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経済に関する話題なんでも。ニュースの分析・批評・解説など。大胆な予想や提言も。ご意見、ご批判は大歓迎です。
経済なんでも研究会
今週のポイント
2012-10-01-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ 足取り重い日経平均 = ニューヨーク市場は、スペインやギリシャの状況がほとんど改善されないことへの苛立ち。加えて財政支出が激減してしまう“財政の崖”が近づいてきたことへの不安。この2つの悪材料が、株価の足を引っ張った。ダウ平均は先週142ドルの値下がり。1万3500ドルを割り込んでいる。

東京市場は、中国との政治的な摩擦が経済面にも影を落としてきたこと。それに国内の景気が下降し始めたこと。この2つの悪材料が、株価の足を引っ張った。日経平均は先週240円の値下がり。2週間半ぶりに8900円を割り込んでいる。中国との関係が深いコマツ、キヤノン、新日鉄、それに資生堂やイオンなどが売り込まれた。

ことし1-9月間の株価を調べてみると、ダウ平均は9.98%の上昇だった。一方、日経平均は4.90%の上昇で、ダウ平均の半分しか上がっていない。この“出遅れ”がいつ解消されるか。下半期に持ち越された期待だが、その達成はかなり難しそう。というのもアメリカ経済には再浮上の気配が見えるものの、日本経済は下降局面に向かうと考えられるからである。

今週は1日に、日銀の短観と9月の新車販売。2日に、8月の毎月勤労統計。5日に、8月の景気動向指数。アメリカでは1日に、9月のISM製造業景況指数。2日に、9月の新車販売。3日に、9月のISM非製造業景況指数。5日には、9月の雇用統計が発表される。また1日に、EUが8月の雇用統計を発表の予定。


    ≪1日の日経平均は? 予想 = 下げ
 
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「経済なんでも研究会」は、きょうから7年目に入ります。皆さんのご支援・ご協力のおかげであり、心から感謝します。最近は「面接で役立った」という就活中の学生さんから、お礼のメールがたくさん届くようになりました。
なお過去6年間、日経平均の騰落予想は1045勝447敗、勝率はちょうど7割でした。
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企業マインドは弱含み : 日銀短観
2012-10-02-Tue  CATEGORY: 政治・経済
設備投資計画が委縮 = 日銀は1日、9月分の企業短期経済観測調査を発表した。それによると、大企業・製造業の業況判断DIはマイナス3で、6月調査の結果より2ポイント悪化した。全規模・全産業のDIもマイナス6となり、2ポイント悪化している。企業マインドは、ゆるやかな下り坂に差しかかったと考えていい。

この調査は、日銀が1万0722社を対象として8月28日から9月28日までの間に実施した。業況判断DIは、各企業の業績が「いい」と回答した割合から「悪い」と回答した割合を引いた数字。日銀は3か月後の予想も聞いているが、その結果は大企業・製造業がマイナス3で横ばい。全規模・全産業ではマイナス10となり、さらに悪化が進む見通し。

こうした企業マインドの冷え込みは、特に設備投資の面に強く現れている。設備投資計画を今年度の上期と下期に分けてみると、大企業・製造業は上期の前年比26.0%増が下期には1.8%増に縮小。全規模・全産業では17.4%増が3.0%減にまで落ち込む。景気を浮揚する力は、ほとんどなくなることになる。

それにつけても思い出されるのは、内閣府と財務省が共同で実施している法人企業景気予測調査だ。最近は8月15日に実施した結果を9月11日に発表している。ところがその結果は、大企業・製造業の業況判断DIがプラス2.5。先行きはプラス8.5に好転するという内容。全く同じ調査なのに、どうしてこんなに違うのか不思議だ。でも状況から判断すると、残念ながら日銀短観の方が当たりそうである。


    ≪1日の日経平均 = 下げ -73.65円≫

    ≪2日の日経平均は? 予想 = 上げ

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景気後退は不可避 / 7-12月 (上)
2012-10-03-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 大きい中国の影響 = ことしの後半はマイナス成長に落ち込み、景気後退に陥る可能性がきわめて高くなってきた。7月以降は輸出が減少したことから、工業生産の水準もはっきりと低下してきている。最大の要因は中国経済の不調にあるが、今後は尖閣諸島をめぐる政治的な摩擦の影響も現れてくるだろう。

財務省が発表した貿易統計によると、8月の輸出高は前年同月比で5.8%の減少となった。地域別にみるとアメリカ向けは10.3%増加したが、EU向けは22.9%、中国向けは9.9%減少した。商品別では電算機類が24.9%、鉄鋼が8.3%、乗用車も3.0%減った。輸出は7月にも8.1%減少しており、景気の足を大きく引っ張り始めている。

輸出の大幅な減退を反映して、工業生産も減少してきた。経済産業省の発表によると、8月の生産高は前月比で1.3%の低下だった。前年比では4.3%の低下となっている。半導体関連や情報通信機械、それに乗用車の減産が目立つ。加工貿易の中国が輸出の停滞で、海外からの原材料・部品買い付けを抑えていることが大きい。生産は7月も前月比1.0%減っている。

こういう状況だから、企業も設備投資には慎重だ。頼みの綱は個人消費しかないが、これも勢いが弱ってきた。総務省の家計調査によると、2人以上世帯の消費支出は7月が前年比1.7%増、8月が1.8%増。4-6月の月平均2.7%増からみると、だいぶ伸び率が落ちてきている。7-9月期のGDP成長率は11月12日に発表されるが、マイナスになることは確定的だ。


                                   (続きは明日)

    ≪2日の日経平均 = 下げ -10.46円≫

    ≪3日の日経平均は? 予想 = 上げ

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景気後退は不可避 / 7-12月 (下)
2012-10-04-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 10-12月期もマイナス成長? = 中国の輸出不振はEUの不況が原因だから、すぐに改善する見込みはない。したがって日本の輸出も、早急な回復は期待できないだろう。このため経産省の予測調査でも、生産は9月が前月比2.9%の減少、10月が横ばいという見通しになっている。

個人消費についても、これからエコカー補助金が終了したことの反動減が見込まれる。さらに国会では特例公債法案が棚ざらしになっており、地方交付税交付金などの支払いが滞っている。こうした状況から判断すると、10-12月期もマイナス成長が続く可能性はかなり大きい。

四半期の成長率がマイナスになるのは、大震災直後の11年4-6月期以来のこと。仮に2四半期続けてマイナス成長に陥れば、景気後退と認定されることになる。その後退の底をできるだけ浅くするためにも、民主党と自民党はもっと一致点を見つける努力をしてほしい。特例公債法案だけでなく、補正予算や来年度予算などを早く仕上げることが、景気にとっては確実にプラスとなる。

振り返ってみると、日本は輸出の増進を突破口にして不況から脱出してきた。しかし今回は、それが難しそうだ。EUの信用不安は解決までに時間がかかる。アメリカ経済も好調とは言えない。中国経済は以前のような高度成長には戻らない公算が大きい。領土をめぐる摩擦問題もある。つまり外需には頼りにくい。こんなときに、どうしたらいいのか。政治家は、もう少し真剣に考えてもらいたい。


    ≪3日の日経平均 = 下げ -39.18円≫

    ≪4日の日経平均は? 予想 = 上げ≫ 

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自民党が 選挙で勝つ方法
2012-10-05-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 逆転の発想が必要 = いま国民が政治に求めていることは3つ。それは ①物事をテキパキ決めること②公約を実行すること③永田町の政争に明け暮れないこと--の3点である。野田内閣と民主党の支持率が低迷しているのは、この3点で国民の期待を裏切っているからだ。

実は自民党も全く同じ過ちを犯している。野田政権が総辞職しない限り国会運営に協力しないという姿勢は、国民の目から見れば“決められない政治”の元凶と映る。この姿勢を180度改め、重要案件の国会通過を最優先する。それが出来たら、直ちに解散せよという戦略に転換すべきだ。それでも野田内閣が政権に固執すれば、こんどは国民が解散を要求することになるだろう。

重要案件は、今年度予算の執行に必要な特例公債法案、景気対策を盛り込んだ補正予算1票の格差是正、それに議員定数の削減など。自民党が率先してこれらの案件処理に動けば、国民の自民党に対する評価は大きく高まるに違いない。安部新体制がスタートしたいまが、過去の自民党に対する暗いイメージを一掃するチャンスである。

現状から判断する限り、すぐに総選挙が行われても、自民党が衆院の過半数を獲得できるとは思えない。だから解散の時期が多少は遅れても、国民の心を掴む方が先決だ。口を開けば「解散」としか言わないいまの姿勢は、国民を度外視した永田町内の政争に他ならない。安部総裁はじめ自民党の新執行部が、目を大きく開くことに期待したい。


    ≪4日の日経平均 = 上げ +77.72円≫

    ≪5日の日経平均は? 予想 = 上げ

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サタデー自習室 -- 危ない! 老朽化インフラ ⑩
2012-10-06-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 下水道 :1万㌔㍍が老朽化 = 国土交通省によると、全国の下水道管は総延長が約43万㌔㍍。このうち耐用年数50年を超えたものは、1万㌔㍍に達する。やはり高度成長期に設置されたものが、次々に寿命を迎えることに変わりはない。ただ上水道に比べると普及が遅れ、耐用年数が10年長いことで、老朽化は多少遅い。それでも10年後に2万9000㌔㍍、20年後には7万9000㌔㍍が老朽化する見込み。

下水道管の破損は、道路の陥没を惹き起す。老朽がひどい個所は管を取り換えたり、内側にビニール管を通して補強する。それでも東京23区の場合、下水管が原因で道路が陥没する事故は年間1000件ぐらい。都水道局は12年度に783億円を修復費に充てるが、追いつかない。都内には1930年代の下水管も使われている。これからは60-70年代のものの老朽化が急速に進む。

耐震化の工事も急がれている。千葉県浦安市は、東日本大震災で下水管24㌔㍍が液状化の被害を受けた。この復旧には1か月以上もかかり、市民生活に大きな影響が出ている。これを教訓に、東京湾の埋め立て地域では耐震化工事を進める計画が進んでいる。また東京都は、病院や学校の周辺にある下水管の耐震化を優先する方針だ。

下水管の老朽化は、他の都市でも大きな問題になっている。たとえば大阪市では、延べ4800㌔㍍のうち1285㌔㍍が耐用年数を超えた。ところが、どこの自治体でも更新の財源がない。そこで関係者の間では、下水事業を民営化したらどうかという提案も出ている。効率化を図ると同時に、下水に含まれるリンや希少金属を回収して利益をあげようという案だ。面白いが、まだ実現性は低い。


                                (続きは来週サタデー)

    ≪5日の日経平均 = 上げ +38.71円≫

    【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】

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サンデー実験室 = 新・孫に聞かせる経済の話
2012-10-07-Sun  CATEGORY: 政治・経済
第10章 景気って、なんだろう? ⑩

◇ 景気を知るための統計 = 経済指標や景気指標と呼ばれる統計は、ほかにもたくさんあります。また生産とか収入といったモノやおカネの集計ではなく、景気についての感触調査も盛んに行なわれています。たとえば景気ウォッチャー調査というのは、スーパーの店長やタクシーの運転手さんなど、景気をいつもハダで感じ取っている人に、景気はいいか悪いかを聞いています。

この感触調査で有名なのは、日本銀行がいろいろな会社の経営者に聞いている短期観測調査。短く「短観(たんかん)」とも言われます。最近の短観をみると、これまでいちばん景気の感触がよかった大企業の感触も大きく落ち込んでしまいました。

重要な経済指標だけを取り出して組み合わせ、景気の動きをみようと工夫されたのが景気動向指数です。この指数も、最近の結果は前月より大きく落ち込んでいます。生産や消費といった指標が、バラバラな動きをすることがあります。そんなとき、この景気動向指数をみると全体としての傾向を知ることができるでしょう。

また経済指標ではありませんが、政府は毎月1回「月例(げつれい)経済報告」を発表します。これは政府が経済の現状をどう判断しているかを、国民に説明する報告書です。12年9月の月例報告で、政府は「景気回復の動きに足踏みがみられる」という判断をしています。


                                 (続きは来週日曜日)

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今週のポイント
2012-10-09-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 次の材料は決算内容 = ダウ平均株価は先週173ドル値上がりした。終値の1万3610ドルは、07年12月以来4年10か月ぶりの高値。アメリカの景気指標が改善したことを、素直に好感した。具体的には、製造業の9月の景況指数が4か月ぶりに50を上回ったこと。失業率も9月は7.8%に下がったことが材料になった。

日経平均は先週7円の値下がり。小幅な下げだが、これで3週連続の下落となった。ダウ平均が4年10か月かかって取り戻した07年12月の水準。そのときの日経平均は1万5000円台だったから、いかに日本株の回復が遅れているかが判る。大震災の影響があったにしても、少々情けない。

今週からは、日米ともに企業の9月決算発表が始まる。アメリカの場合は7-9月期、事前の予想は前期よりも増益率がやや縮小する見込み。日本は4-9月の中間決算、中国との政治的摩擦の影響がどの程度まで現れるかに注目が集まる。またアメリカでは“財政の崖”、日本では特例公債法案の未成立が悪材料として表面化するかもしれない。

今週は9日に、8月の国際収支と9月の景気ウォッチャー調査。11日に、8月の機械受注。12日に、8月の第3次産業活動指数と9月の企業物価が発表になる。アメリカでは11日に、8月の貿易統計。12日に、9月の生産者物価とミシガン大学による10月の消費者信頼感指数が発表される。また9日から14日まで、東京でIMF・世銀の年次総会が開かれる。


    ≪9日の日経平均は? 予想 = 下げ

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ほのかな明かり差す アメリカ経済 (上)
2012-10-10-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 雇用と景況感が改善 = アメリカ経済に、やっと薄日が差し込んできた。まず9月の失業率が3年8か月ぶりで7%台に低下したこと。労働省が発表した雇用統計によると、非農業雇用者数は前月比11万4000人の増加。完全失業率は7.8%で、前月より0.3ポイント改善した。この改善は事前の予想を上回ったため、株価も上昇している。

非農業雇用者の増加数は、まだ少なめだ。内容的にも医療や教育関係は増えたが、製造業や小売業は減少している。このため本来ならば、あまり評価される数字ではない。だが失業率が7%台に下がったことは、予想外の成績だった。財界の大物が「大統領選挙を前に操作があったのかも」と言ったとか言わなかったとか、市場では取り沙汰されている。

もう1つの淡い光は、ISM(供給管理協会)による製造業の景況感調査が改善したこと。これは製造業300社以上の購買担当役員を対象にした調査で、最近は重視されている。結果が50を上回ると、景気は拡大中と判断される。6-8月は50を割り込んでいたが、9月は51.5に上昇した。

またコンファレンスボードという経済界の団体が調査している消費者の信頼感指数も、9月は7か月ぶりの高水準になった。こうした経済指標の好転を受けて、ダウ平均は07年12月以来の高値を取り戻している。ただ差し込んできた微光が、今後も持続するかどうかはまだ判らない。


                                   (続きは明日)

    ≪9日の日経平均 = 下げ -93.71円≫

    ≪10日の日経平均は? 予想 = 下げ

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ほのかな明かり差す アメリカ経済 (中)
2012-10-11-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 住宅市場はやっと底入れ = 住宅関連の指標が、このところ軒並み好転している。新築住宅の着工件数だけでなく、中古住宅の販売戸数も目に見えて増加。価格も上昇し始めた。経済紙ウォールストリート・ジャーナルが5日付けで別刷りの不動産特集を発行したことは、住宅市場の底入れを象徴していると言えるだろう。

アメリカ商務省の発表によると、8月の新築住宅着工件数は年率換算で75万戸。前月比で2.3%増、前年比では29.1%の大幅な増加となった。低迷していた11年の着工件数は43万1000戸だから、大きく回復していることが判る。建築価格も8月は11.2%上昇した。

一方、NRD(米不動産業協会)の集計によると、8月の中古住宅販売戸数は年率換算で482万戸だった。前月比で7.8%増、前年比では9.3%の増加となっている。平均販売価格もジリ高基調で、6か月連続の上昇だという。在庫も1年前の8か月分が、6か月分に減少した。

住宅市況の回復には、金利の低下が大きく貢献している。現在の住宅ローン金利は、30年もので年3.5%程度。歴史的な低水準だ。そのうえFRBは9月に第3弾の金融緩和を実施、具体的には住宅ローン担保証券を市場から買い入れる。さらに金利の低下を促し、住宅市場の回復を支援することが目的だ。


                                     (続きは明日)

    ≪10日の日経平均 = 下げ -173.36円≫

    ≪11日の日経平均は? 予想 = 下げ

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ほのかな明かり差す アメリカ経済 (下)
2012-10-12-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 期待される好循環の始まり = アメリカの住宅価格はバブルが崩壊して、06年夏から下落を続けてきた。それが6年たって、やっと底入れしたことになる。世界経済は08年秋のリーマン・ショックから低迷しているが、このショックも元はと言えばサブプライムと呼ばれた住宅抵当証券の暴落が原因。その住宅市場が回復に向かい始めた意義は大きい。

アメリカの住宅産業がGDPに占める比重はそんなに大きくない。だが住宅価格が下落すると、家計の資産バランスがマイナスになってしまう。新築した住宅を売ってもローンを返せない。金融機関は担保として差し押さえた物件を売りに出すから、供給過剰で値段が下がる。するとローンを返済できない人がまた増えて・・・という悪循環が続いてきた。

住宅価格が反転すると、この悪循環が止まる。じっさい最近は中古住宅の売り物件が、8年ぶりの水準にまで減少した。さらに価格が回復すると、家計の支出余力が増える。この余力が消費や株式投資に向かえば、経済の好循環が始まると期待できるわけだ。

FRBの調査によると、持ち家の市場価格がローン残高を下回っている家計は、まだ全体の24%もある。だから住宅市場は底入れしても、好循環が始まる状況ではない。しかしアメリカ経済が、住宅バブル崩壊の後遺症から抜け出しつつあることは確かだと言えるだろう。


    ≪11日の日経平均 = 下げ -49.45円≫

    ≪12日の日経平均は? 予想 = 上げ

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サタデー自習室 -- 危ない! 老朽化インフラ ⑪
2012-10-13-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ ダム : 巨額の取り壊し費用 = 老朽化するインフラは学校や病院、道路や下水道だけではない。巨大な構造物であるダムもまた老朽化する。国内のダムは小規模のものまでを含めると、およそ2800。一般にその寿命は50―100年といわれるが、なかには江戸時代に造られたものも現存している。

神戸市の布引五本松ダムは1900年の完成。95年の阪神・淡路大地震で亀裂が入った。そこで水を抜き、亀裂を修復し、溜まっていた土砂を取り除いて再生している。こうした例もあるが、その一方では環境保全のためにも撤去しなければならないケースが出始めている。

熊本県八代市の荒瀬ダム。球磨川中流の発電専用ダムとして55年に造られたが、河口の水質を保全するため撤去することになった。中規模以上のダムが取り壊されるのは、全国でも初めてのケースだという。10万立方㍍近く溜まった土砂を取り除き、コンクリートを爆破するが、その費用は88億円にのぼる。

今後はもっと大規模なダムも、次々と老朽化して行く。排水して放置すれば、環境問題を惹き起す。補修すれば、多額の費用がかかる。撤去すれば、巨額の費用が必要になる。国や地方自治体にとって、財政的な重荷になることは明らかだ。アメリカでは、すでに500以上のダムが撤去されたという。


                            (続きは来週サタデー)

    ≪12日の日経平均 = 下げ -12.66円≫

    【今週の日経平均予想 = 3勝1敗】  

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サンデー実験室 = 新・孫に聞かせる経済の話
2012-10-14-Sun  CATEGORY: 政治・経済
第10章 景気って、なんだろう? ⑪

◇ 最終的なものさし = 景気の状態は、最終的にGDP(国内総生産)統計で確認されます。GDPというのは、ある国が1年間にどれだけの経済活動をしたか。その全部を合計したものを、金額で表わした統計です。その国の経済の大きさを示す統計と言ってもいいでしょう。たとえば11年度の日本のGDPは512兆円。アメリカと中国に次いで、世界で第3位の大きさです。

GDPは経済の大きさを表わす統計ですから、景気の状態とは関係がありません。GDPが増えていくスピードが、景気の状態を表わすのです。経済活動が活発だと、GDPは大きく増大します。逆にあまり活発でないと、そんなに増大しません。この増加率を、経済成長率と言います。つまり景気がいいと成長率は高くなり、景気が悪いと低くなるわけです。

日本も1960年代には10%を超える成長率で、好景気が続きました。しかし最近は低成長時代に入ったと言われ、景気はあまりよくありません。つまり世界ではトップ・クラスのお金持ちなのですが、いまの景気はどうもパッとしないのです。

GDPは前に説明したように、結局は個人、会社、外国人、それに政府のおカネの使い方で決まってくるのです。たとえば11年度のGDPは10年度に比べて、全く増えていません。その中身を調べてみると、個人の支出は1.2%、会社の設備投資は1.1%増えましたが、輸出は1.4%減ってしまいました。
                                  
                              
(続きは来週日曜日)

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今週のポイント
2012-10-15-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ 企業の業績に警戒感 = 株式市場は“弱気の虫”に取りつかれた。ダウ平均は先週、4日続落のあと金曜日には下げ止まったが、週間では281ドルの大幅安。5月最終週以来の大幅な下げとなった。IMFが世界経済の見通しを下方修正したこと、スペイン国債の格下げなどが嫌気されたが、企業の今後の業績見通しに対する警戒感が株価の足を引っ張った。

アメリカ経済は失業率が低下したほか、新車の販売も好調。住宅の底打ち感も広がっている。加えて先週は消費者態度の調査が、5年ぶりの高さになったという予想外の結果も発表された。しかしJPモルガン・チェースなどの金融機関、グーグルなどのIT産業が業績見通しを発表すると、株価は大きく売り込まれる結果となっている。

日経平均は先週4営業日だったが、すべて下げ。週間では329円の値下がりとなった。こちらも5月末以来の大幅な下げ幅である。ニューヨーク市場に引きずられたほかに、日中関係の険悪化と動かない国内政治が悪材料となった。今週、ニューヨークは反発する可能性も大きいが、東京市場はそれについて行けるかどうか。

今週は19日に、8月の全産業活動指数が発表される。アメリカでは15日に、9月の小売り売上高。16日に、9月の工業生産と消費者物価。17日に、9月の住宅着工件数。18日に、コンファレンスボードによる9月の景気先行指標。19日に、9月の中古住宅販売戸数が発表になる。またEUが16日に9月の消費者物価。中国が15日に、9月の消費者物価と生産者物価。18日に、7-9月期のGDPと9月の鉱工業生産、小売り売上高、固定資産投資を発表する予定。


    ≪15日の日経平均は? 予想 = 上げ

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政府も認めた 景気後退入り (上)
2012-10-16-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 月例報告から消えた“回復” = 政府は先週12日、10月分の月例経済報告を公表した。月例報告では必ず短い基調判断が示されるが、10月の判断は「景気は弱めの動きとなっている」という表現。これまで続いてきた“回復”の二文字が、とうとう消えてしまった。政府も景気が下降局面に入ったことを、公式に認めたことになる。

月例経済報告というのは、政府が景気動向をどのように見ているかを示す唯一の報告書。毎月、関係閣僚会議で承認したうえ発表される。したがって総理大臣はじめ経済関係閣僚は、その内容を認知し了解したものと考えていい。もちろん、その内容に責任を持つことも当然だ。

基調判断の変化をみてみると、8月分は「緩やかに回復しつつある」だった。続いて9月分は「回復の動きに足踏みがみられる」となっている。それが10月分は「弱めの動き」に書き換えられた。つまり景気は8月にやや上向き、9月はほぼ横ばい。10月には下向きになったと読み替えることができる。

景気が下向きになった原因として、月例報告は生産の減少と輸出の弱含みを重視している。この点はむしろ輸出の減退が生産の低下を招いたと解釈していい。この観点からみると、アメリカの景気は上向く可能性があるとしても、EUや中国向けの輸出が近いうちに回復する可能性は小さい。景気の下降は長引く公算が大きいと言えるだろう。


                                    (続きは明日)

    ≪15日の日経平均 = 上げ +43.81円≫

    ≪16日の日経平均は? 予想 = 上げ

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政府も認めた 景気後退入り (下)
2012-10-17-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 鈍い政府の対応 = 経済成長率が2四半期にわたってマイナスに落ち込む状態が、“景気後退”と定義されている。輸出の減退から生産が低下し、企業収益も頭打ち感が強まった。個人消費も伸び悩みの傾向にある。こうした状況から判断すると、この10-12月期のGDP成長率がマイナスになることは避けられそうにない。

さらに来年1-3月期も、このまま行けばマイナス成長の可能性が高い。EUや中国向けの輸出が劇的に増加することは、ほとんど期待できないからだ。国内でも復興需要がピークを過ぎるし、エコカー補助金打ち切りの反動も現れてくる。月例報告も、先行きについては「弱めの動きが続く」と予想している。

とすれば日本経済は2四半期続けてのマイナス成長、つまり景気後退に陥ることになる。ただ政府がいまの段階で「景気後退になる」とは言えない。そこで月例報告では「弱めの動きになっている」という表現にとどめたわけだ。関係閣僚会議の出席者は、当然その程度のことは理解したと思われる。

ところが閣僚会議では、対応策についての議論はなかった。月例報告でも「切れ目ない政策対応を行う」としか書いていない。特例公債発行法案が成立せず、国庫のおカネは11月中に底をつく見込み。むしろ財政支出には切れ目が生じ、景気の足を引っ張る方向だ。にもかかわらず、臨時国会の召集をためらう民主党。景気動向を心配する声さえ上がらないのは、なぜだろう。


    ≪16日の日経平均 = 上げ +123.38円≫

    ≪17日の日経平均は? 予想 = 上げ

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貿易面に見る 日中の離間
2012-10-18-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 日本からの輸入が減少 = 中国税関総署が発表した9月の貿易統計によると、輸出は1863億ドルで単月としては過去最大を記録した。ASEANとロシア向けが増加したため。一方、輸入は1587億ドルで前年比2.4%の増加だった。日本への輸出は2.2%伸びたが、日本からの輸入は9.6%減少している。

同時に発表した1-9月間の累計をみると、輸出は前年比7.4%の増加。輸入は4.8%の増加だった。11年には輸出入ともに20%を超える伸びを示していたから、まだ貿易面の回復は遅れている。そうしたなかで、注目すべき現象が2つ。中国にとって最大の輸出先がアメリカになったことと、日本との貿易が縮小していることだ。

ここ数年、中国にとって最大の輸出先はEUだった。しかし信用不安問題で景気が落ち込み、EUの需要は減っている。中国の対EU輸出は9月も前年比10.7%減と回復していない。1-9月間の輸出額は2505億ドルだった。これに対して、アメリカ向けの輸出額は2582億ドルとなっている。

日本との貿易を1-9月間の累計でみると、中国側の日本向け輸出は1125億ドルで前年比4.5%増加した。しかし日本からの輸入は1363億ドルで6.5%減少した。その原因は、中国のEU向け製品輸出が減ったために日本からの部品輸入が抑制されたこと。加えて尖閣諸島をめぐる日中間の摩擦の影響。その割合は即断できないが、2つとも回復には時間がかかりそうである。


    ≪17日の日経平均 = 上げ +105.24円≫

    ≪18日の日経平均は? 予想 = 上げ

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定数削減はずし : 与野党の共謀?
2012-10-19-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 最高裁の判決を逆用 = 最高裁は17日、一票の格差が最大5倍に達した10年の参院選挙は“違憲状態”とする判決を下した。最高裁は昨年、09年の衆院選についても同様の判断を示しており、これで衆参両院の選挙結果が“違憲状態”にあるという異例の事態となった。特に「近いうちに」解散・総選挙が予想される衆院の格差是正は、早急に実現する必要がある。

参院については、民主党と自民党が先の通常国会に共同で「4増4減」案を提出。参院では可決されたが、衆院では継続審議となっている。また衆院については、民主党が議員定数の削減と小選挙区の「0増5減」案。自民党が「0増5減」案だけの先行採決を主張して折り合いがつかなかった。

民主党が議員定数の削減にこだわったのは、マニフェストで公約したため。だが今回の最高裁の判決で、格差是正を実現しなければ総選挙が実施できない状況に陥った。このため次の臨時国会では、格差是正を優先するために「0増5減」だけの成立を目指すことになるだろう。自民党はもともと賛成だから、「0増5減」法案は簡単に可決されるに違いない。そして議員削減の方は、堂々と先送りされる。

最高裁が“違憲状態”の判決を出すことは十分に予測されていた。与野党は内心それを期待して、選挙制度改革法案の審議を長引かせていたのではないか。つまり判決によって、最もやりたくない議員定数の削減から逃げることができると考えたのではないか。こうして“身を切る”公約は公然と回避されることになる。それによって得をするのは、議員定数の半減を公約に掲げた維新の会だけだろう。


    ≪18日の日経平均 = 上げ +176.31円≫

    ≪19日の日経平均は? 予想 = 上げ

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サタデー自習室 -- 危ない! 老朽化インフラ ⑫
2012-10-20-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 計り知れない維持・更新費用 = 国土交通省によると、インフラの維持・更新費は10年度で4兆7000億円。初めて新規の建設費を超えた。維持・更新費は今後も増え続けて、20年度には5兆2000億円、30年度には7兆1000億円に達する見込み。そう遠くないうちに予算はすべて維持・更新に使われ、その後は維持・更新費も不足する状態に陥るという。

この試算には含まれていない生活インフラは、まだたくさんある。たとえば公民館や図書館、トンネルや公営プールなどなど。数え上げればキリがない。なかには正確なデータさえない建造物も少なくない。すべてのインフラが老朽化でどれだけの補修・更新費用を必要とするのか。とても計り切れない。

国や地方自治体が管理するインフラだけではない。民間も多くのインフラを管理している。たとえば鉄道。JR東日本は地震対策として、新幹線や在来線の高架橋の柱1万5000本を補強する。その費用は1000億円。その他の私鉄や地下鉄も対策を急ぐことにしている。

政府は公共事業費の多くを老朽インフラ対策に充てる方針だが、まだ明確な目標は作成できていない。また野党側も、自民党は国土強靭化基本法を作って10年間で200兆円をインフラ強化に使う案。公明党は10年間で100兆円を支出する防災に限った公共事業の案を作成した。しかし財源をどこに求めるかは、明らかにされていない。


                             (続きは来週サタデー)

    ≪19日の日経平均 = 上げ +19.82円≫

    【今週の日経平均予想 = 5勝0敗】 

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サンデー実験室 = 新・孫に聞かせる経済の話
2012-10-21-Sun  CATEGORY: 政治・経済
第10章 景気って、なんだろう? ⑫

◇ 高度成長から低成長へ = 日本のGDPは、世界で第3位だと説明しました。これは以前に景気のいい時代が続いて、GDPがどんどん大きくなったからです。そこで今回は戦後の日本が、どのような経済成長を成し遂げてきたのか。言いかえると、過去の景気はどんなふうだったのかを、ざっと勉強してみましょう。

戦争で大きな被害を受けたために、戦後の日本経済はモノ不足とインフレに悩まされました。それでも終戦から10年たった1955年ごろからは経済が復興し、その後は高度成長期と呼ばれる好景気時代を迎えます。たとえば59年から73年までの15年間に、GDPは4.4倍にも増大しました。ピークの61年には、成長率が14.5%にも達しています。

ところが73年の石油ショックをきっかけに、成長率はしだいに低くなって行きます。96年から2011年までの15年間では、GDPはわずかに8.8%しか増えていません。現在も低成長が続いており、11年の成長率はマイナス0.8%でした。一国の経済が大きくなり、人びとの暮らしが豊かになると、成長率はしだいに下がる傾向があるのです。

長期的に成長率が変化するほかに、景気は短い期間の変動も繰り返します。その原因はいろいろですが、ふつうは好景気が続くと会社がモノを作りすぎてしまい、そのため生産を減らすことから景気が下降してしまう場合が多いようです。その結果、こんどはモノが足りなくなると生産が増やされて景気は上昇します。このような短期間の景気の変動を、景気循環(じゅんかん)と呼んでいます。


                               (続きは来週日曜日)

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今週のポイント
2012-10-22-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ 9000円台を守れるか = 日経平均は出来がよすぎた。先週は5日間続けて上げ、9000円台を回復した。週間では469円の大幅な値上がり。一週5日間の連騰は、11年2月第3週以来1年8か月ぶり。上げ幅は11年11月以来11か月ぶりの大きさだった。

ダウ平均も週の前半には上げたが、後半は崩れてしまった。それでも週間では15ドルの値上がり。後半の売りは、企業決算の悪化が原因となった。インテル、IBM、グーグル、マイクロソフトなどのIT関連企業が軒並み減益を発表している。今週もテキサス・インスツルメント、ヤフー、アップルなどの発表が続く。

こうしたなかで、今週は日経平均が9000円台を維持できるかどうか。ヨーロッパ情勢や中国との関係が小康状態にあることはプラスだが、ニューヨーク市場で決算売りが続くと心許ない。ただ個人投資家の関心は高まっており、個別銘柄の物色は強いだろう。

今週は22日に、9月の貿易統計。25日に、9月の企業向けサービス価格。26日に、9月の消費者物価が発表になる。アメリカでは24日に、9月の新築住宅販売。25日に、9月の中古住宅販売。26日には、7-9月期のGDP統計とミシガン大学・9月の消費者信頼感指数が発表される。


    ≪22日の日経平均は? 予想 = 下げ

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中国だけではない : 貿易赤字の原因
2012-10-23-Tue  CATEGORY: 政治・経済
>◇ 各地域への輸出が減少 = 財務省が発表した9月の貿易統計によると、輸出は5兆3598億円で前年より10.3%減少した。一方、輸入は5兆9183億円で4.1%の増加。この結果、貿易赤字は5586億円に増大した。中国向けの輸出減少が響いたことは確かだが、その他の地域向けの輸出も軒並み減少している。きわめて要注意だ。

中国向けの輸出は9538億円で、前年を14.1%下回った。ところが輸出の減少は、中国向けだけではない。ASEAN向けは4.9%、大洋州は19.8%、西ヨーロッパは26.0%、中南米は17.0%、中東は0.3%と、北アメリカ向けを除く各地域向けがいずれも減少した。この事実は、日本の輸出競争力が低下してきたことを告げているのではないだろうか。

為替相場が原因ではない。なぜなら昨年9月の円相場は1ドル=76円95銭で、現状より約1円の円高だったからだ。となると電力料金の値上げや環境税の導入などで、企業が生産や営業拠点を海外に移したこと。つまり“産業の空洞化”が進展した結果ではないかと考えられる。そうだとすれば、輸出の減退は一過性のものではない。

今年度上期(4-9月)の貿易赤字は、3兆2190億円の赤字。半期としては過去最大になった。輸出が前年比2.0%減少した半面、輸入が2.6%増大したためである。輸入の増大は、火力発電用の燃料輸入が9.9%も増えたことが原因。要するに日本は、輸出の停滞と原発停止による輸入の増加というダブルパンチに見舞われ始めた。日本経済の大きな曲がり角に差し掛かっている可能性が大きい。政治家にその認識が、あるのだろうか。


    ≪22日の日経平均 = 上げ +8.03円≫

    ≪23日の日経平均は? 予想 = 上げ

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お粗末の見本 : 政府の景気対策 (上)
2012-10-24-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 財源なし、計画性もなし = 野田首相は17日夕、臨時の閣議を招集して「景気対策の実施」を決めた。ところが財源がないから、その規模は貧弱にならざるをえない。しかも各省庁は準備不足で、いい案件が思い付かない。結局は来年度からスタートするはずの「日本再生戦略」の一部を前倒しすることで、お茶を濁すだけとなりそうだ。

景気は秋に入ってから、明らかに下降している。政府自らも「月例経済報告」では、8月以降の景気下降を認めてきた。それにしては、野田首相の対策指示は少々遅かった。しかも対策を“11月中にまとめる”よう求めたというから驚いてしまう。このことは、どこの省庁も景気対策について準備していなかったことを物語る。

財源は12年度予算の予備費9100億円と災害復興予備費4000億円しかない。これらは国会の議決がなくても、政府の判断で支出できる。しかし年度内に災害が発生するかもしれないから、全部を使い切ることは難しい。したがって今回の景気対策は、最大でも1兆円の規模ということになるだろう。

いま日本のGDPは、およそ500兆円。景気対策の1兆円は、その0.2%分にしか当たらない。たとえて言えば、年収500万円の家庭に1万円の追加収入があるだけという感じだ。これでは景気の浮揚など、期待する方がムリである。いま景気対策を実施するならば、少なくとも5兆円の補正予算が必要だろう。


                                 (続きは明日)

    ≪23日の日経平均 = 上げ +3.54円≫

    ≪24日の日経平均は? 予想 = 下げ

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お粗末の見本 : 政府の景気対策 (下)
2012-10-25-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 政治が景気をダメに = 現在の民主党内閣をみていると、景気に関する責任官庁がどこなのか判然としない。内閣府、財務省、経済産業省、経済財政省、それとも官邸 ? かつては大蔵省と経済企画庁が常に景気動向を見守っており、景気が下降し始めると対策をすぐに用意した。いまはその気配がない。政治優先の弊害なのだろうか。

総理大臣に言われて、あわててチエを絞ったが間に合わない。そこで「日本再生戦略」の一部を前倒しへ。被災中小企業への補助金増額や老朽化校舎の改修などが、候補に挙がっている。ここでも発想はバラマキ型だ。支出の額は小さくても、使途をもっと集中させてインパクトを強められないものか。

たとえば文部科学省の調査によると、公立小中学校の耐震化率は84.8%。だが耐震性不足と診断もしていない学校は1万8500棟にものぼる。これらを補強する工事費は、地方の負担分を含めても1兆円だという。この際は、ここに予算を集中支出したらどうだろう。

さらに景気の観点から言うと、いま与野党の政争で、赤字国債の発行を裏付ける特例国債発行法案が宙に浮いている。このため国庫が底をつきそうで、地方交付税交付金の支払いが滞り始めた。こちらの方が景気にとっては、大きなマイナス要因だ。予備費まで使って景気対策を打ち出す一方で、景気の足を引っ張っているのが日本の政治。景気対策は、まず政治の刷新から始めなくてはならない。


    ≪24日の日経平均 = 下げ -59.95円≫

    ≪25日の日経平均は? 予想 = 上げ

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過大な警告は困るけれど : イタリアの地震予知
2012-10-26-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 予知失敗に禁錮6年 = イタリアの地方裁判所で22日、09年4月に起きたラクイラ大地震を予知できなかったという理由で、地震学者や政府の担当官7人に禁錮6年の実刑判決が言い渡された。ラクイラ地震では309人の犠牲者を出したが、地震学者たちは事前の群発地震について「大地震の予兆とする根拠はない」と発表。これが“安全宣言”と受け取られて、被害を増大させたという。

この判決は、世界の地震学者に大きな衝撃を与えた。こんな判決が正当化されれば、学者たちは「常に警告だけを出し続けることになるだろう」と一斉に抗議。世論も「道義的な責任ならともかく、刑事罰は行き過ぎ」という受け止め方が強いようだ。この判決を機に、一般的にリスクを過大に伝える傾向が強まるのではないかという懸念も指摘されている。

たしかにテレビの天気予報を見ていると、最近は過大な警報が多いように感じられる。「風雨が激しくなる恐れ」「竜巻や雷警報」が伝えられた割りに、実際は小降りの雨で済んだ・・・こんなことがよくある。でも、それは結果オーライだろう。反対の場合は、被害や文句も出やすい。予知・予報の問題は、なかなかむずかしい。

経済の分野でも、予知・予報は盛んである。最近も民間が早くから景気の下降を予想していたのに、政府は鈍感だった。いまごろになって、あわてて景気対策だと言い出している。「景気は回復基調に」と言い続けて予知に失敗した政府。それこそ禁錮6年の刑に処したいが、残念ながらその責任者が判然としない。


    ≪25日の日経平均 = 上げ +100.90円≫

    ≪26日の日経平均は? 予想= 上げ

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サタデー自習室 -- 危ない! 老朽化インフラ ⑬
2012-10-27-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 絞り込みが必要に = 老朽化するインフラの補修・更新費は、ちゃんと賄えるのか。それでなくとも財政難で国や地方の公共投資は抑制されているから、きわめて難しい問題だ。12年度予算の公共事業費は4兆5700億円、10年前の半分近くに落ち込んでいる。また地方の単独事業費も5兆1000億円にまで縮小した。

そこで専門家の間では、インフラの民営化や民間資金の導入を狙ったPFI方式など、管理形態を改革する案が検討されている。たとえば下水道事業を民営化して、貴金属の回収で利益を出せないか・・・。あるいは個別の発注方式を止めて、たとえば多数の学校の更新を長期契約することでコストを下げられないか、などの改善案が検討されている。

地方自治体では、インフラの統廃合に踏み切るケースも目立ってきた。たとえば千葉県習志野市では、公民館や図書館を統廃合する。神奈川県秦野市は、公共施設の床面積を40年間で3割削減する。ほかにも使用頻度の低い橋や施設を閉鎖したり、近隣の自治体と協力してインフラの統廃合を進める例も少なくない。

最も重要なのは、公共事業に対する国民の意識改革だろう。たとえば鉄道や道路にしても、これまでのように「あった方が便利だから」という考え方は捨てなければならない。国民の生活と安全を守るためのインフラ。そこに絞り込んだ公共事業という考え方に徹する必要がある。


    ≪26日の日経平均 = 下げ -122.14円≫

    【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】

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サンデー実験室 = 新・孫に聞かせる経済の話
2012-10-28-Sun  CATEGORY: 政治・経済
第10章 景気って、なんだろう? ⑬

◇ 景気をよくするための政策 = 景気が悪くなったとき、政府や日本銀行は景気を回復させるために、いろいろな政策を実行します。これを景気対策と言いますが、それにはどんなものがあるのでしょうか。まず政府の景気対策は、大きく2つに分けられます。1つは政府自身が、おカネをたくさん支出する方法。もう1つは個人や会社に対する減税です。

景気が悪くなるのは、個人と会社、外国人と政府がおカネの使い方を減らすからでしたね。ところが景気の悪いときに、個人や会社や外国人にもっとおカネを使いなさいと言っても、なかなかムリな話です。そこで政府が予算で決めた以上に、たくさんおカネを使う。あるいは減税で、個人や会社の収入を増やして、おカネを使ってもらう。これを財政による景気対策と言います。

日銀の政策は、金融による景気対策。これも大きく分けると2つあります。1つは金利の引き下げ。金利が下がると、個人や会社は銀行からおカネを借りやすくなり、モノを買ったり工場を建てたりしやすくなります。もう1つは、おカネをたくさん発行することで、これも個人や会社におカネを借りやすくします。

ところが、いま日銀は金利を年0.1%にまで引き下げているので、もう下げられません。一方、政府も財政が大赤字。景気対策を実行すれば、財政の赤字はもっとふくらんでしまいます。それでも最近は世界中が不況になってきたので、対策をとらないわけにはいきません。そんな状況を、新聞は毎日のように伝えています。みなさんも勉強してください。


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今週のポイント
2012-10-29-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ 健闘した日経平均 = ダウ平均が先週は236ドルも下げたのに、日経平均は70円の値下がりにとどまった。特に先々週末にダウが200ドル以上も下落したあと、先週月曜日の日経平均はわずかながら上昇している。こんな現象は、きわめて珍しい。

ダウ平均の大幅な下落は、7-9月期の企業決算が予想を下回る成績だったことが主因。さらに大幅減税の期限切れなどによって来年1月から財政が巨額の揚げ超になる“財政の崖”が、いよいよ目前に迫ってきたことが心理的な圧迫要因になった。一方、日経平均は円高の修正と日銀による量的金融緩和への期待が、相場を下支えした。

ニューヨーク市場は今週、大統領選挙を一週間後に控えてナーバスな動きになるだろう。“財政の崖”がますます重みを増すことは確か。東京市場の目は、30日の日銀・政策決定会合に集中する。ただ資産買い入れ基金の10兆円増ワクは、すでに織り込まれている。日銀がそれ以上のインパクトを用意できるかどうか。

今週は29日に、9月の商業販売統計。30日に、9月の雇用統計、家計調査、鉱工業生産、自動車生産台数。31日に、9月の毎月勤労統計と住宅着工戸数。1日に、10月の新車販売台数が発表になる。また30日には日銀の金融政策決定会合。アメリカでは30日に、8月のSPケースシラー住宅価格。1日に、ISM製造業景況指数。2日には10月の雇用統計が発表される。


    ≪29日の日経平均は? 予想 = 上げ

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雇用統計が左右する? 米大統領選挙 (上)
2012-10-30-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ まれにみる大接戦 = 来週のきょうはアメリカの大統領選挙。終盤の情勢は全く伯仲していて、勝敗の行くえは予断を許さない。最新の世論調査でも、オバマ有利とロムニー優勢が混在している。そんななかで、今週2日に発表される10月の雇用統計。その結果が、勝敗を微妙に左右する可能性が出てきた。

民主党のオバマ現大統領と共和党のロムニー前マサチューセッツ州知事。この2人が選挙戦を通じて激しい論争を繰り広げてきたのは、経済・財政・医療・外交・エネルギーの分野だった。ひと言で言えば、オバマ氏の中道に対してロムニー氏は保守。「大きな政府」対「小さな政府」のぶつかり合いだった。

たとえば減税政策では、オバマ氏は富裕層を除く中間所得層を重視した減税。ロムニー氏は富裕層を含めた減税。医療問題ではオバマ氏が国民皆保険を目指すのに対して、ロムニー氏は強制加入に反対。また財政再建では、オバマ氏が現在7%の赤字GDP比を17年までに3%へ。ロムニー氏は国防費を除く歳出の大幅削減で0.9%に低下させると公約している。

テレビ討論などを通じた両氏の論争は、オバマ氏が現職の強みを生かしてやや優勢だったと評価されている。ただ経済問題、特に雇用の改善が遅れていることについてはロムニー氏に軍配が上がったという見方が強い。この点がオバマ氏のアキレス腱になっている。そこで投票日の4日前に発表される最新の雇用統計が、きわめて重視されることになったわけだ。


                                       (続きは明日)

    ≪29日の日経平均 = 下げ -3.72円≫

    ≪30日の日経平均は? 予想 = 上げ

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雇用統計が左右する? 米大統領選挙 (中)
2012-10-31-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 失業率8%は落第点 = オバマ氏が大統領に就任したのは09年1月。リーマン・ショック発生から4か月後で、アメリカ経済は不況が進行中だった。そのときの非農業雇用者数は1億3356万人、失業者数は1205万人、完全失業率は7.8%である。それから不況が深刻化し、09年10月の失業率は10%に達した。

政府の景気対策とFRBの金融緩和策によって、リーマン不況はしだいに克服された。しかし雇用面の回復は予想以上に遅れている。最新の数字である12年9月の統計を見ると、きっと皆さんもびっくりすると思う。非農業雇用者数は1億3350万人、失業者数は1209万人、完全失業率は7.8%--オバマ氏が大統領に就任した月と全く同じなのだ!

雇用の面からみる限り、この4年間は完全な“行って来い”になった。テレビ討論でもロムニー候補にこの点を突かれて、オバマ氏は防戦一方に。「たしかに雇用の回復は遅いが、少しずつでも回復はしている。だから次の4年間では、ずっと改善する」と弁明するしかなかった。

アメリカでは過去の経験から言って、失業率は8%なら高すぎ。7%以下なら納得できると考えられている。この“常識”は、大統領選挙にも大きな影響力を発揮してきた。これまでの大統領選挙で、失業率が7%を上回る状況で再選されたのは、共和党のレーガン大統領だけという記録が残っている。


                                       (続きは明日)

    ≪30日の日経平均 = 下げ -87.36円≫

    ≪31日の日経平均は? 予想 = 上げ

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