雑誌『CIRCUS』連載作品と、その休刊後のウェブ連載作品を単行本化。
2011年から足掛け6年のエッセイをまとめた形となる。大学勤務を辞め小説の仕事も抑えた時期で、悠々自適な庭園機関車構築生活と、森的思考・想像・生き方・考え方が語られる。いかにも森節、という感じで他の実用書やエッセイで既出の内容も含まれる。
一番印象に残ったのは、小説を書こうと思い立ったときの家具屋で買ったけっこう高価な椅子が森家史上例を見ない大当たりした投資という話。「素晴らしい道具は、機能的な満足度だけではなく、使う人間の背筋を正す効果がある」。この背筋は物理的な意味合いもあるが、主に精神的な要素を指しているだろう。本質を見つめなければ生まれない発想だと思う。