ベンチャー社長から29歳で女性議員に。トラウデン直美と考える「政治と暮らしのつながり」【SDGs連載】

本音でトーク! 政治と暮らしって、どうつながってる?

今、世界中で注目されている「SDGs」という言葉。これは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の頭文字を合わせたもので、世界193か国が貧困や環境問題の改善を2030年までに達成するために掲げた17の目標のこと。2020年からスタートした連載では、CanCamモデルのトラちゃんことトラウデン直美が「SDGs」について読者の皆さんと考える機会を作っています!

今回は、2023年統一地方選挙で選ばれ、政治家として活動する同世代のおふたりと、住む町の政治を語る座談会を開催!

トラウデン直美(右)/高校時代に環境問題に興味をもって以来、エシカルな生活を模索。『SDGs』関連の取材や発信に力を入れ、情報番組にも出演。『めざまし8』(フジ系)では金曜MC、『news23』(TBS系)では水曜コメンテーターを担当。
(中央)さこうもみさん/1994年生まれ。アパレル企業を経て、社会課題解決に特化したクラウドファンディング「GoodMorning by CAMPFIRE」の立ち上げに参画、25歳で子会社代表に。大手人材系企業を経て2023年、東京都武蔵野市議選で無所属・新人トップ当選。
(左)鈴木ちひろさん/1996年生まれ。学生時代から日本語教師として活動。コロナ禍を機に、「アジア学院」で有機農業を学ぶ。農体験などを提供する「ブラウンズフィールド」を経て2022年、国分寺市に移住。2023年、同市議選で無所属・新人で2位当選を果たす。

■What’s 被選挙権?

選挙の際に立候補し、選ばれる権利のこと。日本の被選挙権年齢は、下記のとおり。なお、OECD加盟38か国では、過半数の国で満18歳以上となっています。衆議院議員、都道府県議会議員、市区町村長・議会議員⇒ 25歳以上 参議院議員、都道府県知事⇒ 30歳以上

仕事で感じた政治への疑問…当たり前の慣習に新しい風を


トラ 20代でまさにCanCam世代のおふたり! 政治家になろうと立候補されたきっかけからお聞きしたいです。

さこう クラウドファンディングの会社で、寄付を集めて社会課題解決に取り組んできたんですが、5年ほど続けると「自力で頑張るのも大事だけど、これって政治の責任だよね?」と思う場面が増えてきて。給食のない夏休みになると子供食堂への寄付申請が増え、コロナ禍中には、飲食店やクラブも人件費や家賃が払えずクラファンでお金を集める事態に。そのすべてを、個人や企業の善意に頼って支援していくのは無理があると痛感したんです。足りないのは公助で、やっぱり税金は人々の生活のために有効に使ってほしい。そういう政治を自分がつくりたいと思いました。

鈴木 私は奄美大島で日本語教師をしていたのですが、コロナ禍で学校が閉鎖。自然豊かな環境で気候危機への意識が高まっていたこともあり、こんなときでないとできないことをしよう! と、住み込みで農業を学ぶ学校に入ったんです。そこで環境や人権、平和などの問題が身近になり、自分でも何かアクションを起こしたいなと。

トラ メディアで国政を見ていると、なかなか政治に期待がもてなくて。おふたりはどう感じていましたか?

さこう 投票した人は全然当選しないし、私たちが大事に思っているジェンダーや気候危機の問題を考えてくれる人はいるのかな? と、疑問でしたね。政治家が面白そうな仕事とも思えず、ビジネスで社会を変えるほうがいいなって。

鈴木 私も政治家をキャリアに考えたこともなかったです。生活と政治がつながっていると思えていなかったな。

トラ 実際に政治の場に携わって、「変える力」の実感は?

鈴木 正直、半年ではまだまだで。気候危機対策として給水スポット設置や脱プラスチックを提案し、20代の視点で若者の生きづらさ改善も模索中ですが、こういった次世代の課題はすぐに取り組みを進めるのが難しいと感じます。

さこう 武蔵野市は20年近くリベラルな市政が続き、現市長もリベラル系の女性。新しい提言が受け入れられやすくなっていると感じます。例えば、「妊娠期からの切れ目ない支援」を推進する一方、生まれる前提で市民へ案内されていたんです。議会で「死産や流産もあってすべてが〝生まれる妊娠〟ではないのでは?」という質問をしたら、皆さんハッとして「それは大事な視点ですね」と言ってくださって。数か月のうちに「予期せぬ妊娠支援の充実」と「医療機関との連携強化」が市の方針に追加され、相談窓口も設置予定です。

鈴木 これって本当にすごいこと! 通常はなかなか通らないし、行政が多忙なので時間がかかるんですよね。

環境やジェンダーの問題も自治体から変えていける


トラ 市長の方針や環境などの違いがある中でも、声が通った自治体がモデルになって、導入や変化につながることもありそう! 実際、情報交換はあるんでしょうか?

鈴木 もみちゃんとは同期感覚で、時にはお茶をしながら仕事のグチも聞いてもらっています(笑)。性教育に関する一般質問をしたときは、以前にもみちゃんが取り上げた際に参考にした事例を共有してもらいました。新庁舎の建て替えの話では、建築やエネルギーの専門家に意見を聞くことも。様々な人に学びつつ、とにかく領域が広いので頭がパンクしそうになっています。

さこう 議員は自分の得意分野だけじゃなく、あらゆる領域の議決に携わるんですよね。今日議題になったのは、舗装道路の損傷。でも、そもそも舗装って厚さ何㎝あるのかとか、基礎を知らないと質問もできないので、市役所で教えていただいて。これがまた未知の世界で! 面白い経験です。

トラ 逆に、全然興味ないな〜という分野もありますか?

鈴木 さこう それはもちろん(笑)!

さこう でも、多様な議員がいるので任せられるところは任せ、自分にしかもてない視点を大事にしています。例えば介護なら当事者世代はたくさんいるから、「いつかやらなきゃ」という若い人の不安を私は伝えよう、というように。

鈴木 分担してチームプレーで議論できたらいいよね。

トラ 私自身は環境やジェンダー、子供の問題に特に関心が高くて、おふたりに共感する部分が多いのですが、市民の方々は、暮らしの中で何を重視していると感じますか?

さこう 「今、何に困っているか?」を選択式アンケートで聞いたら、「自転車の駐輪場が足りない」という回答が最も多かったんです。気候危機は重要な問題ですが、「今」と聞かれたら自転車が停められないことのほうが切実。みんなで数十年先のことに重きを置いて取り組むには、どんなコミュニケーションが必要なんだろうと悩みます。

鈴木 実際、日常の困りごと相談は多いですね。もちろん大事に聞いていきたいけれど、議員には「システムを変える」「行政をチェックする」という役割もある。気候危機対策を軸に選挙にも出たものの、後手後手になっているもどかしさもあります。

トラ 気候危機が野菜の値段に影響したら生活に直結! でも、大きな問題は国に言うものだと思っているかも?

さこう ジェンダー平等も同様で、例えば学校の出席簿。東京では、やっと来春からすべての公立小中学校が男女混合になりますが、日本にはまだ「男子が先、女子が後」という地域がある。男性優位の価値観を無意識に子供たちに教えることにつながる要素も、自治体管轄なんですよね。

鈴木 DVや離婚、日常生活の悩みや問題も市役所で無料で相談できるのですが、あまり知られていないと思います。

トラ 住んでいる町で改善できることが、実は色々あるんですね! 私は「社会がこうなったらいいのに」という考えがあっても、一個人としては生活優先になってしまっている自覚があって。もし託したいと思える政治家さんがいたら、自分を律しすぎなくても安心できるというか。

鈴木 わかります。「社会にいいこと=ガマン」になると切ないですよね。市役所では節電のため、職員の方が昼休みに電気を消してお弁当を食べていて。新庁舎で再生エネルギーを使えば、こうした負担が軽減できるかもしれません。

トラ 負担といえば、私の地元・京都ではインバウンド需要によるホテルの建設ラッシュで地価が上昇。元々住んでいた人たちが住めなくなっている問題も気になっています。

さこう 住民は守られるべき一方で、地価が上がると固定資産税が上がるので税収は安定する。地域のために予算を使えるという考え方もあると議員になって気づきました。

トラ 確かに負担率が上がっても、何に使われるのか明確で、自分の暮らしに還元されるなら納得できそうです。

鈴木 ただ、政治への信頼がないと不安が募りますよね。

トラ つい不安に目を向けがちですが、医療保険制度の充実や治安のよさは日本のいいところ! ありがたいことだと、ちゃんと理解しておきたいとも思うんです。

さこう 大切なことですよね。市役所に届くのは苦情が大半なので、議員からは「これはいいね!」「必要だよ」という市民の声も積極的に行政に伝えたいです。

トラ 市民として地域にどうなってほしいか普段から考えておくためにも、自分から情報を取りにいきたいですね。

さこう ぜひ! 議員を監視できるのは市民だけですから。自治体によっては、LINEでも情報発信していますよ。

鈴木 4年に1回の選挙で終わりではなく、継続的に意見をいただいて、一緒に政治に参加していけたらと思います。

トークを終えて…TORA’S MESSAGE

まちの声からつくられる地方政治。良い事例を生んで国を動かす力に

「政治」というと遠くて大きいと思いがちですが、おふたりのお話を聞いて自治体の政治は、私たちの日々の生活に密接していると実感。地域から関わることで、そのいい影響が少しずつ広がって、国の政策を動かすきっかけになるといいなと思います!

目指せ「SDGs」! トラちゃんの一歩

■みかんジュースが蛇口から出る人気スポットも!

愛媛大学で学生さんや社会人の方々とトークセッションに参加。地元の魅力を知って住みたくなってもらうにはどうすればいいのか。対話からアイディアが広がり、人とのつながりもつくるいいきっかけになると感じました。

■今月の1冊は…『「国境なき医師団」の僕が世界一過酷な場所で見つけた命の次に大事なこと』

世界では民の命が奪われる戦争が続き、報道の有無で人々の関心が変わるのもやるせない気持ちに。人道支援の現場で命を守る方々に、自分にできることは何か考えさせられます。

著:村田慎二郎/サンマーク出版/¥1,870

今月のSDGsブランド「WILDROOTZ」

NY、ブルックリンで「真のサステナブルなストリートウェア」をコンセプトに、大量に処分されるヴィンテージデニムを解体し、再構築してデザイン。染め直しをしないので、水を汚さないところも魅力。トラちゃんはプライベートでも愛用♡

〝ヤンヤン〟のニット¥62,160・〝ワイルドルーツ〟のパンツ¥80,300(リディア)、靴¥24,200(ダイアナ 銀座本店<ダイアナ>)、ピアス¥13,750(ココシュニック<ココシュニック オンキッチュ>)、リング[2本セット]¥21,230(ズットホリック<ソコ>)
2024年CanCam2月号「トラウデン直美と考える 私たちと『SDGs』」より 撮影/花村克彦 スタイリスト/伊藤舞子 ヘア&メイク/後藤若菜(ROI) モデル/トラウデン直美(本誌専属) 構成/佐藤久美子 web構成/坂元美月 ◆この特集で使用した商品はすべて、税込み価格です。