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経済に関する話題なんでも。ニュースの分析・批評・解説など。大胆な予想や提言も。ご意見、ご批判は大歓迎です。
経済なんでも研究会
今週のポイント
2023-05-01-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ 日経平均は年初来高値を更新 = ダウ平均は先週289ドルの値上がり。終り値はまたまた3万4000ドル台に乗せた。ただ、このところ3万4000ドル台に乗せると、すぐに押し返される動きが続いている。週の前半にはファースト・リパブリック銀行の預金流出騒ぎで下げたが、後半は予想以上にいい決算発表の結果を好感して上げた。今週は決算発表がピークを迎えるから、当分は最大の関心事になるだろう。

日経平均は先週292円の値上がり。終り値は2万9000円に接近して、年初来高値を更新した。これで4月は815円の上昇。外国人投資家による買いが目立った。また特に最終日の28日は、植田日銀総裁が「緩和政策は維持する」と断言したことを受けて400円近く上げている。市場には1つのカベを越えたような開放感が流れているようだ。ただし今週は連休ムード。

アメリカでも今週3日には、FRBが新しい金融政策を発表する。すでに市場は0.25%の利上げを織り込んでいるから、株価にはあまり影響しないかもしれない。だが、そこを通過すれば、ニューヨーク市場でも一種の解放感が生まれるだろう。そして次の関心事は、景気動向へ。景気後退は免れないが、その程度は軽いという見方がしだいに強まっている。

今週は1日に、4月の新車販売、消費動向調査。アメリカでは1日に、4月のISM製造業景況指数。3日に、4月のISM非製造業景況指数。4日に、3月の貿易統計。5日に4月の雇用統計が発表される。

        ≪1日の日経平均は? 予想 = 上げ


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日銀・植田丸の出帆 行き先は?
2023-05-02-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 船長の説明はきわめて常識的だったが・・・ = 日銀は先週28日、新体制となって初めて開いた政策決定会合で、‟超金融緩和政策”の継続を決めた。会合後の記者会見で、植田総裁は「もう少し辛抱して、粘り強く金融緩和を続けたい」と発言している。関係者のなかには政策の修正あるいは変更を期待する人も少なくなかったが、サプライズはなし。きわめて無難な船出となった。このため、この日の円相場は一時136円台に下落、日経平均は8か月ぶりの高値を付けている。

植田総裁は会見のなかで「過去25年間の金融政策運営について、多角的なレビューを実施する」とも述べた。政策が生んだ効果と副作用を検証するという意味だ。検証すれば、必ず副作用の大きさも明らかになる。したがって現在の政策についても、副作用を是正するための修正や変更が必要なことを示唆したと言えるだろう。「過去10年間」と言えば、黒田政策の検証ということになるから、「過去25年」として当たりを和らげたのではないか。

また植田総裁は「引き締めが遅れてインフレ率が持続するリスクよりも、拙速な引き締めで物価2%を実現できなくなるリスクの方が大きいと判断している」「レビュー中でも正常化を始める可能性もゼロではない」などと発言した。一見するときわめて慎重で、常識的な説明のように思われる。だが「もう少し辛抱」とか「正常化」といった言葉遣いからは、新総裁の隠された真意を覗けるような気がしないでもない。

結局、植田総裁は「超緩和政策の副作用は見逃せない」と認識。だから早急に「緩和政策の修正あるいは変更を実施したい」と考えてはいる。しかし世界経済が下向きのいまは「引き締めのリスクが大きい」から、実施できない。過去の検証を行いながら、副作用の悪影響を洗い出し、世界経済が上向くのを待ってイールドカーブ・コントロールなどの手直しに踏み切る--と見たのだが。

        ≪2日の日経平均 = 上げ +34.77円≫

        【今週の日経平均予想 = 2勝0敗】   

  
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住民投票で決めたらどや : 大阪カジノ
2023-05-04-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 失敗の責任は誰がとる? = 「ゴールデン・ウイークにはカジノへ行って遊ぼうか」--こんな日が間もなくやってくるかもしれない。大阪府・大阪市が推進するカジノを含むIR(統合型リゾート)計画を、政府が認定した。大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)に建設するこの計画は、日本で初めてのカジノを中心に、国際会議場や大型ホテルを整備。29年の開業を目指す方針だ。しかし地元でも反対論が強く、これから事業がすんなりと進むかどうか。関係者だけではなく、全国民が注目している。

計画によると、来場者は年間2000万人。売り上げは年間5200億円を見込む。その経済効果は関西圏と福井県を合わせて年間1兆1000億円。9万3000人の雇用を創出する。大阪府・大阪市としては、25年に同じ夢洲で開く万博に続けることで、関西経済の底上げを図りたい考え。関西財界はもちろん、維新の会もこのIR計画に賛同している。

しかし反対論も少なくない。カジノの売り上げはIR全体の8割を占め、年間1010万人の来場を見込む。周辺の治安悪化やギャンブル依存症の増加を心配する人が多い。依存症の増加を防ぐため、日本人客には6000円の入場料を課すほか、入場を週3回、月10回以下に抑える措置も講じるという。だが、それで問題は解決するのか。読売新聞は社説で「万博の理念にもそぐわない」と、反対論を掲げた。

この計画には、たしかにプラス面とマイナス面が付きまとう。実現した暁にどちらの面が出るか、それ自体がギャンブルのようだ。気になるのは、仮に経営的な失敗や社会的損失がはっきりした場合、誰がその責任をとるのかという点。総理大臣も大阪府知事も大阪市長も、あるいは政府にゴーを進言した有識者会議も責任はとらないだろう。だったら住民が責任をとるしかない。住民投票で、丁か半かを決める必要がある。


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米欧ともに利上げ 0.25%
2023-05-06-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ インフレ収束のメドは立たず = アメリカの中央銀行であるFRBは3日、政策金利の0.25%引き上げを決定した。利上げは昨年3月以降、連続して10回。新しい政策金利は年5.25%、約16年ぶりの高さとなった。インフレの勢いが収まらないためで、FRBは「景気よりもインフレ退治を優先する」姿勢を貫いた。たとえば3月のPCE(個人消費支出物価)は、前年比4.6%の上昇となっている。

ただ今回の利上げに際しては、FRBの姿勢に大きな変化があった。それは声明文のなかから、前回までの「追加の引き締めが適切」という表現を削除したこと。これは次回6月の会合では「利上げを停止する可能性」を示唆したものと受け取られている。パウエル議長もこの点に関して「意味のある変化だ」とコメントした。

その直後の4日、ECB(ヨーロッパ中央銀行)も政策金利の0.25%引き上げを決めた。前回3月は0.5%引き上げているので、引き上げ幅は縮小している。これで政策金利は3.75%、約15年ぶりの高さとなった。こちらもインフレ率は高く、たとえば4月の消費者物価は7.0%の上昇。ラガルドECB総裁は「インフレ見通しは高く、利上げは止められない」と、FRBより厳しい。

日本に対する影響は・・・。内外金利差がさらに開くから、理論的には円安が進む。米欧が景気後退に入れば、円安になっても輸出が伸びない。ただ今回は、アメリカの銀行経営不安という次元の異なるかく乱要因が重なる。この要因は、ドル安・円高に働きやすい。その結果、日本にどんな影響が及ぶのか。いまの段階では、推測が難しい。

   
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今週のポイント
2023-05-08-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ 尾を引くアメリカの銀行経営不安 = ダウ平均は先週424ドルの値下がり。またまた3万4000ドル台から押し戻された。FRBが予想通り0.25%の利上げを決定、次回は利上げを停止する可能性を示唆。ところが株価は下落した。パウエル議長が年内利下げの可能性を否定したことも響いたが、それよりも中堅銀行の経営不安が意外と長引いている現実。利上げで苦しくなる銀行も出そうなことが、株価の足を引っ張った。ただ金曜日には中堅銀行の先物取引規制案が報じられ、株価は大きく反発している。

日経平均は先週302円の値上がり。終り値は8か月半ぶりに、2万9000円台に乗せている。円安の進行で輸出関連銘柄が買われた。それにしても、驚くほどの強気。というのも長い連休中に、FRBやECBによる利上げが予定されていた。利上げは織り込み済みだったが、何が起きるか判らない。にもかかわらず買い進んだ強気の根源は、何なのだろう。

アメリカの大手地銀シリコン・バレー銀行が、経営破たんしてから2か月。この間にさらに2行が行き詰まって、大手銀行の救済を受けた。ところが火種はまだ残っていて、パックウエスト・バンコープ銀行など3行から預金が流出。いつお手上げになるか判らない状態。他の中堅銀行の株価も急落した。市場としてはインフレと景気後退のほか、金融不安の状況にも気を配らなければならない状況に陥っている。

今週は9日に、3月の家計調査、毎月勤労統計。10日に、3月の景気動向指数。11日に、4月の景気ウオッチャー調査。アメリカでは10日に、4月の消費者物価。11日に、4月の生産者物価。12日に、5月のミシガン大学・消費者信頼感指数。また中国が9日に、4月の貿易統計。11日に、4月の消費者物価と生産者物価を発表する。

        ≪8日の日経平均は? 予想 = 下げ


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解けない 連立方程式 : FRB (上)
2023-05-09-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 預金の取り付けもSNSで一瞬に = 女子高校生2人が電車内で、信用金庫に就職が決まったもう1人の同級生に「信金は危ないよ」と冗談を言った。あとで判明したことだが、その意味は「強盗が入ることもあるから」ということだった。ところが言われた女子高生は、家に帰って「信金は危ないのか」と家人に質問。家人は知人に聞いたことから、噂が拡散。この信用金庫には預金を下ろす人が殺到してしまった。いわゆる‟取り付け騒ぎ”、1973年に静岡県で本当に起こった事件である。

いまアメリカでは、いくつかの地方銀行がこの‟取り付け騒ぎ”に揺らいでいる。最初に経営破たんしたのは、カリフォルニア州を地盤とするシリコン・バレー銀行。それから2か月の間に、中堅の2行が預金の流出で行き詰まった。いずれも大銀行による買収などで、預金者は完全に保護された。しかしパックウエスト銀行など数行が、まだ預金の流出に苦しんでいる。

静岡県の信用金庫とアメリカの地方銀行。この2つの‟取り付け騒ぎ”には、1つの共通点と2つの相違点がある。共通点はインフレと不況の前夜。1973年は石油ショックの真っ最中、その後の景気は下降した。相違点の1つは、今回アメリカの場合はパソコンやスマホで情報が拡散し、預金が引き出されたこと。だから取り付け騒ぎ”とは言っても、店頭に行列は出来なかった。その代り預金は、音もなく一瞬のうちに消えて行った。

相違点の2つ目。静岡の信金は経営的に何の問題もなかったが、アメリカの地銀は不良資産を抱えていること。貸し出し先の企業が経営不振に陥っていたり、信用度の低い債券を保有していたりする。このためFRBが金利を上げると、資金の回収が困難になったり、含み損が増大しやすい。したがって金融引き締めを進めるFRBとしては、こうした銀行経営に及ぼす影響にも配慮せざるをえなくなった。また1つ、新たな方程式を抱え込むことになったわけである。

                       (続きは明日)

        ≪8日の日経平均 = 下げ -208.07円≫

        ≪9日の日経平均は? 予想 = 下げ


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解けない 連立方程式 : FRB (下)
2023-05-10-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ あちら立てれば、こちらが立たず = インフレを抑えるためには、金融引き締めが必要。その副作用で景気には下押し圧力が加わるが、それは仕方がない。FRBは昨年3月からこうした考え方を貫き、金利を引き上げてきた。だが引き締めが手ぬるければインフレは抑制されないし、厳しすぎれば景気が大きく悪化してしまう。そのバランスを計るだけでも、実際の政策運営はきわめて難しい。

そこへ、こんどは金融不安が加わった。金利の上昇で企業が経営難に陥ると、地銀は資金の回収が困難になる。また保有している債券が値下がりして、大きな評価損も発生する。そんな経営内容が伝わると、預金の取り付け騒ぎが発生するわけだ。さらに健全な地銀も不良債権の拡大を警戒して、貸し出し態度を厳しくする。これが景気にとっては、大きなマイナス要因となることは言うまでもない。

この金融不安について、パウエル議長は会見で「われわれが間違いを犯したことは十分に認識している」と弁明した。FRBが金融不安を重視していることを再確認したわけで、市場はショックを受けたようだ。だがパウエル議長は、なぜこんな発言をわざわざしたのだろう。うがった見方によると「銀行に対する規制を緩和し危機の素地を作ったのは、トランプ前政権だよ」と、共和党に言いたかったのだという。

インフレvs景気後退の方程式に、インフレvs金融不安の方程式が加わった。さらに金融不安vs景気後退の方程式も解かねばならない。こんな連立方程式を解くことはムリなのだろう。したがってFRBは重要な経済指標が現われるたびに、慎重に政策を変更して行くしか方法がない。市場がFRBの政策を予想することも、きわめて困難になった。

        ≪9日の日経平均 = 上げ +292.94円≫

        ≪10日の日経平均は? 予想 = 下げ


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最悪! コロナ全数把握の終了
2023-05-11-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 闇夜を手さぐりで歩くことに = 新型コロナ・ウイルス感染症の法律的な分類が、今週から「5類」に格下げされた。パンデミック(世界的大流行)に落ち着きの傾向が続いているためで、季節性インフルエンザと同じ扱いになった。すべての行動規制が解除され、療養や感染防止は基本的に個人の判断に任される。過去3年にわたった‟ウィズ・コロナ”の生活に終止符が打たれたわけで、非常に喜ばしい。

ただ医療費の窓口支払い分は、原則として自己負担に。ワクチン投与は来年3月までは無料だが、その後は有料化される見込み。また一般の診療所でも診察できるようになるが、実際には応じられないところもあるようだ。この措置による経済効果はきわめて大きく、特に催し物会場や飲食・宿泊施設への入場者は目に見えて増えると期待されている。

しかしコロナ・ウイルスが、絶滅したわけではない。政府は仮に毒性の強い変異株が流行した場合には、扱いを再び「2類」に引き上げることもありうると説明している。現実的な対応策として、これも仕方がないだろう。ただし見逃せないのは、同時に感染者と死亡者についての全数把握をも止めてしまったことだ。これまでは全国と都道府県の数値が即日発表されていた。

それが今後は、感染者は全国5000医療機関の数値を週1回分として公表。死亡者は月単位の数値を5か月遅れで発表する。これでは‟現在の状況”が全く判らなくなってしまう。特に高齢者基礎疾患のある人は、出かけていいのかどうか迷うだろう。もともとウイルスは目に見えないが、こんどは闇の中を手さぐりで歩きなさいと言うようなもの。この措置は、いずれ大問題になるに違いない。明らかな失政である。

        ≪10日の日経平均 = 下げ -120.64円≫

        ≪11日の日経平均は? 予想 = 上げ
  

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最高値を狙う 金の国際価格
2023-05-12-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 再び上昇気流に乗って = 金の国際価格が1トロイ・オンス=2000ドル台を推移、史上最高値の更新を狙っている。ニューヨーク市場の先物相場は11日時点で2037.1ドル、20年8月に記録した史上最高値の2089.2ドルにもう少しだ。最近の推移をみると、上昇が始まったきっかけは22年2月のロシアによるウクライナ侵攻。その年の3月には、2078ドルの高値を付けている。その後は反落したが、ことし3月からは再び上昇気流に乗った。

金は‟最終的な安全資産”だと考えられている。したがって、世の中に不安材料が増えると買われやすい。たとえば戦争などの国際不安、インフレの高進、金融不安など。いまは、こうした不安材料が出揃い、金にとっての上昇気流となっている。金は保有しても利息を生まないから、金利が上昇すると売られやすい。だがアメリカでは、FRBによる利上げも終盤に近付いたと考えられている。

各国中央銀行が金の保有を増やしていることが、今回の大きな特徴。WGC(ワールド・ゴールド・カウンシル)の集計によると、世界の中央銀行は22年に金の保有を1135トンも増やした。ことし1-3月も1081トン購入している。これはウクライナ戦争の影響が大きく、米ドル離れの裏返しとも言える。特にロシアと中国による購入が大きかった。

日本が金を自由化したのは、1973年4月にさかのぼる。当時の小売り価格は1グラム=825円だった。それが現在は9700円を超えている。当面のマイナス材料は、アメリカやヨーロッパ諸国の景気後退入り。消費が落ちるから、価格は下向く。だが同時に物価上昇も続くスタグフレーション状態に陥れば、どうなるか。金にとっての上昇気流が消えるかどうかは、インフレと景気下降のバランスによって決まるだろう。

        ≪11日の日経平均 = 上げ +4.54円≫

        ≪12日の日経平均は? 予想 = 下げ


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コロナが遺した 財政大赤字 
2023-05-13-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 補正予算は計141兆円、国債増発は128兆円 = コロナ感染症の扱いがインフルエンザ並みに格下げされ、コロナとの闘いには一応の終止符が打たれた。だが政府はこの3年間に、実に莫大な支出を余儀なくされている。20-22年度に編成された補正予算は6回に及び、その総額は140兆8094億円。1年分の本予算額をはるかに超えた。その財源を賄うために発行された国債は計127兆6097億円。先進国中で最悪だった日本の財政状態は、さらに大きく悪化した。

使途は医療体制の整備やワクチン購入、中小企業の資金繰り支援、個人への現金支給、さらには休業者向けの雇用調整助成金なと多岐にわたった。そのなかには、全く効果がなかった現金の一律バラマキなども含まれている。また何が起きるか分からないというので、多額の予備費が計上された。3年間の予備費は、計23兆2100億円にのぼっている。この予備費は、コロナ以外の対策にも流用されたという印象が強い。

財務省は10日、国債と借入金を合計した国の借金が3月末で1270兆4990億円に達したと発表した。コロナ関連の支出増加で、大幅に増えた。国の借金をGDP比でみると、22年の段階で2.625倍。イタリアの1.506倍、アメリカの1.256倍に比べても、突出して大きい。それが現時点では、さらに大きくなったわけだ。

コロナ・ウイルスという難敵の襲来は、初めての経験。だから対応のやり方に問題があったことは、仕方がないかもしれない。しかし今後のためにも、きっちりと検証しておくことは重要だ。また膨れ上がった国の借金を、どのように減らして行くのか。実現可能な具体策の検討も不可欠だろう。ところが政府や国会、民間やマスコミでも、そんな議論は聞かれない。不思議な国である。

        ≪12日の日経平均 = 上げ +261.58円≫

        【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】     


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今週のポイント
2023-05-15-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ 日経平均は1年半ぶりの高値に = ダウ平均は先週374ドルの値下がり。週5日間の続落だったが、その割に下げ幅は小さかった。4月の雇用統計が予想を上回る強さを示し、ニューヨーク連銀の総裁が「利上げを終了するとは言えない」と発言。FRBの引き締め政策はまだ続く、という予測が強まった。また連邦政府の債務限度引き上げ問題が決着しないことも、株価の重石となっている。

日経平均は先週230円の値上がり。終り値は2万9388円で、1年半ぶりの高値を回復した。3月期決算の発表がピークを過ぎ、全体として増益の企業が目立つことが好感されている。ソフトバンクのように大赤字の企業も出ているが、コロナ規制の終了で増益になった企業が多い。ニューヨーク市場から乗り換えてくる資金も、相変わらず続いている。

企業決算の中間集計をみると、アメリカの1-3月期の純利益は前年比3%程度の減益になりそう。ただIT大手5社のうち3社が大幅な減益になるなど、悪い方の印象が強い。一方、日本の場合は物価高やコロナ規制の解除で、非製造業の業績は大幅に改善。さらに製造業も半導体の供給が復旧したことで、大企業の増益が目立つ。全体として、良い方の印象が強い。これが日米の株価にも反映されているようだ。

今週は15日に4月の企業物価。17日に、1-3月期のGDP速報。18日に、4月の貿易統計。19日に、4月の消費者物価。アメリカでは16日に、4月の小売り売上高、工業生産。17日に、4月の住宅着工戸数。18日に、4月の中古住宅販売。また中国が16日に、4月の鉱工業生産、小売り売上高、固定資産投資額を発表する。なお19-21日は、G7広島サミット。

        ≪15日の日経平均は? 予想 = 上げ


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政府がデフォルト? / アメリカ (上)
2023-05-16-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 6月には政府活動が停止する危険性 = 企業でも個人でも、手元におカネがなくなる。すぐには調達できる見込みもないと、どうなるか。従業員の給料が支払えなくなったり、買ったものの代金が払えない。借金の返済も出来なくなる。こんな状態をデフォルト(債務不履行)と言う。いまアメリカ政府が、このデフォルト状態に陥ろうとしている。いったい、どうしてなのだろうか。

アメリカでは放漫財政を抑止するため、政府に許される債務の上限額を議会が決めることになっている。現行の上限額は31兆4000億ドル(約4200兆円)だが、バイデン政府はことし1月19日にそれを使い切った。その後は各種基金への拠出金などを停止するなどして、なんとかやり繰りしている。だが財務省によると、6月1日以降はタネが尽きてデフォルトに陥るという。

デフォルトに陥ると、公務員の給料が払えなくなり、政府機関の活動が停止してしまう。さらに国債の償還や利払いも出来なくなるから、アメリカ国債は格下げされる。その影響はきわめて大きく、G7会議で来日中のイエレン財務長官も「デフォルトになれば、世界的な景気後退の引き金になる」と警告した。

この問題は民主党政権下で、共和党が下院を制すると発生しやすい。もともと共和党は、財政の肥大化に反対の保守的議員が多いからである。オバマ政権下の11年にも、この問題が重大化した。ただ当時はデフォルトになった直後に、与野党間で妥協が成立している。このため今回も、大事には至らないという見方も強い。しかし11年の場合と比べ、ことしは2つの点で大きな違いがあることも確かなようだ。

                          (続きは明日)

        ≪15日の日経平均 = 上げ +238.04円≫

        ≪16日の日経平均は? 予想 = 上げ


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政府がデフォルト? / アメリカ (下)
2023-05-17-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 金融不安の残り火に油を注ぐ危険性も = バイデン政権は、政府の債務上限を1兆5000億ドル引き上げるよう要求している。これに対して共和党は、財政支出を4兆5000億ドル削減する独自の法案を下院で可決してしまった。この削減にはバイデン大統領が最重要としている気候変動対策も含まれる。だから双方ともに、引っ込みがつかない。来年の大統領選挙の前哨戦ともなりつつある。

オバマ政権のときの対立とは、異なる要素が2つ。その1つは、共和党のリーダーがマッカーシー下院議長であること。この人はトランプ前大統領を超える保守主義者として知られ、財政緊縮派の最先鋒となっている。共和党内の妥協派も、いまのところは口が出せない。もう1つは、金融不安の存在だ。シリコン・バレー銀行に端を発した預金流出騒ぎは、いまだにくすぶり続けている。

いまバイデン政権は金融機関が経営難に陥った場合、預金の全額を保護する方針を打ち出している。しかし政府がデフォルトに陥ると、その資金を支出できなくなる。こうした不安が一般に広がると、銀行からの預金流出が加速する危険性もあるわけだ。また国債の格下げで価格が下落すると、金融機関に大きな含み損が発生する。

与野党にとっては、国民の怒りがいちばん怖い。選挙に響くからである。すでに市場は警戒し始め、株価は下落傾向だ。世論調査でも「議会に対する批判」が強まってきた。それでも今回は、6月半ばまで混乱が続くという見方が強い。実体経済にある程度の悪影響を及ぼしそうだ。これが民主主義なのかもしれないが、アメリカはこんなことをやっていては中国に勝てないぞ!

        ≪16日の日経平均 = 上げ +216.65円≫

        ≪17日の日経平均は? 予想 = 上げ


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危うし? 日本の国際収支
2023-05-18-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 昨年度は黒字額がガタ減り = 企業のなかには本業で大赤字を出しながら、海外の投資事業で大きく儲けているところもある。その合計額が黒字ならば、その企業は市場から認知され株価も上がりやすい。M&A(合併・買収)や債券・株式投資に成功している企業だ。だが仮にそんな企業の投資収入が増え続けても、本業の赤字がもっと増えて全体の黒字が減り始めたら、どうだろう。市場は先行きを心配し、株価は下がるに違いない。

いま日本という国が、そういう状態に陥っている。財務省の発表によると、22年度の経常収支は9兆2256億円の黒字だった。だが、この黒字額は前年度に比べると、54%も減っている。内訳をみると、外国との投資取引を集計した第1次所得収支は35兆5591億円の黒字。前年度比では23%も増加した。その大半は、海外子会社などからの配当収入。この部門での利益は、いぜん大幅に伸びている。

ところが本業とも言える貿易収支は、大幅に悪化した。輸出は16%増えたが、輸入は35%も増加した。その結果、貿易収支は18兆0602億円の大赤字。前年度に比べると、16兆5170億円も増大している。原因は言うまでもなく、エネルギーや資源の高騰と円安の影響。その結果、貿易赤字は過去最大。経常収支の黒字を半分以上も減らしてしまった。

日本の対外投資額は、世界でも最大。したがって、今後も投資部門での収入は増え続けるだろう。しかし貿易収支がこれほどの大赤字を出すと、大きな問題が生じる。まず日本人の購買力が海外へ流出するから、国内の消費が抑制されてしまう。また海外での儲けは海外で再投資されやすいから、国内での賃上げには回されない。経常収支が黒字だと言っても、好ましい状態でないことは確かである。

       ≪17日の日経平均 = 上げ +250.60円≫

       ≪18日の日経平均は? 予想 = 上げ


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半周遅れの 一時的な輝き
2023-05-19-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 1-3月期の成長率がプラス1.6%に = 内閣府の発表によると、ことし1-3月期の実質GDP成長率は年率でプラス1.6%だった。3四半期ぶりにプラス成長に戻っている。内容をみると、いずれも年率換算で個人消費が2.4%の増加、企業の設備投資は3.8%の増加。コロナ規制が徐々に緩和されたことと、半導体などの供給が回復したことが主たる原因だ。ただし輸出が15.6%も減少したことが、大いに気がかりな点となっている。

これで主要国の1-3月期GDP速報が出揃った。成長率の高い順に並べてみると、中国がプラス4.5%、日本がプラス1.6%、アメリカがプラス1.1%、EUがプラス0.3%となっている。ただし、このなかでアメリカは前期のプラス2.6%から悪化、EUはきわめてわずかな改善にとどまった。中国と日本だけが、まずまずの改善ぶりを示している。アメリカとEUでは規制解除の効果が一巡してしまったが、中国と日本はようやく効果が出始めたところだと言えるだろう。

アメリカではインフレ傾向が収まらず、FRBの引き締め政策が続いて、景気後退の恐れが深まっている。このため成長率は縮小の傾向。EUも引き締め政策を継続しているので、成長率の改善はきわめて小幅にとどまった。一方、中国はゼロ・コロナを目指した規制が厳しかっただけに、その反動で成長率が大きく改善した。日本の規制は中国ほど厳しくなかったので、改善も中国よりは緩やかとなった。

このような状況だから、日本の‟健闘”が目立ってくる。そこに外国人投資家が着目して、日経平均を1年8か月ぶりに3万円台に押し上げた。だが日本の成績は「比較すれば、やや良」という状態。あと半年もすれば、コロナ規制解除の効果ははげ落ちる。そのとき海外の景気が悪化していると、成長率はまた水面下に沈むかもしれない。そういう意味で、1-3月期に輸出が急減したことを心配するわけだ。

        ≪18日の日経平均 = 上げ +480.34円≫

        ≪19日の日経平均は? 予想 = 上げ


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インドが 世界一の人口大国に
2023-05-20-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ この6月中にも中国を抜いて = 国連の推計によると、インドの人口はこの6月にも14億2860万人に達し、中国を抜いて世界一の人口大国になる。10年前には中国が1億人以上も上回っていたが、急速に追い付いた。インドの医療水準が向上し乳幼児の死亡率が低下した一方、中国は一人っ子政策の影響で人口が減り始めた。インドの人口は60年代に17億人前後でピークを迎えると推定されている。

インド経済はコロナ禍にもかかわらず、順調に拡大した。22年の成長率は6.7%と高く、GDPは3兆3800億ドルに達している。宗主国だったイギリスを抜いて、世界第5位に躍進。間もなくドイツと日本を抜いて、世界第3位となる見込み。その時点では、アメリカと中国に次ぐ経済大国にもなるわけだ。

ただインドは、きわめて複雑な国でもある。これほど多数の民族、言語、宗教が混在している国は珍しい。たとえばルピ―紙幣には、17の言語が印刷されている。貧富の差、教育の格差も著しい。一握りの大富豪もいるが、その日暮らしの人も数多い。また優秀なIT技術者を輩出している一方で、学校に通えない子どもたちも少なくない。

今後の見通しはどうか。科学技術の発展が後押しして、インドの高成長は続きそうだ。中国で天安門事件が起きたのは、いまから34年前。当時の中国はまだ発展途上国に過ぎず、世界のなかでの存在感も小さかった。それが現在はアメリカと張り合う超大国に。インドの発展はそれより速く、おそらく20年後には超大国に変身するのではないか。そのときの政治的立ち位置は不明だが、世界の景色が変わっていることは間違いなさそうだ。

        ≪19日の日経平均 = 上げ +234.42円≫

        【今週の日経平均予想 = 5勝0敗】     


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今週のポイント
2023-05-22-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ 日経平均が33年ぶりの高値に = ダウ平均は先週126ドルの値上がり。3週間ぶりの上昇だったが、内容は3万3000ドル台での一進一退。連邦政府の債務上限引き上げ問題に進展があったと言って上げ、小売りや生産の実態が予想以上に強いと言って下げた。FRBがさらに利上げすることは、ほぼ織り込んだ。景気後退は避けられないという見方も広まっているが、その程度は浅いという予測が株価を下支えしている。

日経平均は先週1420円の大幅な値上がり。6週連続の上昇で、終り値は3万0808円。バブル末期の1990年8月以来、なんと約33年ぶりの高値となった。この6週間の上げ幅は、計3290円に達している。企業の3月期決算が前年比1%の増益で、過去最高の水準を維持したこと。それに円安の進行が買い材料となった。買っているのは、主として海外の投資家。6週間で、約3兆円近くを買い越している。

アメリカもヨーロッパ諸国も、金融引き締めで景気の先行きは暗い。中国の回復も足取りが重い。そんななかで日本だけが半周遅れのコロナ解禁で、目先が明るくなっている。海外の投資家はあり余る資金の投資先として、日本に目を付けたわけだ。この状態はまだ当分続きそう。しかし高値になって、利益の確定売りも増える。それをこなして、3万1000円台を固められるかどうか。今週の見どころになる。

今週は22日に、3月の機械受注。26日に、4月の企業向けサービス価格、5月の東京都区部・消費者物価。アメリカでは23日に、4月の新築住宅販売、5月の製造業PMI。25日に、1-3月期のGDP改定値、4月の中古住宅販売が発表される。

        ≪22日の日経平均は? 予想 = 下げ


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株価も「失われた30年」だった!
2023-05-23-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ なぜ大差がついた原因を究明しないのか = 日経平均株価は先週末3万0808円にまで上昇。バブル末期の1990年8月以来、実に33年ぶりの高値を回復した。コロナ規制の解除で経済の正常化が進み、円安の影響も加わったことが原因。アメリカやヨーロッパでは金融引き締めで景気の先行きが不安、中国の回復もはかどらない。こうしたなかで日本の状況に光が当たり、海外の投資家があり余る資金を東京市場に投入した。

「よくぞ、ここまで回復した」というのが、一般的な印象だろう。しかし、よく考えてみると「やっと33年前の水準に戻っただけ」のこと。1990年当時と現在の株価を比べてみると、ダウ平均は3024ドルから3万3427ドルへ。なんと11.0倍も上昇している。ドイツのDAXも同じ。当時の1712が現在は1万6275へ、やはり11.6倍に値上がりしている。その間、日経平均は全く上昇しなかったわけだ。

ついでにGDPの動向も調べてみると、この33年間でアメリカのGDPは4.25倍に増大。ドイツは2.5倍に拡大している。これに対して、日本のGDPはわずか1.57倍にしか増えていない。「失われた30年」という表現は、日本の賃金水準が全く増加しなかったという意味で使われることが多い。しかしGDPについても言えるし、株価についても全く当てはまる。

なぜ、こんなことになってしまったのか。1990年当時はバブルの末期で、株価が高すぎたからという説明もある。だが、それにしても米独との大差はひどすぎる。人口の減少とか超金融緩和でゾンビ企業が生き残ったなどの理由も挙げられるが、これは最近10年に限った原因だ。おそらく多くの原因が絡み合っているのだろう。その原因をしっかり究明しないと、この先も「失われた10年」になってしまう心配がある。

        ≪22日の日経平均 = 上げ +278.47円≫

        ≪23日の日経平均は? 予想 = 上げ


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大ヒット! 半導体経営者会合 (上)
2023-05-24-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 世界7社のトップが異例の集合 = G7(主要7か国)広島サミットが閉幕した。インドやブラジルなどの新興国首脳も参集、ウクライナのゼレンスキー大統領も登場して迫力満点。首脳宣言では「武力や強制力での一方的な試みに反対」や「核兵器のない世界を実現」がうたわれ、大成功だったと言っていい。ただ現実的には、これが戦争の終結や核兵器の不使用にどの程度まで有効なのか。残念ながら、大きな疑問符がついてしまう。

サミットが開かれる前日の18日、東京・永田町の官邸では、岸田首相がきわめて重大な会合を開いていた。出席したのは、世界の半導体関連7社の経営トップ。アメリカのIBM、アプライド・マテリアルズ、マイクロン・テクノロジー、インテル。台湾のTSMC (台湾積体電路製造)、韓国のサムスン電子、それにベルギーの研究開発機関imecの最高責任者たち。こんな人たちが一堂に会するのは、異例中の異例と言えるだろう。

会合では、岸田首相が「政府は対日直接投資の拡大、半導体産業への支援」方針を説明。7人の経営者たちからは、日本に対して積極的に取り組む姿勢が表明された。具体的にはマイクロンが5000億円の投資、サムスンは神奈川県に研究開発拠点。また熊本県で新工場を建設中のTSMCはさらに新たな工場、imecはラピダスと連携。IBMとインテルは日本企業との連携強化を約束したと伝えられる。

互いに競争関係にもある7社の経営トップが、たまたま東京を訪れていたなどということはありえない。サミットに出席した大統領や首相に随行してきたのかもしれないが、確証はない。いずれにしても、これら7社が抱える問題を察知し、官邸での会合をお膳立てした優れものが、政府部内にいたのだろう。その結果は大成功だった。しかし、この会合が出発点となって、将来に大きな実を結ぶかどうか。やや心許ない気もする。

                   (続きは明日)

        ≪23日の日経平均 = 下げ ー129.05円≫

        ≪24日の日経平均は? 予想 = 下げ


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大ヒット! 半導体経営者会合 (下)
2023-05-25-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 台湾、韓国から日本へ疎開する = いま世界の半導体メーカーは、大きな問題に直面している。半導体の供給を確実なものとするため、各国が競って自国での生産を強化しようとしていることへの対応。たとえばアメリカ政府は5年間で7兆円、EUは30年までに6兆3000億円の予算を使って半導体メーカーを囲い込む。これと関連して、もう1つの問題は台湾と韓国に集中し過ぎた生産体制の見直しだ。

半導体の製造能力を国別にみると、韓国と台湾だけで世界の44%を占めている。万が一にも韓国が、北朝鮮に攻め込まれたら。仮に台湾が香港のようになったとしたら。世界の半導体供給網は、ずたずたに裂かれてしまう。それなら韓国と台湾のメーカーは、機能の一部を日本に疎開しておいた方が賢明だ。アメリカやEUも、その動きに参画した方がいい。実は台湾のTSMCが熊本に工場を建てているのも、根底にはこうした考えがあったと言える。

首相官邸で行われた半導体メーカー経営者会合は、こうした世界の潮流を捉えた試みだった。この点では、大成功だったと評価できるだろう。だが、このことはまた必ずしも日本の環境が良好なために疎開してくるわけではないことも意味している。たとえば労働力が集められるのか。電力コストが高すぎないのか。人手不足でトラック輸送などに支障はないのかなど。

政府はこうしたインフラの整備に、もっと努力しなければならない。それが出来ないと、経営者会合の結果もアダ花に終わってしまう危険がある。激化する競争のなかで、日本が半導体を主力産業として維持して行けるかどうか。これが恐らくは、最後のチャンスとなるだろう。政府に、その覚悟があるかどうかを問いたい。

        ≪24日の日経平均 = 下げ -275.09円≫

        ≪25日の日経平均は? 予想 = 下げ


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明暗とりどり 企業の業績
2023-05-26-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 上場企業の利益総額は最高水準を更新 = 上場企業の23年3月期決算発表が、ほぼ終了した。日経新聞の集計によると、1154社の純利益は前年比1.3%の増加。わずかではあるが、史上最高の利益水準を更新した。これが東京市場の株価を押し上げる要因の1つとなっている。ただ内容を見て行くと、今回の決算にはいろいろな形での明暗が存在した。

まず製造業の純利益は、前年比7.8%の減少。世界経済の低迷や半導体の供給不足で、減益となった。一方、非製造業は11.4%の増益。コロナ規制が段階的に解除されたため、利益が回復した。全36業種のうち、増益あるいは黒字化したのは20業種。そのうち非製造業が14業種を占めている。23年3月期は、非製造業と製造業ではっきり明暗が分かれた。

業種別にみると、製造業で増益だったのは機械(20.2%増)と鉄鋼(0.6%増)だけ。減益率が大きかったのは繊維(40.3%減)や非鉄(32.9%減)など。非製造業で増益率が大きかったのは、通信(3倍増)や商社(19.3%増)など。サービス業だけが6.9%の減益となっている。このように製造業でも増益の業種もあれば、非製造業でも減益の業種があった。

24年3月期の予想になると、製造業と非製造業の明暗が逆転する。全産業では3.0%の増益で、さらに最高益の水準を更新する見込み。このうち製造業は3.8%の増益で、水面上に顔を出す。その一方、非製造業は2.2%の増益と業績の伸びは目立って鈍化する。業種別にみると、繊維、精密機械、通信、銀行が大きく回復する。ただ、これは上場企業についての予想。電力料金の値上がりなどで、中小企業の経営は苦しさが続くだろう。大企業との明暗は、解消しそうにない。

        ≪25日の日経平均 = 上げ +118.45円≫

        ≪26日の日経平均は? 予想 = 上げ


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シナリオ通り? 電力7社の値上げ
2023-05-27-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 東京は14%、北陸は42%の引き上げに = 経済産業省は先週19日、大手電力7社の家庭向け電気料金引き上げを認可した。最も小幅な値上げは東京電力の2078円(14%)、最大は沖縄電力の5323円(38%)。いずれも6月使用分から適用される。ただし政府の補助金によって、6-8月分は2800円程度、9月は1400円程度が割引となる。10月以降の補助金については、いまのところ未定。中部・関西・九州の3社は、値上げを申請しなかった。

輸入燃料の高騰などを理由に、電力7社は最初もっと大幅な値上げを申請した。しかし岸田首相の意向もあって、経産省は専門部会による査定を実施、値上げ幅を圧縮した。たとえば東京電力の場合、当初の値上げ率は28%だったが14%に縮小された。経産省は専門部会で「中立的・客観的・専門的な観点から、厳格かつ丁寧に審査した」と強調している。これは電力業界で、顧客情報の不正閲覧やカルテル問題が発覚したことを意識したからだろう。

だが、それにしても値上げ幅を半分に削ったのは異常だ。電力7社は最初、ダメ元で大幅な値上げを申請したのだろうか。あるいは経産省側が査定で削ることを前提に、大幅な値上が案を申請させたのか。実際にそんなことはなかったかもしれないが、こんな憶測まで生まれそうな経産省の動きだった。

大手電力10社の3月期決算では、関西と中部を除く8社が赤字に転落した。24年3月期の予想では、この両社と九州電力の3社だけが黒字を見込んでいる。だから3社は値上げを申請しなかった。ほかの7社と、どこが違うのか。いろいろ相違はあるが、最大の違いは火力に対する依存度だろう。値上げに追われているだけでは、進歩がない。値上げした7社は、もっと根本的な体質改善を計るべきだろう。

         ≪26日の日経平均 = 上げ +115.18円≫

         【今週の日経平均予想 = 2勝3敗】     


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今週のポイント
2023-05-29-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ 政府債務問題は原則合意した = ダウ平均は先週333ドルの値下がり。終り値はかろうじて3万3000ドルを維持した。物価上昇の勢いはやや鈍化したが、インフレと景気の見通しはいぜんとして不透明。パウエルFRB議長の「利上げの必要性は、これまで想定していたほどではなくなった」という発言にもかかわらず、株価は上がらなかった。それ以上に政府債務上限引き上げ問題がこじれて、株価の重石となってきたからである。

日経平均は先週108円の値上がり。7週間の連騰となったが、終り値は3万1000円を回復できなかった。月曜日まで8日間の連騰だっただけに、利益確定売りが増加している。売買の主役は外国人投資家で、5月第3週までの8週間で4兆2700億円を買い越した。その一部が、先週は高値で売り逃げている。ただ円安基調が続いているから、海外投資家はまた東京市場に帰って来るかもしれない。

バイデン大統領と共和党のマッカーシー下院議長は27日、政府債務上限の引き上げについて原則合意した。法案をまとめて31日の議会で採決される予定。ぎりぎりのところで、政府機関の閉鎖や支払いの停止、国債の格下げなどは回避されそう。ただ議会で承認される確証はまだない。それでも株価は大幅に上がるだろう。

今週は30日に、4月の労働力調査。31日に、4月の鉱工業生産、商業動態統計、住宅着工戸数、5月の消費動向調査。1日に、1-3月期の法人企業統計、5月の新車販売。アメリカでは30日に、5月のカンファレンス・ボード消費者信頼感指数。1日に、5月のISM製造業景況指数。2日に、5月の雇用統計。また中国が31日に、5月の製造業と非製造業のPMI。インドが31日に、1-3月期のGDP速報を発表する。

        ≪29日の日経平均は? 予想 = 上げ


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外国人が 日本株を買う理由 (上)
2023-05-30-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 日本人は大幅な売り越しなのに = 東京市場の株価が高い。日経平均は先週3万1000円前後にまで上昇、実に33年ぶりの高さを回復した。先週まで7週間の連騰で、この間の上げ幅は3398円に達している。買っているのは、主として外国人投資家。その半面、国内の投資家はほとんどが売っている。なぜ、こんなことになったのか。いつまで、この状態が続くのか。

とにかく外国人投資家は、よく買った。日本取引所グループの集計によると、5月第3週までの8週間に外国人投資家は計3兆6000億円を買い越した。これは6年ぶりの大きさである。ニューヨークやヨーロッパ市場の株価は、景気後退不安で冴えない。投資家の多くはMMF(債券を中心に運用する投資信託)などに資金を避難させているが、その一部が東京市場に流れ込んだわけだ。

一方、国内投資家は売っている。たとえば信託銀行は、8週間で1兆円の売り越し。またGPIF(年金積立金管理運用独立法人)は、日本株の保有比率を一定にしているため、株価が上昇すると売らざるをえなかった。さらに個人も、8週間で2兆3600億円を売り越している。円安が進むと輸入物価が上がり、それが消費や設備投資の抑制要因になると警戒したようだ。

ニューヨークやヨーロッパ市場は、先行き警戒感が強い。中国市場も不透明感が強い。そんななか日本だけが、半周遅れのコロナ規制解除で明るさを保っている。外国人投資家はその相対的な優位性に着目、日本株を買っていると言えるだろう。さらにもう1つ、外国人だけが享受できる好条件がある。それは1ドル=140円にまで下落した円安の進行である。

                      (続きは明日)

        ≪29日の日経平均 = 上げ +317.23円≫

        ≪30日の日経平均は? 予想 = 上げ


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外国人が 日本株を買う理由 (下)
2023-05-31-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 外国人だけが享受できる円安メリット = 主要国の通貨に対する日本円の相場が、大幅に低下している。米ドルに対しては140円台に下落、昨年11月以来6か月ぶりの安値となった。ことし1月の高値127円に比べると、13円も安い。企業の多くは125-130円を想定しているから、利益は増える。このため市場では輸出関連銘柄が買われ、日経平均も急激に上昇した。

円安が急激に進んだ原因は、日米間の金利差が拡大したこと。アメリカでは物価高が収まらず、FRBが引き締めを続ける公算が大きい。そのうえ政府の債務上限引き上げ問題がこじれ、国債の価格が下落した。その結果、長期金利は3.8%にまで上昇している。一方、日本では日銀総裁が代わっても超緩和政策を継続中。さらに輸入の急増で、ドルの需要が増えた。

円の対ドル相場は、ここ4か月で10%も下落した。外国人投資家にとってみると、同じドル資金で日本株を1割も多く買えるわけだ。しかも日本では、超低金利で資金を調達することもできる。こんなメリットは、そうザラにあるものではない。そのうえ日本だけが、半周遅れのコロナ規制解除で明るい。そこで多くの資金を、東京市場に振り向けた。

こうした環境は、いつまで続くのだろうか。おそらく日本の状況はしばらく変わりそうもないから、要因の変化はアメリカ側に限られるだろう。まず31日の議会で政府債務の問題が解決すれば、雰囲気はかなり変わる。さらにFRBが6月の政策決定会合で金利の据え置きを決めれば、状況は一変するに違いない。したがって外国人による日本株への積極的な投資も、そう長くは続かないかもしれない。

        ≪30日の日経平均 = 上げ +94.62円≫

        ≪31日の日経平均は? 予想 = 下げ


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