1: 2012/10/13(土) 19:10:43.90 ID:r8cpol0lI
少女「……眼、真っ赤だよ?」

少年「は?これちげーし。一晩中ゲームしてただけだし」

少女「……そのわりには、ノートびっしりだね」

少年「は?ちげーし。急いで友達のコピーしただけだし」

少女「手書きに見えるけど……」

少年「だからちげーし!徹夜でテスト勉強とかやってねーし!」

少女「……」

少年「あーやべー。マジやべーわー」

4: 2012/10/13(土) 19:20:50.52 ID:r8cpol0lI
~ 一週間後 ~


少女「……学年一位取ってるし」ボソッ

少年「は?そんなのたまたまだし。勘で答えたら当たっただけだし」

少女「……やけに嬉しそうだね」

少年「は? べ、別に嬉しくねーし!」

少女「……そう」


少女「……わたしだって、頑張ってるのにな……」

5: 2012/10/13(土) 19:30:45.29 ID:r8cpol0lI
~ 二週間後 ~


少年「あー、マラソン大会とかマジだるいわー」

少女「どうしたの?そのテーピング」

少年「は?何でもねーし」

少女「サポーターまで付けて。怪我してるなら休めば……」

少年「だから怪我なんてしてねーし!こっそり走り込みとかしてねーし!」

少女「……」

少年「あーやべー。マジだるいわー」

9: 2012/10/13(土) 19:40:21.48 ID:r8cpol0lI
~ 一時間後 ~


少女「……校内一位取ってるし」ボソッ

少年「は……?そ、そんなの……たまたま……だし……」ゼェハァ

少女「……息切れてるよ?」

少年「は……?そんなこと……ねぇし……」ゼェハァ

少女「……そう」


少女「……すごいな……くんは……」

少女「……それに比べて私は……」

11: 2012/10/13(土) 19:50:03.41 ID:r8cpol0lI
~ 二週間後 ~


少女「うぐっ……ひっく……」

少年「……」

少女「うぇえっ……うぇぇぇ……」

少年「……」

少女「……! ……くん!?」

少年「げっ……」

12: 2012/10/13(土) 19:56:55.06 ID:r8cpol0lI
少女「ど、どうしたの、こんな所に」ゴシゴシ

少年「は?夕飯のおつかい頼まれただけだし」

少女「……こんなスタジアムに?」

少年「は?ち、ちげーし!買い物の帰りだし!」

少女「そのわりには、袋の中身が小さいような……」

少年「だ、だからそんなんじゃねーし!お前の試合見に来たとかじゃねーし!」

少女「……!」

16: 2012/10/13(土) 20:02:15.85 ID:r8cpol0lI
少女「……そっか……見に来てくれたんだ……」

少年「だからちげーし!勝手に納得すんなし!」

少女「そっか……じゃあ、カッコ悪いところ見せちゃったね……」

少年「だ、だから……」

少女「……ごめんね……せっかく……見に来てくれたのに……」

少年「……」

19: 2012/10/13(土) 20:06:54.61 ID:r8cpol0lI
少年「ん」


少女「へっ……?」

少年「ん」

少女「何これ……?」

少年「アイスだし」

少女「……くれるの?わたしに?」

少年「は?他に何の意味があるんだし」

少女「で、でも……これっておつかいのなんじゃ……」

少年「~~~~~~~~っ!」

22: 2012/10/13(土) 20:11:29.96 ID:r8cpol0lI
バサッ!


少女「わっ!」


タッタッタッタッタッ…


少年「……」

少女「ちょ、ちょっと!……くん!?」


タッタッタッタッタッ…


少年「……」

少女「ね、ねぇ!待ってってば!」


タッタッタッタッタッ…

23: 2012/10/13(土) 20:16:24.37 ID:r8cpol0lI
クルッ


少年「おい!!」

少女「え……?」

少年「……ぁ……」

少女「……?」

少年「……ぁ……あし……」






少年「明日は笑って学校に来いよ!!」






少女「……!!」

少年「へへっ……じゃあな!」

24: 2012/10/13(土) 20:19:37.43
トトロのカンタ思い出した

34: 2012/10/14(日) 09:44:30.91 ID:GM8UaKGGI
~ 一週間後 ~


少年「……」

少女「あっ、いたいた……くーん!」パタパタ

少年「ぉ……」

少女「ごめん、まさかこんなに早く来てるとは思わなくて……」

少年「は?今日はたまたま早起きしただけだし」

少女「そっか……って!すごいクマだよ!大丈夫?」

少年「は?マンガ読んでて夜更かししただけだし」

少女「よくそれで早起きできたね……」

少年「べ、別に! 今日が楽しみすぎて眠れなかったとかじゃねーし!」

少女「ぇ……」

35: 2012/10/14(日) 09:54:52.58 ID:GM8UaKGGI
少女「……そ、そうなの?」モジモジ

少年「だ、だからちげーし!ヘンな勘違いすんなし!」

少女「……そっか、ふーん……」

少年「おい!だから勝手に納得すんなし!」

少女「……」

少年「お、おい……」

36: 2012/10/14(日) 10:01:16.17 ID:GM8UaKGGI
少女「……今日はごめんね、急に誘ったりして」

少年「……は?」

少女「このあいだのね、お礼をしようと思ったの。あのアイスの……」

少年「は?あんなのメッチャ安いやつだし」

少女「ううん、そうじゃなくて……」

少年「……?」

少女「……な、なんでもない」

37: 2012/10/14(日) 10:17:08.59 ID:GM8UaKGGI
少年「……?」

少女「だからその……迷惑じゃなかった? わたしなんかに誘われて……」

少年「は?お前バカかし」

少女「えっ……」

少年「本当に迷惑なら、はじめっから来てねーし」

少女「……!」


少女「……ふふっ」

少年「な……何だし」

少女「じゃあ行こっ!」ギュッ

少年「お、おい!勝手に手つなぐんじゃねーし!」

少女「へへ……今日はいっぱい楽しもうね!」

40: 2012/10/14(日) 16:03:01.51 ID:GM8UaKGGI
~ 七時間後 ~


少女「ふわぁ~~……いっぱい遊んだねぇ!」

少年「……も、もう限界だし……」

少女「うわ!すごい、もうこんな時間だよ!」

少年「だから、さっきからそう言ってるし……お前はしゃぎすぎだし」

少女「えー、だって楽しかったんだもん……」

少年「……」

少女「あ、そっか……くん、寝不足だったんだっけ?」

少年「……」

少女「……ごめん、やっぱり楽しくなかった?」

41: 2012/10/14(日) 16:06:00.61 ID:GM8UaKGGI
少年「……そ、そんなこと一言も……」

少女「あっ!見てほら!夕陽!」

少年「…………人の話を聞けし」

少女「わぁ……きれい……」

少年「ん……まぁ、悪くはねーし……」

少女「……」

少年「……」

少女「……」

少年「……」

42: 2012/10/14(日) 16:13:11.19 ID:GM8UaKGGI
少年・少女「「あ、あのっ……!」」




少女「あ……」

少年「……! な、何だし……」

少女「……くんこそ、何?」

少年「お……オレはあとでいいから、お前が先に言えし」

少女「わ、わたしの方こそ、あとでいいからさ!」

少年「……」

少女「……聞かせて」

43: 2012/10/14(日) 16:18:12.15 ID:GM8UaKGGI
少年「……じゃあ、言うし」

少女「うん……」

少年「……」

少女「……」

少年「あ、あの……」

少女「……うん」

少年「オレ……オレさ……」

少女「……」ゴクリ

少年「オレ……」








少年「オレ…………引っ越すことになったんだ」

45: 2012/10/14(日) 16:25:18.96 ID:GM8UaKGGI
少女「……………………え?」


少年「な……何だし」

少女「ひ、引っ越す……って……くんが!?」

少年「は?だからそう言ってるし」

少女「な、なんで!? 聞いてないよ!」

少年「……だって今言ったし」

少女「……そ、そんな……」

少年「……」

46: 2012/10/14(日) 16:31:10.90 ID:GM8UaKGGI
少女「…………いつ、引っ越すの?」

少年「来週の日曜にはもう……」

少女「ええっ!?急すぎるよ!」

少年「べ、別に急じゃねーし!前々から先生や友だちには言ってあるし!」

少女「ぇ……」

少年「……な、何だし」

少女「……じゃあなんで……わたしには言ってくれなかったの……」

少年「……そ、それは……」

少女「……」

少年「……なんで、お前に言わなきゃいけないんだし」

49: 2012/10/14(日) 16:41:38.52 ID:GM8UaKGGI
少女「……っ!」


バッ!


少年「おわっ!?」


ダッダッダッダッダッ…


少年「お、おい!ちょっと待てし!」


ダッダッダッダッダッ…


少年「おい!さっきお前は何を言いかけたんだし!」

少女「知らないッ!」


ダッダッダッダッダッ…


少女「……くんなんか……くんなんか……」

少女「……くんなんか、どこへでも行っちゃえ!」

53: 2012/10/14(日) 18:52:53.49 ID:GM8UaKGGI
~ 一週間後 ~


少年「……」

姉「……こんな所にいたか」

少年「……!」

姉「電車、そろそろ出るよ」

少年「……まだ十分以上あるし」

姉「父さんと母さんも待ってる」

少年「……」

姉「……」

54: 2012/10/14(日) 18:56:17.06 ID:GM8UaKGGI
姉「……あんた」

少年「……」

姉「もしかして、まだ例の子のこと……」

少年「……」

姉「……まぁいいけどさ」

少年「……」

姉「五分前には、ちゃんと来るんだよ」

55: 2012/10/14(日) 19:03:07.48 ID:GM8UaKGGI
~ 五分後 ~


少年「……」

少年「……」


『……くんなんか、どこへでも行っちゃえ!』


少年「……」

少年「……」


ー○○行きの電車が、まもなく出発しますー

ーご乗車の方は、一番ホームへお急ぎくださいー


少年「……」

少年「……」

少年「……あのバカ」

57: 2012/10/14(日) 19:08:03.82 ID:GM8UaKGGI
少女「……くん!!」




少年「……!!」

少女「はぁ……はぁ……」

少女「……ま、間に合ったよ……」

少年「お、お前……」

少女「……へへっ」

58: 2012/10/14(日) 19:11:46.54 ID:GM8UaKGGI
少女「ん」


少年「……へ?」

少女「ん」

少年「い、いきなり何だし……」

少女「アイスだし」

少年「は……?」

少女「あげる。メッチャ安いやつだけど」

少年「で、でも……お前……」

少女「……」

59: 2012/10/14(日) 19:14:35.09 ID:GM8UaKGGI
バサッ!


少年「おわっ!」


タッタッタッタッタッ…


少女「……」

少年「お、おい!」


タッタッタッタッタッ…


少女「……」

少年「ちょっと待てし!なんで……」


タッタッタッタッタッ…


少年「なんで……お前……」

60: 2012/10/14(日) 19:23:30.13 ID:GM8UaKGGI
クルッ


少女「ねえ!!」

少年「え……?」

少女「…………すーっ、はーっ……」

少年「……?」

少女「……っ」

62: 2012/10/14(日) 19:32:52.11 ID:2LgCMoPCI
少女「ありがとう!!」




少年「……!!」


少女「あのとき慰めてくれて、ありがとう!」

少女「あの日は付き合ってくれて、ありがとう!」

少女「すっごく……すっごく嬉しかった!」


少年「……な……」


少女「わたし……わたしね!」










少女「……くんのこと、だーいすき!!」

64: 2012/10/14(日) 19:39:33.18 ID:2LgCMoPCI
プロロロロロロ……


少女「……だからね、さよならじゃないよ」

少年「……!」

少女「絶対……」

少女「絶対、また会おうね!」

少年「……」

少年「……」

少年「……おう!」

65: 2012/10/14(日) 19:43:08.02 ID:2LgCMoPCI
姉「……行くよ」

少年「……うん」










少女「……くん、約束だよ」

少年「絶対……絶対……」


少年・少女「「絶対……また会おう」」

80: 2012/10/21(日) 10:03:45.67 ID:W03qTS6HI
~ 数年後 ~


少女「……」

少女「……」

少女「……」

少女「……」チラッ

少女「……」

少女「……そろそろかな」

81: 2012/10/21(日) 10:14:36.82 ID:W03qTS6HI
少年「……よう」






少女「……!」

少年「……な、なんだし」

少女「ぁ……」

少年「……まるで幽霊でも見たような顔だし」

少女「そ……そんな顔してない!」

少年「……っていうかすごいクマだし」

少女「えっ……」

少年「どっちかっていうとお前が幽霊だし」

少女「……」

82: 2012/10/21(日) 10:25:12.53 ID:W03qTS6HI
少女「……ふふっ」

少年「……な、なんだし」

少女「相変わらずだね……くんは」

少女「ちょっと安心したよ」

少年「……」

少女「ふふっ……それにその喋り方」

少女「もう大学生にもなるのに、ヘンなの」

少年「べ、別に!いつもこんな喋り方なわけじゃねーし!」

少女「ウソばっかり」

少年「ほ……本当だし!なに疑ってるんだし!」

少女「……ふふ」

83: 2012/10/21(日) 10:38:22.95 ID:W03qTS6HI
少女「……」

少年「……」

少女「……今日はありがとね、来てくれて」

少年「は? 俺から行くって言ったんだし」

少女「うん、まぁそうなんだけど……」

少女「……ありがと」

少年「……」

84: 2012/10/21(日) 10:44:11.94 ID:W03qTS6HI
少女「実はわたしね……」

少女「あの時……くんに、伝えきれなかったことがあるの」

少年「……」

少女「だから今日、伝えようと思って」

少女「新生活が始まる前に……」

少年「……奇遇だな、オレもだし」

少女「……そうなんだ」

少年「……」

少女「……じゃあ、ちょっと移動しよっか」

少女「それを伝えるのに……ふさわしい場所があるから」

90: 2012/10/21(日) 12:53:40.30 ID:Fl8vJCQ1I
~ 一時間後 ~


少年「……なぁ、まだ着かないのかし」

少女「もうちょっと」

少年「もう結構歩いたし……」

少女「あっ、もしかして疲れちゃった?」

少年「べ、別に……んなことねーし!」

少女「本当かなぁ~?」

少年「本当だし!」

少女「……ふふふっ」

91: 2012/10/21(日) 13:00:11.17 ID:Fl8vJCQ1I
少女「……」

少年「……」

少女「……あのさ」

少年「ん?」

少女「その場所に着く前に……聞いておきたいことがあるんだけど」

少年「は?何だし」

少女「うん……」

少年「……?」

少女「……くんが……」

少女「……くんがT大受けたのってさ」

少年「……?」

少女「その……わたしもT大を受けるって知ってたから?」

92: 2012/10/21(日) 13:05:29.53 ID:Fl8vJCQ1I
少年「は?んなわけねーし」

少女「……」

少年「っつーか、連絡をとったことすら数年ぶりだっていうのに」

少年「お前がどこの大学行くかなんて、知りようがねーし」

少女「……」

少女「……そっか」

94: 2012/10/21(日) 13:11:00.05 ID:Fl8vJCQ1I
少年「……?」

少年「それがどうしたし?」

少女「ううん……なんでもない」

少年「……」

少女「でも……」

少女「それを聞いて安心した」

少年「……?」

少女「その答えが聞きたかったの」

95: 2012/10/21(日) 13:18:26.03 ID:Fl8vJCQ1I
少年「は?」

少女「……ふふ」

少年「な、なに笑ってるんだし」

少女「なんでもなーい」

少年「おい、一体何を……」

少女「あっ!ほらあれ!見えてきたよ!」

少年「だ、だからお前は人の話を……」

96: 2012/10/21(日) 13:22:48.78 ID:Fl8vJCQ1I
少年「……!!」




少女「……ふふっ、思い出した?」

少年「えっ、あれって……」

少年「まさか……」

少女「そうだよ」

少女「わたしが……」

少女「……くんを初めて好きになった場所」

107: 2012/10/23(火) 04:08:07.71 ID:b0UfPe7HI
うおおおおおおおおおおおおおおおお!!

いけーーーー!!

ワー!ワー!ワー!




少女「おー!やってるねー!」

少年「……なんでちゃっかり観客席に座ってるんだし」

少女「いいじゃんいいじゃん!せっかくだから見ていこうよ」

少年「話があるんじゃなかったのかし……」

少女「……あっ、ほら!今戦ってるのわたし達の母校だよ!」

少女「いけーー!おせー!!」

少年「……」

108: 2012/10/23(火) 04:15:02.92 ID:b0UfPe7HI
~ 十分後 ~


少女「……はぁ」

少年「……負けたし」

少女「惜しかったなー……いいところまでいったのに」

少年「……お前、泣いてるのかし?」

少女「だって悔しいじゃん!」

少女「あの子たちすごく頑張ったのに……」

少年「……」

109: 2012/10/23(火) 04:20:33.68 ID:b0UfPe7HI
少年「……なんか、あの日を思い出すし」

少女「えっ……」

少年「ほら、忘れたのかし」

少年「お前がここでボロ負けした試合」

少女「……!」

少年「試合のあと、お前はあいつらみたいに大泣きしてて……」

少年「……オレはそれを、ちょうどこの辺から見てたんだし」

少女「……」

110: 2012/10/23(火) 04:32:03.45 ID:b0UfPe7HI
少女「……くん」

少年「ん?」

少女「……あのさ……」

少年「……?」

少女「実はね……」

少女「あの時のわたし……」

少女「……そんなに一生懸命じゃなかったの」

111: 2012/10/23(火) 04:38:28.27 ID:b0UfPe7HI
少年「えっ……」

少女「……わたしってさ」

少女「勉強はそれなりにできるけど、スポーツは全然ダメで」

少女「それがかなりのコンプレックスだったんだ」

少年「……」

少女「あの部活に入ったのも」

少女「そんなコンプレックスを克服するためだったんだけど……」

少女「……でもやっぱりダメだった」

113: 2012/10/23(火) 04:47:40.30 ID:b0UfPe7HI
少女「みんなの足は引っ張るし、コーチからは怒鳴られるし……」

少女「……正直言って、全然楽しくなかったよ」

少年「……」

少女「人数が少なかったから、わたしもレギュラー入りできたんだけど……」

少女「……それでも練習は、ほとんど投げやりにやってた」

少年「……」

少女「……だからね」

少女「あの時泣いてたのは試合に負けたからじゃない」

少女「……自分の情けなさに、泣いてたんだ」

114: 2012/10/23(火) 06:12:38.49 ID:b0UfPe7HI
少女「……そんな時だよ」

少女「スタジアムの廊下で……くんを見かけたのは」

少年「……あの時のお前」

少年「メチャクチャ驚いてたし」

少女「うん、だって本当にビックリしたもん」

115: 2012/10/23(火) 06:17:59.62 ID:b0UfPe7HI
少年「……オレがお前の試合を見にきたのが」

少年「そんなに意外だったのかし……」

少女「うん、それもあるね」

少年「……?」

少年「じゃあお前にアイスをやったのが……」

少女「もちろんそれもあるよ」

少年「……?」

少女「でもね……」

少女「わたしが本当に驚いたのはそこじゃない」

少年「は……?」

少女「わたしはあの時の……くんを見て」

少女「世界が180度変わったんだよ」

120: 2012/10/25(木) 16:42:17.57 ID:3pntJE++I
少年「何言って……」

少女「……気付いてた?」

少女「あの時の……くんさ」

少女「……眼、真っ赤だったよ?」

少年「えっ……」

少女「目の下にすごいクマもできてた」

少女「テスト前でもないのに」

少年「……」

少女「それに……なぜか足のテーピングも増えてた」

少女「マラソン大会は終わったのに」

121: 2012/10/25(木) 16:46:52.51 ID:3pntJE++I
少女「……それを見たときね、思ったの」

少女「ああこの人は……わたしとは違う次元で生きてるんだなって」

少年「……」

少女「この人が頑張ってるのは、定期テストのためじゃない」

少女「マラソン大会のためでもない」

少女「もっと大切な何かのためだって……」

122: 2012/10/25(木) 16:56:23.39 ID:3pntJE++I
少年「……」

少女「……だからわたしね」

少女「……くんの後ろ姿を見ながら、誓ったの」


少女「今はまだ敵わないけど」

少女「いつか絶対に追いついてみせる」

少女「そしていつか必ず……」

少女「……くんと同じレベルで勝負してやるんだって」

123: 2012/10/25(木) 17:03:44.63 ID:3pntJE++I
少年「……」

少女「それからわたしは頑張った」

少女「……くんがいなくなったあとも」

少女「勉強、部活、オシャレや家の手伝い……」

少女「全てにおいて全力を尽くした」

124: 2012/10/25(木) 17:09:50.83 ID:3pntJE++I
少年「……」

少女「今回わたしが最難関のT大を選んだのも」

少女「そういうわけなの」

少女「……くんならそれくらいやるって思ったしね」

少年「……」

少女「……くんが自分の意志で選んだ大学に」

少女「わたしは自分の力でそこに入って」

少女「そこで一緒に勝負する」

少女「……それがわたしの目標だったんだ」

125: 2012/10/25(木) 17:12:05.47 ID:3pntJE++I
少年「……」

少女「だからね……くん」

少女「わたし、負けないよ」

少年「……」

少女「……ちょっと長くなっちゃったけど」

少女「それがわたしの伝えたかったこと」

131: 2012/10/28(日) 09:26:53.00 ID:h48O0hcBI
少年「……」

少年「……そうだったのかし」

少女「うん」

少年「……」

少女「……」

少年「……だったら」

少女「……?」

少年「だったら……お前は少し勘違いしてるし」

132: 2012/10/28(日) 09:34:28.17 ID:h48O0hcBI
少女「えっ……」

少年「……オレはお前と違って」

少年「もともと勉強もスポーツも」

少年「どっちもダメだったんだし」

少女「……!」

少年「……でも」

少年「あの学校に入学して、初めてお前を見た時……」

少年「……オレは、頑張ろうって決めたんだし」

133: 2012/10/28(日) 09:42:16.24 ID:h48O0hcBI
少女「……? どうして?」

少年「……お前に……」

少女「……?」

少年「お前に……」

少年「……振り向いてほしかったからだし」

少女「……!!」

少年「……お前は」

少年「成績トップクラスだったから」

少年「こんなバカ男……相手にされないと思ったんだし」

134: 2012/10/28(日) 09:43:38.05 ID:h48O0hcBI
少女「……」

少年「だから頑張って……」

少年「頑張って頑張って……」

少年「初めてお前を追い抜いて……話しかけられた時」

少年「……オレは、飛び上がるほど嬉しかったんだし」

136: 2012/10/28(日) 09:51:15.17 ID:h48O0hcBI
『……眼、真っ赤だよ?』

『……学年一位取ってるし』

『……やけに嬉しそうだね』




少女「……!」

少年「……だから」

少年「あの日誘ってくれたことも」

少年「大好きって言ってくれたのも」

少年「ぜんぶ……」

少年「ありがとうだし」

少女「……」

少年「……これが、オレの伝えたかったことだし」

137: 2012/10/28(日) 10:04:44.40
なんで俺は手に汗握ってんだし...

140: 2012/10/28(日) 13:18:31.70
胸が締め付けられるし

141: 2012/10/28(日) 15:50:44.82 ID:h48O0hcBI
~ 十分後 ~


少女「うわ……もうこんな時間なんだ」

少年「……結局、閉館時間で追い出されたし」

少女「はは……」

少年「……」

少女「あの話……」

少女「係のおじさんに聞かれちゃったかな?」

少年「……知らねーし」

142: 2012/10/28(日) 15:53:01.62 ID:h48O0hcBI
少女「……」

少年「……」

少女「……!」

少年「……? どうしたし?」

少女「しっ」

少年「……?」

少女「見て……あれ」

143: 2012/10/28(日) 15:56:04.51 ID:h48O0hcBI
女の子「ひっく……えっぐ……」

女の子「うえぇぇぇ……」

女の子「うえっ……ひっく……」

男の子「……おい」

女の子「!」

男の子「……」

女の子「……くん!?」

144: 2012/10/28(日) 16:00:41.50 ID:h48O0hcBI
女の子「き……奇遇だねっ、こんな所で」ゴシゴシ

男の子「……別に」

男の子「奇遇じゃねーよ」

女の子「えっ……」

男の子「……」

男の子「……その……」

女の子「……?」

男の子「……見に、来たんだ」

男の子「お前の、試合」

145: 2012/10/28(日) 16:03:56.98 ID:h48O0hcBI
女の子「ぇ……」

男の子「……っ」

女の子「……」

女の子「……そっか」

女の子「そうだったんだ……」

男の子「……」

女の子「……じゃあ私……」

女の子「……くんに……あんなカッコ悪いところ……」

146: 2012/10/28(日) 16:09:28.97 ID:h48O0hcBI
男の子「ん」


女の子「えっ……?」

男の子「ん」

女の子「なに……?」

男の子「肉まん」

女の子「……?」

男の子「腹、減ったろ?」

女の子「え……」

男の子「……これ食べてさ」

男の子「早く、元気になれよな」

147: 2012/10/28(日) 16:15:31.46 ID:h48O0hcBI
少年「……」

少女「……ふふっ」

少年「な、なんだし……」

少女「おかしいよね」

少年「……?」

少女「だってわたしたちってさ……」

少女「結局、全部相手のために頑張ってたんだもんね」

少女「……我ながら不器用だよ」

少年「……」

148: 2012/10/28(日) 16:17:20.83 ID:h48O0hcBI
少女「……」

少女「……ねぇ」

少年「ん?」




ちゅっ




少年「!?」

少女「へへ……」

少年「なっ……!」

少年「お……おおおお前……」

149: 2012/10/28(日) 16:20:22.69 ID:h48O0hcBI
少女「……続き」

少年「は!?」

少女「あの日の続きだよ」

少女「こんなに夕陽が綺麗なんだから」

少年「……」

少女「……わたしのファーストキス」

少女「この日のためにとっておいたんだからね」

151: 2012/10/28(日) 16:23:01.62 ID:h48O0hcBI
女の子「……ありがとう……くん」

男の子「……おう」






少女「ありがと……くん」

少年「……!」

少女「帰ろ?」

少年「……」

少年「……おう」

152: 2012/10/28(日) 16:25:23.24 ID:h48O0hcBI
おしまい

ここまで見てくれた方、ありがとう

153: 2012/10/28(日) 16:26:51.06
ああああ


ハンカチいらねえとか言わねえし°・(ノД`)・°・

154: 2012/10/28(日) 16:37:55.38
泣いてなんかいねーし

引用元: 少年「え、今日テスト?やべー全然勉強してねーわー(赤目)」