1: 2009/04/28(火) 21:11:44.30 ID:PK5w7XN10


「――きた!成功した!!」


3: 2009/04/28(火) 21:13:22.26 ID:PK5w7XN10
―魔王城

魔王「"異世界へ通ずる扉"?」

部下「はい」

部下「ここ"魔界"と並行して存在すると言われる別の世界…
    その内の一つへと繋がる扉が完成したとの情報が」

魔王「くだらん。そのようなもの…」

部下「開発者はあの術師だとの噂が」

魔王「……!」

魔王(若くして数々の術を開発した、という――)



魔王「…その者を連れて来い」

部下「はっ」

4: 2009/04/28(火) 21:14:46.17 ID:PK5w7XN10

術師「魔王陛下からの御呼びとあらば自ら足を運びました。何故このような…」

魔王「異世界へ通ずる扉……と言うのは、本当か?」

術師「…! …何故、知っておられるのでしょうか」

魔王「質問をしているのはこっちだ」

術師「……」

術師「はい、本当です」

魔王「証明できる物は」

術師「"向こうの世界"と繋いだ後、見たことの無い、植物の一部と思われるものを発見しました」

術師「魔界に存在する全ての植物と照らし合わせてみましたが、該当するものはありませんでした」

部下「…嘘偽りはないようです。実際術師の部屋にはそれと思しきものがありました」

魔王「……そうか」

5: 2009/04/28(火) 21:16:05.47 ID:PK5w7XN10
魔王「術師よ。その術、是非とも我が為に使わせてはくれぬか!」

部下「っ陛下!!下々の者に頭を下げるなど!」

術師「そうです、止してください、そのようなこと!」

術師「そのようにされなくとも私は」








術師「私は術を教える気など全く御座いません」

6: 2009/04/28(火) 21:17:54.79 ID:PK5w7XN10
部下「……貴様、ふざけて言っているのか?」

術師「いえ。陛下の前でふざけるなど」

部下「そのような事を言って許されるとでも?」

術師「しかし何と言われようと、嫌なものは嫌なのです」

部下「貴、様…!!」

魔王「部下よ」


魔王「その者を始末しろ」

術師「おや、宜しいのでしょうか?扉の開け方は」

魔王「貴様がどうなろうが、研究書はもうこちらの手に入った」

魔王「もう用済みなのだよ」

7: 2009/04/28(火) 21:19:38.93 ID:PK5w7XN10
術師「…そうですか、残念ですね」

術師「私のみ知る暗号で記されたものなのに」

部下「暗号?」

術師「はい。……いや、その前に何重もの魔法が掛けられております」

術師「その研究書の魔法を解除・解読できるのは私だけ」

魔王「……」

術師「殺しますか?」


魔王「……こいつを牢獄に入れろ、最下層だ」

魔王「手足が無くなってもよい、なんとしてでも聞き出すのだ!!」

8: 2009/04/28(火) 21:21:26.06 ID:PK5w7XN10
―監獄

拷問官「…入れ」

術師「寒い、暗い、無駄に広い」

術師「しかも血生臭い」

術師「…俺はこんな所で生活せにゃならんのか」

拷問官「そう。毎日私によるお楽しみ付きでね」

術師「そりゃ、楽しみだ」

9: 2009/04/28(火) 21:23:39.79 ID:PK5w7XN10
術師「拘束はこの手錠だけか?」

拷問官「魔力を吸収する。何をやっても無駄」

術師「手足は無くなる、と聞いたが?」

拷問官「手が無くなれば次は首輪。繋ぐ場所なんていくらでもあるの」

術師「おーおー怖いねえ」

10: 2009/04/28(火) 21:25:28.19 ID:PK5w7XN10
術師「鞭」

拷問官「そう」

術師「あいにく俺にはそういう趣味は無いんだが」

拷問官「嫌でも付き合ってもらうわ、貴方が言うまでね」

拷問官「あと趣味ではない」

11: 2009/04/28(火) 21:28:10.87 ID:PK5w7XN10
術師「爪剥ぎ」

拷問官「そう」

術師「地味」

拷問官「そうね」

術師「これもお前の趣味か」

拷問官「だから趣味ではない」

拷問官「今日は左手」

12: 2009/04/28(火) 21:29:57.46 ID:PK5w7XN10
術師「爪……じゃ、ないのか」

拷問官「指よ、左手貸しなさい」

術師「わざわざ爪の後か。ご丁寧な事だ」

術師「…ところで全く寝られないんだが」

拷問官「痛くて?」

術師「床が固い、冷たい」

術師「せめて枕が欲しい」

拷問官「我慢しなさい」

14: 2009/04/28(火) 21:31:29.89 ID:PK5w7XN10
術師「…昨日の指は片づけないのか」

拷問官「元々貴方の体に付いていたもの…」

拷問官「離れ離れになると寂しいでしょ?感謝しなさい」

術師「へぇ、そりゃありがたい」

拷問官「……元気ないのね」

術師「枕をよこせ」

拷問官「嫌」

拷問官「…観念しちゃえば楽に寝られるのに」

術師「ふざけるな」

拷問官「…ふん」

拷問官「今日のメニューは…」

15: 2009/04/28(火) 21:32:56.73 ID:PK5w7XN10
―魔王城

拷問官「陛下、本日で10日目になりますが……口を割りそうにありません」

魔王「……」

魔王「…手足の切断は出血量が多いのだがな」

魔王「仕方あるまい、死なぬ程度に殺せ」

拷問官「……はっ」

17: 2009/04/28(火) 21:35:14.62 ID:W0eTWX4z0
術師平然としすぎだろ・・・

18: 2009/04/28(火) 21:35:15.33 ID:PK5w7XN10
―監獄

拷問官「今日は腕」

術師「……左からか」

拷問官「そう」

拷問官「…痛いけど、死んじゃだめよ?」

術師「…」

拷問官「貴方は私のおもちゃなんだから」

19: 2009/04/28(火) 21:37:10.71 ID:PK5w7XN10
術師「……拷問官さんよ」

拷問官「なに?」

術師「今日でめでたく10日目だ」

拷問官「そうね」

術師「だから特別にサプライズを用意してある」

拷問官「? ロクに動くことすらできないくせn」


 手錠は 破裂した!

拷問官「なっ…」

 術師は 自由になった!

20: 2009/04/28(火) 21:38:42.32 ID:PK5w7XN10
拷問官「貴様っ逃げられるとでも……」

拷問官「!?」

 拷問官は 動きを封じられている
 拷問官は 魔法を封じられている

術師「ふん…俺も甞められたものだな」

術師「この様な物で俺を完璧に封じたつもりだったか?」

術師「残念だが、この世に完璧など存在しないのだよ」


拷問官「……私をどうする?殺す?」

術師「お前には世話になったからな。殺しはせん」


術師「俺の手では、な」

22: 2009/04/28(火) 21:40:06.71 ID:PK5w7XN10
術師「俺は行く手を阻む者は全て消すだろう」

術師「そしてここは牢獄の最深部」

術師「はたして助けはいつ来るだろうか?」

術師「助けが先か、餓死が先か…」

術師「…仮に命拾いしたとしても」

術師「俺を逃した罪……只では済むまいよ」

術師「まぁ、時間はたっぷりある。ゆっくり考えればいい」

23: 2009/04/28(火) 21:41:58.71 ID:PK5w7XN10
術師「俺はもう行く」

術師「大量の命を奪ったであろうこの部屋で」

術師「お前の、死を目の前にし苦痛に歪む顔が見れないことを…」


術師「非常に残念に思う」


あァぁぁぁぁああぁああぁああぁああああぁぁぁぁあぁぁぁああぁぁぁあぁぁぁあ
ああぁぁぁあぁぁぁ  扉は 堅く堅く閉ざされた!  ぁあぁぁあぁあぁあああぁぁ
ちくしょおおおぉぁ  叫び声は 虚しくこだました! ぁあああああぁぁぁぁああ
ぁあああぁぁぁああぁぁぁぁああぁあああぁぁああああああぁぁぁぁあぁぁあああ

25: 2009/04/28(火) 21:43:23.56 ID:PK5w7XN10
―魔王城

魔王「……私は」

魔王「私は恐ろしいのだ」

魔王「奴の目が」

魔王「奴の魔法が」

魔王「奴の存在が」

魔王「恐ろしいのだ」

魔王「この王がだ、まったく、笑えるな」


部下「――陛下!!」

部下「奴が、術師が……脱獄しました!!」

魔王「……なんだと!」

28: 2009/04/28(火) 21:45:56.69 ID:PK5w7XN10
―監獄

術師(無駄に広い通路だ)

術師(……流石に腐敗しかけていては歩き辛いな、爪もないし)

術師(くそ、あの女め)

術師(しかしこれ以上治癒に魔力を割くわけにもいかない)

術師「……お」

 術師は 階段を発見した!

29: 2009/04/28(火) 21:47:55.90 ID:PK5w7XN10
術師(……階段がこれほどの敵になろうとは、だれが思っただろうか)

術師(やっと上がりきったか)

術師(あと何階あるのか…)

術師「……これが最後の拷問か、拷問官よ」

 術師は 扉を開けた!


「お前が術師か」    「ボロボロじゃないか」 「指がないのか」
      「油断するな、気をつけろ」             「こいつがあの…」
 「足が震えてるぜぇ?」       「この大人数に勝てるとでも思っているのか」

術師「……ハァ」

 看守x20が あらわれた!


 看守x20は 一瞬で消し炭になった!

術師「……塵が残ってしまったが、仕方あるまい」

31: 2009/04/28(火) 21:49:25.87 ID:W0eTWX4z0
oh・・・なんというチート・・・

32: 2009/04/28(火) 21:49:50.04 ID:PK5w7XN10
術師「さて」

 術師は 牢屋を解き放った!
 囚人は 解放された!

術師「やる気があるやつは付いてこい」

ウオオォオオォォォォオォオォォオオ!!!

術師「よし。じゃあ次の――」

術師「―ぅお、……っと」

 術師は よろめいた!

 魔物Aは 術師を受け止めた!

魔物A「おいおいどうした兄ちゃんよ、フラフラじゃねえか!」

魔物A「そんなでオレ達まとめようってのか、笑わせるな!」

術師「うるさい、食うぞ犬っころ」

魔物A「ハッハ!いくら魔力あったって体力無けりゃ意味ねぇよなぁ」


魔物A「背中に乗りな、脚になってやる」

33: 2009/04/28(火) 21:51:18.79 ID:PK5w7XN10
―魔王城

魔王「どうした!術師はまだ捕まらんのか!」

部下「それが、解放した囚人を引き連れ監獄を次々と突破しているようです!」

魔王「…全部隊を向かわせろ、殲滅だ!」

部下「はっ、直ちに!」

魔王「くっ…我が城を乗っ取るつもりか、あの若造め…!!」

34: 2009/04/28(火) 21:52:44.32 ID:PK5w7XN10
―監獄

 術師は 囚人たちを解放した!
 囚人たちは 自由になった!

魔物A「ついにこの扉を開けりゃシャバの空気か!」

魔物B「でも外には多分……」


 術師たちは 監獄を脱出した!

 A~R部隊が あらわれた!

魔物B「……やっぱり」

35: 2009/04/28(火) 21:54:49.32 ID:PK5w7XN10
兵士「貴様等、よくもここまで暴れてくれたものだ」

兵士「だが我らを前に、魔力の尽きている貴様等に何ができる?」

兵士「もう逃げ場はないのだ!」

魔物A「おいおい……万事休すか?」


術師「……いや」

術師「お前らが暴れてくれたお陰で少し余裕ができた」

術師「俺が相手してやる」

兵士「そのナリのお前一人でか?……面白い!!」

38: 2009/04/28(火) 21:56:13.21 ID:PK5w7XN10


術師「行くぞ」

魔物A「お、おう」

魔物A(……なんて無茶苦茶な魔法だよ)

魔物B「少しの余裕でこの魔法…貴方の魔力は尽きることはないのですか」

術師「そうだったとしたら、俺はとっくにこの世界を征服してるだろうな」

魔物B「……」

魔物B(…恐ろしい人だ)

39: 2009/04/28(火) 21:57:43.67 ID:PK5w7XN10
―魔王城

部下「……A~R部隊、……壊滅しました」

魔王「……ッ 奴はここへ向かっているか?」

部下「いえ、それが……全く逆の方向へ向かっているようです」

魔王「逆だと?その方向にはなにもないはずだが…」

部下「はい。S~Z部隊が追っています」

41: 2009/04/28(火) 21:59:31.96 ID:PK5w7XN10
―森

魔物A「おい!本当にこっちで良いのか!?」

術師「ああ。草原があったはずだ」

魔物A「草原って……何も無いじゃねえかよ」

術師「だから、だ」

魔物A「?」

42: 2009/04/28(火) 22:01:12.58 ID:PK5w7XN10
―草原

術師「……よし、ここら辺で良いだろう」

術師「魔物B、俺を乗せて飛べ」

魔物B「はい。…いきますよ」

 魔物Bは 空高く飛び上がった!

 術師は 地面に向かって 魔法をつかった!
 術師は 何かをかいている!

魔物B「……これは」

魔物B(魔方陣か、しかも相当複雑な)

45: 2009/04/28(火) 22:02:31.68 ID:PK5w7XN10
魔物A「何やってんだあいつ…」

魔物A「……!」スン

魔物A(…この匂いは…)


魔物A「おい!!もう追手が来ている、急げ!!」

46: 2009/04/28(火) 22:03:59.37 ID:PK5w7XN10
術師「…完成だ」

術師「お前ら!全員陣の中へ入れ!」

術師「俺達は今、未知なる世界へ足を踏み入れようとしている!」

術師「ここに未練がある者は帰ってかまわない」

術師「しかし、生きるため、自由のたm」
魔物A「うるせぇ!!もうすぐそこまで来てる、さっさとしろ!!」

術師「……チッ」

 術師は 呪文を唱え始めた!

47: 2009/04/28(火) 22:05:47.76 ID:PK5w7XN10
兵士「! 居たぞ!あそこだ!!」

兵士「あいつ…何をしている!?」

兵士「構わん、殺せ!!」

 兵士達は 槍をはなった!

 術師に 579のダメージ!

術師「…ッ!」

魔物A「! おい!大丈夫か!!」

魔物B「……くそ…!」

48: 2009/04/28(火) 22:07:26.60 ID:PK5w7XN10
術師「……大丈夫、だ」


術師「今、終わった」





 辺りは眩い光に包まれた!


50: 2009/04/28(火) 22:09:09.27 ID:PK5w7XN10

兵士「目が…目が……ああぁ」

兵士「何が起こった…!!」

兵士「……おい、これ……」

 地面には 巨大な 抉り取られたような跡がある!


兵士「あいつら……逃げられた!!」

兵士「くそ…!!」

52: 2009/04/28(火) 22:11:04.62 ID:PK5w7XN10
―魔王城

魔王「……」

部下「申し訳……御座いません…」

魔王「総力をあげて、このザマか」

部下「…っ」


魔王「…ッ」

魔王「……減った分の兵士、補充しておけ」

部下「! …はっ!」

54: 2009/04/28(火) 22:13:26.28 ID:PK5w7XN10
―???

魔物A「うっ…何がどうなったんだ」

魔物B「此処はいったい……」

魔物A「…!術師!…死んだか?」

術師「………」

魔物B「…呼吸はあります、まず怪我をなんとかしなければ…」

魔物C「はーい!魔物Cちゃん登場~」

魔物A「! お前治せるのか?」

魔物C「いや、魔力がないと…でも応急処置はしなくちゃ!ね?」

魔物A「あ、あぁ、そうだな。頼む」

55: 2009/04/28(火) 22:15:34.83 ID:PK5w7XN10
魔物B「今はとにかく安全な場所を見つけるのが先決でしょう」

魔物B「洞窟かなにかあれば…」

魔物M「おっし!ならばオイラが掘ってやろう!」

魔物M「掘削歴30年!ブランク10年!久々に腕がなるぜぇ!」

魔物B(うるさいヤツだ)



―洞窟

魔物A「ほー、なかなか快適じゃねえか」

魔物M「おう、ハァ、まぁ流石に、ハァ、300人分の、ハァ、スペース掘るのは、ハァ、大変だったけどな、ハァ」

56: 2009/04/28(火) 22:17:36.81 ID:PK5w7XN10
魔物A「…此処、いったいどこなんだろうな」

魔物B「……」

魔物B「看守の会話を小耳に挟んだのですが」

魔物B「この男…拷問を受けていたそうです」

魔物A「ああ、確か下から来てたな」

魔物A「つーかあそこ、飯ほとんど出ないらしいな。オレ死んでも行きたくない」

魔物B「なんでも、魔王を前にしても秘密を明かさなかったとか」

魔物A「秘密?」

魔物B「はい。…異世界…魔界とは違う世界へ行く方法」

57: 2009/04/28(火) 22:19:19.37 ID:PK5w7XN10
魔物B「呪文を唱える前言っていましたよね、未知なる世界、と」

魔物A「……それが此処ってわけか」

魔物B「…おそらく」

魔物C「ふーん。やっぱりすごいんだ、この人」

魔物C「魔王と同じ種族だよね、きっと。この種族はみんなすごいなー」

魔物B「そのおかげで残る個体もほとんどいないのですがね」

魔物A「…恐いねえ、強すぎるってのも」

58: 2009/04/28(火) 22:21:30.08 ID:PK5w7XN10


術師「……む」

魔物A「お、生き返ったか」

魔物A「3日も寝てたんだぞお前」

術師「…眠っている間に俺を食っておけば…膨大な魔力が手に入ったのにな」

魔物A「冗談言うな、テメェなんか食ったら逆に魔力に呑まれちまう」

術師「…ふん」

術師「…ここは?」

魔物A「お前が一番よく知ってる場所だ」

術師「…ああ、そうか…成功したか…」

61: 2009/04/28(火) 22:23:51.41 ID:PK5w7XN10
魔物B「魔力が回復した者で刺された箇所の治癒は行いました」

魔物B「しかし指は完全に腐敗してしまったため…」

術師「…そこは仕方あるまい。俺の魔力が回復したら自分でなんとかしよう」

術師「…それまで魔法は使えなくなるがな」

魔物A「…おいまたオレを脚にする気か」

術師「犬は主人に従うものだ」

魔物A「誰が主人だ誰が」

62: 2009/04/28(火) 22:25:45.38 ID:PK5w7XN10
魔物C「偵察部隊ただいま帰還~ って、あ、術師さん起きてる!」

術師「?」

魔物B「小型かつ飛行能力のある者たちに周囲の偵察を頼んでいました」

魔物C「この穴周辺は安全だし、外に出てから話すよ」

術師「早速仕事だ魔物A」

魔物A「…へいへい」

63: 2009/04/28(火) 22:27:29.27 ID:PK5w7XN10
―草原


魔物C「……で、これがこの世界を支配してるらしい種族、"ニンゲン"!」

 魔物Cは ニンゲンに変身した!

術師「…ふむ、ヒト型か。大きさも同じようなものだ」

魔物C「うん。でも魔力はほとんど感じなかったな。魔法を使えるとしてもそこまで多くはないみたい」

64: 2009/04/28(火) 22:28:52.37 ID:PK5w7XN10
術師「3日もの間、食糧はどうしていた?」

魔物C「仲間が牢獄の手錠をまだ持っててね、売ってみたら吃驚するほどの金額!」

魔物B「どうやらこの世界には無い物質のようです」

魔物C「だから食糧に困ることはないかな」

術師「そうか」

魔物C「それでね、ニンゲンの食に対する探究心は凄いんだよ!魔法も使ってないのに本当に美味しくて」

術師「そこまでは訊いていない」

66: 2009/04/28(火) 22:30:23.09 ID:PK5w7XN10


―洞窟

術師「…そろそろ指を治すか」

魔物A「普通の治癒魔法では治せなかったのか?」

魔物B「治癒魔法は対象の治癒能力をサポートするだけのものです」

魔物A「…?」

魔物C「…つまり、無くなったものはどうにもできないってこと。分かった、単細胞君?」

魔物A「んだとコラお前m」
術師「集中力が途切れる、黙ってろ」

 術師は 集中力をたかめている!

67: 2009/04/28(火) 22:31:45.64 ID:PK5w7XN10
 術師は 呪文を唱えた!

 指の根本から 骨が生えてきた!
 骨を 筋肉と血管が覆った!
 指は 皮膚に包まれた!

 指は 完全に復元した!

術師「ぅ……ッ」

魔物A「…すげえ…」

魔物B「本当に再生した…!」

68: 2009/04/28(火) 22:34:14.31 ID:PK5w7XN10
魔物C「すっごい…!ねぇ術師さん!あたしに教えてよ、この魔法!」

術師「…やめておけ、これはリスクが高い」

術師「魔力の消費が激しいし時間もかかる」

術師「おまけに発動者・対象者共に、それを失った時の痛みを感じてしまう」

魔物C「…痛いのはイヤ」

術師「…だろうな」

術師「改善の余地はあるんだろうが…実験では皆ショックで死んでしまってな」

魔物A(恐ろしいことをサラリと言いやがる)

70: 2009/04/28(火) 22:36:00.89 ID:PK5w7XN10


術師「ふむ…痺れも引いてきた、久々に歩いてみるか」

魔物B「御供しましょうか?」

術師「いや、一人で良い」



―草原

術師(…良い風だ)

術師(魔界のようなねっとりとした空気がないからか)

72: 2009/04/28(火) 22:38:14.77 ID:PK5w7XN10
術師「…む」

 術師は 巨木を見つけた!


術師(立派な木だ…)

術師「……!」

術師(この木、この葉……)

術師「…ああ、そうか」


術師「これはこの世界の存在を確信させたものか――」

74: 2009/04/28(火) 22:41:12.16 ID:PK5w7XN10
術師(…不思議なものだ、ここに俺の家があったのだ)

術師「…これも何かの縁、お前に名をやろう」


術師「 "始まりの樹" …というのはどうだ」

術師「安直過ぎたか?」

75: 2009/04/28(火) 22:42:26.71 ID:PK5w7XN10

術師「……」

術師(……俺は馬鹿か、何をやっているんだ、たかが木相手に)

術師(帰るか)


術師「……」

術師「…また来るぞ」

77: 2009/04/28(火) 22:44:18.08 ID:PK5w7XN10
―洞窟

魔物C「術師さんおかえり、遅かったね!脚はもう大丈夫なの?」

術師「ああ、すまんな。脚はもう大丈夫だ」

魔物B「…おや、何か良いことでもあったのですか?」

術師「? 何故?」

魔物B「いや、何やら嬉しそうな顔をしていたので」

術師「…そうか。…いや、別になんでもない」

術師「それより飯にしよう。腹が減った」

魔物B「そうですね。魔物Aも騒いでいます」

78: 2009/04/28(火) 22:46:23.46 ID:PK5w7XN10
―――
――



―始まりの樹

魔物A「おい術師!……やっぱりここにいたか」

魔物B「そろそろ日が暮れます」

術師「ん、ああ、すまなかった」

80: 2009/04/28(火) 22:48:55.01 ID:PK5w7XN10
術師「…」

術師「…俺達がこの世界へ来てどれぐらい経った?」

魔物A「ん、100年…ぐらいか」

術師「そう、100年。生活の地を他に移した者も人間に模して生活している者もいる」

術師「寿命を迎え命を落とした者もいる」

82: 2009/04/28(火) 22:50:17.44 ID:PK5w7XN10
術師「たった100年だ」

術師「その間に人間は何度戦争した」

術師「何度下らない理由で醜い争いを繰り返した」

術師「これ以上繰り返しては、この種族は滅んでしまう」

術師「……俺の種族のようにな」

魔物B「……」

83: 2009/04/28(火) 22:51:48.68 ID:PK5w7XN10
術師「人間は愚かだ」

術師「愚か故に同じ過ちを繰り返す」


術師「…だから俺がこの世界の頂点に立ち――」


術師「この世界を変える」


術師「……」

術師「ふん…まるで子供のもつ夢のようだ」

85: 2009/04/28(火) 22:53:06.10 ID:PK5w7XN10
術師「…お前たちは、付いてきてくれるか」

魔物A「しょうがねーな、主人の言うことだ」

魔物B「貴方に救われた命。尽きるまで御伴いたします」

術師「…ふん」

魔物B「皆元死刑囚…他の者達も喜ぶことでしょう、魔王陛下」

術師「魔王、か」

術師「…悪くない」

87: 2009/04/28(火) 22:54:18.41 ID:PK5w7XN10
術師「さて、今日は良き日だ」

術師「壮大に宴でもしようじゃないか」

魔物A「おう、そうだな!よし魔物B、酒買ってこい、あと肉だ!」

魔物B「はいはい」


おしまい

90: 2009/04/28(火) 22:56:04.56 ID:W0eTWX4z0
乙!

術師がこんなに強いのは種族の能力?修行?

91: 2009/04/28(火) 23:00:22.35 ID:PK5w7XN10
支援してくれた人読んでくれた人マジ感謝
最後打ち切りエンドみたいになって申し訳ないと思っている

>>90
元の種族が強いのもある
魔界の中では上級で、種族内で戦争しまくってその生き残りみたいな設定

93: 2009/04/28(火) 23:02:36.31 ID:cLhsPPdo0
平行世界の魔王になった術師は元の世界の魔王とはなんの関係もなかったのか
おもしろかった
おつ

95: 2009/04/28(火) 23:05:49.15 ID:Wq6VTmMA0
おつ

引用元: 魔王「私は新世界の…」