デザイナーの思考分断のないストレージシステムの構築
統合された大規模ストレージ システム構築で3DCGアニメーション制作に挑む
株式会社 白組
SHIROGUMI INC.
創立から40 年の歴史を誇る株式会社白組は、コンピュータグラフィックスによるVFX、3DCG アニメーション、そしてハンドメイドによるミニチュア制作までと幅広い技術を持つ制作会社である。近年は映画『永遠の0』や『ALWAYS 三丁目の夕日'64』などの制作を行っている。
今回白組は、藤子・F・不二雄さんの国民的人気マンガ「ドラえもん」を初の3DCG 作品として長編アニメーション映画『STAND BY ME ドラえもん』を制作した。白組のシステムを統括しているシステム部の鈴木勝部長と同部システムアドミニストレーターの杉山隆志氏は、この作品のために、高負荷に耐える統合されたストレージシステムの導入を決定。精査の結果 DDN のSFA を中心としたシステムを選択した。今回お二人に導入の背景とその効果について教えて頂いた。
チャレンジ
- 分散された小規模なストレージシステムの統合及びシングルファイルシステムのクラスタ化
- 数百台からの同時アクセスに耐え、デザイナー要求の応答速度に応えられるシステムの構築
「制作にあたっては、準備する時間を大切にしている」。準備に重きを置くのが白組の姿勢の特長だ。システム設計も準備期間中に上がってくる要件を精査しながら、3~5 年先の必要性も考慮し、段階的に構築していく。映画『STAND BY ME ドラえもん』は4 年間を費やして制作を行っている。その際に、周期的なデザイナーのワークステーションの性能の引き上げや、ネットワーク環境の増強と並行しながら、魅力ある作品にするために、システム部でも新しいチャレンジを加えることにしている。
「東日本大震災の1年後、スタジオの増床と共に行動を開始しました。当時は約20TB 単位のストレージがプロジェクト毎に数台あり、大人数で作業する作品ではデザイナーからストレージの応答速度が『遅い』との声が増え始めていた。分散していると初期導入費用は安価となるが、運用面・管理面では煩雑さを伴う。スタッフとシステム部の相互の効率を考え、単一で大容量かつ高性能なストレージに挑戦してみたい気持ちが大きくなりました」と鈴木氏は語る。
映像制作向けのストレージは、大きく「ビデオ」と「CG」に分類可能で、この 2 つはストレージにかかる負荷の性質が異なる。ビデオは均一な帯域で複数本のデータが相互に読み書きされるが、「CG」は大小様々なファイルが読み書きされる。この特性の違いを理解して安定運用可能なストレージを構築する必要がある。「映像業界向けシステムに携わるストレージベンダーは多いのですが、この違いを経験により理解し、最適なシステムを提案できるベンダーは驚くほど少ないのです。
私たちが必要とするクラスのストレージシステムでは価格には大きな差がみられなくなりますが、数社に声をかけ提案を受けた中でDDN を選んだ理由はその経験を持った『人』でした。DDN からは、CG 制作特有の違いを正確に理解した、白組が求める的確で説得力のある提案をいただきました」と鈴木氏は述べる。
「今日のCG 制作では、多様なソフトウェアやツールが関連しシステムが複雑になっています。必然的にあらゆることに十分に配慮し、慎重な対応が求められることも非常に多くなるわけです。だからこそ、ものづくりに一番大切なのは『人』 なのです。弊社の創業以来の姿勢は、信頼できるパートナーと共に常に技術を最大限引き出すことです。多様な要素をとりまとめ、安定して動くシステムを構築し、稼動させることが必要な状況で、DDN は、過去のCG 制作関連システム導入における経験から、我々の求めている要求を理解した上で事前の動作検証・性能検証を入念に実施してくれました。製品の魅力もさることながら、我々とシステム稼働後の実運用のイメージまで共有し多面的なサポートを受けられたこと、さらには今後のシステム拡張の要件を想定してくれたことが導入の決め手となりました」と鈴木氏。( 実際取材時には、当初の200TB からさらに180TB 拡張されていた)
デザイナーは思考を分断されたくないので「速さ」に敏感だ。DDN のストレージシステム導入から半年後にCG 制作は佳境を迎え、デザイナーが100人、加えて500台を超えるレンダリングマシンが、このストレージに同時アクセスを行うようになっていた。「しかし、デザイナーから速度に対するクレームは全く上がってこないのです。私たちがDDN ストレージ導入の効果を実感し安心できたのは、この時でした」と杉山氏は述べる。
「最新の3DCG アニメーションに加えて、ミニチュアなどの伝統的な手法も取り込み、伝統と最新技術が交差する。それを支えるシステム構築であることをDDN は理解してくれています。最新のテクノロジーを採用した、高性能で拡張性の高いSFA シリーズには今後も期待しています。DDNと共に次世代のストレージシステム構築にも取り組んで行きます」と鈴木部長は締めくくられた。
システムイメージ
株式会社白組
システム部
鈴木 勝 部長
株式会社白組
システム部
システムアドミニストレーター
杉山隆志氏
DDN 選択の理由
- 映像業界および白組の業務に対するDDNの高い知見と的確な提案
- 稼働後でも容易にディスク増設が可能なシステムの柔軟性と高い拡張性
- SFA DirectProtectによる性能と信頼性の両立
導入の効果
多様なワークロードと膨大な数のクライアントからのアクセスにも耐えうる高性能ストレージの導入により、レンダリング時間の大幅な短縮を実現。またデザイナーのストレージ応答時間に対する不満を解消
導入システム
2台のSFA10K 及び 5台の DDN SS7000 60ドライブエンクロージャー
SFA製品ファミリー
DDN Storage Fusion Architecture(SFA)は、最先端のプロセッサ技術、システムバスやメモリアーキテクチャの最も優れた要素を採用し、最適化されたRAIDエンジンやデータ管理アルゴリズムを備えています。これらすべての要素を統合して、大規模I/Oインフラやマルチメディア向けディスクドライブのパフォーマンスを最大限に引き出します。
©2014「STAND BY ME ドラえもん」製作委員会
「ドラえもん」シリーズ初の3DCG 長編劇場映画。公開76日目には80億円を突破し、2014年公開作としては邦画第1位となった。