1:2018/08/05(日) 14:05:56.690
喪黒「私の名は喪黒福造。人呼んで『笑ゥせぇるすまん』。
ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。
この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。
そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。
さて、今日のお客様は……。
河上源一(44) 中学教師
【教師失格】
ホーッホッホッホ……。」
ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。
この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。
そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。
さて、今日のお客様は……。
河上源一(44) 中学教師
【教師失格】
ホーッホッホッホ……。」
2:2018/08/05(日) 14:07:43.614
朝。ある中学校。
テロップ「新英市立新英中学校」
廊下を歩く一人の男性教師。彼は疲れた表情をしている。
テロップ「河上源一(44) 国語教師・新英中2年B組担任」
学校内に授業開始のチャイムが鳴り響く。キーンコーンカーンコーン……。
黒板には「ヘルマン・ヘッセ 少年の日の思い出」と書かれている。
教室内で河上による国語の授業が行われている。
河上「主人公の『僕』は、蝶の標本を集めるのが好きな少年でした……」
河上の声は生徒たちの私語の前にかき消されている。
男子生徒「でさー……」「マジかよー!」
女子生徒「ウッソー!」「ヤダァー!」
授業中なのに何の意味もなく教室を立ち去る生徒もいる。
どうやら、このクラスは学級崩壊に陥っているようだ。
テロップ「新英市立新英中学校」
廊下を歩く一人の男性教師。彼は疲れた表情をしている。
テロップ「河上源一(44) 国語教師・新英中2年B組担任」
学校内に授業開始のチャイムが鳴り響く。キーンコーンカーンコーン……。
黒板には「ヘルマン・ヘッセ 少年の日の思い出」と書かれている。
教室内で河上による国語の授業が行われている。
河上「主人公の『僕』は、蝶の標本を集めるのが好きな少年でした……」
河上の声は生徒たちの私語の前にかき消されている。
男子生徒「でさー……」「マジかよー!」
女子生徒「ウッソー!」「ヤダァー!」
授業中なのに何の意味もなく教室を立ち去る生徒もいる。
どうやら、このクラスは学級崩壊に陥っているようだ。
3:2018/08/05(日) 14:09:42.195
職員室。会話をする教師たち。
テロップ「水谷悟志(36) 英語教師」
水谷「最近、複数のクラスで学級崩壊が起きています。恥ずかしながら……、私のクラスもそうなんです」
河上「実は……、私のクラスもそうです。授業中に何の意味もなく教室を出る生徒もいるんです」
テロップ「山中進(39) 理科教師」
山中「私は少年時代、進学校にいましたから……。まさか教師になって学級崩壊を目にするとは夢にも思いませんでした」
テロップ「秋山賢治(49) 数学教師」
秋山「今の子供は生まれた時から『消費者』として育っていますから。だから自分中心で当然だと思っているんです」
テロップ「加藤敏子(52) 音楽教師」
加藤「だからと言って、頭ごなしに叱るのはどうかと思いますよ。この子たちにも『個性』があるんですから」
テロップ「永原善彦(55) 社会科教師」
永原「それに、あまりきつく叱れば親からクレームが来るかもしれません。私たちにはどうすることもできまい」
テロップ「水谷悟志(36) 英語教師」
水谷「最近、複数のクラスで学級崩壊が起きています。恥ずかしながら……、私のクラスもそうなんです」
河上「実は……、私のクラスもそうです。授業中に何の意味もなく教室を出る生徒もいるんです」
テロップ「山中進(39) 理科教師」
山中「私は少年時代、進学校にいましたから……。まさか教師になって学級崩壊を目にするとは夢にも思いませんでした」
テロップ「秋山賢治(49) 数学教師」
秋山「今の子供は生まれた時から『消費者』として育っていますから。だから自分中心で当然だと思っているんです」
テロップ「加藤敏子(52) 音楽教師」
加藤「だからと言って、頭ごなしに叱るのはどうかと思いますよ。この子たちにも『個性』があるんですから」
テロップ「永原善彦(55) 社会科教師」
永原「それに、あまりきつく叱れば親からクレームが来るかもしれません。私たちにはどうすることもできまい」
4:2018/08/05(日) 14:11:13.563
テロップ「那須良人(57) 新英中学校副校長」
那須「我々ができることはただ一つ。要するに、『放っておくしかない』ということです」
職員室内での教師たちは、学級崩壊に対しすっかり無力感を抱いているようだ。
放課後。運動場では、野球部員や陸上部員が部活動を行っている。
体育館でも、卓球部員や女子バレー部員が汗を流している。
格技場。胴着を着た河上が、生徒たちを前に竹刀を振っている。
どうやら河上は、この学校の剣道部の顧問のようだ。
部活動が終わった後も、河上は職員室で机に向かっている。
明日の授業の準備をするために残業をしているのだろう。
職員室内の時計を見ると、時刻は夜11時を過ぎているようだ。
那須「我々ができることはただ一つ。要するに、『放っておくしかない』ということです」
職員室内での教師たちは、学級崩壊に対しすっかり無力感を抱いているようだ。
放課後。運動場では、野球部員や陸上部員が部活動を行っている。
体育館でも、卓球部員や女子バレー部員が汗を流している。
格技場。胴着を着た河上が、生徒たちを前に竹刀を振っている。
どうやら河上は、この学校の剣道部の顧問のようだ。
部活動が終わった後も、河上は職員室で机に向かっている。
明日の授業の準備をするために残業をしているのだろう。
職員室内の時計を見ると、時刻は夜11時を過ぎているようだ。
6:2018/08/05(日) 14:13:20.524
日曜日。河上源一の自宅。居間で寝転んでいる河上に対し、妻が小言を言う。
テロップ「河上敦子(42) 源一の妻」
敦子「ちょっとぉー!日曜なのに何ゴロゴロしてるのよぉ!」
河上「俺は毎日、夜中までの残業で疲れてるんだ……。日曜なんだからゆっくり休ませてくれ……」
敦子「私だって同じよ……!私も一応教師で、共稼ぎなんだから!でも、私は家事も担当しているのに、あなたは……」
河上「わ、分かったよ……。しばらく、外でゆっくり過ごすからさ……」
スーパー銭湯。サウナ室にいる河上。河上の席の隣にいるのは喪黒福造だ。
サウナ室にあるテレビが、ニュースを流している。
テレビ「千葉県で……、16歳の少年が振り込め詐欺の受け子をした容疑で警察に逮捕されました」
喪黒「16歳の少年がこんなことをするとは……。ある意味、教育の失敗がもたらしたとしか言いようがありませんなぁ」
河上「ええ、全く……。お恥ずかしい話ですがね……」
喪黒「お恥ずかしい話とは……、一体どういうことなんです?」
テロップ「河上敦子(42) 源一の妻」
敦子「ちょっとぉー!日曜なのに何ゴロゴロしてるのよぉ!」
河上「俺は毎日、夜中までの残業で疲れてるんだ……。日曜なんだからゆっくり休ませてくれ……」
敦子「私だって同じよ……!私も一応教師で、共稼ぎなんだから!でも、私は家事も担当しているのに、あなたは……」
河上「わ、分かったよ……。しばらく、外でゆっくり過ごすからさ……」
スーパー銭湯。サウナ室にいる河上。河上の席の隣にいるのは喪黒福造だ。
サウナ室にあるテレビが、ニュースを流している。
テレビ「千葉県で……、16歳の少年が振り込め詐欺の受け子をした容疑で警察に逮捕されました」
喪黒「16歳の少年がこんなことをするとは……。ある意味、教育の失敗がもたらしたとしか言いようがありませんなぁ」
河上「ええ、全く……。お恥ずかしい話ですがね……」
喪黒「お恥ずかしい話とは……、一体どういうことなんです?」
7:2018/08/05(日) 14:15:17.652
大浴場に入浴している河上と喪黒。
喪黒「そうですか……。河上さんは中学校の教師なのですか」
河上「はい。私はしがない教師ですよ」
喪黒「教師の仕事は何かと辛いですからねぇ……。だからこの日曜日、風呂でゆっくり疲れをとるに限りますよ」
河上「ええ、まあ……」
風呂からあがった河上と喪黒。2人は館内着を着て、レストランでビールを飲んでいる。
喪黒「自己紹介が遅れましたな。私はこういう者です」
喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。
河上「ココロのスキマ、お埋めします?」
喪黒「私はセールスマンです。お客様の心にポッカリ空いたスキマをお埋めするのがお仕事です」
河上「へえ……。今の時代、そういう仕事があるのですか……」
喪黒「見たところ、河上先生の心にもスキマがおありのはずです。何なら、相談に乗りましょうか?」
喪黒「そうですか……。河上さんは中学校の教師なのですか」
河上「はい。私はしがない教師ですよ」
喪黒「教師の仕事は何かと辛いですからねぇ……。だからこの日曜日、風呂でゆっくり疲れをとるに限りますよ」
河上「ええ、まあ……」
風呂からあがった河上と喪黒。2人は館内着を着て、レストランでビールを飲んでいる。
喪黒「自己紹介が遅れましたな。私はこういう者です」
喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。
河上「ココロのスキマ、お埋めします?」
喪黒「私はセールスマンです。お客様の心にポッカリ空いたスキマをお埋めするのがお仕事です」
河上「へえ……。今の時代、そういう仕事があるのですか……」
喪黒「見たところ、河上先生の心にもスキマがおありのはずです。何なら、相談に乗りましょうか?」
9:2018/08/05(日) 14:17:39.280
BAR「魔の巣」。喪黒と河上が席に腰掛けている。
河上「新英中では、複数の教室で学級崩壊が相次いでいるんです。私が受け持つクラスも例外ではありません」
喪黒「学校でそんなことが起きていたのですか……。大変ですなぁ……」
河上「授業中の私語を注意しても、生徒たちは私の言うことを一向に聞きません」
喪黒「だとすると……、あなたにとってはたまったもんじゃないでしょう」
河上「ええ……。でも、それは私の指導力のなさのせいですから……」
喪黒「まあ、そう自分を責めることはありませんよ。河上先生も精一杯やっているんでしょうから……」
河上「いろいろ、やってはいるんですけどね……」
喪黒「でも、やっていない手段がどこかにあるかもしれませんよ」
河上「それは……」
喪黒「荒れた生徒たちをガツンと叱ることです!」
「このたった一つの手段を取れれば、後は、担任としてスムーズに教室の運営はできるものですよ」
河上「それができればいいのですがねぇ……」
「でも、今の時代……。子供たちは生まれた時から『消費者』として育っているんです」
「だから、下手に厳しく叱れば……。保護者からクレームが来ることにもなりかねませんよ」
河上「新英中では、複数の教室で学級崩壊が相次いでいるんです。私が受け持つクラスも例外ではありません」
喪黒「学校でそんなことが起きていたのですか……。大変ですなぁ……」
河上「授業中の私語を注意しても、生徒たちは私の言うことを一向に聞きません」
喪黒「だとすると……、あなたにとってはたまったもんじゃないでしょう」
河上「ええ……。でも、それは私の指導力のなさのせいですから……」
喪黒「まあ、そう自分を責めることはありませんよ。河上先生も精一杯やっているんでしょうから……」
河上「いろいろ、やってはいるんですけどね……」
喪黒「でも、やっていない手段がどこかにあるかもしれませんよ」
河上「それは……」
喪黒「荒れた生徒たちをガツンと叱ることです!」
「このたった一つの手段を取れれば、後は、担任としてスムーズに教室の運営はできるものですよ」
河上「それができればいいのですがねぇ……」
「でも、今の時代……。子供たちは生まれた時から『消費者』として育っているんです」
「だから、下手に厳しく叱れば……。保護者からクレームが来ることにもなりかねませんよ」
10:2018/08/05(日) 14:20:02.737
喪黒「そんなことを言っていてはダメです」
「教師である以上……。生徒たちの前に何かしらの手本となり、リーダーシップを発揮すべきなのです!」
河上「それができないから、困っているのですよ。ですが……、今の学校の惨状はあまりにも……」
喪黒「お気持ち、よーく分かりました……。先生、あなたは学級崩壊を克服したいでしょう!?」
河上「はい……。でも、そんなことが……」
喪黒「できますよ。あるものを使えば……ね」
喪黒は鞄から何かを取り出す。机の上には、小さな箱が置かれる。
喪黒「この箱を開けてください」
河上が箱を開けると、そこには金色に輝く指輪が入っている。
河上「これは……?」
喪黒「見ての通り、指輪ですよ。名前は『カリスマリング』です」
河上「カリスマリング!?」
喪黒「そうです。『カリスマリング』を右手の人差指に差すと、特殊な効果を発揮します」
「実は、この指輪を使用するとカリスマ性が発揮され、他人を従えることができるようになるのです」
「もちろん、大勢の集団を従えることも可能です」
「教師である以上……。生徒たちの前に何かしらの手本となり、リーダーシップを発揮すべきなのです!」
河上「それができないから、困っているのですよ。ですが……、今の学校の惨状はあまりにも……」
喪黒「お気持ち、よーく分かりました……。先生、あなたは学級崩壊を克服したいでしょう!?」
河上「はい……。でも、そんなことが……」
喪黒「できますよ。あるものを使えば……ね」
喪黒は鞄から何かを取り出す。机の上には、小さな箱が置かれる。
喪黒「この箱を開けてください」
河上が箱を開けると、そこには金色に輝く指輪が入っている。
河上「これは……?」
喪黒「見ての通り、指輪ですよ。名前は『カリスマリング』です」
河上「カリスマリング!?」
喪黒「そうです。『カリスマリング』を右手の人差指に差すと、特殊な効果を発揮します」
「実は、この指輪を使用するとカリスマ性が発揮され、他人を従えることができるようになるのです」
「もちろん、大勢の集団を従えることも可能です」
11:2018/08/05(日) 14:22:17.756
河上「ハハハ、バカバカしい……。そんな話、まるで夢物語で非現実的じゃないですか」
喪黒「いいえ、『カリスマリング』の効果は本物ですよ」
喪黒は河上に右手の人差し指を向ける。
喪黒「さあ、河上先生……。『カリスマリング』を使用するのです!!」
「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
河上「うわああああああああああ!!!」
翌朝、新英中学校。廊下を歩く河上。
河上は目が据わっている。彼の顔つきはいつものしょぼくれた表情ではない。
河上の右手の人差指には、喪黒から貰った指輪『カリスマリング』がはめられている。
校舎内に授業開始のチャイムが鳴り響く。キーンコーンカーンコーン……。
教室。教壇に立つ河上。
授業の題材は、ヘルマン・ヘッセの「少年の日の思い出」だ。
喪黒「いいえ、『カリスマリング』の効果は本物ですよ」
喪黒は河上に右手の人差し指を向ける。
喪黒「さあ、河上先生……。『カリスマリング』を使用するのです!!」
「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
河上「うわああああああああああ!!!」
翌朝、新英中学校。廊下を歩く河上。
河上は目が据わっている。彼の顔つきはいつものしょぼくれた表情ではない。
河上の右手の人差指には、喪黒から貰った指輪『カリスマリング』がはめられている。
校舎内に授業開始のチャイムが鳴り響く。キーンコーンカーンコーン……。
教室。教壇に立つ河上。
授業の題材は、ヘルマン・ヘッセの「少年の日の思い出」だ。
12:2018/08/05(日) 14:24:24.665
河上「エミールは、主人公の『僕』に対し……」
その日の教室も、相変わらず生徒たちの私語がガヤガヤと響いている。
話すのをやめ、しばらく様子を見る河上。次の瞬間。
河上「静かにしろ!!!」
河上の怒鳴り声で、私語が溢れていた教室はいっせいに静まり返る。
河上「私語は慎めと言っているだろう!!一体、何度言えば分かるんだ!!!」
河上は鋭い目つきで生徒たちを睨みつける。
河上「君たちは何のために学校に通っているんだ?だらだら時間を潰すためか!?」
「違うだろ!!」
右の拳を振り上げ、熱っぽく話す河上。河上の右手の指の『カリスマリング』が輝く。
河上「学校は勉強をするための場所だ。だがな、もっと重要な意味があるんだぞ……」
「それはな……。君たちが将来、一人前の大人になるためなんだぞ!!」
「そのために……。君たちは今こうやって、学校に通っているんだ!!分かるか!?」
河上の威厳ある態度に、すっかり生徒たちが飲み込まれている。
その日の教室も、相変わらず生徒たちの私語がガヤガヤと響いている。
話すのをやめ、しばらく様子を見る河上。次の瞬間。
河上「静かにしろ!!!」
河上の怒鳴り声で、私語が溢れていた教室はいっせいに静まり返る。
河上「私語は慎めと言っているだろう!!一体、何度言えば分かるんだ!!!」
河上は鋭い目つきで生徒たちを睨みつける。
河上「君たちは何のために学校に通っているんだ?だらだら時間を潰すためか!?」
「違うだろ!!」
右の拳を振り上げ、熱っぽく話す河上。河上の右手の指の『カリスマリング』が輝く。
河上「学校は勉強をするための場所だ。だがな、もっと重要な意味があるんだぞ……」
「それはな……。君たちが将来、一人前の大人になるためなんだぞ!!」
「そのために……。君たちは今こうやって、学校に通っているんだ!!分かるか!?」
河上の威厳ある態度に、すっかり生徒たちが飲み込まれている。
13:2018/08/05(日) 14:26:18.779
昼休みの教室。教室内で生徒たちは話をしている。
男子生徒A「それにしても、今日の河上先生、メッチャ怖かったよなぁー」
男子生徒B「ああ。河上先生があんなに怒ったとこ、今まで見たことがなかったよ」
女性生徒A「でも、河上先生が言いたいことは分かる気がする」
女子生徒B「だって今までのあたしら、授業中の私語がうるさかったんだし」
午後の新英中。河上はある教室で国語の授業を行っている。
教室内にいる生徒たちは静かで真面目だ。いつもと違って学級崩壊が起きている様子はない。
生徒たち「河上先生って怒ると怖いんだなぁー」「意外だったなホント」「でも、河上先生のこと少しは見直したよ」
放課後。格技場では剣道部の練習が行われている。
生徒たちを前に竹刀を振る河上。一同は胴着を身にまとっている。
男子生徒A「それにしても、今日の河上先生、メッチャ怖かったよなぁー」
男子生徒B「ああ。河上先生があんなに怒ったとこ、今まで見たことがなかったよ」
女性生徒A「でも、河上先生が言いたいことは分かる気がする」
女子生徒B「だって今までのあたしら、授業中の私語がうるさかったんだし」
午後の新英中。河上はある教室で国語の授業を行っている。
教室内にいる生徒たちは静かで真面目だ。いつもと違って学級崩壊が起きている様子はない。
生徒たち「河上先生って怒ると怖いんだなぁー」「意外だったなホント」「でも、河上先生のこと少しは見直したよ」
放課後。格技場では剣道部の練習が行われている。
生徒たちを前に竹刀を振る河上。一同は胴着を身にまとっている。
14:2018/08/05(日) 14:28:17.719
ある日曜日。スーパー銭湯。河上は露天風呂に入っている。
入浴している河上の姿を喪黒が見つける。
喪黒「久しぶりですなぁ、河上先生」
河上「やぁ、喪黒さん」
喪黒と河上は大浴場でベンチの上に腰かけている。
河上「喪黒さん……。『カリスマリング』の効果はやはり本物でしたよ」
喪黒「……どうやら、学級崩壊は克服できたようですなぁ」
河上「おかげで、生徒たちは真面目に授業を受けるようになりました」
喪黒「それはよかったですねぇ」
河上「喪黒さんには本当に感謝していますよ」
喪黒「こうやって先生のお役に立てて、実に何よりです……」
「ですがね……。ちょっと忠告をしておきたいことがあるのですよ」
河上「どういうことですか!?」
喪黒「『カリスマリング』の効果が本物であることは、先生もご存じでしょう?」
「だからこそ、例の指輪は使い過ぎに気を付けるべきなのです」
入浴している河上の姿を喪黒が見つける。
喪黒「久しぶりですなぁ、河上先生」
河上「やぁ、喪黒さん」
喪黒と河上は大浴場でベンチの上に腰かけている。
河上「喪黒さん……。『カリスマリング』の効果はやはり本物でしたよ」
喪黒「……どうやら、学級崩壊は克服できたようですなぁ」
河上「おかげで、生徒たちは真面目に授業を受けるようになりました」
喪黒「それはよかったですねぇ」
河上「喪黒さんには本当に感謝していますよ」
喪黒「こうやって先生のお役に立てて、実に何よりです……」
「ですがね……。ちょっと忠告をしておきたいことがあるのですよ」
河上「どういうことですか!?」
喪黒「『カリスマリング』の効果が本物であることは、先生もご存じでしょう?」
「だからこそ、例の指輪は使い過ぎに気を付けるべきなのです」
15:2018/08/05(日) 14:30:17.904
河上「ええ、当然気を付けてますよ。あの指輪を使用しているのは、あくまでも学校内にとどまっていますから」
喪黒「そうですか。ならば心配いらないのですがねぇ……。今のところは……」
河上「は、はあ……」
喪黒「約束です。『カリスマリング』の効果は本物ですから、くれぐれも濫用は控えてください」
「濫用し過ぎると使用者は暴君となり、下手をすれば取り返しのつかないことになる恐れがありますよ」
河上「わ、分かりました。喪黒さん」
自宅に帰る河上。
河上「ただいまー」
敦子「あ、もう帰ったの?言っとくけど、夕食まだ作ってないからね」
「あなた、どこかで外食してくればよかったのに。私、料理はあまり得意じゃないんだから」
河上「亭主に向かって、そんな言い方ないだろう……」
敦子「だって、あなた頼りない人間なんだからしょうがないじゃん……」
妻に冷たくあしらわれる河上。彼は不機嫌な表情になる。
書斎にこもる河上。彼は右手の人差指に『カリスマリング』をはめる。
居間でテレビを見ている敦子。そこに河上の姿が現れる。
喪黒「そうですか。ならば心配いらないのですがねぇ……。今のところは……」
河上「は、はあ……」
喪黒「約束です。『カリスマリング』の効果は本物ですから、くれぐれも濫用は控えてください」
「濫用し過ぎると使用者は暴君となり、下手をすれば取り返しのつかないことになる恐れがありますよ」
河上「わ、分かりました。喪黒さん」
自宅に帰る河上。
河上「ただいまー」
敦子「あ、もう帰ったの?言っとくけど、夕食まだ作ってないからね」
「あなた、どこかで外食してくればよかったのに。私、料理はあまり得意じゃないんだから」
河上「亭主に向かって、そんな言い方ないだろう……」
敦子「だって、あなた頼りない人間なんだからしょうがないじゃん……」
妻に冷たくあしらわれる河上。彼は不機嫌な表情になる。
書斎にこもる河上。彼は右手の人差指に『カリスマリング』をはめる。
居間でテレビを見ている敦子。そこに河上の姿が現れる。
18:2018/08/05(日) 14:32:26.169
河上「敦子、てめえ……!!毎日毎日俺のことを……、馬鹿にしやがって……!!!」
敦子「やめてぇ!!!」
河上は敦子に殴る蹴るの暴力をふるう。妻の顔を叩く彼の右の拳の指に、例の指輪が光る。
新英中学校。国語の授業が行われているある教室。河上は生徒たちに対し、次々と平手で顔をビンタしていく。
河上「はっきり言って、お前らはクズだ!!生きる価値なんてないよ!!」
河上の怒鳴り声で、何人かの女子生徒は脅えて泣いている。
さらに他の教室。ここでも河上は生徒たちにビンタや鉄拳制裁を行う。
威嚇的な形相の河上を前に、生徒たちは脅えた小動物のように縮み上がっている。
放課後。格技場。剣道部の部活動でも、豹変した河上に生徒たちが脅えている。
河上「いつもいつも、もたもた練習しやがって……!!」 河上に蹴飛ばされ、男子生徒が畳の上に倒れる。
テロップ「佐伯麗斗(14) 新英中2年B組 剣道部所属」
佐伯「ご、ごめんなさい……!!」
泣きながら河上に謝る佐伯。河上は佐伯の身体に馬乗りになり、何度も顔を殴りつける。
敦子「やめてぇ!!!」
河上は敦子に殴る蹴るの暴力をふるう。妻の顔を叩く彼の右の拳の指に、例の指輪が光る。
新英中学校。国語の授業が行われているある教室。河上は生徒たちに対し、次々と平手で顔をビンタしていく。
河上「はっきり言って、お前らはクズだ!!生きる価値なんてないよ!!」
河上の怒鳴り声で、何人かの女子生徒は脅えて泣いている。
さらに他の教室。ここでも河上は生徒たちにビンタや鉄拳制裁を行う。
威嚇的な形相の河上を前に、生徒たちは脅えた小動物のように縮み上がっている。
放課後。格技場。剣道部の部活動でも、豹変した河上に生徒たちが脅えている。
河上「いつもいつも、もたもた練習しやがって……!!」 河上に蹴飛ばされ、男子生徒が畳の上に倒れる。
テロップ「佐伯麗斗(14) 新英中2年B組 剣道部所属」
佐伯「ご、ごめんなさい……!!」
泣きながら河上に謝る佐伯。河上は佐伯の身体に馬乗りになり、何度も顔を殴りつける。
19:2018/08/05(日) 14:35:38.610
夜中。帰宅した河上はいきなり妻の顔を鉄拳で殴りつける。
荒々しい様子の河上に対し、妻はすっかり脅えきってしまっている。
そして、ある日の朝。家を出て住宅地を歩く河上。河上が角を曲がった時、そこには喪黒福造がいる。
河上「お、おはようございます……。喪黒さん。いやぁ、お久しぶり……」
喪黒「河上先生……。あなた約束を破りましたね」
河上「えっ……!?」
喪黒「私は言ったはずです。『カリスマリング』の効果は本物だから、くれぐれも濫用は控えろ……と」
河上「わ……、私は使い方に気をつけているはずですよ……!!」
喪黒「とぼけないでください。以前の河上先生は、家の中では奥様に頭が上がりませんでしたよねぇ……」
「だから、家庭内で『カリスマリング』を装着し、奥様を屈服させるために暴力を振るいました……」
河上「な、なぜそのことを……」
喪黒「それをきっかけに、あなたは『カリスマリング』の効果にのみ込まれていき……」
「教室内でも部活動でも暴君に豹変しました。生徒たちに意味もなく体罰を頻繁に行う暴力教師へと……ね」
河上「あ、あああ……」
荒々しい様子の河上に対し、妻はすっかり脅えきってしまっている。
そして、ある日の朝。家を出て住宅地を歩く河上。河上が角を曲がった時、そこには喪黒福造がいる。
河上「お、おはようございます……。喪黒さん。いやぁ、お久しぶり……」
喪黒「河上先生……。あなた約束を破りましたね」
河上「えっ……!?」
喪黒「私は言ったはずです。『カリスマリング』の効果は本物だから、くれぐれも濫用は控えろ……と」
河上「わ……、私は使い方に気をつけているはずですよ……!!」
喪黒「とぼけないでください。以前の河上先生は、家の中では奥様に頭が上がりませんでしたよねぇ……」
「だから、家庭内で『カリスマリング』を装着し、奥様を屈服させるために暴力を振るいました……」
河上「な、なぜそのことを……」
喪黒「それをきっかけに、あなたは『カリスマリング』の効果にのみ込まれていき……」
「教室内でも部活動でも暴君に豹変しました。生徒たちに意味もなく体罰を頻繁に行う暴力教師へと……ね」
河上「あ、あああ……」
21:2018/08/05(日) 14:38:40.460
喪黒「ですが……。『カリスマリング』の効果で生徒たちは河上先生にすっかり服従しています。そのおかげで……」
「今のところ彼らは……、あなたによる一連の暴力行為を親に話さないでいるのです……。そういう状態なのですよ」
河上「わ、私が悪かった!!許してくれ!!」
喪黒「いいえ、ダメです。約束を破った以上、あなたには罰を受けて貰わなくてはなりません!!」
喪黒は河上に右手の人差し指を向ける。
喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
河上「ギャアアアアアアアアア!!!」
2年B組の教室。ここは河上が担任を受け持つクラスだ。
河上「今から朝礼を行います。今日は、佐伯君がまだ姿を見せていませんが……」
佐伯「先生、俺ならここにいますよ」
佐伯が戸を開け、教室の中に入っている。彼の左手には竹刀が握られている。
佐伯「今日の俺は違う……。なぜなら、あんたを全く怖いと感じなくなったから……」
佐伯は右の拳を握りしめ、河上に見せる。
河上「そ……、それは……!!」
佐伯の右手の人差指にはカリスマリングがはめられている。
「今のところ彼らは……、あなたによる一連の暴力行為を親に話さないでいるのです……。そういう状態なのですよ」
河上「わ、私が悪かった!!許してくれ!!」
喪黒「いいえ、ダメです。約束を破った以上、あなたには罰を受けて貰わなくてはなりません!!」
喪黒は河上に右手の人差し指を向ける。
喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」
河上「ギャアアアアアアアアア!!!」
2年B組の教室。ここは河上が担任を受け持つクラスだ。
河上「今から朝礼を行います。今日は、佐伯君がまだ姿を見せていませんが……」
佐伯「先生、俺ならここにいますよ」
佐伯が戸を開け、教室の中に入っている。彼の左手には竹刀が握られている。
佐伯「今日の俺は違う……。なぜなら、あんたを全く怖いと感じなくなったから……」
佐伯は右の拳を握りしめ、河上に見せる。
河上「そ……、それは……!!」
佐伯の右手の人差指にはカリスマリングがはめられている。
22:2018/08/05(日) 14:42:02.024
佐伯「実は……、俺もカリスマリング持ってるんだ。今朝、登校中に喪黒とかいう人から貰ったんだよ……」
河上「あ、あわわわわ……」
佐伯「河上源一……。俺はお前のことをこの世で最も憎んでいる……。なぜならお前は……」
「授業中、意味もなく俺を殴りつけ……。部活動でも意味もなく俺に暴力を振るい続けたから……。毎日毎日……」
佐伯は両手で竹刀を握り、河上に向かって勢いよく振り落とす。
昼間。スーパー銭湯。サウナ室には喪黒福造を含め客たちが何人かいる。
部屋にあるテレビがニュースを流す。テレビを食い入るように見つめる客たち。
テレビ「……事件が起きたのは、新英中学校です。今朝、この学校の教室で……」
「中学2年の男子生徒が、担任の河上源一さんを竹刀で何度も滅多打ちにし、大怪我を負わせました」
「河上さんは市内の病院に搬送されましたが、全身打撲により間もなく死亡が確認されました」
「男子生徒はすでに傷害罪で逮捕されており、警察は容疑を殺人に切り替える方針です……」
スーパー銭湯を立ち去る喪黒。
喪黒「子供がまともに育つためには、大人たちが頼りになる存在となり、手本となる姿を見せる必要があります」
「そのために、大人が子供に対してやるべきなのは、適度に叱り適度に褒めること、これに尽きるでしょう」
「今の子供たちもやがては社会人となり……、自分自身が大人として子供と向かい合う日が来るものです」
「だからこそ……、子供たちの前では、まずは、大人たちがしっかりした振る舞いをするべきなのです」
「現代の子供たちの荒れ果てた姿は、ある意味、現代の大人たちの荒れ果てた姿の縮図なのかもしれませんねぇ」
「オーホッホッホッホッホッホッホ……」
―完―
河上「あ、あわわわわ……」
佐伯「河上源一……。俺はお前のことをこの世で最も憎んでいる……。なぜならお前は……」
「授業中、意味もなく俺を殴りつけ……。部活動でも意味もなく俺に暴力を振るい続けたから……。毎日毎日……」
佐伯は両手で竹刀を握り、河上に向かって勢いよく振り落とす。
昼間。スーパー銭湯。サウナ室には喪黒福造を含め客たちが何人かいる。
部屋にあるテレビがニュースを流す。テレビを食い入るように見つめる客たち。
テレビ「……事件が起きたのは、新英中学校です。今朝、この学校の教室で……」
「中学2年の男子生徒が、担任の河上源一さんを竹刀で何度も滅多打ちにし、大怪我を負わせました」
「河上さんは市内の病院に搬送されましたが、全身打撲により間もなく死亡が確認されました」
「男子生徒はすでに傷害罪で逮捕されており、警察は容疑を殺人に切り替える方針です……」
スーパー銭湯を立ち去る喪黒。
喪黒「子供がまともに育つためには、大人たちが頼りになる存在となり、手本となる姿を見せる必要があります」
「そのために、大人が子供に対してやるべきなのは、適度に叱り適度に褒めること、これに尽きるでしょう」
「今の子供たちもやがては社会人となり……、自分自身が大人として子供と向かい合う日が来るものです」
「だからこそ……、子供たちの前では、まずは、大人たちがしっかりした振る舞いをするべきなのです」
「現代の子供たちの荒れ果てた姿は、ある意味、現代の大人たちの荒れ果てた姿の縮図なのかもしれませんねぇ」
「オーホッホッホッホッホッホッホ……」
―完―
23:2018/08/05(日) 14:42:55.090 ID:YIB4Mo3Da.net
おつ
24:2018/08/05(日) 14:43:28.672 ID:uWMROqCpr.net
乙
25:2018/08/05(日) 14:55:18.007 ID:ikHBUH+o0.net
なかなか良かった
あっぷあっぷ
あっぷあっぷ
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