fc2ブログ
経済に関する話題なんでも。ニュースの分析・批評・解説など。大胆な予想や提言も。ご意見、ご批判は大歓迎です。
経済なんでも研究会
チエも度胸もない 日銀
2024-05-01-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 「この程度の円安なら全く心配なし」という非常識 = 円相場は29日、朝方に160円台まで下落したあと6円近くも反発。市場では政府・日銀が介入したとみている。今回の円安を加速させた直接の原因は、植田総裁の26日の発言。記者の方から‟助け舟”のような質問が出た。--「円安進行による物価への影響は、無視できる範囲なのか」--これに植田総裁が「はい」と答えたため、一同は唖然。為替市場では円の対ドル相場が一気に158円にまで下落した。

円安で輸入物価が上昇。電気やガス、ガソリンや食料品までが高騰していることは、いまや一般常識。円安で最も利益が増えるのは自動車業界だが、そのメーカー経営者でさえ「最近の円安は異常。輸入原材料が高騰、物価高で賃上げをしても社員の生活は楽にならない」と苦言を呈するほど。それなのに日銀総裁が「円安による物価への影響は無視できる範囲」だと強調するのだから、恐れ入る。

政府は為替介入したようだが、単独では効果が薄い。そこでアメリカに協調介入を求めていたが、「日銀総裁が問題なしと言明してるじゃないか」と言われれば、返す言葉に困るだろう。アメリカ側からそんなコメントが飛び出さないように、介入したことを隠しているのではないか。為替市場ではこうした状況を念頭に、投機筋がさらに円売りを仕掛けてくる。円安が進行すれば、物価はますます上昇する。困るのは一般庶民と中小企業だ。その実態を、日銀は把握していないのだろうか。

マイナス金利政策を解除したばかりだから、もう少し様子を見たいという日銀の姿勢は判らないでもない。しかし「円安が進行すれば、金利の引き上げもありうる」程度のことは言えたに違いない。そうすれば円相場は5-10円ぐらいは上昇しただろう。日銀は本当に円安と物価の関係を軽視しているのか。それとも何か別のことを恐れているのか。

        ≪1日の日経平均 = 下げ -131.61円≫

        ≪2日の日経平均は? 予想 = 下げ

   
      ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村
ページトップへ  トラックバック0 コメント0
またも 無益な為替介入
2024-05-03-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 日銀がひと言つぶやけば円高になるのに = FRBは1日の政策決定会合で「現行の金融政策を据え置くこと」を決めた。声明のなかで、FRBは「ここ数か月間、2%の物価目標に向けた進展がみられなかった」と、その理由を説明している。パウエル議長も記者会見で「インフレ抑制への自信を得るまでには、まだ時間がかかりそうだ」と補足した。市場は完全に織り込んでいたため、株価は小幅に値上がりしただけだった。

ところが為替市場では、157円台で動いていた円の対ドル相場が153円にまで急伸した。FRBの決定を受けて、本来ならドル高・円安が進行するはず。それが円高となったのは、日本政府と日銀が再び為替介入に踏み切ったからに違いない。だが投機筋が豊富な資金を持っている現状で、介入の効果はたかが知れている。その証拠に29日にも介入したが、その効果は1週間ももたなかった。にもかかわらず介入したのは、政府が円安による物価高を黙認できないと判断したからだろう。

現在の円安は、日米間の金利差が根本的な原因となっている。介入は一時的に相場を動かすが、根本的な原因には及ばないから、効果がない。この金利差を縮小するには、日銀が利上げをすればいい。いや実際に利上げをしなくても、たとえば「円安が続けば、利上げを考える」と言うだけで、円相場は5-6円も上がるだろう。それに量的引き締めを加えれば、10円ぐらいはすぐ上がる。

しかし日銀は、全く動かない。植田総裁は記者会見で「いまの円安が物価に与える影響は無視できる範囲内か」と聞かれて、はっきりと「はい」と答えた。これが本心なのか、疑ってしまう。とにかく日本国の財産である外貨準備を大量に使って無益の介入をするより、日銀総裁がひと言つぶやけば、円相場は確実に上がる。少なくとも日銀は、そうしない理由を明らかにすべきだろう。

        ≪2日の日経平均 = 下げ -37.98円≫

        【今週の日経平均予想 = 3勝0敗】   

    
    ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村
ページトップへ  トラックバック0 コメント0
人手不足は これから : 労働力調査
2024-05-05-Sun  CATEGORY: 政治・経済
◇ 23年度は就業者が28万人増加した = 総務省が発表した23年度の労働力調査をみて、ちょっと驚いた。世の中は人手不足で騒がしいが、この調査をみる限り人手がひどく不足するような原因は見当たらない。たとえば完全失業率は2.6%、失業者数は平均178万人で、ともに前年度と変わりなかった。また就業者数は6756万人で、前年度より28万人増えている。増え方は大幅とは言えないが、それでも働く人はそこそこ増えている。それなのに、どうして人手不足になるのだろう。

もちろん経済成長率が3-5%に達する好景気が続けば、この程度の就業者数の増加では足りないに違いない。しかし現実はゼロ成長に近い状態がずっと続いている。働く日数や時間が短い非正規労働者が増えたために、人手が足りなくなったのか。しかし正規労働者は3622万人で、前年度比25万人の増加。非正規労働者は2130万人で、19万人の増加だった。ともに人手不足の大きな理由にはならない。

少子高齢化ガ進み、生産に携われる年齢の人口が減る。だから人手が不足するという。たしかに生産年齢人口は年々、減り続けている。しかし23年度は、働く人が増えている。その理由は、これまで働きに出なかった女性や高齢者が、新しく職に就いたからだ。23年度の労働力調査でみると、就業率は61.4%で、前年度を0.4ポイント上回った。

この4月からトラック・バス・タクシー運転手と建設業労働者、医師に対する残業規制が実施された。またインバウンドの回復で、宿泊・飲食業の人手不足は激しくなる。さらに専門家によると、就業率は天井に近付いているという。したがって本当に大変な人手不足は、これからやってくる。24年度は就業者数が何人増えるのだろうか。

        

      ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村
ページトップへ  トラックバック0 コメント0
今週のポイント
2024-05-07-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 日経平均、4月は1964円の大幅安 = ダウ平均は先週436ドルの値上がり。終り値は3万8600ドル台にまで戻している。FRBが金融政策の現状維持を決めたことは、完全に織り込み済み。市場では「一つの儀式が終了した」という感じ。また週末に発表された雇用統計は予想を下回り、インフレ抑制への期待が高まった。さらに1-3月期の企業業績も堅調で、中東情勢に落ち着きが見えれば、株価はまだ上げそうな気配をみせている。

日経平均は先週301円の値上がり。政府・日銀の介入もあって円相場は大幅に上昇したが、株式市場はこれを好感。1-3月期の企業決算も堅調、7割の企業が予想よりいい結果を発表している。このため日経平均は2週連騰となったが、戻りは遅い。このまま円高が進行するとは考えられず、「円安⇒輸入物価の上昇」という悪いパターンの解消は難しいという心配が消え去らないようだ。

日経平均は4月中、1964円の大幅な下落だった。月間の下げ幅としては、22年9月以来1年7か月ぶりの大きさ。アメリカでインフレ圧力が弱まらずFRBによる利下げが遠のいたことで、IT関連株が下落。その影響で東京市場でも、半導体関連銘柄が売られた。また行き過ぎた円安を警戒、輸出関連銘柄も売られたことは初めての現象だった。5月はその分を取り戻せるのかどうか。中東情勢が好転すれば、チャンスはありそうだが・・・。

今週は9日に、3月の毎月勤労統計、景気動向指数。10日に、3月の家計調査、4月の景気ウオッチャー調査。アメリカでは10日に、5月のミシガン大学・消費者信頼感指数。また中国が9日に、4月の貿易統計を発表する。

        ≪7日の日経平均 = 上げ +599.03円≫

        ≪8日の日経平均は? 予想 = 下げ


        ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村

ページトップへ  トラックバック0 コメント0
月とスッポン : 日米の金融政策 (上)
2024-05-09-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 中央銀行はそれぞれの難問を抱え込んだ = FRB(連邦準備理事会)はアメリカの中央銀行、日本銀行は言うまでもなく日本の中央銀行だ。この2つの中央銀行はいま、それぞれに大きな問題を抱え込んで苦しんでいる。中央銀行の使命の1つは、通貨価値の維持。同時に経済の健全な成長にも、目を配らなければならない。だが近年は、その目的をなかなか達成できない。金融政策の効力が低下してきたためである。

アメリカの場合。FRBはコロナ不況に対処するため、20年3月から22年6月にかけて金融を緩和した。具体的には政策金利をゼロにまで引き下げ、市場から国債などを無制限に買い入れた。この結果、景気は持ち直したが物価が上昇。FRBは22年6月、金融政策を引き締めに転換した。しかし物価はなかなか下がらない。いまはいつ引き締めを解除できるか、その見極めに苦慮している。

日本の場合。日銀は16年1月からマイナス金利を導入した。同時に市場から国債などを大量に購入し始めた。いわゆる“異次元の金融緩和政策”である。ことし3月になってマイナス金利をやっと解除したが、まだ政策金利はゼロ。このため円相場が異常に下落、物価を押し上げている。利上げを期待する声も強いが、日銀は引き締め政策に転換することに踏み切れない。

このようにFRBと日銀は、ともに大きな問題を抱え込んでいる。だが何を金融政策の目標にしているか。その鮮明度は、全く異なっていると言っていい。FRBの目標は、満月のようにきわめて鮮明。これに対して日銀の政策目標は、きわめて曖昧。不透明な目標を掲げてゼロ金利に固執する様は、あたかも食いついたら放さないスッポンのようにみえる。

                      (続きは明日)

        ≪8日の日経平均 = 下げ -632.73円≫

        ≪9日の日経平均は? 予想 = 上げ


        ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村
ページトップへ  トラックバック0 コメント0
月とスッポン : 日米の金融政策 (下)
2024-05-10-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 理屈に合わない日銀のアプローチ = FRBは急激な金融引き締め政策で、インフレを抑え付けようとした。しかし物価はまだ3%以上の上昇を続けている。これを2%の上昇にまで下げることが最終的な目標。だが、これ以上の引き締めは景気を悪化させる危険があるので難しい。このため政策金利をずっと5.25%に据え置いたまま、様子を見ているのが現状だ。それでも「物価2%」という目標は、満月のようにはっきりと見えている。

日銀も「物価2%」を、金融政策の最終目標に掲げている。日本の物価上昇率は現在ほぼ3%前後、政府の補助金を考慮に入れれば4%に近いかもしれない。それを2%にまで下げるというわけだ。アメリカと同じだが、アメリカは金融を引き締めている。しかし日本は金融を超緩和したままだ。物価を下げようというのに金融を緩和するのは、どう考えても理屈に合わない。やり方がアメリカと正反対なのである。

よく知られているように、現在の物価高は円安による輸入物価の上昇によるところが大きい。試算によると、生活用品の値上がりはその3割が円安によるという。円安は日米間の金利差が基本的な原因。だから理論的には、日銀が金利を引き上げれば円相場は上昇する。利上げと言っても、政策金利を3%とか5にしろと言うわけではない。おそらく0.25%、それも「検討する」と言うだけで、円相場は10円ぐらい上昇するに違いない。ところが日銀はそれすらも言わず、頑なに「ゼロ金利を守る」と言い続ける。なぜなのか。

どんな経済政策にも、必ずプラス面とマイナス面がある。いまや超金融緩和政策はプラス面よりマイナス面が大きいことは、日銀も判っているはずだ。にもかかわらずゼロ金利に固執するのは「日銀が利上げしたために、不況になった」と批判されるのが怖いからではないか。この保身のために日銀は動きがとれず、スッポンのようにゼロ金利に食いついたまま離れない?

        ≪9日の日経平均 = 下げ -128.39円≫

        ≪10日の日経平均は? 予想 = 上げ


       ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村
ページトップへ  トラックバック0 コメント0
またもやマイナス成長? : 1-3月期
2024-05-11-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 個人消費の減り方に注目 = 内閣府は16日に、ことし1-3月期のGDP速報を発表する。それに先駆けて民間の調査機関が、続々と予測の結果を発表した。読売新聞によると、民間10社が予測した実質成長率は年率換算でマイナス1.0%~マイナス3.3%。全社がマイナスを予測し、その平均値はマイナス1.8%だった。NHKも11社について、ほぼ同様の内容を報道している。民間の事前予測は当たらないこともあるが、全社がマイナスを予測しているので、1-3月期はまたマイナス成長に陥る可能性がきわめて大きい。

23年10-12月期は、プラス0.4%の成長だった。それがマイナスに転落するのは、自動車メーカーによる認証不正が一因。操業停止で生産が減少、販売台数も落ち込んだ。ただ、これは一時的な現象。それよりも個人消費の減退が注目されている。物価高のために個人が節約志向を高めた結果だとみられており、もしそうなら今後もその傾向が継続する可能性が大きい。

仮に1-3月期の成長率が民間予測の平均値マイナス1.8%になるとすると、23年度の実質成長率はゼロ前後になる計算だ。最近、IMF(国際通貨基金)が「25年にはインドのGDPが日本を上回る」と推計して話題となったが、それにしても日本の成長率は低すぎる。岸田首相は物価高を上回る賃上げを実現し、経済を‟好循環”の波に乗せると公言した。しかし1-3月期がマイナス成長に陥るようでは、そんな夢も吹き飛んでしまうだろう。

政府はここ数年、予想をはるかに上回る財政を支出。日銀はゼロ金利を継続、まだ国債やETFの買い入れを続けている。にもかかわらず、GDPの増え方は非常に鈍い。それはやはり、現在の財政・金融政策が間違っているのではないか。政府や日銀の内部に、こんな疑問が湧かないのはなぜなのか。

        ≪10日の日経平均 = 上げ +155.13円≫

        【今週の日経平均予想 = 3勝1敗】     

     
    ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村
ページトップへ  トラックバック0 コメント0
今週のポイント
2024-05-13-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ ダウ平均は最高値更新の勢い = ダウ平均は先週837ドルの値上がり。5月に入ってからは8連騰で、終り値は3万9513ドル。3月末に記録した史上最高値まで、あと300ドルに接近した。4月の雇用統計で雇用者の増加数が予想を下回り、FRBの利下げ期待感が増大。また3月期の企業決算が好調だったことも、株価を押し上げた。さらにハマスが休戦案を受け入れたことで、安心感が広がった。

日経平均は先週7円の小幅な値下がり。ニューヨーク市場の続伸と好調な3月期決算はプラス材料だったが、株価は3万8500円のカベに突き当たったよう。この値段で利益が出る買い物が多く、戻り売りが殺到。加えて3月の実質賃金や消費支出がマイナスになったことも判明して、株価は上に動けない。政府の介入でいったんは上昇した円相場が再び下落し始めたことも、市場の空気を重くしている。

アメリカでは今週、4月の消費者物価、生産者物価、それに小売り売上高などインフレに関連した統計が次々と発表される。ニューヨーク市場の株価は、その結果によって大きく動きそうだ。しかし株価が最高値を更新する可能性は高い。ただアメリカ経済は下降に向かう兆候もみせており、株価は天井に近付いている。

今週は14日に、4月の企業物価。15日に、4月の訪日外国人客数。16日に、1-3月期のGDP速報。アメリカでは14日に4月の生産者物価。15日に、4月の消費者物価、小売り売上高、5月のNAHB住宅市場指数。16日に、4月の工業生産、住宅着工戸数。また中国が17日に、4月の鉱工業生産、小売り売上高、固定資産投資額を発表する。

        ≪13日の日経平均は? 予想 = 下げ


    ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村
ページトップへ  トラックバック0 コメント0
潮目が変わった? アメリカ経済
2024-05-14-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 景気後退の予兆も現われた = これまで暖流に囲まれてきたアメリカ経済に、寒流が入り込み始めた。再び暖流が勢いを取り戻すのか、それとも寒流が強さを増して行くのか。まだ断定はできない。ただ景気後退の予兆も現われており、もし寒流が勢いを増すと、FRBによる利下げが早まったり、円高が進行したりする。日本経済への影響も非常に大きいので、注意が必要だ。

潮目の変化は、まず4月の雇用統計に表われた。非農業雇用者の増加数は前月比17万5000人。3月の31万人から大きく縮小した。平均時給も前年比で3.9%の伸び、2年10か月ぶりに4%を割り込んでいる。また失業保険の新規申請件数も、8か月ぶりの高さとなった。こうした動きから、市場では「年内に2回の利下げがある」という見方が急速に強まっている。

ただ景気の底堅さを示す指標も出ている。たとえば3月の小売り売上高は前月比0.7%の増加。3か月連続で増加している。その半面、たとえば3月の中住宅販売は前月比4.3%の減少。ISMの業況判断指数は製造業、非製造業ともに50を下回り、景気の下降を示唆している。さらにミシガン大学の消費者信頼感指数は、5月に半年ぶりの低さとなった。

専門家の間では、金利の逆イールド現象に注目が集まっている。これは長期金利よりも短中期金利の方が高くなる状態。政策金利の引き上げで短中期金利が上昇、その一方で将来の景気に不安が生じると長期金利が下がってしまう。アメリカでは戦後11回にわたって、こういう現象が発生した。そして、そのうち10回は景気後退に見舞われたという実績が残っている。

        ≪14日の日経平均 = 上げ +176.60円≫

        ≪15日の日経平均は? 予想 = 上げ

   
    ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村
ページトップへ  トラックバック0 コメント0
この夏 電気料金は最高値へ (上)
2024-05-16-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 太陽光発電は余って困っているのに = 気象庁の予測によると「ことしの夏は猛暑になりそう」だという。そして気温の上昇とともに、電気料金もどんどん上がりそうだ。たとえば標準家庭について6月請求分をみると、東京電力は8538円で5月より401円高くなる。大手10社がすべて値上げし、いちばん高いのは北海道電力の9114円。いちばん安いのは九州電力の7101円ということになる。

国際的なエネルギー価格の高騰に、円安による輸入価格の上昇が加わった。これが電力料金を押し上げている基本的な原因。それに6月からは、政府が補助金を停止する。これで各社が一斉に値上げすることになった。北海道・東北・東京の料金が高く、関西・九州の料金が比較的安いのは、主として原発が稼働しているかどうかの差。

政府は物価の高騰を緩和するため、23年1月から電気と都市ガス会社に補助金を支給、料金の上昇を抑えてきた。しかし、この補助金は24年5月には半減、6月からは停止することを決めている。だから7月請求分はもっと値上がりし、おそらく過去最高の水準に達するとみられている。この停止によって、標準世帯の電気代は年間1万7696円増加するという試算もある。猛暑でクーラーの使用が増えれば、家計の痛手はもっと大きくなるかもしれない。

ところが一方で太陽光発電が普及した結果、その電力が余り始めた。このため電力市場では太陽光による電力の価格が低落、1キロワット時=1円以下の取り引きさえ現われているという。太陽光発電が昼間に集中するとか、送電線が足りないとかの問題はあるにしても、どこかおかしい。政府がきちんとしたエネルギー計画を持たないから、こんな矛盾が生まれる。これも岸田内閣の‟失政”である。

                         (続きは明日)

        ≪15日の日経平均 = 上げ +29.67円≫

        ≪16日の日経平均は? 予想 = 上げ

   
    ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村
ページトップへ  トラックバック0 コメント0
この夏 電気料金は最高値へ (下)
2024-05-17-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 達成できない計画の連続 = エネルギーの大半を輸入に頼る日本にとって「エネルギー基本計画」は最も重要な経済政策の青写真だと言える。2003年に初めて作成され、その後3年ごとに改定されてきた。だが残念なことに、この計画目標が達成されたことはない。目標の水準が高すぎるのか、それとも達成するための具体的な政策に欠陥があるのか。いずれにしても、責任官庁である経済産業省の失態。ことしは改定の年に当たっているが、また同じ轍を踏む公算が大きくなっている。

現行の計画は、21年に作成された。地球温暖化ガスの放出を30年度には、13年度の46%に抑えることを中軸の目標としている。この目標を達成するための具体策として、30年度の電源構成を作成した。その内容は再生可能エネルギーによる発電量を全体の36-38%に、原子力による発電量を20-22%に増大させるという内容。ところが22年度の実績は再生エネが21.7%、原子力が5.5%に過ぎない。目標の達成は、ほとんど不可能に近い。

太陽光発電については補助金を出し過ぎて、発電量が過剰に。送電線が足りないから遠くへは送れない。蓄電池もないから貯めても置けない。結局、廃棄するかタダ同然で売られている。原発については、電力会社や自治体に任せっぱなし。政府は傍観を決め込んでいる。これではエネルギーの輸入は少しも減らず、国民は高い電気・ガス代に悩まされ続けるだけだ。

経産省はいま24年度版のエネルギー計画を作成中。日経新聞によると、今回は40年度の電源構成を提示する方針だという。30年度が目標だともう時間がないから、大きく改善する数字は出しにくい。目標を16年先に伸ばすことで、なんとか格好のいい数字並べられる。こんな目論見が透けて見える。政府の‟やる気”のなさが、諸悪の根源となっていると言えるだろう。

        ≪16日の日経平均 = 上げ +534.53円≫

        ≪17日の日経平均は? 予想 = 下げ


    ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村
ページトップへ  トラックバック0 コメント0
個人消費が落ち込む : GDP速報
2024-05-18-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 物価の上昇で節約ムード広がる = 内閣府は16日、ことし1-3月期のGDP速報を発表した。それによると、名目経済成長率は年率換算でプラス0.4%、実質成長率はマイナス2.0%だった。不正認証問題で自動車の生産が減少、消費や輸出にも悪影響が及んだ。しかし名目成長率はプラスを維持。物価が3.6%上昇したために、実質成長率はマイナスに沈んでいる。こうしたなかで特に注目されたのが、個人消費の落ち込み。これで4四半期連続のマイナスとなった。

各項目を年率換算の数値でみると、個人消費はマイナス2.8%。また企業の設備投資はマイナス3.2%、住宅投資はマイナス9.8%、輸出はマイナス18.7%と振るわなかった。なかでもGDPの約6割を占める個人消費の低迷は大きい。物価高で個人が節約志向を高めたことが原因だと解析されている。自動車の不正認証問題は一過性だが、節約志向は物価高が続く限り消滅しないかもしれない。

物価高による実質値の低下現象は、雇用者報酬の数字にも明確に表われている。1-3月期の雇用者報酬は名目では0.7%の増加だったが、実質では0.4%の減少になった。ちなみに23年度をみると、名目がプラス1.8%、実質はマイナス1.6%となっている。受け取る賃金の金額は増えたが、使い出は前年を下回る。だから節約という筋道だ。

岸田首相は「物価高を上回る賃上げを実現し、経済の好循環が始まることを期待する」と、何度も発言している。しかし実態は、まだそうならない。企業は賃上げに努力しているが、物価が下がらないので追い付かない。政府は補助金による見せかけの物価対策は止めて、基本的な物価対策を講じるべきだ。そうでないと、いつまでたっても実質成長率のマイナスが続いてしまう。

        ≪17日の日経平均 = 下げ -132.88円≫

        【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】     

  
     ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村
ページトップへ  トラックバック0 コメント0
今週のポイント
2024-05-20-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ ダウの続伸は半導体の業績しだい = ダウ平均は先週491ドルの値上がり。金曜日には、終り値でとうとう4万ドル台に乗せた。1999年3月に1万ドル、2017年1月に2万ドル、20年11月に3万ドルという上昇の軌跡。この10年間では2.4倍に膨張している。先週の値上がりは、4月の消費者物価と小売り売上高が予想をやや下回ったことが原因。FRBが利下げを早めるのではないかという期待が、市場に広まった。

日経平均は先週558円の値上がり。5月に入ってからは、ずっと3万8000円台で上下している。ニューヨーク市場の活況は大きなプラス材料だが、1-3月期のGDP成長率がマイナスになったり、実質収入や実質消費の落ち込みが続くなど、悪材料も目立つようになってきた。また異常な円安もマイナス材料とみなされ、輸出関連銘柄でさえも円安で売られるようになっている。

ニューヨーク市場では、さすがに高値で確定売りも出やすくなっている。それをこなして続伸するかどうかは、半導体関連企業の業績見通ししだい。今週の決算発表が注目される。一方、東京市場は物価上昇が鈍化して、働く人たちの実質収入がプラスにならないと先行きが晴れない。いま市場は企業業績に期待をかけているが、当の企業は消費の減退を予想して先行き見通しに慎重だ。日経平均の4万円は遠いだろう。

今週は20日に、3月の第3次産業活動指数。22日に、4月の貿易統計、3月の機械受注。24日に、4月の消費者物価。アメリカでは22日に、4月の中古住宅販売。23日に、4月の新築住宅販売が発表される。
 
        ≪20日の日経平均は? 予想 = 上げ


     ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村
ページトップへ  トラックバック0 コメント0
ダウ 4万ドル台からの展望
2024-05-21-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 当面の焦点は22日のエヌビディア決算発表 = ダウ平均株価は先週末、とうとう4万ドル台に乗せた。20年11月の3万ドル乗せから、3年半での大台替わり。4月の雇用情勢や小売り売上高、それに消費者物価が、そろって予想をわずかに下回る伸びに。FRBの利下げが早まるという期待が高まって、株価を押し上げた。ただ高値で確定売りも出やすくなっている。今後も株価は上昇を続けるのだろうか。

当面の関門は、22日に発表されるエヌビディアの決算。これまでの株高は半導体関連銘柄に負うところが大きかったが、エヌビディアはその象徴的な存在。ことしの業績見通しが好調なら、ニューヨーク市場の株価は続伸するだろう。もし期待外れなら、ダウ平均も一服する公算が大きい。多くの投資家は、いま22日の発表をじっと待っている状態だ。

もう少し中長期的にみると、株価がさらなる高みを目指せるかどうかは、アメリカ経済が‟軟着陸”できるかどうかにかかっている。そのためには物価が徐々に落ち着いて、2%程度の上昇率に近付く。その一方で、景気があまり落ち込まないことが重要だ。ただ、こうした経済の動向を確認するには、3か月程度の検証が必要だろう。すると‟軟着陸”の確認は、早くても7月末ということになる。

FRBが金融政策を決定するFOMC(公開市場委員会)は、8月が休み。したがって利下げの決定は早くても9月ということになる。すると、年内の利下げは2回というのが市場の読み。しかし‟軟着陸”に乱れを生じると、利下げは大幅に遅れるかもしれない。これから7月にかけて、アメリカ経済がどう動くか。それによって、ダウ平均の動向も決まってくるだろう。

        ≪21日の日経平均 = 下げ -122.75円≫

        ≪22日の日経平均は? 予想 = 下げ

   
    ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村
ページトップへ  トラックバック0 コメント0
中国の安売り輸出が 大問題に (上)
2024-05-23-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 米政府が中国製EVに関税100% = バイデン政権は先週14日、主要な中国製品に対する制裁関税の大幅な強化を発表した。EV(電気自動車)については25%だった制裁関税を100%に。また自動車などに使用する旧世代の半導体については25%を50%に。車載用リチウムイオン電池は3倍の25%に。太陽電池は2倍の50%に。さらに鉄鋼とアルミは3倍の25%に引き上げる。通商法301条に基づく措置で、「安価な製品の流入を防ぎ、国内産業と雇用を守るため」と説明した。

当然ながら、中国政府は猛烈に反発。WTO(世界貿易機構)に提訴すると息巻いている。米中間の経済紛争は、たしかにいっそう悪化した。ただし、すべてを額面通り受け取るわけにはいかない。たとえばすでに25%の関税をかけられている中国製EVは、アメリカではほとんど売れていない。したがって関税を100%に引き上げても、意味はないことになる。

にもかかわらずバイデン政権が関税を大幅に引き上げたのは、大統領選挙のため。自動車や鉄鋼産業の支持を獲得するための対策だ。トランプ前大統領は「すべての中国製品に60%以上の関税をかける」と宣言しているから、中国政府にとっては「それよりはマシなバイデン政策だ」と言えないこともない。この辺の状況は、習近平政権も十分に理解しているはずだ。

バイデン政権の関税引き上げは、むしろアメリカ以外の各地域に大きな影響を及ぼしそうだ。アメリカ市場から締め出された中国メーカーは、いまブラジルとタイでEVの安売りを始めている。たとえばブラジルで1-4月に売ったEVは4万8000台、前年の8倍に達した。ブラジルとタイを拠点に、中南米東南アジアに進出する計画だ。このとばっちりもあって、アメリカのテスラはことしに入ってから売れ行きが不振、人員の10%削減を発表している。

                      (続きは明日)

        ≪22日の日経平均 = 下げ -329.83円≫

        ≪23日の日経平均は? 予想 = 上げ≫   

    ☆ クリックお願いします ⇒
 にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村


ページトップへ  トラックバック0 コメント0
中国の安売り輸出が 大問題に (下)
2024-05-24-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 補助金→生産増→安売り→輸出増 = いま中国は不動産不況に悩んでいるが、鉱工業生産だけは順調に増加している。だが主要製品の生産は過剰で、価格が下がっていることも事実。たとえば4月の卸売り物価でみると、鉄鋼の価格は前年比8.1%の下落。4月の消費者物価でみると、自動車は4.3%、スマホは2.9%の下落となっている。しかし価格が下落しても、生産は衰えない。政府が補助金を出して、増産を奨励しているからである。

国内で余った生産物は、輸出に出口を求める。たとえばEV・太陽光発電・リチウムイオン電池の3月の輸出額は106億ドル、3年前の2倍以上になった。自動車の4月の輸出は90万4000台、前年比34%の増加だった。自動車について言えば、23年は491万台を輸出、日本を抜いて世界首位になった。さらに業界は25年に3600万台の生産を計画しているが、国内での販売は1700万台にとどまると推計している。半分以上が輸出に回ることになる。

習近平政権は経済政策の基本に、生産力の増強を挙げている。この目的のため、09-22年の間に、総計1700億ドル(約255兆円)の補助金を支出した。これで主力製品を増産、輸出に安売り攻勢をかけるという構図が定着しつつある。もちろんEVだけではない。たとえば太陽光発電パネルは、IEA(国際エネルギー機構)によると、ことし中に供給量が需要量の3倍に達する見通し。その原因は中国の生産過剰だという。

日本に対する影響も、きわめて大きい。まずEVや太陽光パネルなどが、安値で入ってくる。日本のメーカーは防戦に必死となるだろう。また東南アジアや中南米などの市場でも、安い中国製と闘わなければならない。自動車の状況をみると、すでにタイでは中国製EVに日本車が食われ始めている。日本政府は傍観していていいのだろうか。

        ≪23日の日経平均 = 上げ +486.12円≫

        ≪24日の日経平均は? 予想 = 下げ

 
      ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村
ページトップへ  トラックバック0 コメント0
長期金利が 1%を超えた!
2024-05-25-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ なぜ日銀はコソコソ動くのか = 東京債券市場で22日、10年もの国債の流通利回りが一時1%を超えた。13年5月以来11年ぶりのことである。理由は日銀が通常の買い入れオペで、国債の購入額を突如として減らしたからだ。このため国債の流通価格が下がり、利回りが上昇した。2年ものや5年もの国債の利回りも上昇している。市場では「日銀が政策金利の引き上げ準備を始めた」という観測が、一気に広がった。

市場の観測はまだ収斂していないが、政策金利の引き上げは0.25%。時期は7月説がいちばん強い。ほかに9月説、10月説も飛び交っている。企業も利上げに備えるところが出始めた。銀行や海外投資家はまだ国債の価格は下がるとみており、買い入れには慎重。これも国債価格の下落につながってくるだろう。

だが当の日銀がどんな考え方なのかは、全く判らない。たとえば1か月前と比べてみると、1-3月期のGDP成長率がマイナスになるなど、利上げには向かない環境になっている。また物価高が特に進行したわけでもない。さらに政府が実施する減税の効果を、相殺することにもなりかねない。それなのに、なぜ利上げなのか。

植田総裁は先日、官邸に呼ばれて岸田首相と密談した。ここで岸田首相は「物価高の原因となっている円安をなんとかしてほしい」と要請したとも言われている。その結果の政策変更とみられるのはマズイ。そこで市場が利上げさせたように、みせたいのではないか。こんな見方さえ出始めた。日銀はなぜ、もっと自分の‟意志”を市場に示そうとしないのか。

       ≪24日の日経平均 = 下げ -457.11円≫

       【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】     


    ☆ クリックお願いします ⇒ にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村


  ☆☆ お知らせ

          再手術のため再入院。経済ブログはしばらく休ませて頂きます。
          ご了承ください。  M.I.        

ページトップへ  トラックバック0 コメント0
<< 2024/05 >>
S M T W T F S
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -


余白 Copyright © 2005 経済なんでも研究会. all rights reserved.
  翻译: