」と証言し、再び小池さんは窮地に立たされた。そこで頼ったのが小島氏で、「カイロ大学に声明文を出してもらえばいい」という彼の発案に小池さんは食い付き、方々に手を回していった。手記には、その隠蔽工作が詳細に綴られています。

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小島敏郎氏による告発インタビュー動画を「文藝春秋 電子版」の公式YouTubeチャンネルで公開中

  その年の6月頭までは、自民党都連の議員も都議会で熱心に学歴詐称疑惑を追及していましたが、駐日エジプト大使館のフェイスブックに「カイロ大学声明」が出た途端、一気に静かになってしまった。今回の小島さんの告発で、その内幕が初めてよく分かりました。

 私は当時、30年余り勤めた都庁から天下って、東京都環境公社の理事長をしていました。3月に『築地と豊洲』という本を出して、市場移転を巡る小池知事の行動を批判したところ、小池さんと都庁幹部から睨まれ、7月に解任。『女帝』を機に学歴詐称疑惑が取り沙汰された時期と重なっているんです。

澤章氏は小池百合子都知事の元部下 ©文藝春秋

 田﨑 私は小島氏の手記を読んで、非常に信憑性が高いと感じました。政治家と違って官僚は、事実に基づいて正確に記録する訓練を受けている。環境省の幹部だった小島氏は、まさにその典型です。自分の言動と小池さんの言動、さらには記事に出てくる元ジャーナリストのA氏や千代田区長(当時・都議)らの言動が、きちんと整理されていて、「限りなく事実に近いな」と一読して感心しました。

 奥谷 でも、小池さん自身は学歴詐称疑惑について、何も気にしていないと思いますよ。彼女とは、かれこれ40年近くの付き合いで、「親友」ではないけれど、「友人」ではあると思う。彼女の性格や考え方を知っていますが、小池さんはいつも、その場の「ノリ」で、何が「ウケる」かを考えている人。普通の人とは次元の異なる感覚の持ち主ですから、学歴詐称疑惑で騒がれても、「そんなに大変なことなの?」という程度の認識でしょう。

奥谷禮子氏は小池百合子都知事と40年近くの付き合いがある ©文藝春秋

「カイロ大卒」を消して出馬?

 田﨑 小池さんは定例会見で、小島氏の告発について「前提が違っている。卒業を証明できるのは大学だけ」と強気に反論しています。たしかに、彼女の主張を突き崩すのは容易ではない。カイロ大学の卒業証書と卒業証明書をもらっている以上、たとえ偽物だったとしても、偽造されたものだと証明するのは不可能に近いでしょう。カイロ大学が「偽物でした」と認めるはずもありません。

 奥谷 小池さんのことだから、7月の都知事選には、「カイロ大卒」を経歴から消して出馬するかもしれませんよ。「メディアが騒ぐから、消しました」とサラリと答えるような気がします。この騒ぎを自分が話題になる好機とさえ考えている。それくらい強(したた)かな人です。相手の出方を見て計算しながら、世間が騒ぐままに任せている。