1: 2013/02/03(日) 02:11:19.18 ID:p/m7TR5F0
ζ*'ヮ')ζ<このスレは『やよい「デスノート?」』の続きのお話になります



やよい(『デスノート』というノートを拾ってから一ヶ月)

やよい(このノートは、そこに名前を書かれた人が死んでしまうという、とても恐ろしい力を持ったノートなのですが)

やよい(幸いにも、私はまだ一度もこのノートを使うことなく日々を過ごせています)

やよい(今も私の傍にいる、このノートの元の持ち主である死神さんと一緒に……)

4: 2013/02/03(日) 02:19:57.54 ID:p/m7TR5F0
やよい「今日は早く帰れたから、ちょっと手の込んだお料理にしようかなー」

リューク「…………」

やよい「死神さんは何か食べたいのありますかー?」

リューク「……いや、俺は別に……」

やよい「そうですよね! 死神さんはりんごしか食べないですもんね!」

リューク「…………」

やよい「でもりんごって結構高いんですよねー」

リューク「……なあ、やよい」

やよい「はい?」

リューク「お前、いい加減デスノート使わないのか?」

やよい「使いませんよー!」

リューク「あんな便利な道具を一ヶ月も使わずに放置してるなんて、お前どうかしてるぞ」

やよい「そう言われても困るかなーって!」

リューク「…………」

5: 2013/02/03(日) 02:26:39.43 ID:p/m7TR5F0
リューク(あれから一ヶ月間、こいつと一緒にいたが……)

リューク(こいつがデスノートを使おうとしたのは、親友の伊織が誘拐されたあのときだけだった)

リューク(それ以外は、まったく使う素振りを見せなかった)

リューク(それどころか、誰かを恨んだり妬んだりする気配すらない)

リューク(俺はもっとこう、ノートを拾った人間のドロドロした葛藤が見たかったのに……)

リューク(……やっぱり、あのときに目の契約をさせた方がよかったか……?)


やよい「……じゃあ、今日はもやし祭りにしましょう!」

リューク「……『じゃあ』ってお前、それじゃいつもと一緒だろ」

やよい「あ、わかっちゃいましたー? あははっ!」

リューク「…………」

6: 2013/02/03(日) 02:27:29.82
まだリューク帰ってなかったのか

8: 2013/02/03(日) 02:31:04.40 ID:p/m7TR5F0
やよい「あれ? あれは……」

リューク「ん? 何だ?」

やよい「長介」

リューク「お、本当だ」

やよい「でも、なんか様子が……」

リューク「ん?」


男子A「おい高槻ィ、金貸してくれって言ってんだろぉ」

男子B「頼むよ長介ちゃん」

男子C「俺ら友達だろぉ?」

長介「…………」

9: 2013/02/03(日) 02:36:27.15 ID:p/m7TR5F0
リューク「ウホッ! あれってカツアゲってやつじゃないのか?」

やよい「…………!」


男子A「なあ高槻ィ」

長介「……もう金は無い。この前ので俺の小遣いは全部だ」

男子B「あー? 何言ってんだよ長介ちゃん」

男子C「お前のねーちゃん、アイドルで稼ぎまくってんじゃねぇか」

長介「…………」

男子A「そうそう、それをほんのちょーっと貸してくれればいいだけなんだからさあ」

男子B「はした金だろ? 765プロのアイドルからすれば」

男子C「ほら、早くしろよ」

長介「…………」

10: 2013/02/03(日) 02:39:44.13 ID:p/m7TR5F0
やよい「やめなさい!」

長介「!? 姉ちゃん!」

男子A「うお! 噂をすれば」

男子B「へぇ、やっぱ可愛いな~本物は」

やよい「あなた達……こんなことして……!」

男子C「あらあら、なんかお姉ちゃんご立腹みたいだぜ」

男子A「美しい姉弟愛だなあ」

男子B「ぎゃっはっはっ」

やよい「…………!」

リューク(あ、めっちゃ怒ってる)

11: 2013/02/03(日) 02:45:29.72 ID:p/m7TR5F0
男子A「まあいいや、姉ちゃんに免じて今日は許してやるよ」

男子B「その代わり今度また頼むぜ、長介ちゃん♪」

男子C「あ~なんか左肩が痛いわ~」

長介「! …………」

男子A「じゃあな、高槻。また明日♪」

男子B「ぎゃっはっはっ」

長介「…………」

やよい「長介……あの子たち……」

長介「……ごめん、姉ちゃん。大丈夫……大丈夫だから」

やよい「大丈夫じゃないでしょ!」

長介「!」

やよい「さっきの言い方からして……今までも、あの子たちにお金、渡してたの?」

長介「…………」

やよい「何で……何でもっと早く私に相談してくれなかったの!? 長介!」

長介「…………」

12: 2013/02/03(日) 02:52:20.90 ID:p/m7TR5F0
長介「……あいつら、何かにつけてよく俺につっかかってきてたんだ」

やよい「え?」

長介「……最初の頃は、うちが貧乏だからって、バカにしてきて」

やよい「…………」

長介「でも、姉ちゃんがアイドルとして売れてくるようになってきたら、今度はそのことでからかってきて」

やよい「? 私の事で?」

長介「……『お前の姉ちゃんは枕営業して売れるようになったんだ』とか……」

やよい「! なっ……」

長介「その他にも色々、姉ちゃんの事を悪く言ってきて……」

やよい「…………」

長介「……それで俺、ある日、キレちゃって……手、出しちゃったんだ」

やよい「!」

長介「さっき『左肩が痛い』って言ってたやつ、いただろ? あいつの左肩、思いっきり殴ったんだ」

やよい「…………」

14: 2013/02/03(日) 02:59:06.98 ID:p/m7TR5F0
長介「そしたらさ、なんか青痣ができたみたいで……それの写メ撮って、俺を脅してきたんだ」

やよい「…………」

長介「『このことをマスコミにばらされたくなかったら、金出せ』って」

やよい「なっ……。マスコミって、何で……?」

長介「……『高槻やよいの弟がクラスメイトに暴力を働いた』って言えば、マスコミは絶対食いついてくるって」

やよい「!」

長介「『そうなったら、お前の姉ちゃんも、他の765プロのアイドルも、大幅なイメージダウンになる』って言われて……」

やよい「そんな……」

長介「もちろん、そんな子供の言うことをどこまでマスコミが取り上げるかは分からない。でも、俺が先に手を出しちゃったのは事実だから……」

やよい「……それで、あんな風に恐喝されてたの……?」

長介「まあね……。あ、でも家のお金には手付けてないから! 今まで渡したのは、あくまで俺の小遣いだけだよ」

やよい「…………」

15: 2013/02/03(日) 03:02:18.01 ID:p/m7TR5F0
長介「……まあ、進級すればクラスも変わるし、そうなれば自然とこういうこともなくなると思う……」

やよい「…………」

長介「だから……姉ちゃんは心配しないで」

やよい「…………」

長介「姉ちゃんはもちろん……伊織さんとか、他のアイドルの人達にも、絶対迷惑掛けたりしないから」

やよい「…………」

長介「……姉ちゃん?」

やよい「……ねぇ、長介」

長介「?」

やよい「さっきの子たちの名前……教えてくれる?」

17: 2013/02/03(日) 03:09:31.21 ID:p/m7TR5F0
~高槻家・やよいの部屋~

やよい「…………」

リューク「どうした? やよい……。さっきから、デスノートを机の上に開いたまま、固まってるようだが」

やよい「…………」

リューク「書くのか? あいつらの名前……」

やよい「…………」

リューク「まあ、こういうときのためのデスノートだしな。普通に使う限り、まずばれることも――……」

やよい「……死神さんはちょっと黙っててください」

リューク「……はい」

やよい「…………」


やよい(このノートに名前を書けば、それだけであの子たちを殺すことができる……)

やよい(そうすれば、長介を助けてあげられる……)

やよい(死神さんが言ったように、誰にも気付かれることなく……)

やよい(…………)

18: 2013/02/03(日) 03:15:03.11 ID:p/m7TR5F0
~翌日・765プロ事務所~

やよい「おはようございまーす!」

P「おはよう、やよい。今日も元気いっぱいだな」

やよい「はい! 元気が私の取り柄ですから!」

伊織「おはよう、やよい」

やよい「おはよう、伊織ちゃん!」

伊織「……? やよい、昨日遅かったの?」

やよい「え?」

伊織「いや、目の下にちょっとクマが出来てるから」

やよい「うぇえ!? 本当ですかー?」

P「あー、ホントだ。よく見たら分かるレベルだけど。でもやよいが夜更かしなんて珍しいな」

やよい「えっと、実は昨日、ちょっと弟の宿題を手伝ってて……」

P「そっかあ、やよいはお姉ちゃんだもんな。でもあんまり無理し過ぎないようにな?」

やよい「はーい!」

伊織「…………」

19: 2013/02/03(日) 03:21:02.10 ID:p/m7TR5F0
伊織「やよい、ちょっと」

やよい「? 何? 伊織ちゃん」

伊織「いいからこっち来て」グイッ

やよい「わっ」

P「?」


(Pから少し離れたスペース)


やよい「何? 伊織ちゃん……」

伊織「やよい……何かあったの?」

やよい「え?」

伊織「今日のあんた、ただの寝不足って感じじゃないわ」

やよい「そ、そんなことないですよー?」

伊織「……どうなの? リューク」

リューク「うえっ?」

やよい「!」

20: 2013/02/03(日) 03:22:47.51 ID:p/m7TR5F0
伊織「……やよいに、何かあったんじゃないの?」

やよい「…………!」

リューク「いや……特には」

伊織「……本当に?」

リューク「ああ」

伊織「ふぅん……まあ、それならいいけど」

やよい(ほっ)

伊織「……でも、やよい」

やよい「えっ、な、何? 伊織ちゃん」

伊織「……デスノートに関することでも、それ以外でも……何か困ったことがあったら、すぐに私に言うのよ。わかった?」

やよい「う……うん」

リューク「…………」

21: 2013/02/03(日) 03:32:33.35 ID:p/m7TR5F0
~事務所からの帰路~

やよい「でも今日はびっくりしました……」

リューク「ああ、伊織のことか」

やよい「いつも通りに振る舞ったつもりだったのに、まさかあんなに一瞬で気付かれるなんて……」

リューク「まあ、あいつお前のことは本当によく見てるからな」

やよい「あ、でも、死神さんもありがとうございました!」

リューク「ん?」

やよい「ほら、伊織ちゃんに対してちゃんととぼけてくれたから!」

リューク「ああ……だって今あいつに喋っちゃうと、あいつお前からノート取り上げかねないからな」

22: 2013/02/03(日) 03:34:03.52 ID:p/m7TR5F0
やよい「……そうなったら、私がノートを使えなくなるから、ですか?」

リューク「まあそうだな」

やよい「……あくまで、私にノートを使わせたいんですね」

リューク「まあ、別に伊織が使ってもいいけど……」

やよい「けど?」

リューク「……なんとなく、お前が使った方が面白くなりそうだからな」

やよい「…………」

23: 2013/02/03(日) 03:38:49.81 ID:p/m7TR5F0
~高槻家~

やよい「ただいまー」

長介「あ、姉ちゃんお帰り」

やよい「! 長介……!? その、顔の傷……」

長介「ああ、これ? へへ、ちょっと派手に転んじゃって……」

やよい「転んでこんな傷ができるわけないじゃない!」

長介「…………」

やよい「……あの子たちにやられたの?」

長介「…………」

やよい「長介、もうこうなった以上は学校に……」

長介「ダメだよ」

やよい「!?」

24: 2013/02/03(日) 03:42:10.50 ID:p/m7TR5F0
長介「言っただろ? そんなことしたら、姉ちゃんや、他のアイドルの人達にも、迷惑が……」

やよい「でも! もうこうなったらお互い様じゃない! 長介だけが手を出したわけじゃない!」

長介「それでも一緒だよ。『高槻やよいの弟がクラスメイトに暴力を働いた』って事実に変わりはない」

やよい「でも……」

長介「俺は大丈夫だから。……ね? 姉ちゃんは心配しないで」

やよい「…………」

25: 2013/02/03(日) 03:45:27.96 ID:p/m7TR5F0
~やよいの部屋~

リューク「まあ、もう小遣いは全部渡したって言ってたもんな」

やよい「…………」

リューク「金が出せないとなったら暴力とは……クックックッ」

やよい「…………」

リューク「なあ、やよい」

やよい「…………」

リューク「もう、我慢しなくてもいいんじゃないか?」

やよい「…………」

リューク「昨日も言ったが、こんな時のためのデスノー……」

やよい「……死神さんは黙っててください」

リューク「……はい」

27: 2013/02/03(日) 03:52:58.92 ID:p/m7TR5F0
やよい(……一気に三人が心臓麻痺で死んだら怪し過ぎる……)

やよい(……でも、デスノートは『物理的に可能な範囲で』対象者の死因を設定することができる……)

やよい(交通事故……自殺……病死……。死因を変えた上に日時もずらせば、まず偶然性を疑われることは無いはず……)

やよい(でも……)

やよい(…………)

やよい(……前の伊織ちゃんのときは、まったく迷う余地が無かった)

やよい(あのときは、伊織ちゃん自身の命が危険に晒されていたから……)

やよい(でも、今回の長介はそうじゃない……。命そのものが、直接危険に晒されているとまでは言い難い……)

やよい(でも……)

やよい(…………)

28: 2013/02/03(日) 03:56:28.07 ID:p/m7TR5F0
やよい(……それに、相手はまだ子供……。しかも、長介のクラスメイト……)

やよい(長介だって、『殺してやりたい』とまでは思ってないはず……)

やよい(でも……)

やよい(…………)

やよい(……殺してやりたい)

リューク「! (やよいの顔つきが変わった)」

29: 2013/02/03(日) 03:59:26.81 ID:p/m7TR5F0
やよい(今まで……こんな感情を持ったことは無かった)

やよい(でも、今はっきりと分かる)

やよい(私は……長介を苦しめているあの三人を、殺してやりたくて仕方がない)

やよい(これが……『殺意』……)

やよい(このノートに名前を書けば、それだけで……)

やよい(…………)

30: 2013/02/03(日) 04:00:04.11
さついのはどうにめざめたやよい

31: 2013/02/03(日) 04:01:42.02
黒いやよいも可愛いな

32: 2013/02/03(日) 04:03:07.69 ID:p/m7TR5F0
~翌日~

やよい「…………」

リューク「ククッ。大丈夫か? やよい……結局、ほとんど一睡もしてないんだろ?」

やよい「……大丈夫、です……」

リューク(結局昨日は名前を書かずに終わったが……もうこの分なら時間の問題だな)

リューク(……いや、でもなんか忘れてるような……)

 ガチャ

やよい「おはようございます」

P「おはよう、やよ……ってどうした、昨日にも増してクマ……」

伊織「やよい!?」

リューク「あっ」

33: 2013/02/03(日) 04:06:45.42 ID:p/m7TR5F0
伊織「ちょっとどうしたの!? どう見ても普通じゃないわよね!?」

リューク(こいつのこと完全に忘れてた)

やよい「おはよう伊織ちゃん……大丈夫だよ……」

伊織「………来なさいっ!」グイッ

やよい「あっ」

P「お、おい、伊織……」

伊織「すぐに戻るわ!」バタン

36: 2013/02/03(日) 04:13:17.13 ID:p/m7TR5F0
~屋上~

伊織「昨日言ったわよね? 困ったことがあったら私に相談しなさい、って」

やよい「…………」

伊織「…………」

やよい「……伊織ちゃん」

伊織「…………」

やよい「伊織ちゃんは……誰かを殺したいって思ったこと……ある?」

伊織「……えっ?」

37: 2013/02/03(日) 04:17:27.34 ID:p/m7TR5F0
やよい「…………」

伊織「やよい……あんた、まさか……」

やよい「ううん。殺してない。殺してないよ……まだ」

伊織「まだ……?」

やよい「でも……もう時間の問題だと思う」

伊織「…………!」

やよい「私、知らなかった。自分の中に、こんな感情が生まれるなんて」

伊織「…………」

やよい「『デスノート』っていう手段が手に入ったからなのかな? いつでもそれができるんだと思うと、もう……この『殺意』を抑え続けられる自信がないかなーって……」

伊織「……詳しく聞かせて頂戴。……やよい」

やよい「……うん。わかったよ、伊織ちゃん。……実は……」 

38: 2013/02/03(日) 04:23:43.46 ID:p/m7TR5F0
伊織「そんなことが……」

やよい「……うん……」

伊織「…………」

やよい「私、ずっと思ってた。自分がデスノートを使うときがもし来るとしたら、この前の伊織ちゃんのときみたいに、自分にとって大切な人の命が危険に晒されたときだろうな、って……」

伊織「…………」

やよい「……でも、違ったみたい」

伊織「…………」

やよい「……命の危険とまでいかなくても……大切な人を傷つける人がいたら、それだけで……その人を『殺したい』って思うんだなーって」

伊織「…………」

やよい「……ねえ? 伊織ちゃん。これって私がおかしいのかな? 普通の人は、こんな風に思わないのかな?」

伊織「…………」

やよい「私が、実はすごい醜い心の持ち主だったから、だからこんな風に、簡単に『殺したい』なんて――……」

伊織「――――」ギュッ

やよい「伊織……ちゃん?」

伊織「…………」

39: 2013/02/03(日) 04:29:20.32 ID:p/m7TR5F0
伊織「やよい……あんたはおかしくなんかないわ」

やよい「伊織ちゃん……」

伊織「むしろあんたは、心が綺麗過ぎるくらいよ……」

やよい「え?」

伊織「だってこれまで一度も、誰かを『殺したい』なんて思ったことなかったんでしょ?」

やよい「……うん」

伊織「私なんて、今までに何回思ったか知れないわ。……いいえ、実際に、頭の中で何人殺してきたことか」

やよい「……そうなの?」

伊織「そうよ。だからやよい……あんたはおかしくなんてないの」

やよい「ありがとう……伊織ちゃん」

伊織「……いいのよ。やよい……」

41: 2013/02/03(日) 04:36:53.20 ID:p/m7TR5F0
伊織「それでやよい、ちょっとお願いがあるんだけど……」

やよい「? 何? 伊織ちゃん」

伊織「デスノートの所有権を……私に譲渡してくれないかしら?」

やよい「えっ」

リューク「ウホッ」

伊織「お願い……」

やよい「い、伊織ちゃん……まさか……」

伊織「違うわ。何も、あんたに代わって殺したりはしないわよ」

やよい「……じゃあ、どうして?」

42: 2013/02/03(日) 04:38:01.54 ID:p/m7TR5F0
伊織「……今のあんたにそのままデスノートを持たせておくのは、危なっかしいからね」

やよい「伊織ちゃん……」

伊織「どんな理由があれ、やっぱりやよいに殺人なんてさせたくないし」

やよい「…………」

伊織「……だから、私に所有権を譲渡してほしいの。……できるわよね? リューク」

リューク「ああ。所有権の譲渡は自由にできるし、やよいはまだ一度もノートを使ってないから、所有権を譲渡してもデスノートに関する記憶も消えない」

やよい「……でも……」

リューク「あ、でも所有権を失ったら俺の姿は認知できなくなるから、所有権を譲渡した後に、再度ノートに触れる必要はあるな」

やよい「それは別にどっちでもいいです」

リューク「…………」

44: 2013/02/03(日) 04:42:37.53 ID:p/m7TR5F0
伊織「……で、どうかしら? ……やよい……」

やよい「……わかりました」

伊織「! やよい」

やよい「……でも、一つだけ約束してください」

伊織「? 約束?」

やよい「……はい。……絶対に、私に黙ってノートを使わない、って……」

伊織「……ん。約束するわ。もし使うときは、必ず事前にやよいに相談する」

やよい「……約束、だよ。伊織ちゃん」

伊織「ええ、約束!」

45: 2013/02/03(日) 04:52:55.59 ID:p/m7TR5F0
~同日夕刻~

伊織「……なんか、常に自分の背後に死神がついてるのってすごく気になるわね……」

リューク「ククッ。まあそう言うなよ。やよいはすぐ順応してたぜ」

伊織「あの子が特別なのよ」

リューク「……ククッ。まあそうかもな」

伊織「あ」

リューク「ん?」


男子A「おらぁ!」バキッ

長介「ぐっ……」

男子B「もうそのへんにしとこうぜ。あんまりやってると人目に付く」

男子C「明日こそ金持って来いよ。ああ左肩が痛いわ~」

長介「…………」

47: 2013/02/03(日) 04:54:43.46 ID:p/m7TR5F0
男子A「じゃあな」

男子B「ぎゃっはっはっ」

長介「くそっ……」


リューク「……あいつ、日に日にボロボロになっていくな……やよいがあのままノート持ってたら、今日あたり名前書いてたかもな」

伊織「…………」ズンズン

リューク「お」

伊織「……長介」

長介「! 伊織さん……何でここに」

伊織「…………」

48: 2013/02/03(日) 04:59:15.74 ID:p/m7TR5F0
リューク「あれ? お前こいつと知り合いだったのか?」

伊織「まあね」

長介「え?」

伊織「……何でもないわ。それより、やよいから聞いたわよ。……さっきの奴らのこと」

長介「…………」

伊織「……やり返さないのね」

長介「……これ以上、俺の方から手を出したら、あいつら、何するか分からないから……」

伊織「……長介」

長介「? 何?」

伊織「……このノート、触ってみてくれる?」スッ

長介「え?」

リューク「!?」

49: 2013/02/03(日) 05:04:03.57 ID:p/m7TR5F0
長介「…………?」チョン

リューク「…………」

長介「」

リューク「あ、えっと」

長介「どわああああああああああああああああ!!!!!!」

伊織「はい、お約束のリアクションありがとう。じゃあちょっと説明するわね」

長介「はっ……あっ……えっ……!?」


~説明終了~


伊織「……といいうわけなのよ。わかった?」

長介「……ごめん、正直まだ全然頭が追い付いてない」

伊織「でしょうね」

長介「……でもまあ、こうやって死神の人がいるってことは……うん、伊織さんの言ってることが嘘じゃないってことは、うん、わかる……」

リューク「(死神の人て)……そりゃどうも」

伊織「それだけ分かってくれたら十分よ」

50: 2013/02/03(日) 05:08:45.59 ID:p/m7TR5F0
長介「で、でも、えっと、なんで、俺に、その……」

伊織「……あんたには、知っておいてほしかったの」

長介「え?」

伊織「やよいの……苦しみを」

長介「姉ちゃんの……」

伊織「やよいは……すごくすごく悩んでた。さっきの奴らを殺したいっていう気持ちと、それはしちゃいけないっていう良心とのはざまで」

長介「…………」

伊織「あんたはやよいのため、さらには私たちのためまで考えて……自分一人が我慢する道を選んでくれたのよね」

長介「……うん」

伊織「そのことは本当にありがたく思うわ。でも……そんな風に我慢しているあんたを見て、やよいはすごく苦しんでいたの」

長介「…………」

伊織「……正直、もうこれ以上は見ていられないってくらいにね……」

長介「…………」

51: 2013/02/03(日) 05:15:06.44 ID:p/m7TR5F0
伊織「あんたが悪いわけじゃない。悪いのは全部あいつらよ。でも……今のままじゃ、やよいは確実に壊れてしまうわ」

長介「そんな……じゃあ、どうすれば……」

伊織「……はっきり言ってしまえばね」

長介「?」

伊織「……私の家の……水瀬財閥の力を使えば、どうとでもできるのよ……この程度の問題は」

長介「水瀬財閥の……力?」

伊織「そう。……たとえば、あいつらの親の勤務先を調べて圧力を掛けることもできるし、うちの系列の調査事務所を使って個人的な秘密を調べ、それをネタに脅すこともできる」

長介「…………!」

伊織「少なくとも、あんたに金輪際手出しさせないくらいの脅しは十分可能なの」

長介「……そうなんだ……」

伊織「……でも……」

長介「……でも?」

55: 2013/02/03(日) 05:23:41.56 ID:p/m7TR5F0
伊織「それじゃあ正直……私の気が済まない」

長介「…………!」

伊織「以前の私なら、迷わず、今言ったような手段を使って終わらせていたんでしょうけど……」

長介「…………」

伊織「でも今の私には……もう一つの選択肢がある」

長介「! まさか……」

伊織「……そう。もう今更、隠し立てする意味も必要も無いからはっきり言うけど……」

長介「…………」

56: 2013/02/03(日) 05:24:44.93 ID:p/m7TR5F0
伊織「……私は、デスノートを使ってあいつらを殺そうと思っているわ」

長介「!」

伊織「でも、あいつらは仮にもあんたのクラスメイト……だからせめて最後に、あんたの了承を得てからにしようと思って」

長介「……じゃあ、俺にノートの事を教えたのは……」

伊織「……ええ。そのためよ」

長介「…………!」

伊織「あんたがいいと言うなら、私はこの場で……あいつらの名前を、このノートに書くわ」

長介「……伊織さん……」

伊織「……どう? 長介……」

長介「…………俺は…………」

59: 2013/02/03(日) 05:36:05.57 ID:p/m7TR5F0
~翌日~

男子A「わざわざ呼び出してくれたんだ、金は用意できてんだろうな?」

長介「…………」

男子B「それともまさか、単に俺らにいじめてほしくて呼び出したとか?」

男子C「それじゃドМじゃねーか。ぎゃっはっはっ」

長介「……どっちもちげーよ。バーカ」

男子A「……あ?」

男子B「今なんつったテメコラ」

長介「……お前らにやる金なんかねーし、お前らにいじめられるような趣味もねーって言ったんだ」

男子C「……じゃあ何のために呼んだってんだ? あ?」

長介「ケンカだよ」

男子A「はあ?」

長介「ケンカ売ってやるって言ってんだよ。だから今すぐここで買え」

男子B「……てめ……!」

男子C「……ぶっ殺したらあーっ!!」

60: 2013/02/03(日) 05:41:57.32 ID:p/m7TR5F0
長介「はっ……本気で人を『殺す』覚悟も持ったことないような奴が……」スッ

男子C「!(はや……)」

長介「口先だけで吠えてんじゃねーよ!」バキィッ

男子C「がはっ!」

男子A「! こいつ……!」

男子B「バカが! やりやがった! これでもう……」

長介「どこ見てんだこらぁ!」ドカッ

男子B「うごっ!」

男子A「野郎!」ブンッ

長介「ふん」ヒョイッ

男子A「あ!?」

長介「おらぁ!」ドゴッ

男子A「がっ、は……!」

61: 2013/02/03(日) 05:47:12.61 ID:p/m7TR5F0
~二十分後~

長介「はぁ……はぁ……」

男子A「い……いてて……」

男子B「てめぇ……分かってんのか……こんなことして……」

男子C「これでもう言い逃れできねーぞ……お前も……お前の姉ちゃんも、皆終わりだ……!」

長介「……しるか」クルッ

男子A・B・C「なっ!?」

長介「……訴えたきゃ、マスコミでも何でも勝手に行け。バーカ」ザッザッ

男子A「て、てめぇ……!」

男子B「今に見てろよ……」

男子C「くそが……!」

62: 2013/02/03(日) 05:53:18.36 ID:p/m7TR5F0
長介「あ」

伊織「やるじゃん」

リューク「ククッ」

長介「ははは……まあでも、ちょっとやりすぎたかも……」

伊織「何言ってんの。あれでもまだ手ぬるいくらいよ」

リューク「ま、殺されることに比べたらな」

長介「……そりゃそうか。あ、ところで伊織さん、例の……」

伊織「心配しなくても、もう全部手は打ってあるわ。あいつらが家に帰って親に泣きついたところで、逆に怒鳴り散らされるでしょうね」

長介「そっか、はは……助かったよ。……ありがとう」

伊織「……お礼を言うのは、こっちの方よ」

長介「え?」

伊織「……ありがとう。あいつら、ぶちのめしてくれて」

長介「……伊織さん……」

伊織「おかげですっきりしたわ。ま、本当は私直々にノートに名前書いてやりたかったんだけど」

63: 2013/02/03(日) 05:55:42.39 ID:p/m7TR5F0
長介「はは……まあでも、また傷だらけになっちゃったな……姉ちゃんになんて言い訳しよう」

伊織「……バカねぇ」

長介「え?」

伊織「そんなの、正直に言えば済む話じゃない」

長介「正直に?」

伊織「そ。『ムカつく奴らがいたから、こっちからケンカ売ってボコボコにしてやった』ってね!」

長介「……ははっ。そうする!」

66: 2013/02/03(日) 06:06:08.10 ID:p/m7TR5F0
長介「じゃあね、伊織さん! あと、死神の人も!」ダッ

伊織「ええ、またね」

リューク「じゃあな」


伊織「…………」

リューク「……なあ、伊織」

伊織「何?」

リューク「お前……あいつらをデスノートで殺すつもりだって言ってたけど……あれ、嘘だろ」

伊織「…………」

リューク「ああ言えば、長介が『それなら自分の手でぶちのめす』って言うのを見越して……」

伊織「……やよいも長介も、自己犠牲に過ぎるのよ」

リューク「…………」

伊織「……人のために頑張るのもいいけど、たまには自分のためのケンカも必要でしょ」

リューク「……なるほどな」

67: 2013/02/03(日) 06:07:28.56 ID:p/m7TR5F0
伊織「……なんだかんだで、結局、今回の件で一番我慢してたのは長介なんだから」

リューク「……でも、もし長介がそう言わなかったら……どうするつもりだったんだ?」

伊織「……そんなの、決まってるじゃない」

リューク「?」

伊織「……そのときは、私が本当にあいつらの名前をデスノートに書いてやるってだけの話よ」

リューク「……ククッ。なるほどな」

68: 2013/02/03(日) 06:24:30.93 ID:p/m7TR5F0
~翌日~

伊織「……本当にいいの? やよい……」

やよい「うん。私はもう大丈夫だから……。本当に色々ありがとう、伊織ちゃん!」

伊織「……ううん、私は何もしてないわ。本当に頑張ったのは長介よ」

やよい「……ふふっ。でも、昨日は本当にびっくりしたよー。長介ったら、傷だらけになって帰ってくるんだもん!」

伊織「あ、あはは……」

やよい「それで、また例の子たちにやられたのかと思って聞いたら、『自分からケンカ売ってボコボコにしてきた』なんて言うんだもん!」

伊織「あ、あはは……。(あいつ、本当にそのまま言ったのね……)」

やよい「あとそれに、いつまでも、死神さんの面倒を伊織ちゃんに見ててもらうわけにもいかないかなーって!」

リューク「……いや、そんなペットみたいに言わんでも」

伊織「……ふふっ、分かったわ。……じゃあ、デスノートの所有権をやよいに返すわね」

やよい「はい!」

69: 2013/02/03(日) 06:36:40.72 ID:p/m7TR5F0
やよい「なんか一日くらいしか離れてなかったのに、死神さんが後ろにいるのがすごく久しぶりな感じがしますー」

リューク「そうか?」

やよい「やっぱり一ヶ月も一緒だったから、体が慣れちゃったんですかねー」

リューク「まあ、そうかもな」

やよい「あ、もう家に着いちゃった。ただいまー!」

長介「お帰り! 姉ちゃ……」

リューク「……ん?」

長介「…………」ニッ

リューク「…………ククッ」

やよい「……?」

71: 2013/02/03(日) 06:42:57.86 ID:p/m7TR5F0
――伊織『そうそう、リューク』

――伊織『私が長介にデスノートの事を教えたのは、やよいには秘密だからね』

――伊織『やよいのことだから、こんな物騒な物の存在を弟が知ったと知ったら、また色々と無用な心配をするに決まってるんだから』

――伊織『……もう当分、やよいのああいう顔は見たくないから……ね』



リューク(……ククッ)

リューク(……結局あいつも、『人のために頑張る』側の人間だったってことか)

リューク(……いくらでも自分の利益のために使うことのできる道具が目の前にあるのに、一向にそれを使おうとせず、そればかりか、他人の心配ばかりする……)

リューク(……ククッ)

リューク(……やっぱり、人間って……面白!)







73: 2013/02/03(日) 06:44:50.16
乙。良かった。

続きもまた書いてくれ

77: 2013/02/03(日) 07:50:01.69
おっつ

79: 2013/02/03(日) 08:42:31.34
結局ノート使わないのがアイマスらしい

引用元: やよい「デスノートを拾ってから一ヶ月」