◇ ダウとSP500がまたまた最高値 = ダウ平均は先週331ドルの値上がり。終り値は3万9807ドルで、またまた史上最高値を更新した。SP500も新高値を記録している。景気動向が堅調な一方で、FRBは年内3回の利下げを断念していない。市場はこの状態を好感、幅広い分野に買いを入れている。ダウ平均は1-3月期に2117ドル、率にすると5.6%の上昇だった。
日経平均は先週519円の値下がり。ただ終り値は4万円台を維持している。前週に2000円も上げたことの反動に加えて、年度末の利益確定売りが影響した。またアメリカの長期金利が上昇したために、ドル高・円安が進行。一時は152円に近付いたことから、外国為替市場では政府による介入が心配された。この警戒感は株式市場にも、微妙に響いている。日経平均は1-3月期に6905円、率にして20.6%の上昇だった。
アメリカでは商業用不動産の価格が低下している。また株価を先導してきたエヌビディアの株価が、頭打ちからやや下げ気味。さらにインフレ再燃論も聞こえてきた。こんなところが要注意点だが、ダウはとりあえず4万ドル台には乗せるだろう。一方、日本は新年度入り。株式市場にとっては、なにか元気の出る材料が欲しいところだ。
今週は1日に、3月の日銀短観、新車販売。5日に、2月の家計調査、景気動向指数。アメリカでは1日に、3月のISM製造業景況指数。3日に、ISM非製造業景況指数。4日に、2月の貿易統計。5日に、3月の雇用統計。また中国が1日に、製造業と非製造業のPMIを発表する。なお1日から、運送業・建設業・医師の時間外労働の上限規制が実施。
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アメリカでは商業用不動産の価格が低下している。また株価を先導してきたエヌビディアの株価が、頭打ちからやや下げ気味。さらにインフレ再燃論も聞こえてきた。こんなところが要注意点だが、ダウはとりあえず4万ドル台には乗せるだろう。一方、日本は新年度入り。株式市場にとっては、なにか元気の出る材料が欲しいところだ。
今週は1日に、3月の日銀短観、新車販売。5日に、2月の家計調査、景気動向指数。アメリカでは1日に、3月のISM製造業景況指数。3日に、ISM非製造業景況指数。4日に、2月の貿易統計。5日に、3月の雇用統計。また中国が1日に、製造業と非製造業のPMIを発表する。なお1日から、運送業・建設業・医師の時間外労働の上限規制が実施。
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◇ 業況判断の低下は一時的だが = 日銀は1日、3月の企業短期経済観測調査を発表した。それによると、最も注目される大企業・製造業の業況判断指数はプラス11で、前回調査よりも2ポイント低下した。低下は4四半期ぶり。中小企業・製造業の指数もマイナス1で、前回より3ポイント悪化している。最大の原因はダイハツ工業の認証不正事件で、自動車の生産台数が減少したこと。自動車産業だけではなく、鉄鋼などの周辺産業にも悪影響を及ぼした。
市場は驚いて、日経平均は500円以上も下げた。だがダイハツ事件は、一過性のもの。心配する必要は全くない。しかも非製造業は絶好調。大企業・非製造業の業況判断指数はプラス34で、前回に比べて2ポイントの上昇。インバウンドの回復もあって、33年ぶりの高さとなった。また中小企業・非製造業も指数はプラス13。全規模・全産業でみても、指数はプラス12と高い水準を維持している。
そうしたなかで、やっぱり気になるのは人手不足。雇用が「過剰」と答えた割合から「不足」と答えた割合を差し引いた判断指数は、全規模・製造業でマイナス22。全規模・非製造業ではマイナス46にものぼっている。しかも先行きの見通しは、さらに悪化する。3か月後の予想は、製造業がマイナス27。非製造業はマイナス48になる。
当期利益の予想も、やや気になる。全規模・製造業の23年度は11.2%の増益、非製造業は8.7%の増益を見込んでいる。しかし24年度の見通しは、製造業が3.5%の減益、非製造業は2.9%の減益となっている。これは金利の上昇など不確かな面があるために、慎重になっているのだろうか。それとも人手不足が経営を圧迫すると考えているのだろうか。
≪2日の日経平均 = 上げ +35.82円≫
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そうしたなかで、やっぱり気になるのは人手不足。雇用が「過剰」と答えた割合から「不足」と答えた割合を差し引いた判断指数は、全規模・製造業でマイナス22。全規模・非製造業ではマイナス46にものぼっている。しかも先行きの見通しは、さらに悪化する。3か月後の予想は、製造業がマイナス27。非製造業はマイナス48になる。
当期利益の予想も、やや気になる。全規模・製造業の23年度は11.2%の増益、非製造業は8.7%の増益を見込んでいる。しかし24年度の見通しは、製造業が3.5%の減益、非製造業は2.9%の減益となっている。これは金利の上昇など不確かな面があるために、慎重になっているのだろうか。それとも人手不足が経営を圧迫すると考えているのだろうか。
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◇ 利上げでも株価が下がらない根本的な原因 = FRBも日銀も、いま金融を引き締めている。しかしニューヨーク市場でも東京市場でも、株価は下がらない。下がらないどころか、史上最高値の更新を続けている。経済学の教科書には「金融が引き締まると、株価は下落する」と書いてある。でも、どうして下落しないのか。答えは「まだカネ余りの状態が続いているから」だ。まずはニューヨーク市場の状態から、検証してみよう。
FRBは3月20日の政策決定会合で、政策金利の据え置きを決定。同時に「年内3回の利下げ」の可能性を否定しなかった。株式市場は「金利を据え置いたのは景気が堅調な証拠」ととらえて好感、また3回の利下げを歓迎。ダウ平均は3月下旬の間に3回も最高値を更新している。なぜ、こんなに強いのか。理由はいろいろ言われているが、基本的には市場の周辺に巨額の投資資金が滞留しているからに他ならない。
カネ余り状態が続いている最大の原因は、FRBによる量的引き締めがまだ不十分なことにある。FRBは20年3月から22年6月まで、国債と住宅ローン担保証券を無制限に買い入れ、大量の現金を市場に放出した。これが量的緩和政策である。22年6月からは月に最大950億ドル(約14兆円)ずつ市場に放出して、資金を吸収してきた。これが量的引き締め政策である。
引き締めを始めた22年6月時点で、FRBは8兆9000億ドルの資産を保有していた。これが最近時点では7兆5000億ドルに減少している。つまり1兆4000億ドルの資産を売却、それだけ資金を吸収したことになる。だが減少率はまだ15%に過ぎない。ところがFRBは利上げを止めたから、量的引き締めも減速せざるをえなくなった。このため量的引き締めは中途半端、まだ市場が資金不足で困るようなことはない。だから株価は、なかなか下がらない。
(続きは明日)
≪3日の日経平均 = 下げ -387.06円≫
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FRBは3月20日の政策決定会合で、政策金利の据え置きを決定。同時に「年内3回の利下げ」の可能性を否定しなかった。株式市場は「金利を据え置いたのは景気が堅調な証拠」ととらえて好感、また3回の利下げを歓迎。ダウ平均は3月下旬の間に3回も最高値を更新している。なぜ、こんなに強いのか。理由はいろいろ言われているが、基本的には市場の周辺に巨額の投資資金が滞留しているからに他ならない。
カネ余り状態が続いている最大の原因は、FRBによる量的引き締めがまだ不十分なことにある。FRBは20年3月から22年6月まで、国債と住宅ローン担保証券を無制限に買い入れ、大量の現金を市場に放出した。これが量的緩和政策である。22年6月からは月に最大950億ドル(約14兆円)ずつ市場に放出して、資金を吸収してきた。これが量的引き締め政策である。
引き締めを始めた22年6月時点で、FRBは8兆9000億ドルの資産を保有していた。これが最近時点では7兆5000億ドルに減少している。つまり1兆4000億ドルの資産を売却、それだけ資金を吸収したことになる。だが減少率はまだ15%に過ぎない。ところがFRBは利上げを止めたから、量的引き締めも減速せざるをえなくなった。このため量的引き締めは中途半端、まだ市場が資金不足で困るようなことはない。だから株価は、なかなか下がらない。
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◇ 日銀はETFの購入を止めただけ = FRBは国債と住宅ローン担保証券を売買することで、量的な金融操作を実施した。これに対して日銀は、国債とETF(上場投資信託)を売買している。ETFというのは株式の集合体だから、中央銀行が株式を売買することになってしまう。このため先進国の中央銀行が、ETFを金融操作のために売買することはない。しかし日銀は株価を下支えすることが重要だと考えて、一種の禁じ手を使用した。
日銀は17-20年に、年間4-7兆円のETFを市場から購入した。量的緩和である。しかし株価が回復したため、23年の購入額は2100億円に減っている。そして23年10月4日以降は、株価が大幅に下落してもETFの買い入れを止めている。したがってETFでみる限り、金融の量的緩和は終了した。日銀のETF保有残高は現在71兆円、年間の税収額と同じに膨れ上がった。これを売り出せば、量的引き締めになるが、そんな気配は全くない。
一方、日銀は16年9月から、国債を月5-10兆円のペースで買い入れている。特に23年は多く、114兆円にのぼった。そして、この国債については今後も月6兆円前後を購入し続けることを決めた。23年の月平均9兆5000億円に比べれば、購入額は減る。しかし国債についてみれば、なお量的緩和が続く。現在の日銀の保有額は600兆円という膨大な金額。それでも買い入れを止めないのは、国債の市場価格が暴落するのを恐れているためだと考えられる。
アメリカの場合は、FRBが量的引き締めを続けているが、まだ資金の吸収量が十分でない。日本の場合は、量的緩和の程度は縮小したが、まだ引き締めには至っていない。だから株式市場の周辺には、多額の投資資金が滞留している。この資金は何か悪材料が出ると一時的に引っ込むが、すぐに戻ってくる。株価が下がらない最大の原因が、ここにある。
≪4日の日経平均 = 上げ +321.29円≫
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日銀は17-20年に、年間4-7兆円のETFを市場から購入した。量的緩和である。しかし株価が回復したため、23年の購入額は2100億円に減っている。そして23年10月4日以降は、株価が大幅に下落してもETFの買い入れを止めている。したがってETFでみる限り、金融の量的緩和は終了した。日銀のETF保有残高は現在71兆円、年間の税収額と同じに膨れ上がった。これを売り出せば、量的引き締めになるが、そんな気配は全くない。
一方、日銀は16年9月から、国債を月5-10兆円のペースで買い入れている。特に23年は多く、114兆円にのぼった。そして、この国債については今後も月6兆円前後を購入し続けることを決めた。23年の月平均9兆5000億円に比べれば、購入額は減る。しかし国債についてみれば、なお量的緩和が続く。現在の日銀の保有額は600兆円という膨大な金額。それでも買い入れを止めないのは、国債の市場価格が暴落するのを恐れているためだと考えられる。
アメリカの場合は、FRBが量的引き締めを続けているが、まだ資金の吸収量が十分でない。日本の場合は、量的緩和の程度は縮小したが、まだ引き締めには至っていない。だから株式市場の周辺には、多額の投資資金が滞留している。この資金は何か悪材料が出ると一時的に引っ込むが、すぐに戻ってくる。株価が下がらない最大の原因が、ここにある。
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◇ 長くなった子どものネット利用時間を黙認? = 高校生はインターネットを利用している時間が1日平均で6時間14分、前年より31分延びた。6-9歳の小学校低学年でも2時間17分、スマホなどを見ている。さらに10歳の65%が、自分のスマホを持っている。こども家庭庁が、こんな23年度の調査結果を発表した。--日経新聞が1日の夕刊で、こう報道した。(不思議なことに、こども家庭庁のホームページをみても、この調査は載っていない)
こんなに長い時間SNSを見ていて、勉強する時間があるのだろうか。目が悪くならないのだろうか。身体も動かさないで、健康によくないのでは。内容的にも問題があるため、各国ではいろいろな対策が講じられている。最も厳しいのは中国だ。21年には18歳未満のゲーム利用を大幅に制限。昨年も1日当たりのネット使用時間を、16-18歳は2時間、8-16歳は1時間、8歳未満は8分間とするよう業者に指令した。
アメリカでは昨年10月、全米42州の司法当局が大手SNS業者のメタを相手取って、一斉に訴訟を起こした。理由は「うつ病や不眠症になる可能性があると知りながら、安全性の高いサービスと偽った」こと。損害賠償を求めている。またことし1月、上院司法委員会がSNS大手5社の最高経営責任者を公聴会に呼び、「安全より利益を優先し、子どもを危険に曝している」とつるし上げた。さらにフロリダ、ユタ、アーカンソー州でも、子どものSNS視聴を制限する法律を制定している。
こども家庭庁は、発足してからちょうど1年たった。その名の通り、なによりも「子どもを大切にすること」を政策目標にしている。そのこども家庭庁が、子どものネット利用時間を調査したのはいい。しかし、それだけで何も行動は起こさないのか。調査だけなら、民間の調査会社と同じ。それを基に、子どもがよくなる施策を考えるのが仕事だろう。それとも子どものネット視聴時間が長くなったことは「問題なし」と判断したのだろうか。
≪5日の日経平均 = 下げ -781.06円≫
【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】
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こんなに長い時間SNSを見ていて、勉強する時間があるのだろうか。目が悪くならないのだろうか。身体も動かさないで、健康によくないのでは。内容的にも問題があるため、各国ではいろいろな対策が講じられている。最も厳しいのは中国だ。21年には18歳未満のゲーム利用を大幅に制限。昨年も1日当たりのネット使用時間を、16-18歳は2時間、8-16歳は1時間、8歳未満は8分間とするよう業者に指令した。
アメリカでは昨年10月、全米42州の司法当局が大手SNS業者のメタを相手取って、一斉に訴訟を起こした。理由は「うつ病や不眠症になる可能性があると知りながら、安全性の高いサービスと偽った」こと。損害賠償を求めている。またことし1月、上院司法委員会がSNS大手5社の最高経営責任者を公聴会に呼び、「安全より利益を優先し、子どもを危険に曝している」とつるし上げた。さらにフロリダ、ユタ、アーカンソー州でも、子どものSNS視聴を制限する法律を制定している。
こども家庭庁は、発足してからちょうど1年たった。その名の通り、なによりも「子どもを大切にすること」を政策目標にしている。そのこども家庭庁が、子どものネット利用時間を調査したのはいい。しかし、それだけで何も行動は起こさないのか。調査だけなら、民間の調査会社と同じ。それを基に、子どもがよくなる施策を考えるのが仕事だろう。それとも子どものネット視聴時間が長くなったことは「問題なし」と判断したのだろうか。
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◇ 「年内の利下げナシ」の発言も飛び出す = ダウ平均は先週903ドルの大幅な値下がり。終り値は3万9000ドルを割り込んだ。景気が堅調なことを示す指標が続出、そこへ原油価格の急騰が加わった。このためインフレ再燃への警戒が強まって、長期金利が上昇。さらにパウエルFRB議長が「利下げを急ぐ必要はない」と発言。ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は「年内は利下げを見送る可能性がある」とまで言及した。株価は上がりようがない。
日経平均も1377円の大幅な値下がり。週間の下げ幅としてはことし最大で、終り値は3万9000円を割り込んだ。ニューヨーク市場の軟調に引きずられたが、国内でも好材料は見当たらない。実質消費は相変わらず前年を下回ったし、日銀や内閣府が発表した景気動向調査も冴えなかった。特に内閣府が景気の基調判断を「下向きの局面変化」へ変更したことは大きい。
アメリカ労働省が週末に発表した3月の雇用統計も、雇用者の増加数が予想を大きく上回った。これで「6月の利下げ可能性」は大幅に縮小したとみられている。ダウの上値は重い。日経平均も上向いたとしても、反発程度。4月から始まった運輸業などの残業規制で、人手不足はますます深刻になる。その影響が捉え切れないため、市場としても動きにくくなっている。
今週は8日に、2月の毎月勤労統計、3月の景気ウオッチャー調査。9日に、3月の消費動向調査。10日に、3月の企業物価。アメリカでは10日に、3月の消費者物価。11日に、3月の生産者物価。12日に、4月のミシガン大学・消費者信頼感指数。また中国が11日に3月の消費者物価と生産者物価。12日に3月の貿易統計を発表する。
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日経平均も1377円の大幅な値下がり。週間の下げ幅としてはことし最大で、終り値は3万9000円を割り込んだ。ニューヨーク市場の軟調に引きずられたが、国内でも好材料は見当たらない。実質消費は相変わらず前年を下回ったし、日銀や内閣府が発表した景気動向調査も冴えなかった。特に内閣府が景気の基調判断を「下向きの局面変化」へ変更したことは大きい。
アメリカ労働省が週末に発表した3月の雇用統計も、雇用者の増加数が予想を大きく上回った。これで「6月の利下げ可能性」は大幅に縮小したとみられている。ダウの上値は重い。日経平均も上向いたとしても、反発程度。4月から始まった運輸業などの残業規制で、人手不足はますます深刻になる。その影響が捉え切れないため、市場としても動きにくくなっている。
今週は8日に、2月の毎月勤労統計、3月の景気ウオッチャー調査。9日に、3月の消費動向調査。10日に、3月の企業物価。アメリカでは10日に、3月の消費者物価。11日に、3月の生産者物価。12日に、4月のミシガン大学・消費者信頼感指数。また中国が11日に3月の消費者物価と生産者物価。12日に3月の貿易統計を発表する。
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◇ 日本への影響も大きい原油価格の上昇 = 原油の国際価格が、また上昇している。ニューヨーク市場のWTI(テキサス産軽質油)先物価格は先週87ドル台に上昇、北海ブレンドも90ドル台に乗せた。上昇のきっかけは、イスラエルがシリア首都ダマスカスのイラン大使館周辺をミサイル攻撃したこと。中東情勢の緊迫感が強まり、原油供給への不安が高まった。この原油価格の上昇で、アメリカではインフレ再燃論が拡大。金利が上昇、株価は急落、ドル高・円安が進行した。
アメリカでは4月に入って、景気の堅調を示す指標が次々と発表されている。ISMの景況判断指数は、製造業と非製造業がともに50を上回り、3月の雇用者増加数も30万3000人と予想を大きく超えた。このためパウエルFRB議長は「利下げは急がない」と再三にわたって発言。ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は「利下げは年内にないかも」とまで言い切った。これでインフレの残り火は意外に強いと再認識したところへ、原油の高騰が文字通り油をかける結果となった。
つい最近まで、ニューヨーク市場では「6月の利下げ」説が大勢を占めていた。ところが原油高で、この説は急速に勢いを失っている。株式市場では買いの大きな根拠がなくなり、為替市場ではドル安・円高の可能性が薄まった。日本にとっても、その影響はきわめて大きい。原油の国際価格が上昇したところへ円安が重なる。輸入物価の高騰は避けられない。
政府は電気・ガス料金に対する補助金を、5月分で終了する方針を固めている。だが折悪しく、原油価格が上昇し始めた。補助金をまた延長するのだろうか。財源はどうするのだろう。仮に延長しなければ、物価の上昇が続く。すると大幅な賃上げが実現したとしても、物価の上昇率がそれ以上になる可能性が大きい。経済の好循環は望めなくなる。
≪9日の日経平均 = 上げ +426.09円≫
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アメリカでは4月に入って、景気の堅調を示す指標が次々と発表されている。ISMの景況判断指数は、製造業と非製造業がともに50を上回り、3月の雇用者増加数も30万3000人と予想を大きく超えた。このためパウエルFRB議長は「利下げは急がない」と再三にわたって発言。ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は「利下げは年内にないかも」とまで言い切った。これでインフレの残り火は意外に強いと再認識したところへ、原油の高騰が文字通り油をかける結果となった。
つい最近まで、ニューヨーク市場では「6月の利下げ」説が大勢を占めていた。ところが原油高で、この説は急速に勢いを失っている。株式市場では買いの大きな根拠がなくなり、為替市場ではドル安・円高の可能性が薄まった。日本にとっても、その影響はきわめて大きい。原油の国際価格が上昇したところへ円安が重なる。輸入物価の高騰は避けられない。
政府は電気・ガス料金に対する補助金を、5月分で終了する方針を固めている。だが折悪しく、原油価格が上昇し始めた。補助金をまた延長するのだろうか。財源はどうするのだろう。仮に延長しなければ、物価の上昇が続く。すると大幅な賃上げが実現したとしても、物価の上昇率がそれ以上になる可能性が大きい。経済の好循環は望めなくなる。
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◇ 政治・経済の複合要因で最高値を更新中 = 金(きん)の価格が高騰している。ニューヨーク商品取引所の先物価格は9日、1トロイオンス=2384.5ドルに上昇。8日間連続で、史上最高値を更新した。ことしに入ってからの上げ幅は約15%に達している。ロンドン市場の現物取り引きでも最高値を更新。東京の小売り価格も、1グラム=1万2622円の最高値を記録した。
当面の価格上昇について、市場では「FRBが利下げすれば、利子を産まない金の価値が相対的に上がる」と説明している。だが、これは現在の市況を説明するための、きわめて表面的な原因。本当はもっと重要で巨大な政治的、経済的な要因が、金の価格を押し上げている。このうち、まずは政治的な要因についてみてみよう。
最大の要因は、なんと言ってもウクライナとガザで展開されている2つの戦争。将来を見通せない不安感が、金に対する需要を増大させている。特に直近ではイスラエルのイラク領内にあるイラン大使館攻撃が、不安をかき立てた。またアメリカやEUなどとロシア・中国などとの国際緊張も、新興国や個人の金購入を助長している。
これまでアメリカ人は、金の保有にはあまり興味を示してこなかった。それが最近は、個人による金の購入が目立つという。その理由の一つに挙げられているのが、いわゆる‟もしトラ”だ。11月の大統領選挙でもしトランプ前大統領が勝ったら、国際緊張はさらに増幅される。個人がこう考えて、金を買い始めたのだという。このような政治的原因に加えて、経済的な要因も金の価格を高騰させている。
(続きは明日)
≪10日の日経平均 = 下げ -191.32円≫
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当面の価格上昇について、市場では「FRBが利下げすれば、利子を産まない金の価値が相対的に上がる」と説明している。だが、これは現在の市況を説明するための、きわめて表面的な原因。本当はもっと重要で巨大な政治的、経済的な要因が、金の価格を押し上げている。このうち、まずは政治的な要因についてみてみよう。
最大の要因は、なんと言ってもウクライナとガザで展開されている2つの戦争。将来を見通せない不安感が、金に対する需要を増大させている。特に直近ではイスラエルのイラク領内にあるイラン大使館攻撃が、不安をかき立てた。またアメリカやEUなどとロシア・中国などとの国際緊張も、新興国や個人の金購入を助長している。
これまでアメリカ人は、金の保有にはあまり興味を示してこなかった。それが最近は、個人による金の購入が目立つという。その理由の一つに挙げられているのが、いわゆる‟もしトラ”だ。11月の大統領選挙でもしトランプ前大統領が勝ったら、国際緊張はさらに増幅される。個人がこう考えて、金を買い始めたのだという。このような政治的原因に加えて、経済的な要因も金の価格を高騰させている。
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◇ 日本は円安で値上がりがさらに増幅 = 金価格を押し上げる経済的な要因は数多いが、最も大きいのはインフレだろう。物価が上がれば、通貨の価値は下がる。その損失を避けるために、インフレで価値が上がる金を買う。歴史的にみても、インフレ時には金が買われた。また株価が下がると、金が上がることも多い。投資資金を一時的に安全資産に移すためである。さらに財政状態の悪化でも、金が買われる。国債価格の下落による損失を回避するためである。
もちろん、政治的要因と経済的要因が重なり合っていることも少なくない。たとえば中国がその好例。国際緊張が高まるにつれて、中国政府は米ドルやアメリカ国債の保有を減らし、代わりに金を購入している。人民銀行の発表によると、4月7日時点の金保有高は2262トン、17か月連続で増大しており、この間の増加率は16%だったという。一方、中国の個人は不動産や株式の値下がりに直面して、資金を金に回した。
東京の金市場は、世界のなかでも比較的小さい。このため価格は、ほぼニューヨーク市場の引き写し。ただし売買の単位はグラムになる。ニューヨークの価格を円に換算するから、円の対ドル相場が大きく影響する。したがって現在の価格は、国際的な金の値上がりと異常な円相場の低落によって高騰しているわけだ。
金価格の高騰は、一般に華やかな現象として受け取られているようだ。しかし実際は、その背後の戦争やインフレなど、あまり好ましいとは言えない現実を映し出している。金の輝きそのものは、権力と富の象徴なのだろう。しかし金価格の高騰という現象は、必ずしも喜ぶべきことではない。欧米のことわざに「金は嵐の夜に輝きを増す」というのがあるそうだ。
≪11日の日経平均 = 下げ -139.18円≫
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もちろん、政治的要因と経済的要因が重なり合っていることも少なくない。たとえば中国がその好例。国際緊張が高まるにつれて、中国政府は米ドルやアメリカ国債の保有を減らし、代わりに金を購入している。人民銀行の発表によると、4月7日時点の金保有高は2262トン、17か月連続で増大しており、この間の増加率は16%だったという。一方、中国の個人は不動産や株式の値下がりに直面して、資金を金に回した。
東京の金市場は、世界のなかでも比較的小さい。このため価格は、ほぼニューヨーク市場の引き写し。ただし売買の単位はグラムになる。ニューヨークの価格を円に換算するから、円の対ドル相場が大きく影響する。したがって現在の価格は、国際的な金の値上がりと異常な円相場の低落によって高騰しているわけだ。
金価格の高騰は、一般に華やかな現象として受け取られているようだ。しかし実際は、その背後の戦争やインフレなど、あまり好ましいとは言えない現実を映し出している。金の輝きそのものは、権力と富の象徴なのだろう。しかし金価格の高騰という現象は、必ずしも喜ぶべきことではない。欧米のことわざに「金は嵐の夜に輝きを増す」というのがあるそうだ。
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◇ とても単純な誤りとは思えない = 3月29日。こども家庭庁が少子化対策の財源にする支援金について、1人当たりの負担額を試算し公表した。それによると、大企業の社員は月額500円、中小企業の社員は月額450円、公務員は600円。また自営業者は400円、後期高齢者は350円、低所得者は50円となっている。国民1人当たりの負担額は月450円。さらに賃上げが進めば「国民の負担は実質的にゼロになる」と、岸田首相が得々として解説した。
4月9日。こども家庭庁が、こんどは支援金に関する所得階層別の負担額を発表した。それによると28年度の負担額は、たとえば年収200万円の人だと月額350円、600万円だと1000円、1000万円だと1650円になるという。なぜか、この時点では後期高齢者や低所得者についての試算はない。また「負担は実質ゼロ」についての言及も消えてしまった。
日本の将来にとって、少子化の進行を出来るだけ食い止めることは非常に重要だ。だから多くの国民は3月9日の発表を知ったとき、「ワン・コインの負担で協力できるなら」と考えたに違いない。ところが、そのわずか10日後に発表された資産の内容は全く変わったものとなっている。たとえば夫婦共稼ぎでそれぞれの年収が1000万円あるとすると、負担額は年3万9600円にものぼる。500円玉の感触は、全く吹き飛んでしまうに違いない。
また自営業者や後期高齢者については、所得階層別にしないのか。地方税さえも払っていない低所得者に、月50円を負担させるのか。岸田首相は「実質ゼロ」発言を撤回しないのか。疑問は多すぎる。とても単純ミスとは考えられない。国民の負担を軽く見せようと画策した挙句の失敗だとしたら罪は重い。これでは内閣支持率も上がらない。
≪12日の日経平均 = 上げ +80.92円≫
【今週の日経平均予想 = 5勝0敗】
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4月9日。こども家庭庁が、こんどは支援金に関する所得階層別の負担額を発表した。それによると28年度の負担額は、たとえば年収200万円の人だと月額350円、600万円だと1000円、1000万円だと1650円になるという。なぜか、この時点では後期高齢者や低所得者についての試算はない。また「負担は実質ゼロ」についての言及も消えてしまった。
日本の将来にとって、少子化の進行を出来るだけ食い止めることは非常に重要だ。だから多くの国民は3月9日の発表を知ったとき、「ワン・コインの負担で協力できるなら」と考えたに違いない。ところが、そのわずか10日後に発表された資産の内容は全く変わったものとなっている。たとえば夫婦共稼ぎでそれぞれの年収が1000万円あるとすると、負担額は年3万9600円にものぼる。500円玉の感触は、全く吹き飛んでしまうに違いない。
また自営業者や後期高齢者については、所得階層別にしないのか。地方税さえも払っていない低所得者に、月50円を負担させるのか。岸田首相は「実質ゼロ」発言を撤回しないのか。疑問は多すぎる。とても単純ミスとは考えられない。国民の負担を軽く見せようと画策した挙句の失敗だとしたら罪は重い。これでは内閣支持率も上がらない。
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◇ アメリカのインフレが再燃? = ダウ平均は先週921ドルの大幅な値下がり。5日間の続落で、終り値は3万8000ドルを割り込んだ。3万7000ドル台は1月24日以来のこと。原因は3月の物価が反転上昇したことにある。消費者物価は前年比3.5%の上昇で2月の3.2%を上回り、生産者物価も2.1%の上昇で2月の1.6%を上回った。これでFRBによる利下げは遠のいたという観測が強まり、金利が上昇、株価は下落した。中東情勢の悪化も、株価を下げる原因となっている。
日経平均は先週531円の値上がり。ニューヨークが軟調だったにもかかわらず上げたのは、まず先々週の大幅安に対する反動。特に半導体関連銘柄が反発した。さらに円相場が153円前後にまで下落したため、輸出関連銘柄にも物色買いが入っている。外国為替市場では政府・日銀による介入も心配されたが、株式市場では「岸田首相の訪米中にはない」という見方が強かったようだ。
アメリカでは「インフレが再燃したのかどうか」が、大きな問題となっている。イエスかノーか見方はまだばらついているが、仮に4月も物価上昇が加速するようなら、再燃とみなされるだろう。大統領選挙を控えて、バイデン大統領にとっては不利になるかもしれない。原油価格がじりじりと上昇しているときに、これ以上の円安になれば、日本もまた物価高の波に見舞われる可能性が大きい。日経平均の高値追いも、限界に近付いたようだ。
今週は15日に、2月の機械受注。17日に、3月の貿易統計、訪日外国人客数。18日に、2月の第3次産業活動指数。19日に、3月の消費者物価。アメリカでは15日に、3月の小売り売上高、4月のNAHB住宅市場指数。16日に、3月の工業生産、住宅着工戸数。18日に、3月の中古住宅販売。また中国が16日に、1-3月期のGDP速報、鉱工業生産、小売り売上高、固定資産投資額を発表する。
≪15日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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日経平均は先週531円の値上がり。ニューヨークが軟調だったにもかかわらず上げたのは、まず先々週の大幅安に対する反動。特に半導体関連銘柄が反発した。さらに円相場が153円前後にまで下落したため、輸出関連銘柄にも物色買いが入っている。外国為替市場では政府・日銀による介入も心配されたが、株式市場では「岸田首相の訪米中にはない」という見方が強かったようだ。
アメリカでは「インフレが再燃したのかどうか」が、大きな問題となっている。イエスかノーか見方はまだばらついているが、仮に4月も物価上昇が加速するようなら、再燃とみなされるだろう。大統領選挙を控えて、バイデン大統領にとっては不利になるかもしれない。原油価格がじりじりと上昇しているときに、これ以上の円安になれば、日本もまた物価高の波に見舞われる可能性が大きい。日経平均の高値追いも、限界に近付いたようだ。
今週は15日に、2月の機械受注。17日に、3月の貿易統計、訪日外国人客数。18日に、2月の第3次産業活動指数。19日に、3月の消費者物価。アメリカでは15日に、3月の小売り売上高、4月のNAHB住宅市場指数。16日に、3月の工業生産、住宅着工戸数。18日に、3月の中古住宅販売。また中国が16日に、1-3月期のGDP速報、鉱工業生産、小売り売上高、固定資産投資額を発表する。
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◇ ドル高はG20会議でも主要な議題に = 円の対ドル相場は154円台にまで下落した。アメリカで3月の物価上昇率が拡大、FRBによる利下げが遠のいたという観測が強まって金利水準が上昇。日米間の金利差が拡大したためである。だが実に34年ぶりの安さになったのに、政府・日銀は介入しなかった。なぜ介入しなかったのか。相場がどこまで下落したら介入するのか。市場では疑問と思惑が渦巻いている。
先週は日米首脳会談のため、岸田首相が訪米していた。そんなときに介入すれば、カドが立つ。それで介入できなかったという見方がある。だが今週は18日からワシントンで、G20財務相・中央銀行総裁会議が開かれる。そこでは米ドルの独歩高に関しても、議論される見込み。すると、その前後に介入するのは節操がないとみられ、やはり難しい。
いま米ドルは、各国通貨に対して高くなっている。たとえば年初来ドルに対して、トルコ・リラは9%、日本円は8%。韓国ホアンは6%安い。すでにブラジルとインドネシアは介入、トルコは政策金利を50%に引き上げた。ユーロも対ドル相場が5か月ぶりの低さに落ち込んでいる。このような状況にどう対処するか、G20で議論される見込みだ。
アメリカの立場は微妙だ。ドル安は物価高の要因になるので、基本的には排除したい。だが新興国の経済が破たんしたり、借金の返済が滞るのも困る。日本は単独介入だと効果が薄いから、ニューヨーク市場でもドル売り介入をしたい。だがアメリカは、とても受け入れそうにない。それより「日銀が利上げしたら」と、言い返されるのは困る。だから急激な円安にでもならない限り、介入はなかなか決断できない。
≪16日の日経平均 = 下げ -761.60円≫
≪17日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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先週は日米首脳会談のため、岸田首相が訪米していた。そんなときに介入すれば、カドが立つ。それで介入できなかったという見方がある。だが今週は18日からワシントンで、G20財務相・中央銀行総裁会議が開かれる。そこでは米ドルの独歩高に関しても、議論される見込み。すると、その前後に介入するのは節操がないとみられ、やはり難しい。
いま米ドルは、各国通貨に対して高くなっている。たとえば年初来ドルに対して、トルコ・リラは9%、日本円は8%。韓国ホアンは6%安い。すでにブラジルとインドネシアは介入、トルコは政策金利を50%に引き上げた。ユーロも対ドル相場が5か月ぶりの低さに落ち込んでいる。このような状況にどう対処するか、G20で議論される見込みだ。
アメリカの立場は微妙だ。ドル安は物価高の要因になるので、基本的には排除したい。だが新興国の経済が破たんしたり、借金の返済が滞るのも困る。日本は単独介入だと効果が薄いから、ニューヨーク市場でもドル売り介入をしたい。だがアメリカは、とても受け入れそうにない。それより「日銀が利上げしたら」と、言い返されるのは困る。だから急激な円安にでもならない限り、介入はなかなか決断できない。
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◇ 15年間で静岡県に匹敵する人口が消えた = 総務省は先週12日、23年10月1日時点の人口推計を発表した。それによると、総人口は1億2435万2000人で前年より59万5000人減少した。減少は13年連続。このうち日本人だけをみると、総人口は1億2119万3000人で前年比83万7000人の減少。外国人は315万9000人で24万3000人の増加だった。総人口のピークは08年の1億2808万人だったから、それから15年間で373万人も減ったことになる。
都道府県別にみると、人口が増えたのは東京都だけ。あとはすべて減少している。その東京都も死亡者数が出生者数を上回ったが、他地域からの転入が大きく、総計ではプラスになった。人口の減少率が大きかったのは、秋田・青森・岩手の東北3県。総人口はこの1年で約60万人減ったが、これは鳥取県の人口を上回る。また15年間では約370万人減ったが、これは静岡県の人口よりも大きい。
少子高齢化は、やはり進行した。65歳以上の高齢者は3622万7000人で、総人口に占める割合は29.1%と過去最大を更新した。一方、15歳未満は1417万3000人で全体の11.4%だった。この両者の間に位置するのが、生産年齢人口と呼ばれる15-64歳の年齢層。主として経済活動はこの年齢層が受け持つし、消費行動の中核ともなっている。
その生産年齢人口は7395万2000人。前年より25万9000人も減少した。この4月から運輸業・建設業・医師などに対する残業規制が実施され、多くの分野で人手不足が問題になっている。その根本的な原因が、この生産年齢人口の減少だ。最大の対応策は、外国人労働力の誘致。しか昨年10月の統計でみる限り、外国人の増加数は24万人。日本人の減少数84万人の3分の1にも達していない。
(続きは明日)
≪17日の日経平均 = 下げ -509.40円≫
≪18日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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都道府県別にみると、人口が増えたのは東京都だけ。あとはすべて減少している。その東京都も死亡者数が出生者数を上回ったが、他地域からの転入が大きく、総計ではプラスになった。人口の減少率が大きかったのは、秋田・青森・岩手の東北3県。総人口はこの1年で約60万人減ったが、これは鳥取県の人口を上回る。また15年間では約370万人減ったが、これは静岡県の人口よりも大きい。
少子高齢化は、やはり進行した。65歳以上の高齢者は3622万7000人で、総人口に占める割合は29.1%と過去最大を更新した。一方、15歳未満は1417万3000人で全体の11.4%だった。この両者の間に位置するのが、生産年齢人口と呼ばれる15-64歳の年齢層。主として経済活動はこの年齢層が受け持つし、消費行動の中核ともなっている。
その生産年齢人口は7395万2000人。前年より25万9000人も減少した。この4月から運輸業・建設業・医師などに対する残業規制が実施され、多くの分野で人手不足が問題になっている。その根本的な原因が、この生産年齢人口の減少だ。最大の対応策は、外国人労働力の誘致。しか昨年10月の統計でみる限り、外国人の増加数は24万人。日本人の減少数84万人の3分の1にも達していない。
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◇ 人手不足はずうーっと続く = 生産年齢人口(15-64歳)は7395万2000人で、前年より25万6000人減った。ピークだった1995年に比べると15%も減少している。当然、人手は不足する。この人手不足を補う方策は大別すると4つ。①女性や高齢者を労働市場に引き出す②雇用の流動性を高める③外国人に来てもらう④機械化・ロボット化・AI化を進めて生産性を上げる--これらが効果を十分に上げなければ、人手不足は解消しないだろう。
女性や高齢者は、この20年間で300万人近くが新たに就職した。厚労省の調査によると、「15歳以上で職に就かず仕事を探していないが、働く気はある人」は233万人。この20年間で297万人減少した。このため、すでに限界に近いという見方が強い。また雇用の流動性を高めて‟適材適所”の働き方が増えれば労働効率も高まるが、実際にはなかなか難しい。
いちばん手取り早いのは、外国人労働者の誘致だろう。厚労省によると、昨年10月時点で働いていた外国人は204万9000人。前年より12.4%の増加、この10年間では2.9倍に増えた。ベトナム人と中国人が多く、建設や医療分野での就労が目立つ。しかし昨年10月までの1年間でみると、日本人労働者の減少分を3分の1も埋めていない。今後を展望すると、賃金水準の低さが最大のネックになりそうだ。
たとえばOECD(経済協力開発機構)の調査によると、独仏英の最低賃金は1時間1500円程度なのに対して、日本は1000円強。台湾や韓国よりも低い。しかも円安。これでは東南アジアの若者にとって、魅力ある働き場とは言えない。ロボット化やデジタル化も進むだろうが、全部をひっくるめても年間25万人の労働力不足は埋め切れない。人手不足は今後も長く続くと覚悟した方がいい。大不況に陥れば、話は別だが・・・。
≪18日の日経平均 = 上げ +117.90円≫
≪19日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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女性や高齢者は、この20年間で300万人近くが新たに就職した。厚労省の調査によると、「15歳以上で職に就かず仕事を探していないが、働く気はある人」は233万人。この20年間で297万人減少した。このため、すでに限界に近いという見方が強い。また雇用の流動性を高めて‟適材適所”の働き方が増えれば労働効率も高まるが、実際にはなかなか難しい。
いちばん手取り早いのは、外国人労働者の誘致だろう。厚労省によると、昨年10月時点で働いていた外国人は204万9000人。前年より12.4%の増加、この10年間では2.9倍に増えた。ベトナム人と中国人が多く、建設や医療分野での就労が目立つ。しかし昨年10月までの1年間でみると、日本人労働者の減少分を3分の1も埋めていない。今後を展望すると、賃金水準の低さが最大のネックになりそうだ。
たとえばOECD(経済協力開発機構)の調査によると、独仏英の最低賃金は1時間1500円程度なのに対して、日本は1000円強。台湾や韓国よりも低い。しかも円安。これでは東南アジアの若者にとって、魅力ある働き場とは言えない。ロボット化やデジタル化も進むだろうが、全部をひっくるめても年間25万人の労働力不足は埋め切れない。人手不足は今後も長く続くと覚悟した方がいい。大不況に陥れば、話は別だが・・・。
≪18日の日経平均 = 上げ +117.90円≫
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◇ 日本メーカーに再浮上のチャンス = EV戦線のトップを走っていたアメリカのテスラが不調に陥った。業績の不振から、世界で従業員の10%以上を削減する方針を発表、大きな反響を呼んでいる。1-3月期の世界販売台数は38万6810台、前年より9%減少した。お膝元のアメリカでは充電網の整備が遅れているところへ、金利が上昇して需要が減退。中国ではBYD(比亜迪)などの値下げ戦略に対抗できなかった。
BYDは中国のEVトップ・メーカー。1-3月期の販売台数は、輸出も含めて30万0114台。前年比は13%の増加だった。まだ販売台数でテスラに及ばないが、少なくとも中国市場では優位に立った。しかし、そのBYDも昨年1-3月には販売を84.8%も増やしており、ことしは勢いが弱まっている。これは世界的に金利が上昇、さらにアメリカやEUで補助金が打ち切られたことによると考えられている。
代わりに勢いを強めているのが、ガソリンと電気を併用するHV(ハイブリッド車)だ。調査会社マークラインズによると、23年の中国・アメリカ・ドイツ・フランス・イタリア・イギリス・日本のEV総販売台数は776万台。前年より22%増加した。一方、HVは合計954万台で前年比36%も伸びている。燃料の補給に心配がなく、価格も比較的安いことから、人気が再燃したようだ。
HVの製造技術は、日本メーカーが完成した。このためトヨタをはじめとする日本メーカーはHVに焦点を合わせ、EVの開発を疎かにした時期があった。結果的にEV戦争では周回遅れになったと言える。それがいま突如として、HVに日が当たってきた。日本はこのチャンスを活かすと同時に、EVが復権するときに備えて車載用電池の開発に全力を挙げることが賢明だと思う。
≪19日の日経平均 = 下げ -1011.35円≫
【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】
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BYDは中国のEVトップ・メーカー。1-3月期の販売台数は、輸出も含めて30万0114台。前年比は13%の増加だった。まだ販売台数でテスラに及ばないが、少なくとも中国市場では優位に立った。しかし、そのBYDも昨年1-3月には販売を84.8%も増やしており、ことしは勢いが弱まっている。これは世界的に金利が上昇、さらにアメリカやEUで補助金が打ち切られたことによると考えられている。
代わりに勢いを強めているのが、ガソリンと電気を併用するHV(ハイブリッド車)だ。調査会社マークラインズによると、23年の中国・アメリカ・ドイツ・フランス・イタリア・イギリス・日本のEV総販売台数は776万台。前年より22%増加した。一方、HVは合計954万台で前年比36%も伸びている。燃料の補給に心配がなく、価格も比較的安いことから、人気が再燃したようだ。
HVの製造技術は、日本メーカーが完成した。このためトヨタをはじめとする日本メーカーはHVに焦点を合わせ、EVの開発を疎かにした時期があった。結果的にEV戦争では周回遅れになったと言える。それがいま突如として、HVに日が当たってきた。日本はこのチャンスを活かすと同時に、EVが復権するときに備えて車載用電池の開発に全力を挙げることが賢明だと思う。
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◇ 下降局面に入った? 株価 = ダウ平均は先週わずか3ドルの値上がり。終り値は3万8000ドルに乗らなかった。前週も前々週も900ドル台の下落だったのに、反発は微々たるものに終わっている。3月の小売り売上高が予想を上回り、FRBによる利下げが遠のいた。年内3回の見通しが1回に縮小。このため買われ過ぎていた半導体を筆頭に、輸出関連、内需関連の銘柄が売られている。そこへ中東情勢の悪化が加わった。
日経平均は先週2455円の大幅な値下がり。終り値は3万7000円台を、かろうじて維持した。下げ幅は21年2月以来3年2か月ぶりの大きさ。こちらも半導体、輸出関連、それに内需関連銘柄も売られている。特に金曜日にはイランで爆発音が聞こえたといニュースが飛び込み、一時は1300円を超す下落となった。内需関連株は「中東の緊迫→原油の高騰→物価高→消費の縮小」という発想から売られている。
ニューヨーク市場では「株価は天井を過ぎ、下げ局面に入ったのではないか」という声が聞こえ始めた。東京市場では聞かれないが、数字的にはそう考えてもよさそうだ。最高値を記録した3月27日から、3週間で3700円も下落している。ただカネ余りが続いているから、日米ともに株価がさらに大きく急落する可能性は小さいだろう。それにしても、こうした局面で日銀が‟冬眠”していることは、理解に苦しむ。
今週は24日に、3月の企業向けサービス価格。26日に、4月の東京都区部・消費者物価。アメリカでは23日に、3月の新築住宅販売。25日に、1-3月期のGDP速報、3月の中古住宅販売が発表される。なお26日には、植田日銀総裁の記者会見。
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日経平均は先週2455円の大幅な値下がり。終り値は3万7000円台を、かろうじて維持した。下げ幅は21年2月以来3年2か月ぶりの大きさ。こちらも半導体、輸出関連、それに内需関連銘柄も売られている。特に金曜日にはイランで爆発音が聞こえたといニュースが飛び込み、一時は1300円を超す下落となった。内需関連株は「中東の緊迫→原油の高騰→物価高→消費の縮小」という発想から売られている。
ニューヨーク市場では「株価は天井を過ぎ、下げ局面に入ったのではないか」という声が聞こえ始めた。東京市場では聞かれないが、数字的にはそう考えてもよさそうだ。最高値を記録した3月27日から、3週間で3700円も下落している。ただカネ余りが続いているから、日米ともに株価がさらに大きく急落する可能性は小さいだろう。それにしても、こうした局面で日銀が‟冬眠”していることは、理解に苦しむ。
今週は24日に、3月の企業向けサービス価格。26日に、4月の東京都区部・消費者物価。アメリカでは23日に、3月の新築住宅販売。25日に、1-3月期のGDP速報、3月の中古住宅販売が発表される。なお26日には、植田日銀総裁の記者会見。
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◇ ひと声吠えれば物価が下がる = 日経平均は先週2455円の大幅安を演じた。半導体や輸出関連、内需株も売られている。特に注目されたのは、円安が進んだのに輸出関連銘柄が売られたこと。円相場が154円台にまで下落し、輸入原材料やエネルギーの高騰が企業収益を圧迫するという心配が強まったためである。また同じ理由から物価が上昇、消費が抑制されるという懸念から内需株も売られた。
円安が進んだため、政府・日銀による為替介入が取り沙汰された。しかし単独介入では効果が薄い。アメリカとの協調介入が望まれたが、インフレに悩むアメリカはドル安を受け入れがたい。岸田首相の訪米やG20財務相・中央銀行総裁会議もあってチャンスを逸し、円相場は155円近くの異常な低水準で推移したままだ。そして、その悪影響はどんどん大きくなってきている。
円が下落した最大の原因は、言うまでもなく日米間の金利差が拡大したためだ。アメリカは物価高が鎮静せず、FRBは利下げが出来ない。一方、日銀はマイナス金利を解除したものの、いぜんとしてゼロ金利に固執している。だから日米間の金利差は、ちっとも縮まらない。なぜ日銀は金利を上げて、円相場を上昇させないのか。実際に利上げしなくても、日銀が「利上げを考える」と一言いえば、円相場はすぐに5円ほど上昇するに違いない。
もちろん、金利を上げれば副作用も生じる。だが現状は数多くの個人や企業が、物価高で苦しんでいる。株価も円安で下がるようになってしまった。現在の異常な円安は、デメリットがメリットを大きく上回るようになっている。しかし植田総裁は「物価が上がるようなら、政策の変更も考える」などと、のんきなことを言っている。少なくとも日銀は「なぜゼロ金利政策を続ける必要があるのか」を明確に説明すべきだろう。
≪23日の日経平均 = 上げ +113.55円≫
≪24日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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円安が進んだため、政府・日銀による為替介入が取り沙汰された。しかし単独介入では効果が薄い。アメリカとの協調介入が望まれたが、インフレに悩むアメリカはドル安を受け入れがたい。岸田首相の訪米やG20財務相・中央銀行総裁会議もあってチャンスを逸し、円相場は155円近くの異常な低水準で推移したままだ。そして、その悪影響はどんどん大きくなってきている。
円が下落した最大の原因は、言うまでもなく日米間の金利差が拡大したためだ。アメリカは物価高が鎮静せず、FRBは利下げが出来ない。一方、日銀はマイナス金利を解除したものの、いぜんとしてゼロ金利に固執している。だから日米間の金利差は、ちっとも縮まらない。なぜ日銀は金利を上げて、円相場を上昇させないのか。実際に利上げしなくても、日銀が「利上げを考える」と一言いえば、円相場はすぐに5円ほど上昇するに違いない。
もちろん、金利を上げれば副作用も生じる。だが現状は数多くの個人や企業が、物価高で苦しんでいる。株価も円安で下がるようになってしまった。現在の異常な円安は、デメリットがメリットを大きく上回るようになっている。しかし植田総裁は「物価が上がるようなら、政策の変更も考える」などと、のんきなことを言っている。少なくとも日銀は「なぜゼロ金利政策を続ける必要があるのか」を明確に説明すべきだろう。
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◇ 昨年は過去最多65社が消えた = 東芝、大正製薬、ベネッセ--だれでも、これらの社名は知っている。だが「この3社の共通点は何?」と聞かれて答えられるのは、株式投資家だけかもしれない。正解は「いずれも昨年、上場を止めた会社」である。調査会社レコフデータによると、上場廃止を目的としたTOB(株式公開買い付け)を実施した企業は、昨年65社にのぼった。買い付け金額は5兆3600億円で、前年の3.8倍に達している。せっかく上場したのに、なぜ止めるのだろうか。
特に経営者が自ら参加する、MBOと呼ばれる買収が多い。たとえば、ある企業の経営者が事業を改革する必要があると判断する。しかし多くの株主に説明して理解してもらうのには、大変なエネルギーと時間を要する。それならば上場を取り止め、自分たちだけで決断を下す方がずっと効率的だ。こう考えた経営者が、MBOを支援するファンドから資金を借りて踏み切る場合が多い。ただ実態は個々のケースによって、さまざまだ。
東芝のケース。23年11月22日の臨時株主総会で決定。12月20日付けで上場を廃止した。公開買い付け金額は1株当たり4620円。当時の取引価格より20円ほど高い。買い付け金額は2兆円に達した。廃止の理由は「中長期で一貫した事業戦略を実行して変革を成功させるには、安定した経営基盤の構築が必要」と説明している。
大正製薬のケ-ス。24年1月15日までTOBを実施。1月19日付けで、創業者一族の上原茂副社長が代表を務める大手門株式会社の子会社とし、上場を廃止した。買い付け総額は7100億円。廃止の理油は「中長期的な成長のために事業構造の転換と先行投資が必要。それらの政策を株式市場からの評価にとらわれず、迅速に行うため」と説明した。巨額のカネを使っても、一般株主を遠避けたいという気持ちが丸見えだ。
(続きは明日)
≪24日の日経平均 = 上げ +907.92円≫
≪25日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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特に経営者が自ら参加する、MBOと呼ばれる買収が多い。たとえば、ある企業の経営者が事業を改革する必要があると判断する。しかし多くの株主に説明して理解してもらうのには、大変なエネルギーと時間を要する。それならば上場を取り止め、自分たちだけで決断を下す方がずっと効率的だ。こう考えた経営者が、MBOを支援するファンドから資金を借りて踏み切る場合が多い。ただ実態は個々のケースによって、さまざまだ。
東芝のケース。23年11月22日の臨時株主総会で決定。12月20日付けで上場を廃止した。公開買い付け金額は1株当たり4620円。当時の取引価格より20円ほど高い。買い付け金額は2兆円に達した。廃止の理由は「中長期で一貫した事業戦略を実行して変革を成功させるには、安定した経営基盤の構築が必要」と説明している。
大正製薬のケ-ス。24年1月15日までTOBを実施。1月19日付けで、創業者一族の上原茂副社長が代表を務める大手門株式会社の子会社とし、上場を廃止した。買い付け総額は7100億円。廃止の理油は「中長期的な成長のために事業構造の転換と先行投資が必要。それらの政策を株式市場からの評価にとらわれず、迅速に行うため」と説明した。巨額のカネを使っても、一般株主を遠避けたいという気持ちが丸見えだ。
(続きは明日)
≪24日の日経平均 = 上げ +907.92円≫
≪25日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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◇ ‟上場”の意味を考え直すチャンスかも = 上場廃止は、いまに始まった現象ではない。たとえばリーマン・ショック後にも増加したが、当時の原因はほとんどが経営不振。倒産したり、上場基準を維持できずに市場から撤退した。これに対して昨今の離脱は、経営者が意図して決定する、一種の”積極的な戦略”。ただし一般的に言うと、外部や一般株主による提案や要求から逃れるための‟消極的な目的”による場合が少なくない。
たとえば東証は昨年春、上場企業に対して「PBR(株価純資産倍率)を1以上に引き上げる」よう強く要請した。この結果、多くの企業が努力し、株価の上昇にもつながった。しかし企業のなかには、重い負担と感じたところも。また最近はアクティビストと呼ばれる‟もの言う株主”の活動も、目に見えて活発になった。アクティビストの発言はさまざまで企業の経営に役立つものも多いが、なかには企業の存続を否定するような提案も少なくない。
具体的には「一部の事業を売却せよ」とか「ある事業にもっと投資せよ」など。さらには「配当を増やせ」から「社長や役員の再任を拒否する」まで。特に四半期だけの業績をみて、経営者の責任を追及する株主も多い。これらの株主を説得し和解するためには、大変なエネルギーと時間を必要とする。それなら上場を止めてしまう方がいい、と考える経営者も出てくるわけだ。
自分が起業した会社を上場することは、大きな夢に違いない。だが東証に上場する企業は、いま3900社もある。ニューヨーク証券取引所に上場する企業は2900社だ。つまり日本の上場会社は粒が小さすぎる。そこに悪質なアクティビストが暗躍する素地が生まれ、それを取り締まる方法もない。いまや‟上場”の意味が問われているのかもしれない。
≪25日の日経平均 = 下げ -831.60円≫
≪26日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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たとえば東証は昨年春、上場企業に対して「PBR(株価純資産倍率)を1以上に引き上げる」よう強く要請した。この結果、多くの企業が努力し、株価の上昇にもつながった。しかし企業のなかには、重い負担と感じたところも。また最近はアクティビストと呼ばれる‟もの言う株主”の活動も、目に見えて活発になった。アクティビストの発言はさまざまで企業の経営に役立つものも多いが、なかには企業の存続を否定するような提案も少なくない。
具体的には「一部の事業を売却せよ」とか「ある事業にもっと投資せよ」など。さらには「配当を増やせ」から「社長や役員の再任を拒否する」まで。特に四半期だけの業績をみて、経営者の責任を追及する株主も多い。これらの株主を説得し和解するためには、大変なエネルギーと時間を必要とする。それなら上場を止めてしまう方がいい、と考える経営者も出てくるわけだ。
自分が起業した会社を上場することは、大きな夢に違いない。だが東証に上場する企業は、いま3900社もある。ニューヨーク証券取引所に上場する企業は2900社だ。つまり日本の上場会社は粒が小さすぎる。そこに悪質なアクティビストが暗躍する素地が生まれ、それを取り締まる方法もない。いまや‟上場”の意味が問われているのかもしれない。
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◇ 原因は成長政策の欠如とゼロ金利 = IMF(国際通貨基金)は「インドのGDPが25年中に日本を上回る」という推計を発表した。かつて日本はアメリカに次ぐ世界第2位の経済大国だったが、中国とドイツに抜かれて、現在は第4位。インドに抜かれれば、第5位に転落する。人口がバカ多い新興国だから仕方がないと言ってしまえばそれまでだが、世界の多くの人たちに「日本は老衰した昔の経済大国」といったイメージを植え付けたりしてしまう。
発表によると、インドのGDPは25年に4兆3398億ドルに達する。一方、日本のGDPは4兆3103億ドルにとどまる見込み。この両者の逆転は、1年前の予測よりも1年早まったという。その理由は、大きく分けて2つ。まず日本の経済成長が遅すぎることだ。IMFの推計によると、24年の実質成長率はインドが6.8%、アメリカが2.7%なのに対して、日本は0.9%でしかない。巨額の予算を組んでカネをバラ播いても、成長にはあまり寄与していないことになるだろう。
もう1つは、異常な円安。各国のGDPを比べるために、IMFは米ドルに換算している。だから円安だと、ドル建ての数字は低くなる。たとえば22年初の円相場は115円だった。仮に現在も円相場がその水準にあるとすれば、ドルに換算した日本のGDPは確実に5兆ドルを超える。インドとの逆転劇はまだ先になるし、ドイツのGDPも上回って、世界3位の経済大国だと涼しい顔をしていられるだろう。
だから「GDP第5位」の話は計算上の問題だと、笑い飛ばすのも一つの方法だ。しかしIMFが発表すれば、日本のイメージが落ちることは避けられない。東南アジアの若者たちが、日本へ働きに来なくなるといった弊害も生じる。異常な円安は、日銀がゼロ金利に固執しているため。その日銀は週末の会議で、円安を是正するための政策を何もとらなかった。何を怖がっているのだろう。
≪26日の日経平均 = 上げ +306.28円≫
【今週の日経平均予想 = 5勝0敗】
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発表によると、インドのGDPは25年に4兆3398億ドルに達する。一方、日本のGDPは4兆3103億ドルにとどまる見込み。この両者の逆転は、1年前の予測よりも1年早まったという。その理由は、大きく分けて2つ。まず日本の経済成長が遅すぎることだ。IMFの推計によると、24年の実質成長率はインドが6.8%、アメリカが2.7%なのに対して、日本は0.9%でしかない。巨額の予算を組んでカネをバラ播いても、成長にはあまり寄与していないことになるだろう。
もう1つは、異常な円安。各国のGDPを比べるために、IMFは米ドルに換算している。だから円安だと、ドル建ての数字は低くなる。たとえば22年初の円相場は115円だった。仮に現在も円相場がその水準にあるとすれば、ドルに換算した日本のGDPは確実に5兆ドルを超える。インドとの逆転劇はまだ先になるし、ドイツのGDPも上回って、世界3位の経済大国だと涼しい顔をしていられるだろう。
だから「GDP第5位」の話は計算上の問題だと、笑い飛ばすのも一つの方法だ。しかしIMFが発表すれば、日本のイメージが落ちることは避けられない。東南アジアの若者たちが、日本へ働きに来なくなるといった弊害も生じる。異常な円安は、日銀がゼロ金利に固執しているため。その日銀は週末の会議で、円安を是正するための政策を何もとらなかった。何を怖がっているのだろう。
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◇ 市場は円安の悪影響を警戒 = ダウ平均は先週253ドルの値上がり。終り値は3万8000ドル台を回復した。しかし3月下旬に記録した史上最高値を、まだ1500ドル以上も下回っている。1-3月期の実質成長率は1.6%で予想に届かなかったが、景気の基調は強いと判断された。また1-3月期の企業決算が好調だったことも、株価を押し上げる材料となっている。
日経平均は先週866円の値上がり。しかし終り値は3万8000円に届かなかった。3月下旬に付けた最高値からみると、まだ2800円以上も低い。全体としては堅調なニューヨーク市場に引きずられたが、特に半導体関連は大きく上げている。中東情勢の緊張がやや緩和したため、反動的に値上がりした。ただ市場では、行き過ぎた円安が消費に及ぼす悪影響を心配し始めている。
ニューヨーク市場では、FRBによる利下げ期待がさらに遠のいた。年内は1回の利下げにとどまる、という見通しが広まっている。一方、植田日銀総裁は26日の記者会見で、利上げには全く触れなかった。このため日米間の金利差は拡大するという観測が強まり、円の対ドル相場は158円台へ急落した。市場では政府・日銀による市場介入と、異常な円安が消費に与える悪影響に対する警戒感が急速に強まっている。
今週は30日に、3月の労働力調査、鉱工業生産、商業動態統計。1日に、4月の新車販売。2日に、4月の消費動向調査、3月の貿易統計。アメリカでは30日に、2月のFHFA住宅価格指数、4月のカンファレンス・ボード消費者信頼感指数。1日に、ISM製造業景況指数。3日に、4月の雇用統計、ISM非製造業景況指数。また中国が3日に、製造業と非製造業のPMI。EUが3日に、1-3月期のGDP速報を発表する。なお1日には、パウエルFRB議長が記者会見。
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日経平均は先週866円の値上がり。しかし終り値は3万8000円に届かなかった。3月下旬に付けた最高値からみると、まだ2800円以上も低い。全体としては堅調なニューヨーク市場に引きずられたが、特に半導体関連は大きく上げている。中東情勢の緊張がやや緩和したため、反動的に値上がりした。ただ市場では、行き過ぎた円安が消費に及ぼす悪影響を心配し始めている。
ニューヨーク市場では、FRBによる利下げ期待がさらに遠のいた。年内は1回の利下げにとどまる、という見通しが広まっている。一方、植田日銀総裁は26日の記者会見で、利上げには全く触れなかった。このため日米間の金利差は拡大するという観測が強まり、円の対ドル相場は158円台へ急落した。市場では政府・日銀による市場介入と、異常な円安が消費に与える悪影響に対する警戒感が急速に強まっている。
今週は30日に、3月の労働力調査、鉱工業生産、商業動態統計。1日に、4月の新車販売。2日に、4月の消費動向調査、3月の貿易統計。アメリカでは30日に、2月のFHFA住宅価格指数、4月のカンファレンス・ボード消費者信頼感指数。1日に、ISM製造業景況指数。3日に、4月の雇用統計、ISM非製造業景況指数。また中国が3日に、製造業と非製造業のPMI。EUが3日に、1-3月期のGDP速報を発表する。なお1日には、パウエルFRB議長が記者会見。
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