人気芸人「ぼる塾」のメンバー4人によるリレーエッセイ連載。
10月13日(木)に当連載を1冊にまとめた書籍『思い、思われ、食べ、ぼる塾』(小学館刊)が発売決定!発売日初日には特別イベント開催もすることに。詳しくは下記の記事からチェックしてくださいね♪
今回はあんりさんのターン。大変なときや苦しいとき、どんなに辛くても忙しくても、絶えずやってくる毎日で当たり前に頑張ってはいませんか?
「褒められる」ことを忘れてしまっているあなたに、頑張っている皆さんに、そっと寄り添ってくれるお話です。
「あんりに褒められるのって、天津飯に褒められるくらいうれしい」by田辺さんと酒寄さん
CanCamをご覧の皆さまいつもありがとうございます。
突然だけど、皆さまは最近誰かに褒められましたか?誰かを褒めましたか?
私は今まで自分が「褒められたい」と思うことを恥ずかしいと感じていました。
頑張ってる人は自動的に褒められる、だから自分から褒めてと望むのはみっともないこと。
だけど、人一倍褒めてほしいと望んでいる。
私がこんな状態になったのは、ある出来事がきっかけでした。
昔、「今年は成長できた年になった」と人生で初めて自分を認めることができたことがありました。
もちろんまだ完璧ではないけど、できることは確実に増やせた。
この調子で頑張ろう。
自分で自分をたくさん褒めた。
でも、その頃一緒に頑張っていた仲間たちの評価は自分とは反対だった。
「このままじゃまずい、今年はやばい、何も頑張ってない、緊急会議だ」
当時の私はその評価が納得いかなくて、そんなことを言う仲間が許せなかった。
自分はこんなことを頑張って、できるようになったことも増えて、これからもっと頑張るつもりなんだ、それだけ伝えよう、きっとわかってくれる。
そう思った私はその年自分が頑張ったこと、これから頑張ろうと思うことを自分のノートに書いた。
【私が頑張ったことノート】
これだけ伝われば私は大丈夫、どんなに悔しいことを言われても、相手のことを否定するのだけはやめよう。
そんな気持ちで準備をして会議に臨みました。
−−会議当日。
私はノートに書いたことを仲間の前で読み上げた。
「頑張ってないとは言ってない。ただもっと頑張らないと頑張ったことは無駄になってしまう」
「あんりがやっていることは今の状況だから許されてる。何の意味もない」
私は開いていたノートをそっと閉じた。
それから仲間たちはこれからについてどう頑張っていくか、話し合いを始めた。
そうか。
これは前に進むための会議だ。
私が頑張ったと思えた今年は、既に過去。
仲間のなかで私だけが過去ばかり見ていて、未来を見てないんだ。
褒めてほしいなんて前に進むべき仲間達に望んじゃいけない、私は恋人に求めるようなことを期待してしまっていたんだ。
私はその後【頑張ったことノート】をどこにやってしまったんだろう。
その記憶がない。
仲間達は私のために、みんなのために、あえて厳しく言ってくれた。
それは本当に理解できる。
理解していても気持ちが晴れない、苦しい。
それからは仲間を憎まないように、私も未来を見て自分と向き合えるように、毎日毎日必死に自分を説得する日々だった。
そして、私はそれから褒められたいと望むことが恥ずかしくなった。
そんな私は人に褒められたら「まあねー」と答える先輩に出会った。
その先輩は褒められ上手なお茶目な人で、自分にはない明るさや自信を持っていた。
なんやかんやあって、その先輩がいつの間にか仲間になった。
一緒にいる時間が増えると、今までよりもっとその人のすごさを目の当たりにすることになる。
ぼる塾を組んだばっかりのとき、私は力足らずで余裕もなく毎日毎日田辺さんやはるちゃん酒寄さんに今日の反省点を話していた。
反省点を仲間に話すことで、自分が努力してると見せつけて勘違いして安心していたんだと思う。
反省点を話すと田辺さんはいつもすごく申し訳なさそうな顔で気まずそうに少し笑う。
私と組む前の、まだ先輩だった頃の明るい田辺さんの笑顔とはまるで違う。
逆にすごかったところを褒めると、本当にうれしそうに、赤ちゃんが笑ったみたいに周りを和ませる。
ああ、私の好きな田辺さんは褒められてる田辺さんだ。
田辺さんは褒められると次の日にはもっと成長して、また褒められて、また成長する。
私は毎日毎日横でそのすごさを見ている。
私は仲間に毎日反省点を話すことをやめた。
そしたら頑張るべきことを冷静に見ることができて、仕事をまた楽しめる余裕もできた。
田辺さん「私ね、あんりはもっと褒められていいと思うのよね」
ある日一緒にタクシーに乗っているときに突然私に言ってきた。
田辺さんの会話の始まりはいつも突拍子もない。
(ちなみに今までの田辺さんの会話の始まりでいちばん突拍子もなかったのは「ねえ、今更スポットライトを浴びない人生に戻れる?」でした。)
私「私は田辺さんみたいに褒められ上手じゃないですからね」
田辺さん「そうなのよ!!私が人に褒めさせるのがうますぎるからさあ!あんりが不憫よ」
私はタクシーが揺れるくらい笑ってしまった。
(運転手さんごめんなさい。)
田辺さんって【人に褒められた】じゃなくて【人に褒めさせた】って認識してるんだ。
なんか清々しくて気持ちいいな。
私「褒められたいって望むのって全然恥ずかしいことじゃないんですね」
田辺さん「当たり前よ。褒められたいって望むのが恥ずかしいことなら、いつも人に褒めさせて『まあねー』って言ってる私がバカみたいじゃない」
これは…説得力があるのか?
よくわからないけど、間違いなく私の心には響いた。
そして、決めた。
いつまでも過去のことで拗ねるのはやめる。
私はこれから仲間のいいところを見られる人になって、それを仲間に褒めてもらえる人になろう。(あんり)
★ぼる塾連載は毎週日曜夜配信予定です!お楽しみに★
▼バックナンバーはこちら!
第13回 あんりさんの回「あんりが分析!田辺さんがモテる理由」
第17回 あんりさんの回「できなかったことより、できたこと」
第21回 あんりさんの回「みんなへ伝えたいありがとうの気持ち」
『猫塾』と『しんぼる』が合体したお笑いカルテット。現在、酒寄希望さん(写真左)が育休中のため、きりやはるかさん(中央左)、あんりさん(中央右)、田辺智加さん(右)のトリオで活動中。
酒寄さんが育休中にnoteで書き綴った、笑えて心温まるぼる塾エッセイが書籍化!『酒寄さんのぼる塾日記』(¥1400/ヨシモトブックス)発売中。
©吉本興業/マガジンハウス
芸能界でも指折りのスイーツ通で知られる田辺さん初の書籍。『あんた、食べてみな! ぼる塾 田辺のスイーツ天国』(¥1,430/マガジンハウス)発売中。
『ぼる部屋』毎週木曜 24:15-24:25 KBC 九州朝日放送にて放送中。
『ラヴィット!』毎週月曜~金曜 8:00-9:55 ※月曜レギュラーTBS系にて放送中。
★公式YouTube 『ぼる塾チャンネル』
★個人公式インスタグラム 酒寄さん@jiujixiwang はるちゃん @kiriyaharuka あんりさん@f_y_e_b 田辺さん@chikaxxsweet
★個人公式Twitter 酒寄さん@no_zombie はるちゃん@shinboru1001 あんりさん@takobu7 田辺さん@chi0314ka
文/あんり(ぼる塾) イラスト/mame 構成/田中絵理子