2: 2010/04/25(日) 15:28:01.61 ID:D60mCHq40
「―――くんッ!」

「そんな顔すんじねェ。 オマエの悲しげな顔なんざ見たくねーからよ」

「だってそのケガ・・・凄い血じゃない・・・もう私の為に戦うのはやめなさいよ・・・だいたい―――
 私達学校でも顔見しりってだけだったし・・・そこまでされる義理はない!」

「『テメーを守る』――それがオレの役目だ」

「そんな事私は望んでないッ! 連中に私が捕まれば・・・それで誰も傷つかなくて済むじゃない・・」

「じゃあ言わせてもらう、捕まっちまったら・・・どうなるか分かるか? 
 体全身に電極やら何やら刺されて実験動物状態になるのがオチだ・・・それに耐えられンのか?」

「ッ―――でも、それで・・・それであなた達が助かるのなら―――私は構わない・・・殺されようと、どうなろうと・・・」

「テメーはそれでもイイのかも知れねーけどな、オレはそうゆーワケにはいかねーんだよ・・・!
 オマエと話した事なんて今まで一度も無かったが・・・オレは―――」


「対象を確認、捕縛行動に移行」


「チッ! 次から次へと・・・この話の続きはまた後だ・・・!退がってろッ!!」

「・・・もう止めてッ!」

5: 2010/04/25(日) 15:42:30.92 ID:D60mCHq40
長期休み明けで憂鬱な登校初日。 初日という事もあってか我が北高へと続く地獄の坂道は相変わらず体にこたえる。 
よくもまぁこんな坂道に耐え一年半も歩き抜いたもんだ・・・なんて、自画自賛をしていると、聴きなれた声が俺を呼び止めた

「よぉキョン!」

「谷口か朝っぱらからでかい声出しやがって・・・どこにそんな元気があるんだ。 少し分けてくれ」

「一日の始まりは挨拶からってゆーだろキョン。 イキのイイ挨拶は気持ちいいだろ?」

「あぁ、そうだな。 そういや夏休みの宿題やってきたか?」

坂道を登る体力もそうだが、谷口のあやしかたもレベルアップしているようだ。
谷口と坂を登り切り、教室のドアをガラッと開ける。
相も変わらず俺の後ろの席に座っているハルヒにとりあえず声をかけた。

「よっ」

「遅いわよバカキョン」

「なんでだ? 遅刻時間まで15分もあるぞ。 登校初日にしては早く来すぎた位だ」

「うるさいわね~、まぁいっか。 それより夏休みボケを吹き飛ばすために今週の土曜、不思議探索をするから」

「へいへい」

6: 2010/04/25(日) 15:48:16.04 ID:D60mCHq40
いつもの流れで俺の予定は何の了解もなしに埋まってしまった。
まぁ、別に暇だから構わないんだが。

「土曜だけじゃアレだし日曜もやろうかしら」

「日曜はダメだぞ俺は」

「あんたに発言権はないの! 黙って団長に従いなさい!」

「少しは雑用の都合も聞いてくれ、ハルヒ」

「じゃあ一応聞いたげるわ、日曜は何か予定でもあるの?」

予定を確認されたはいいが、少し言葉が詰まり、数秒の間が空いたのちの返答となった

「日曜は久々佐々木と服を買いに行くんだ。すまんがそういうわけだから―――」

「―――佐々木ってあの佐々木さんよね?」

「あぁ。 あん時に駅前で会った佐々木だ」

「ふっ、ふ~~~ん・・・そう・・・あの佐々木さんなの・・・」

「・・・で、どうしても服選びを一緒にして欲しいらい。 お礼に飯を御馳走してくれるとも言ってるし・・・」

7: 2010/04/25(日) 15:50:13.18 ID:D60mCHq40
「ダメ。 あんたは日曜も不思議探索するの。 SOS団とあの変な女のどっちがいいの? 答えなさい! 回答によっては氏刑も覚悟する事っ!!」

「無茶苦茶言うなよ。 もうOKの返事はしている。 生憎だが日曜は欠席させてもらうぞ」

「むっ・・・ならいいわよ・・・好きにしなさい! 日曜は中止ね、中止。 土曜は必ず来なさいよっ! それと日曜は翌日の団活にさしつかえないよう、すぐ帰宅する事! いい?!」

「わかったわかった」

全く・・・新学期早々ムチャ言いやがる。 まぁ今に始まった事でもないし、これ以上反論するのはよしておいたが懸命だろう・・・
後が怖いからな。 そうこうしていると我がクラスの担任岡部がドアを勢いよくオープンさせ、今学期初授業が始まった。

授業が始まったのはいいが、休みボケのせいか授業に頭がついていかない状態で、気づいたら放課後のベルが鳴り響いていた

「さてと」

重い腰を上げ、いつもの様に部室へ足を運ぼうとした時
ホウキを片手に持ったハルヒが声をかけてきた

「あんたは先行ってて。 そうそう、土曜の事みんなに伝えときなさいね。 私は掃除当番だから」

「了解。 じゃあ掃除頑張ってくれ」

8: 2010/04/25(日) 15:55:35.73 ID:D60mCHq40
部室に吸い込まれる様にドアを開けるといつものメンツが俺を迎えた

相も変わらず読書一筋の長門
いけすかない二ヤケ面の古泉
そして我が絶対的アイドル朝比奈さん

あとはハルヒが来れば、全員集合か・・・
そうだ。ハルヒから言づけがあったのをすっかり忘れかけていた
土曜の不思議探索の事を皆に話しておかなければ・・・

「―――ってわけだ。 いいか長門、古泉、それと朝比奈さんも」

分かってはいたが三人とも迷うことなくOKサインを出してきた
俺は思う
この三人はどんな大切な予定が入っていてもハルヒ関連の事なら、それそっちのけで優先させるんじゃないだろうかと

「フフ。 休み明けすぐに不思議探索とは・・・実に涼宮さんらしいですね」

「前に言った事はあるが、少しは皆の予定を確認してから、物事を決めるなりして欲しいもんだな」

「いいではないですか。 皆の意見を聞いて、行事を決める涼宮さんなんて、僕は違和感を覚えますよ」

「・・・言われてみるとそうだな・・・」

俺の発言の後、少し間が空く
古泉が一瞬下に目線を落とし、何かを決意した様な表情で俺を見据えてきた

9: 2010/04/25(日) 16:05:15.63 ID:D60mCHq40
「古泉どうかしたのか?」

「話があります」

「なんだ話って?」

「ここでは少々発言しにくい内容ですから、場所を変えましょう・・・よろしいですか?」


――――――――自動販売機前 ベンチ

「どうぞ」

そう言い古泉はコーヒーを渡してきた

「悪いな。 で、早速だが話ってのは何だ? わざわざ場所を変えたんだ、また閉鎖空間が発生したとかか?」

「御明答」

「・・・と、そう言いたい所ですが、残念ながら違います。 涼宮さんに関連している事に間違いはありませんが」

「閉鎖空間じゃなけりゃ一体なんだ? コーヒーまで貰って悪いが、とっとと話てくれ」

「フフッ、申し訳ない。 まずはお聞きしますが、藤原と言う男―――覚えていらっしゃいますよね?」

10: 2010/04/25(日) 16:15:06.29 ID:D60mCHq40
藤原――未来人だと言っていたな・・・
あいつはこことは地続きの未来から来たと言っていた・・・
この時間軸から枝分かれしている、朝比奈さんの未来とはまた別の未来から来たと


「あのいけすかない未来人がどうしたんだ・・・」

「彼から昨日、僕に対しコンタクトがありました。 あなたでもなく―――異なる未来とはいえ未来人である朝比奈さんでもなく――機関所属の僕にです」

「なんの為にお前にコンタクトしてきやがったんだ・・・?」

「そう険しい顔をなさらなくても大丈夫ですよ、僕は拉致も暴行も受けてはいませんから」

「お前の心配なんかしてない。聞きたいのはコンタクトをとってきた理由だ」

「ンフッ、これはこれは。 少々ショックですが・・・続けましょう」

「僕に対し藤原が驚く提案を持ちかけてきました・・・こちら側につけと」

「なぜお前をあの変な集団に引きずりこむ必要がある? 以前、佐々木はハルヒを自分の閉鎖空間に取り込み、力を手に入れる・・・そんな君達の目論見には絶対に加担したくないと・・・
 俺達の前で、あの変てこな連中に言っていただろ」

「佐々木さんが拒否するのなら、半ば無理矢理にでも彼女に力を転移させる―――それが彼の・・いえ――彼ら・・・
 藤原、橘、周防の目的です」

「放っておいても、佐々木にその気はさらさらなけりゃ、あの三人はチームワークなんてとれていない。
 こちらには長門がいる。 あいつらの目論みなんざ成功確率ゼロにきまっている」

11: 2010/04/25(日) 16:22:03.13 ID:D60mCHq40
「――僕も同じくそう考えています。 だからこそ僕に力を貸せという事でしょうね」

「断ればそれで済む話だろ」

「断れれば―――ですね」

「おい・・・・

「彼は僕に対し、自身の身のふり方を考え、改めざるおえないだけのモノを提示してきました。
 それが偽装されたモノだとは考えにくい。
 そして、藤原と朝比奈みくる・・・二人とも現在を未来へと誘導していく事が任務として課せられています。
 詳しくは分かりかねますが、朝比奈みくるのやってきた未来・・・藤原のやってきた未来・・・
 肝心な点はその二つの未来は決定的にかけ離れている・・・そのかけ離れている部分というモノを・・・僕は知ってしまった・・・」

「正直に申しげましょう―――僕は藤原という男を支持しています」

「お前・・・自分が何言っているかわかっているのか?」

「僕は正気ですよ。 彼の考えに僕は賛同している。 あなたが考えている程、彼は人間性が歪んだ男性ではありません」

「あいつは朝比奈さんを誘拐しようとしたヤツだぞ! なぜそんなヤツを信用できる?!」

「彼なりの考えがあっての行動です。 真相を知ってしまった今、あの時の行動を僕は非難する気にはなれません」

「おまえッ・・・!!!」

「ひとついいでしょうか?・・・その今にも僕に向かってきそうな握り拳を治めていただけますか・・・?」

12: 2010/04/25(日) 16:23:57.21 ID:D60mCHq40
俺はその言葉をかけられるまで自分が古泉に手を挙げる直前だという事に気付かなかった


「くそっ」

「ふぅ・・・・・あなたのお気持ちは分かります。 痛い程に」

「なら! なぜあの男の肩を持つ!?」

「申し上げた通りです。 彼の考えに賛同していると」

「古泉・・お前――言ったよな? 今後長門が窮地に追い込まるような事があれば、それが『機関』にとって好都合だとしても・・・
お前は一度だけ『機関』を裏切って俺にに味方すると・・・!」

「もしハルヒのあのけったいな力が佐々木・・・いや―――あいつらの手に渡れば何が起こるか分かったもんじゃない・・・!
 あいつらの仲間の中に周防って宇宙人がいる。 今回の件が長門に危機が迫るきっかけにならないとは言えないだろ!?」

「・・・・・・・」

しばしの沈黙の後俺が再び口を開く

「何か言ったらどうだ?」

13: 2010/04/25(日) 16:25:29.68 ID:D60mCHq40
「長門さん一人の命と、世界の滅亡―――てんびんにかけて重いのはどちらでしょうか?
 その長門さんを乗せた皿に・・・・涼宮さんと朝比奈さんを乗せても構いません」

「・・・・・・・・ッ!!」

「――――涼宮さんの願望実現能力は佐々木さんに渡すべきです。 仮に藤原の計画通りに涼宮さんがあの色彩豊かな閉鎖空間に取り込まれたとしても、彼女の意思は生きる
 それで世界の平穏が保たれるのならば―――」


  ガッ!!!


「はぁ・・・はぁ・・はぁ」

右の拳に血が滲む

  スッ

頬をハンカチで拭いながら立ちあがる古泉
悲しげな表情を浮かべながら

「まさかお前の口からそんなセリフが出てくるとは・・・夢にも思わなかった・・・」

「僕もまさかあなたに殴られるとは思っていませんでしたよ・・・」

14: 2010/04/25(日) 16:30:47.91 ID:D60mCHq40
「お前は!・・・一体どうするつもりなんだ!?・・・・・古泉っ!?」

「正直に申しましょう。 あなた方と仲違いになろうと・・・・それで世界の平穏が保たれるのなら・・・・・
 機関を抜けてでも彼の計画に力を貸す・・・かもしれません」

「・・・・・・・・くっ」

「・・・・今は自身の身の振り方を決めかねている―――それが今の僕の正直な気持ちです」

「そうか・・・!俺はお前の考えがまとまるまで、顔を合わせる気はないからな」

「それは僕も同じ・・・しばらくはSOS団にも顔を出さないつもりです
 そうそう。 涼宮さんにはバイトが忙しいとお伝えてしておいて下さい」

「・・・あぁ」

「では。 僕はこれで」


最後にいつもと変わらない穏やかな口調でそう言い残し
古泉は校門の方へと消えていった

「くそっ」


15: 2010/04/25(日) 16:31:48.12 ID:D60mCHq40
あいつが藤原とかいう風の悪い未来人に手を貸すだと?
今まで一緒に過ごしてきた一年半は・・・一体何だったんだよ!
あいつにとってはこの時間は機関から命じられた任務の一貫でしかなかったのか?!

ガシャンッ!

静める事のできない怒り・・・それにまかせて空き缶の詰まったボックスを蹴り飛ばす
それを見た下級生らしき人物と目が合うが、その瞬間彼女は眼をそらした

「・・・戻ろう」

靴のかかと部分を引きずる音と共に部室へと向かった


――――――――――部室

「遅かったですね。 あれ・・古泉くんは一緒じゃ・・・?」

「あいつならもう帰りましたよ」

「キョン! あんた団活ほったらかしてどこをほっつき歩いてたのよ!」

掃除当番を終えて戻ってきていたハルヒが声をあげる

16: 2010/04/25(日) 16:37:16.40 ID:D60mCHq40
「うるせーな。 あいつがバイトの悩みがあるとかで話を聞いてたら遅くなっちまったんだよ。 悪かったな」

「なによその反抗的な態度は! だいたいあんたはSOS団雑用としての心得がわかってないのよ! いい?! #$!”#&%$(&%」

頭に血が昇ったまま部室に戻ったのが災いして、ハルヒによる説教タイムが始まった
もちろん。あいつの言葉は右の耳から左へと抜けていき
生返事しかしない俺に更にボルテージが上昇したハルヒは『今日の団活は中止ッ!!!』と机を大きく叩いて帰って行った

「キ、キョンくん・・・聞いちゃダメなのかもしれませんけど、、その、、、古泉君と何かあったんですか?」

話をしないわけにはいかないだろう
もしあいつが藤原に手を貸さかったとしても、この現状では二人にも危険が及ぶ可能性が高い

「驚かずに聞いて下さい。 もちろん長門もだ」

「・・・・・・?」

長門が本をたたみこちらを振り向く
ただごとじゃない事を察しての事だろうか?

俺はさっきのあいつとのやり取りを話し出した
藤原と名乗る未来人が再びハルヒの力を佐々木に転移させようとしている事
そして 
古泉が藤原に手を貸そうとしている事も
俺が怒りにまかせてあいつを殴った事も
全て隠さず―――ありのままに

17: 2010/04/25(日) 16:38:07.77 ID:D60mCHq40

「ふ、ふぇぇ。 でもキョンくん・・・・・ぼ、暴力はわたし・・・・反対だと思いますぅ」

「俺はあいつを殴った事については・・・後悔なんてしていません」

「えっ?」

「後悔している事があるとすればあいつと今まで、時間を共有していた事です」

「・・・キ・・キョンくん・・・・・・」

「一つあなたに質問がある。 古泉一樹が『己の身のふるまいを改めざるおえない物』とは何?」

長門が重い口を開いた
だがそれに対し俺は回答を用意できない

「すまんが分からん・・・だが、用心深いアイツが信用するに値する物なんだろう・・・
 そんな事より・・・! 俺はあいつの仲間を売った様な発言が気に食わない・・・ッ!」

「少し頭を冷やして。 問題はそこではない。 未来からやって来た藤原が提示した改めざるおえない物とは何か。
 なぜそこまで涼宮ハルヒの力を必要としているのか。 その藤原のやってきた未来とは一体どのような未来なのか・・・・・
 問題にすべきはその三点」


ただ感情で発言を繰り返していた俺に対し
現状で問題にすべき点を提起する
その長門の言葉で沸騰していた脳内温度は常温近くまで下がった

18: 2010/04/25(日) 16:42:29.04 ID:D60mCHq40
「・・・・・・・す、すまん。 お前の言う通りだな長門・・・」

「もう一度、古泉一樹の発言を思い返して」

「・・・あぁ」

「私が問題として挙げた三点について、何か分かる事はない?」
 
「・・・・・・・・・・長門、ちょっと待ってくれるか?」

沈黙が包み込んだ部室内で、俺はさっきの古泉のセリフを思い返す

「はっきりとは言えんが、藤原の未来と・・・朝比奈さんの未来・・・その二つを比較すると、まるで藤原の未来が正しいような言い方に聞こえた」

「そう・・・。 朝比奈みくるに聞く。 あなたがいた未来について話せる範囲で話して」

「すっ、すいません。 過去の人に未来の事をはなすのは禁則にかかります・・・言えません・・」

「藤原と名乗る男が来たという未来については?」

「・・・・何も知りません・・・・・ごめんなさい」

「そう・・・・」

「朝比奈さん・・・その禁則事項ってのは・・・こんな非常時にも話す事ができないんですか・・・・?

19: 2010/04/25(日) 16:51:39.60 ID:D60mCHq40
「キョンくんには言ってなかったけど・・わたしは過去へ来るときに、
 未来に関する情報を漏らさないように強い精神操作を受けています」

「だからっ・・・話したくても話せないんです」

「そうだったんですか・・・・」

   ガタッ―――

途方にくれている俺をよそ眼に、長門が無言で席を立ったかと思うと、とことこと朝比奈さんに歩み寄った

「少しそのままで、極力思考する事を避けて」

そう言った長門が朝比奈さんの頭に手を伸ばす

「ふえっ?」

「おとなしくして」

「・・・はい」

朝比奈さんの頭に手をスッと置いた長門は、いつぞやのように何やら呪文のような物を唱え始める
そして長門がゆっくり目を瞑る

20: 2010/04/25(日) 16:53:33.61 ID:D60mCHq40
「・・・長門?」

「・・・・・・」

返答はない
十秒程の沈黙の後に長門が再び口を開いた

「・・・精神操作を解除する為に朝比奈みくるの脳にアクセスを試みた
 結論から言うと解除する事は可能」

「ふえっ! 本当ですかっ? なら――かけられている精神操作をといてください!
 この事は未来の人達にはだまっておきますからっ!」

「だが、その精神操作を解除する事で生命維持機能が停止する可能性が高い―――
 それにあなたは記憶を行うメモリーにあたる細胞群に強力な物理的プロテクトがかけられている。
 精神操作を解除した所で、その禁則事項にあたる言葉をそのメモリーから不備なくアウトプットできるとは思えない」

「って事は長門、つまり精神操作の解除は可能だとしても、それを行えば朝比奈さんは氏んじまう可能性が高く・・・
 仮にといたとしても、禁則事項に関する記憶は封印されているから意味がないと・・・・そういう事だな?」

「そう・・・厳重な二重の抑止」

「未来とはいえ、地球人が施した物を長門が解除できないなんてな。 俺達の未来はびっくりするくらい進んでるようだ」

「この惑星に人類が誕生してから現在まで。 その科学の発展速度を考えると、これ程の技術を得る事は不可能。 
 仮にそこまでの発展を遂げたとしても、それは地球時間に換算して5憶もの年数が必要」

21: 2010/04/25(日) 16:54:51.77 ID:D60mCHq40

「―――5憶だと?」

朝比奈さんは5億年後の人類なのかっ!?

「ふえっ?!」

「そう―――だけど、それまでこの惑星の人類が生き残っているとは考えにくい。
 おそらくだけど―――その未来に行き着くまでのどこかで、地球人を遙かに凌駕する科学力を持った存在との接触があったと見て間違いない」

「長門それは一体どういう事だ・・・?」

「分からない・・・私は未来に関する情報は微塵も持っていない」

「朝比奈さん。 あなたはこの先にある未来から来たんですよね?」

「・・はい。 それは間違いありません」

「そうですか・・・まぁ、長門に分らん事をこの場で色々考えてもしょうがないな」

「今は涼宮ハルヒを守る事が第一の優先事項」

肝心なのはそこだな
藤原とやらがどんな素晴らしい思想のもとでハルヒの力を欲しているかなんて知らんが
いくら迷惑な団長様っていったって、佐々木の持っている閉鎖空間に取り込むなんて事は俺が許さん

22: 2010/04/25(日) 16:55:58.61 ID:D60mCHq40
「長門―――俺が古泉を止めてみせる」

「そこでだ、お前にもして欲しい事がある」

「何?」

「俺達の誰かがハルヒにつきっきりってワケにはいかんからな。
 ハルヒの自宅に・・・いや・・・あいつの周囲が適切か・・・
 あいつを中心として5kmの球体状の警戒網を張って欲しい。 できるか長門?」

「問題ない。 その警戒網に該当するのは藤原をはじめ橘、周防、佐々木―――そして古泉一樹を設定しておく・・・それでいい?」

「あぁ。 頼む・・・」

長門が数秒、呪文のようなモノを詠唱する

「佐々木はよけいだったと思うが・・・まぁ念の為にか。 それとだ。 同じ警戒網を朝比奈さんにも張ってくれ」

「問題ない。 朝比奈みくるにも同様の処置を施してある」

「おお。 以心伝心ってヤツか」

「って、なんでわたしにもなんですかあっ?」

「以前あの男は朝比奈さんを誘拐しようとしましたよね? 
 仮にまた同じ事が起きれば、俺達はあいつの言いなりにならざる負えなくなるかもしれません」

23: 2010/04/25(日) 16:57:02.18 ID:D60mCHq40
「・・・そうですよね・・・あの・・・そのぉ・・・」

「何でしょうか?」

悲しげな表情でうつむいていた彼女がゆっくりと顔をあげた

「・・えぇと・・・何か・・・わたしにできる事はないですか?」

俺はきづかない内に朝比奈さんを戦力外だと・・・
そう彼女に受け取られかねない言い方をしていたようだ
それと失礼な話だが、その質問に一瞬言葉を詰まらせてしまった

「・・朝比奈さんには・・・俺達のサポートをお願いします」

それが愛くるしく、危なかっしい朝比奈さんに頼める最大の事だった

「さ、サポートって・・?」

「もしも。 俺か長門が怪我をした時は看護をお願いします。
 それが出来るのは一番家庭的な朝比奈さんしかいません」

「はいっ! わかりましたぁ!」

「それと続きだが長門。 ハルヒを中心にした警戒網を該当者が通過した場合は俺に連絡してくれ」

「了解した」

「じゃあもう暗くなってきましたし、今日はここでおひらきという事で」

「そうですね。 わたしお腹すきましたぁ」

24: 2010/04/25(日) 16:58:16.15 ID:D60mCHq40
すっかり人が少なくなった校舎を抜け、校門で二人に別れの挨拶を終えた


――――――――――自宅

  ガチャ

「ただいまーー」

「キョンくん! キョンくん!」

「おわっ! なんだいきなり」

玄関を開けたと同時に目の前に妹が現れる
ふと手元に目をやると懐かしい物を大事そうに抱えていた

「これなにかわかる~?」

「スーファミだろ? でも、なんでお前がそんなもん持ってんだ?」

「えへへ~~。 ミヨキチちゃんに貰っちゃったぁ」

「貰ったはいいがそれ動くのか? だいぶ年代もんに見えるぞ」

「うん動くよ! さっきやったもん! ピヨピヨってゲ~ムしたの!」

・・・・・ピヨピヨ?

「それってカラフルな丸い目玉がついたのが落ちてくるゲームじゃないだろうな?」

25: 2010/04/25(日) 16:59:01.28 ID:D60mCHq40
「そうだよ! キョンくんすごいねっ!」

「やっぱり・・・それぷよぷよだぞ」

「ぶーー。 キョンくんのいじわるぅ~~」

「・・・・・」ポリポリ

「ご飯たべて、おふろはいってからいっしょにしようね!」

「へいへい」


―――――――――――――

そうこうして妹とぷよぷよをしたはいいが
『キョンくんずるい! 大人げないよ!!』
そう連呼する妹に接待プレイをせざるおえなくなり
俺は連鎖はせずにプレイする事になった
時計を見るともう10時を回っていたため、妹に寝るように促し
俺もベッドに横になった

26: 2010/04/25(日) 16:59:47.19 ID:D60mCHq40
――――――――――――――翌日

その日は終始放課後まで授業なんて身に入らないまま終わった
正直今は、勉強なんてどうでも良かった
今俺にはやるべき事がある
終業をチャイムが告げると同時に慌てて席をたつ
その様子を見たハルヒが『あんたそんな急いでどこ行くのよ!?』と訊ねてきたが
病院へ行くと言い俺は構わず鞄をひったくって急いである所へ向かった――――

見知らぬ男子生徒に尋ねる

「古泉はもう帰ったんですか?」

「えっ、古泉君は今日は珍しく欠席だよ。って・・・キミSOS団の人だよね?」

「あ、はい」

「ならお見舞いに行ったらどうだい?」

「お見舞い? なんで?」

「彼さ・・・なんでも結構な病気にかかってしまったらしいんだ。 病名は聞いてないけどさ」

病気・・・? 仮病だろうな
俺はその見知らぬ男子生徒に礼を告げ、用の無くなった校舎を後にし携帯を手に取りボタンを押す

27: 2010/04/25(日) 17:00:41.24 ID:D60mCHq40
prrrrrrrrrrrr――――――ツーツー

「くそっ」

prrrrrr――――――ツーツー

「ガチャ切りかよ古泉。 だがこの程度で俺は諦めんぞ」

prrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr―――――――――


色々と考えたが正面からあいつとぶつかって止める。それが一番だ


 ガチャッ――

「何でしょうか?」

「出てくれたか。 早速だが話がある。 会って話せるか?」

「今は誰とも会いたくはない気分なんですが・・・」

「特に俺とはか・・・?」

28: 2010/04/25(日) 17:03:12.33 ID:D60mCHq40
「いえ。 そういう訳ではありませんよ」

「なら・・・!」

「あなたがそこまで言うなら・・・良いでしょう。 打ち合う場所はどこにしましょうか?」



――――――――――駅裏のとある公園

「ここなら他人が聞けば精神病院への入院を勧められる様な話も思う存分できますね」

「あぁ。 この公園でくつろぐ人なんて皆無だからな。 近くにバカでかい公園ができたしよ」

古泉の頬に目をやると少し腫れあがっている
俺の視線に気づいた古泉は、左手でその晴れた頬をなぞった

「・・・で。 会って話たい事とは何でしょう?」

「あの時は感情的になってしまって、聞きそびれたが・・・
 お前にあの未来人が提示してきた『自身の身のふり方を考え、改めざるおえないだけのモノ』
 それは一体なんだ!?」

「お答えできかねます・・・」

29: 2010/04/25(日) 17:05:39.18 ID:D60mCHq40

「ならっ・・・! お前は朝比奈さんのいた未来・・そして藤原のいた未来・・・何か知っているような口ぶりだったよな?
 教えてくれ・・・! できる範囲でいい!」

「決定的に違うとだけお答えしておきましょう。 それ以上の回答は用意できかねます。 それに僕も知らない点の方が多い」


あいつが俺の二つの問いに対し用意した答えを聞いて確信した
現在、昨日言った通り古泉は、立ち位置を藤原側に置いている


「なら―――!

「おっと先に申し上げておきますが、彼が涼宮さんの力を佐々木さんに転移させようとしている目的。
 それについて聞いても無駄です・・・同じくお答えできかねます。
 彼の未来に大きく関している故、話す事はできません」


ハルヒの持つ力があいつの未来に大きく関係している・・・!?
それはどういう事だ・・・?


「・・・僕からも一つ聞いても宜しいでしょうか?」

「なんだ?」

31: 2010/04/25(日) 17:08:49.03 ID:D60mCHq40
「今日。 僕を呼んだ目的とはこれらを聞く為でしょうか?」

「それだけじゃない」

「他にも何か?」


俺はひと呼吸置いて、古泉の目を強く見据えた


「お前が・・・ハルヒに対して変なマネをするのなら、どんな手段を使ってでも止める。
 今ならまだ間に合う。 考えなおせ古泉」

「僕が涼宮さんに対して害をなすとして、あなたが制止に入るのは承知の上。
 ですがあなたに何ができるんですか?・・・長門さんに頼みこむんですか?
 『古泉を止めてくれと』
 それに今・・・僕は決意を固めています。 彼らに対し協力するつもりです。
 あの後・・・藤原さんと橘さんの三人で話をしましたが、やはり・・・ 
 彼らの言う未来が真実ならば―――涼宮さんの持つ力は―――佐々木さんが持つべきです」

「・・・・・・・・・・・!!!」

32: 2010/04/25(日) 17:11:25.50 ID:D60mCHq40
「顔が怖いですよ・・・また殴るおつもりで?
 一つ言っておきましょう。 今。 あなたが僕に危害を加えるつもりなら。
 僕もそれに対し然るべき対応をします。
 その覚悟がおありでしたら・・・どうぞ―――あなたの好きなようにして下さい」

「・・・・・・・・・・・!!」


俺はこの時 初めて
古泉一樹という人物に対して恐怖を感じた


「・・・おや?」

突然。 古泉が驚いた様子で目を見開く

「いつからいたんです?」

俺は足音のする方へと振りかえるが、そこに居た人物のは―――!

「ついさっきだ。 ちょっと散歩がてらにうろついてりゃ、見知った顔が見えたもんでな」

藤原と名乗り―――朝比奈さんを誘拐未遂しやがった張本人―――!

33: 2010/04/25(日) 17:15:37.90 ID:D60mCHq40
「てめぇ! 古泉に何を話した!? こいつをそそのかしやがって!!」

「人聞きの悪い事は言わんでくれよ。 俺はこいつのタメを思って色々と教えてやっただけだ。
 それにどうだ? お前もこちら側につけ。 悪い話じゃないと思うんだが・・・」

「馬鹿にするなよ・・・! 誰が貴様の味方なんざするかッ!!」

「ははっ! こいつは派手に嫌われたもんだ・・・」

「そうだ古泉。 結果を教えてくれよ」

「来週の月曜日までにお知らせすると・・・昨日申し上げた通りです」

「そうかい・・・じゃあ俺は行くとするか。 邪魔して悪かったな」

「ちょっと待てよ」

立ち去ろうとする、藤原の進行方向に俺は立ちふさがった

「てめーが考えてる事。 この場で止めると言うまでここから帰せねーな」

「強気だな・・・さながら涼宮ハルヒを守るナイトと言った所か? 
 しかし、よく無能の分際で良くそこまで威勢よく俺につっかかってこれるもんだな」

藤原が馬鹿にした様に笑う
完全に無意識だった
藤原に対して右ストレートを打ちこむが、その拳は軽く手の甲で軽くあしらわれる

35: 2010/04/25(日) 17:17:53.55 ID:D60mCHq40
「やめとけ。 俺はあの能天気な未来人とは違って、一通りの戦闘訓練は積んである」

「じゃあな。 気が変わらない内に行くとするわ。 このままこいつと話していると殴り頃しちまいそうだ」

「待てよ!・・・用はまだ済んじゃいねーぞ!!」

俺の怒声に藤原の表情が一変する!

「あァ!!? 本当に氏にてーらしいなァ!!?」

叫び声が響くと同時に背後で衣擦れの音がした

「ぐっ!・・・・」

首筋に鈍痛が走る!
遠のいていく意識
薄くなっていく俺の視界の端が捉えたのは古泉の姿だった


――――――――――――
――――――――――
――――――――

「キョンくん! キョンくん!」

36: 2010/04/25(日) 17:19:57.20 ID:D60mCHq40
聞き覚えのある声がうっすら頭に届く
それはどんどん大きくなっていき、意識がはっきりしたと同時に
声の主が妹であると知った

「? ここは・・・俺の部屋か」

「キョンくん! だいじょうぶっ?! いつきくんがここまで運んでくれたんだよっ!
 キョンくんがサッカーしてる時ににとつぜんたおれたって!」

古泉・・・!? そうだった・・・俺はあいつに手刀をくらって倒れたんだ

「だいじょうぶ? いつきくんはきゅうきゅうしゃ呼ばなくてもいいって言ってたけど・・・ほんとにだいじょうぶ?!」

俺の顔を妹が今にも泣きそうな表情で覗き込んだ

「あぁ、大丈夫・・心配いらない」

そうは言ったものの、妹は俺の部屋からは出て行こうとせず
俺が恒例行事を終え眠るまでの間、ずっと俺の傍から離れようとはしなかった
翌日、妹からさんざん休めと言われたが俺はいつものように学校に行った

37: 2010/04/25(日) 17:26:30.79 ID:D60mCHq40
二時限目の途中後ろの席からクシャクシャに丸められた小さなゴミのような物体が飛んでくる
俺はお前のゴミ捨て代行じゃないんだぞとツッコミを入れようとしたが、
もしかしたら何かこれに書いてあるのかもと思ってそのゴミらしきものを開く
これでもし白紙ならハルヒとバトルするつもりだったが、どうやら伝言メモだったらしい
書かれていたのは

『あんた、最近何かあった? もし思い悩んでいる事があるのなら、団長である私に相談しなさい!
恋愛相談でも構わないのよっ! あんた佐々木さんと仲イイみたいだしね』

とあいつに似つかわしくない丁寧な字で書かれている、俺はこう書いて後ろへ放った

『何もない。 だいたいなんでアイツの恋愛相談なんだ、バカバカしい』

後ろの席のハルヒをちらっと見てみた
何でか分からんがハルヒが少し満足気に見えたのは気のせいだろうか
そんなこんなで放課後
ハルヒ達と明日に迫った不思議探索の予定を確認し、いつもの合図で部室を後にした
学校を出て、寝るまでの間携帯片手にあいつに10回以上はコールしただろうか
しかし一度も通話中の文字がディスプレイに表示される事はなかった

そして翌日の不思議探索
この日も勿論不思議な事など見つかる事はなかった
ちなみにハルヒとペアになることはなく、長門と朝比奈さん。 
二人と状況の確認をしあい、そのまま日曜迎える事となった

38: 2010/04/25(日) 17:27:22.49 ID:D60mCHq40
―――――――――――駅前

「ちと早く来すぎたかもな」

時計を確認すると待ち合わせ15分前。いつもの癖だろう
遅れた所で佐々木なら食事を奢れなんて事ないんだけどな

「早いじゃないかキョン」

「つい癖でな」ポリポリ

「癖? それはどんな癖なのか、教えてくれないかいキョン?」

佐々木が笑みを浮かべながらそう質問してくる
適当な返事の後、あいつが行きたいという服屋を数店舗巡り
路地裏の手頃そうな飯屋を見つけた俺たちは、そこで少し早い昼飯を食う事にした

「キョンは何がいいんだい?」

「俺はこれ、ナポリタンにするよ」

「昔からキョンはナポリタンが好きだね。 じゃあ僕もそれにしよう」

昔話を挟みながら、10分程で揃った料理にしたつづみをうつ

料理が空になったとほぼ同時に、佐々木がこんな質問を不意に投げかけて来た

39: 2010/04/25(日) 17:28:13.34 ID:D60mCHq40
「でだ、キョン。 今日君と会ってからずっと感じていたんだが、君はずっと何か言いたい事がありそうな顔をしている。 何かある・・・違うかい?」

こいつの洞察眼の鋭さに驚いた、戸惑いながら返す

「流石だよ佐々木」

「これはありがとう。 まぁ幼馴染みたいなものだからね。 それで、言いたい事って何だい? 僕と君の仲だ。 隠す必要などないだろう」

「あぁ、そうだな」

ワンクッション置いた後、俺は切り出す。 無論。 言葉を選びながら

「最近あいつらと連絡をとってるか佐々木?」

「あいつら? それは橘さん達って事でいいかい?」

「そうだ」

「そういえば連絡がくる事はだいぶ減ったね。
 最近顔は合わせていないが、たまに電話はある。 それがどうかしたかい?」

できる事なら―――佐々木を巻き込まずにこの一件を終わらせたい
ハルヒも佐々木も何も知らないままに

だが藤原―――あの未来人は古泉まで仲間に引き込もうとしてやがる
おそらく
ただの勘でしかないが、あいつがそこまでするって事は
今回で全てを決してしまおうという事だろう
なら今回の件で何か佐々木が知っていると考えるのが妥当
あいつらから何らかのアクションはあったと思うのが自然だ

40: 2010/04/25(日) 17:29:40.57 ID:D60mCHq40
意を決して問う

「佐々木――最近、藤原に何か動きがなかったか? ハルヒの力の奪取に関する」

数秒の間

「その口ぶり・・・君も知っていたんだね。 調度、僕もそれを君に尋ねたかった」

――ッ!! もうこいつには全て話そう。 それがあいつらに対する抑止に繋がるはず
俺は佐々木を信用している
確信している
こいつならあいつらの様なバカなマネはしないと

「お前には隠さず話す。 いいか?」

「あぁ。 いいとも。 それに僕に対して隠し事なんて無駄だよ、君の顔を見ればだいたいの事は分かるし
 君と僕は親友。 違うかい? 僕も君に対して偽る事はしたくない」

「――――その言葉を聞いて安心した。 少し長くなるが聞いてくれ・・・

今藤原が古泉に協力を仰ぎ、ハルヒの力を転移させようとしていること
それを事の顛末を辿りながら順に話した
その間、佐々木は何も言わず、ただ俺の話に耳を傾けていた

41: 2010/04/25(日) 17:32:12.82 ID:D60mCHq40
「安心してくれキョン。 僕は彼らに協力する気はない。
 そういえば藤原が言っていたね。
 『今が朝比奈みくるの未来、俺の未来。 どちらに転ぶかの大きな分岐点だと』
 藤原が焦っているのはその為なんだろう。
 このまま涼宮さんが力を保持すれば、待っているのは朝比奈さんの未来。
 はたまた、僕が力を手に入れれば、藤原の未来。
 そんな所だろうね」

「大きな分岐点――!? 初耳だなそれは。 古泉は藤原の未来について詳しくは知らんと言っていたが、
 お前もそうか? 何か知っていたら、どんな些細な事でも構わん。 教えてくれ」

「本当に些細な事かもしれないがいいかい?」

「―――! 頼む――」

「詳しくは知らないが以前こんな事があった。
 何故、彼が、己の未来をそこまで絶対視するのか? それを僕が彼に尋ねた時の事だ、
 彼はこう答えたよ 『この地球で人外たる存在が蹂躙しているとしたら、それをお前は許せるのか?』 ってね
 僕は勿論聞き返したが、これ以上は答えてはくれなかった」

「おい・・・それじゃあ、あいつはまるでこの世界を人外たる存在ってヤツから守るために行動している・・・そう聞こえるじゃないかッ!」

「仮にそうだとしても確証は何もない。 僕は藤原を完全に信用している訳ではないし、
 自分の未来へ誘導する為に嘘をついている。 そう考える事もできる」

「確かにな・・・今はっきりしているのは―――」

「彼の未来へ分岐するには、僕に力を転移させるのが絶対条件の一つ―――それだけだろう」

42: 2010/04/25(日) 17:33:36.32 ID:D60mCHq40
「ハルヒを佐々木の閉鎖空間に取り込ませちまったら、ハルヒは氏んだも同然だ。 絶対にそんなの許さんぞ。
 正直言って、はた迷惑なヤツだが仮にもSOS団の仲間だ。 なんとしてでも止めてやるさ」

「僕も人の墓標を背負って生きていくなんて、まっぴら御免こうむりたい。
 それと、キョン・・・ストレートに聞くが、君にとって彼女はただの仲間かい?
 彼女の事になると人が変った様に熱くなる――そんな君を見ていると実は、涼宮さんに 恋愛感情 を抱いているのか?
 って、そんな疑問が湧いてくるよ。 僕は恋愛感情なんて精神病の一種だと思っているクチだけどね。
 もし僕の推測が当たっているのなら、聞いてみたい、人を好きになる感情ってどんな物なのかを」

「――ぶっ!!」

あまりのストレートな質問に思わず吹き出す

「フフ、その反応は図星って事だね」

「バカ言えッ!! なっ、なんで俺があんなヤツを好きにならなきゃいけないんだ!!
 ただの部活が同じってだけの関係だ!!」

どこか意味ありな笑みを浮かべる佐々木に対して、俺はそれは違うと全否定する

「フフ・・・変わらないね君は・・・無表情のポーカーフェイスを気取っていても、
 感情をあらわにした時は君程分かりやすい人物は他に心当たりがないよ」

殆ど聞き取れない声のトーンで佐々木がこれまた意味ありな笑みを浮かべながら、口をボソボソと動かした

「!? 何をブツブツ言ってんだ?!」

「なぁに、独り言さ」

43: 2010/04/25(日) 17:37:30.01 ID:D60mCHq40
こいつの独り言ってのが多少気になりはしたが、昼食を終えた俺達は店を出た後に駅へと向かった
その途中は何の変哲もない雑談をし、お互い笑いあう
まるで今の事態が嘘のように・・・
そして俺達は駅前でサヨナラをした


――――――――――――――
―――――――――――
―――――――――

日付が変わり、太陽が昇る
頭から離れない古泉のセリフ

『月曜日までにお知らせすると・・・昨日申し上げた通りです』

あいつは今日までに自分の立ち位置を決めると言っていたな
どこかであいつを信じている俺がいないと言うのは嘘になるが・・・
土曜日にあいつが言っていたセリフから推測するに、藤原サイドにつくと見ていいだろう
しかし、
俺は昨日佐々木の意思を確認している
佐々木が藤原のやろうとしている事に加担する事はない

それでどこか安堵していたのだろう
俺はその取り返しのない大きなミスに今日気づく事になる

そして忘れられない月曜日が幕をあけた

44: 2010/04/25(日) 17:39:05.89 ID:D60mCHq40
心境以外は何ら変わらない、いつも通りの教室
午前の授業が終わり迎えた昼休み

「ねぇ・・・キョン」

「なんだ? 今日の昼休みはどっか行かないのか?」

「そ、そりゃ行くわよっ。 今日は・・・あ、あんたも一緒にっ!」


―――――屋上

「お前いつもここで飯食ってんのか?」

「ん゛ーいろいろよ、なかぬわでたへる事もあふわね」

「聞いた俺が悪かったかも知れんが、せめて飲み込んでから話してくれ」

ムッとしたハルヒが、口に含んでいた物を一気にゴクンと飲み込んだ

「ねぇ、あんたは最近楽しい?」

唐突な質問が飛ぶ

「どうだろうな? わからん。 どうしたんだ突然?」

45: 2010/04/25(日) 17:40:08.40 ID:D60mCHq40
「なんか最近あんた疲れた顔してたから聞いてみたの」

「意外に俺の事しっかり見てくれてるんだな」

何気なく言ったつもりだったが、ハルヒが吹き出しあたふたしだした

「ブッ!・・・へっ、変な意味じゃないわよ! ただ平の団員を気遣うのは団長のつとめでもあるの!」

どことなく顔が赤い気がするハルヒを見て
『可愛い』なんて思ってしまった俺は、最近溜まってる疲労によりどうかしてしまったんだろう

そうして昼休みが終わった

―――――――――――自宅

風呂を上がって、自室に来てイスに腰掛けた時

prrrrrrrrrrr

電話をかけてきたのは
長門―――!!

一呼吸置いて俺は携帯の通話ボタンに手をかけた

「どうかしたか?」

46: 2010/04/25(日) 17:40:48.87 ID:D60mCHq40
「涼宮ハルヒを中心として展開している球体型警戒エリアに藤原、橘、佐々木、周防、そして古泉一樹の5名が侵入した」

「佐々木がか――!? なぜ―――?! それに古泉まで・・・くそっ!!!」

「私はもう向かっている。 あなたはどうする?」

「行くに決まっているだろ!! それとだ長門! 朝比奈さんには知らせなくていいからなっ!」

電話を切った俺は、階段を落ちるように駆け降り
外の自転車のペダルに足をかける、全力立ち漕ぎ
競輪選手も驚く程のスピードで長門が指定した場所までの最短距離を駆け抜けた


―――――――――――――ハルヒの自宅付近 とある住宅街

「なぜ分かったんだ宇宙人?」

「答える義務はない」

「そうかい。 じゃあ何しにここへ来た」

「私がここに居る理由をあなたは理解しているはず―――引き返して
 このまま強行策を取ると言うのなら、こちらもそれなりの手段を用いて止めざる負えない」

「こえぇなぁ。 おい周防こいつを頼んだぜ」

49: 2010/04/25(日) 17:42:16.26 ID:D60mCHq40
「――――了――解―――――した――」

「後は宇宙人同士で仲良くしといてくれ、じゃあな俺達は先へ行くとするか・・・

「―――――――!」

  ザンッ!!

「アスファルトに亀裂―――くそっ! 化け物が!」

「これ以上の涼宮ハルヒに対する接近は私が許さない」

「それにあなた達3人の生命活動を停止させるのは一秒とかからない――――黙って指示を聞いて」

「・・・そうはいかねぇんだよ・・・こっちにも色々と事情ってもんがある・・・」

「――長―門――有―――希―に対す―る攻撃を――開始―す―る―――離れ――て」

「ちょっと待ってよ! ここで派手にやり合うのはムチャってもんよ! 
 あなた外との隔離された空間の構築、そんな感じの機能ってもってないのっ?!」

51: 2010/04/25(日) 17:45:57.98 ID:D60mCHq40
「―――保―有――――展―開可――――能」

「なら早くしてください! 派手な戦闘はそれからでお願い!――って、
 藤原ッ!! 危ないッ!!」

「? ど

  ドガァッ!

愛車の全力スピードで俺は藤原の背中に突っ込む!!
勿論だが俺も派手に転がり左肩を強打した

「痛ってぇ・・・! しかも、前輪曲がっちまってるじゃねぇか・・・
 まぁ間に合ったから良いか・・・ケガはないか長門?」

「問題ない・・・それより心配なのはあなた」

「これ位ハルヒの暴力に比べりゃ可愛いもんだ・・・!」

「そう」

俺は息を整えながら状況を確認する
球体型警戒エリアに佐々木が進入したってのは・・・そういう事か

52: 2010/04/25(日) 17:47:08.61 ID:D60mCHq40
「おい古泉・・・藤原が肩に背負った佐々木・・・眠ってんだな?」

「えぇ。 こちらがいくら説得しても、平行線のままでしたのでね・・・
 女性に対する手荒な真似見過ごすのはポリシーに反するのですが、こればかりは仕方がない」

「未来の為に・・・か?」

「えぇ。 それに例え未来の為と言えど、あなたとは・・・あなた達とは戦いたくはなかった」

「なら―――」

俺の言葉を静止するかの様に古泉は続けた

「決意の上です。 僕は感情を頃し、光ある未来を切り開く。 仮にあなた方の屍の先にそれがあるとしても」

「・・・・・・・・そうか」

「周防さんっ! 何ボーっと見てるの?! 早く!」

視界に映る景色がモノクロに移り変わる――急速に!

「―完―――了」

「長門ッ! これは閉鎖空間なのかッ!?」

53: 2010/04/25(日) 17:48:59.83 ID:D60mCHq40
「閉鎖空間に類似する箇所もあるが、異なる閉鎖的空間
 完全に共通するのは外部とは完全に断絶された空間という1点のみ」

「って事は、ここでいくら俺達が暴れても外には漏れないんだな?」

「そう。 だがこの空間内部で最後まで戦闘を行った場合の勝算は17.568%
 あなたが心停止する確率は93.84%。 補足すると外部での状況下なら58.97%でこちらに分があった」

「はぁ?! なぜ空間が変わっただけで差が開くんだ!―――くっ!・・・そうか
 ここは閉鎖空間に似ている空間・・・て事は・・・つまり」

「そう―――僕にも不完全ながら力が使えると・・・いう事になりますね」

古泉は紅の球体を―――

「降参したが身のため――諦めてよね」

一方、橘は青い球体を浮かべながら、俺に絶望的状況を告げる

54: 2010/04/25(日) 17:50:04.13 ID:D60mCHq40
俺の愕然とした表情を見た長門が口を開く

「今この空間を破壊するプログラムを展開している・・・それまで、あなたは私の後ろにいて」

「・・・俺も戦う」

「一般人の力でこの戦いに参加するのは無謀。 言う事を聞いて」

「無謀な事くらい百も承知だ。 だがお前に三人も相手させられるかよ。
 やらせてくれ・・・頼む」

「了解した・・・でも約束して欲しい・・・無理はしないで」

長門の顔をちらっと見た後、頷く

「―――あぁ、お前も怪我すんなよ」

長門がコクリと頷いた、その時、状況が動く

「――――――先陣を切るのは私よっ!」


こちらから見て並行に陣を取っていた3人の内の一人、橘が左翼を駆ける!

56: 2010/04/25(日) 18:01:26.23 ID:D60mCHq40
「いくわよッ!」

橘の手の平に浮かべていた、青い球体が弧を描きながら俺達の元へ飛来する!

「・・・・・」

だが頼りの長門はその球体に気付いていませんとばかりに、無言のまま周防を見据えている
やっぱりこの球体に気づいていないのか――!? このままじゃ―――!! 俺は声を上げる

「おい! 長門―――!」

その瞬間だった、青い球体は俺達に直撃する10m程手前で起爆する
気づいていないのではなく、長門にとってそれは気にする程の事ではなかったようだ

「手加減したつもりなんてなかったのに・・・TFEI端末ってこんなに強かったの!?」

橘の奇襲は失敗に終わり、次は長門が攻勢にでる
左手を橘にかざし。 一言。 呟く・・・

「邪魔」

長門が手をかざす
その手の先にいた橘は、攻撃を予感してか腕をクロスしガードの体制をとるが、悲鳴と共に遙か後方に吹き飛んでいった

57: 2010/04/25(日) 18:05:14.50 ID:D60mCHq40
長門のターンは続く

右翼をとっていた古泉が動きをみせると同時に、長門によるノーモーションの遠隔攻撃が古泉を狙う
突然四方に出現する無骨で無機質な槍
出現と同時に中心にいる古泉に迫る

「―――ぐうっ!!」

放たれた四つの脅威に対して、古泉は紅の膜で全身を覆い
致命傷になるはずの攻撃をとっさの機転で防ぐ
苦悶でその表情は少し歪んではいるものの、流血は僅かのようだ


対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェイス長門有希
超能力を有する橘の初撃を軽く挫き
その身を軽く吹き飛ばす
そして古泉の先をとった
回避しがたいあの攻撃

空間破壊プログラムとやらをこの戦闘と並行して展開しているんだが
それでも長門は情報操作による圧倒的戦闘力を超能力者二名に対し見せつけた

58: 2010/04/25(日) 18:10:56.57 ID:D60mCHq40
「・・・流石はあの朝倉涼子を退けただけの事ははあります。不完全とは言えど、この能力によるガードを貫通させるとは・・・」

長門は変わらず周防を見据えたまま、口を開く

「厄介。 あなたの能力の汎用性は想定より上だった」

「ハハッ、ありがとうございますと礼を申し上げておきましょう・・・ですが、
 あなたに褒められても上から言われている様で、あまり気の良い物ではありませんが」

苦笑いで皮肉を言う古泉、そのやり取りの直後―――
中央をとっている不気味な宇宙人が沈黙を破る
周防の地につきそうな程の黒く
長い髪が不気味にざわめき、揺れる・・・!

目に映った驚愕の光景
こちらに周防の顔が迫る――胴体部分はその場に残し―――
呪われた日本人形のように首が伸び続ける
俺達の5m程手前で突如停止したその頭部が大きく口を開ける

「来る―――!」

その口から噴き出したのは、猛烈な吹雪―――

59: 2010/04/25(日) 18:14:35.35 ID:D60mCHq40
「障壁を展開する、あなたは私から離れないで」

瞬時に長門が障壁を作り出し
吹き荒れるそれを、こちらに届く寸前で食い止める、だが
その強烈な冷気に圧されてか・・・一本、また一本と障壁にヒビが入っていく・・・

「―――追――撃―」

障壁が崩れようとする中、絶望を届ける次なる周防の一手
こちらへ向かって飛んでくるのは、6本の氷槍

それに対し長門が打った手
飛来するそれに向かって右腕を突き上げ。不可視の力により、氷槍を迎撃
耳鳴りする程の高い音と共に、槍が砕け散る、
それでも尚、迫る驚異
破壊したのは全てではなかった
残りの4本はそのままの軌道をとり―――
長門を・・・貫く!

60: 2010/04/25(日) 18:18:26.72 ID:D60mCHq40
「迂闊だった・・・! 周防九曜の戦闘における能力を甘く見積もっていた・・・」

「それよりお前・・・大丈夫か!? 血が・・・!!」

「肉体の損傷は大した事はない」

そう言いながら長門は片目を瞑り
己の腹部に刺さった槍を全て抜き。 投げ捨てる
予想していた以上の力を見せた周防に対し、長門が大きく動く

「空間崩壊プログラムを一時締結し、処理能力を物理攻撃プログラムへオールシフト」

数秒の詠唱の後―――
全身に青い電流を帯電させる長門

「後手に回っていては、空間破壊前にこちらが機能停止に陥る危険性が高い・・・私の判断ミス。
 でも安心して、何を犠牲にしてもあなたの命は第一に優先させる」

61: 2010/04/25(日) 18:22:32.38 ID:D60mCHq40
周防の頭部に対し構えをとる長門
一方――再び俺達に牙を向かんと出現する、おびただしい数の氷槍
いくら攻めに全力を賭けると言っても、あの数・・・
あの槍の攻撃性能は長門の迎撃を上回っていた
誰もがこう予感するだろう・・・
『防ぎきれるはずがない』―――と!!

「長門ッ!!」

無数の槍が迫る

「問題ない」

この状況下で、こいつはそう返答した
問題ないとは言ったものの
再び眼前に肉迫してくる――驚異

しかし

ほんの一瞬でその驚異は消えさる

62: 2010/04/25(日) 18:27:39.30 ID:D60mCHq40
長門の手から轟音と共に放出されたそれが槍を全て消し飛ばす―――明らかに電撃とカテゴライズできるモノではない
例えるなら―――まさに『雷』
その断続的に放出される雷は周防の頭部に直撃
俺の想像を絶する破壊力を持っているであろうそれは
周防を一瞬で窮地に追い込む

「――――――――ウグァァァァァァあぁ――――!!!」

完全に戦闘モードに移行した長門の圧倒的な強さ・・・
同じ宇宙的な力を持つ周防九曜をも圧倒する
雌雄は決したかに見えたが
それでも周防の意思は折れていない

「コのま――デ―は終わ―セな――イ――」

攻撃を頭部に受けつつも、長く延びた首の先にある、周防の左腕が不気味に波打つ
軟体動物の様な動きを見せた直後、長門に向かってくる左腕
己に災いをもたらす怨敵を絞め殺さんとばかりに
それは猛スピードで迫る
対し素早い所作の元に、その手で捕らえる長門。 そして―――

「出力最大・・・! これで終わらせる・・・!!」

63: 2010/04/25(日) 18:29:49.69 ID:D60mCHq40
左腕に電撃を流し込む!
直で喰らう周防
直流の電撃を受け、全身が激しく痙攣を起こし、崩れ落ちる左腕
そして、徐々にその五体が形状を保てなくなっていく!

長門が帯電をやめた後
転がっていたのは
頭部だけを残し、無残にも形を変えた周防の姿だった

「これで、後はあなた達だけ・・・続ける?」

その言葉に古泉、橘・・・二人の表情が凍りついていく
古泉が口を開く

「機関と離反し・・・あなた達を裏切ってまで・・・成し遂げると決めたんです。 
 今さら止まる気はありませんよ・・・僕は!!」

「古泉ッ! お前がどんなモノを見せられたかは知らねぇ、だけどな―――
 ―――ハルヒが犠牲になった先に訪れる未来なんて俺は・・・絶対に認めねぇぞ!!」

古泉が己の感情を露にし、表情が歪む

「人の気も知らないで・・・良くそんなぬけぬけとしたセリフが言えますね・・・
 あなたは何も知らないから、そんな事が言えるんですよ・・・この時間軸のすぐ先に待つ二つの未来・・・
 どちらかを選択するなら、間違いなく彼の来た未来です・・・!!」

64: 2010/04/25(日) 18:34:20.10 ID:D60mCHq40
古泉は続けた


「僕だって・・・彼女を犠牲になどしたくはない! ですが! それ以外に選択の余地がないんですよ!
 佐々木さんが力を持てば、あの色彩のある閉鎖空間が彼女の精神を表わしている通り、
 己の意思で力を正しく使用する事ができるはず・・・迫る驚異に対してッ!
 しかし! 涼宮さんが力を自覚すれば、間違いなく精神は壊れる・・・ッ! 
 自分の背負った物を背負える程に彼女は強くはないッ!!
 願わくば―――――
 SOS団はそのままで・・・変わらず・・・5人で平和な毎日を送る・・・!! 
 ―――そんな日々を僕だって望んでいるッ!!!」


――――――――!
分かった・・・
分かったよ古泉・・・!!

「この前は殴って悪かった・・・謝る。 お前はやっぱり俺達の仲間だ・・・SOS団の一員だ・・・!!!」

今になってようやく
古泉の意思を冷静に受け止める事ができた
だがな
間違ってるよお前は

俺は声を張り上げる

「ボコボコに殴ってでもお前をこちらに連れ戻す!! 未来について考えるのはその後だ!!!」

66: 2010/04/25(日) 18:39:33.68 ID:D60mCHq40
そう叫んだ後、一直線に古泉の元へ走る
拳を振り続けるものの、一向に当たる気配はない
頭のどこかではこいつに勝てっこないと分かっていた
それでも
―――『古泉を止めてみせる』
その思いだけが俺を突き動かす

空を切り続ける俺の拳を見送っていた古泉・・・唇を噛みしめながら俺に一撃を放つ
能力による攻撃ではなく
生身の拳で

「やっぱつえぇんだな・・・」

崩れ落ちる俺に対し、古泉が返す

「機関に身をおいていた僕に、一般人であるあなたが歯がたつわけがありません。
 撃ち込んだのは人体の急所・・・しばらく動けないでしょう」

そう言い残し、古泉は長門の方へと歩み寄る・・・最大の脅威である長門と戦うために
顔中に恐怖を浮かべながらも長門と対峙している橘の傍へ


『―――――――!?』
しかし、長門の様子に俺は明らかな違和感を感じた

68: 2010/04/25(日) 19:09:31.80 ID:D60mCHq40
突然、全身の力が抜けた様に大きくぐらつき
長門が顔面から倒れこむ

「迂闊・・・周防九曜の放った初撃に・・・
 内部を侵食及び破壊するプログラムが付加されていた・・・」

少し離れた場所にいた藤原が笑いながら、こちらへ近づいてくる

「ハハハッ! 戦闘に関わったメンツに違いはあるが・・・
 その首だけのポンコツと、長門有希は戦ったのち・・・相討ちに終わる。
 それが俺の未来での規定事項なんだよ!!
 正直ヒヤヒヤしたが、やはり・・・未来は俺達を選んだ!! もうあきらめるんだなクソガキ!!」

「大丈夫か・・!? 長門・・・!?」

返答はない、ただ苦しそうに息をあげている
今にも息絶えそうな長門に対し藤原が信じられない行動をとる
狂気―――!

69: 2010/04/25(日) 19:11:29.62 ID:D60mCHq40
長門の腹に全力の蹴りを見舞う藤原―――!

「まったくこいつら・・・憎たらしい存在だぜ・・・!!」

今度は長門の顔を踏みつける―――!

俺は声にならない声で叫び続けた・・・『やめてくれ』と

長門に対する攻撃を止める気配のない藤原に対し、古泉が割って入る

「あなたが長門さんに対し、どれ程の恨みがあるのかは知りません。
 ですがもういいでしょう・・・後は僕が一撃の元に・・・終わらせます・・・」

「ちっ! ならさっさとぶっ壊せ! おそらく今、
 内部破壊プログラムの駆逐に精を出している頃だ」

古泉に『長門を殺せ』と、非情な命令を下す

70: 2010/04/25(日) 19:16:26.61 ID:D60mCHq40
ゆっくりと目を閉じる古泉
作り出された―――紅の球体―――
そして―――その球をふりかぶり―――
―――――――――――――――放つ―――



瞬間、音もなく飛来する。 もう一つの紅の球体―――
古泉が放ったとしたそれを――鮮やかに弾く――彼方へと

「―――!?? かはッ・・・・!」

そして―――古泉の意識を刈り取った後に――徐々に人の形状へと変化していく・・・


「ったく・・・なぜコイツらに加勢してんだ!?」


突如姿を現したのは、見た事もない30代前後の不躾そうな男

「ふぅ、良かったぁ」

「何とか間に合いましたね・・・私は長門さんの救護措置に入ります」

未来の朝比奈さんと―――長門と同じ宇宙人の喜緑さんが続いて姿を見せる・・・!

72: 2010/04/25(日) 19:21:43.52 ID:D60mCHq40
俺は混乱する頭を必氏に整理しながら問う

「朝比奈さん・・! その人は誰です・・・!? それに、朝比奈さん大と喜緑さんまで・・・なぜここに!?」

「彼は古泉君のお兄さんです。 フフ、そっくりでしょ?」

確かに言われてみると似てる! まるで古泉がそのまま年をとったかのように・・・
だが明らかに違うのはその雰囲気
古泉をさわやかな優等生とするなら、古泉兄の方は明らかに不良が集まる高校でドンしてましたと言わんばかりの印象を受ける

「そりゃ似てるに決まってンだろーがよ・・・まぁ、何だ・・・兄弟だしなァ」

巻き舌まじりでそう答える古泉兄・・・正直関わりあいにはなりたくない人種だ・・・

「あなたは喋らないで! 余計な事ばかり言いそうだからっ! 
 って、そうそう、私と喜緑さんがここに来た理由ね、
 隠さずに言うとあなたの事を未来から逐次監視していたの・・・
 あ!・・・恥ずかしい所とかはゼンゼン見てないから大丈夫っ! 安心してねっ!」

朝比奈さん大は顔を赤くしながら続けた
突っ込みたかったが、俺にそんな体力は残っていなかったのは言うまでもないだろう

75: 2010/04/25(日) 19:44:47.97 ID:D60mCHq40
「それで、あなたがこんな状況に巻き込まれているのが分かって、未来から飛んで来たってわけ。
 喜緑さんと古泉くんのお兄さんには、状況を説明して応援に来てもらいました。 
 私だけがここに来ても援軍になんてとてもなれないと思ったから。
 だけど、古泉くんのお兄さんまで呼ぶ必要は無かったみたいね・・・
 最大の脅威の周防九曜は戦闘不能みたいですし」

「ッたく・・・俺にはやるべき事があるってゆーのによォ・・・こんな事にまで首を突っ込む余裕はねーッつーの」

「だからあなたは黙っててって言ってるでしょ!? 少しは私の言う事聞きなさいよっ!!」

「何だよテメーその言い方は・・・せっかく助けてやってんのにそりゃねーだろ!? 
 乳だけじゃなく、態度もでけぇんだなァ!!」

再び顔を赤くした朝比奈さん大と、古泉兄が口論を開始するが
喜緑さんが穏やかに二人をなだめる

「お二人とも、口喧嘩は終わってからにして下さいね?」

「ごめんなさい・・・あっ!そうです!・・・肝心の長門さんの容態は!?」

「問題ありませんよ。プログラムは私が完全に消去しました。 ほら? この通りです」

どこか苦しそうな表情を未だ浮かべてはいるものの
自力での歩行が可能にまで回復した長門を連れ、喜緑さんは戻ってくる

76: 2010/04/25(日) 19:55:48.77 ID:D60mCHq40
「長門! 大丈夫か!?」

「問題ない・・・内部の構成情報はほぼ従来通りに戻りつつある。 
 それに肉体の損傷は特にひどくはない。 ただ力を使いすぎただけ」

足元はおぼつかない様子だが、倒れて息を荒くしていたあの時と比べれば格段に回復している
駆け付けた喜緑さんの力により、一命を取り留めたって所か・・・
その長門の姿を見て朝比奈さんが安堵の溜息をつく・・・
朝比奈さん・・・彼女に俺はまだ聞かなければいけない事がある・・・
藤原が導こうとしている未来と、朝比奈さんのいる未来―――その違い・・・

「朝比奈さん・・・」

「なんでしょう?」

「率直に聞きます。 あなたのいる未来とは・・・一体どんな世界なんですか?」

朝比奈さんの顔から笑顔が消える
口を開きかけた朝比奈さんに対し、古泉兄が口をはさむ

「時間がねぇんじゃなかったのか? オイ!」

77: 2010/04/25(日) 19:56:47.97 ID:D60mCHq40
「そうでしたね・・・。 だけど少しなら・・・いいですかキョン君? 
 大きく分けて二つ存在する未来・・・その分岐点が今なんです・・・
 藤原のやってきた未来とは、涼宮さんの力を佐々木さんへと転移させ、これから迫る驚異を退けた世界。
 その代償として、佐々木さんの閉鎖空間の中に涼宮さんは取り込まれましたが・・・
 私のやってきた未来については後で話します・・・必ず。
 今は時間が惜しいの・・・キョン君が尋ねたい気持ちもわかりますが今は理解して下さい・・・」

「いえ・・・理解なんてできません・・・!! はっきりと答えて下さい!
 ・・・あなたの未来・・・それこそが古泉があいつらに協力した理由なんです!!」

「今、それに答える時間はないんです・・・! まずは藤原達の阻止が先です! 古泉君・・・お願い!」

「わーッてるよ、それとだ・・・! 能面面は少し黙ってろ。 
 そいつが言う通りすぐハッキリするはず。 
 それでもゴタゴタ言いてェなら、その減らず口に赤玉をぶちこむぜ・・・!? 分かったか?」

そのあまりの迫力に俺は沈黙せざるをえなかった・・・
小泉兄は橘と藤原の方を鋭い眼光で睨みながら、中指をさす

「覚悟はできてるよな? もう・・・土下座じゃすまねェぞ!!」

78: 2010/04/25(日) 19:57:45.13 ID:D60mCHq40
再び紅の球体に変化した体が宙を舞う
橘が放った攻撃をサラリと回避し、意識を狩る強力な一撃
残るは、絶望の表情を浮かべた藤原のみ
これまた一撃のもとに沈める
周防の構築した空間では古泉がおそらく出来なかったであろう形態変化
それを楽にやってのけた、古泉兄との能力差はかなり開きがあるよう思える

「あっけねェ・・・骨があるのは、あの宇宙人だけだったみてェだな。
 おい、喜緑・・・準備はできてるか?」

喜緑さんがコクリと頷く

「じゃあさっさとブッ壊してくれ」


喜緑さんが再び頷き、周防が構築した空間は音もなく壊れ始める
やがて、徐々にだが隙間に確認できる外部の世界と調和していく・・・
ハルヒに力を転移させるとうい藤原達の計画は完全に終わった

だが、二つの懸念される事項が俺達に平穏な日々がまだ遠い事を予感させる

外部に出た朝比奈さんが口を開く

「決定的に私の未来での規定事項とは異なる点はありますが、これが『私のきた未来』への分岐点なのでしょうね」

79: 2010/04/25(日) 19:58:45.17 ID:D60mCHq40
分岐した未来ってのは古泉が命賭けで・・・俺達と争ってまで阻止しようとした未来―――
お世辞にも素晴らしい未来とは思えない―――しかし
朝比奈さんは勿論、古泉兄、喜緑さんはその未来を肯定的に考えている―――なぜだ―――!?

「時間がねぇんだろ! 朝比奈、喜緑ッ! 急ぐぞ!!」

「はいっ!」

3人が走り出す・・・着いた先は『涼宮』と表札のかかった一軒家

「喜緑どうだ・・・?」

「・・・います。 その数6体・・・!」

何が起こっているか理解できない俺の前に現れたのは、アイツだった
長門により消されたはず・・・! 今になってなぜ!?

「朝倉―――ッ!?」

全く同じ容姿をした、無機質で、おそらく人ではない5人を従え
朝倉が再び俺の前に現れた

「お前がどうやって復活したのかなんてどーでもいい・・・だけどな、お前が抱えたソイツを離せ!!」

80: 2010/04/25(日) 19:59:35.49 ID:D60mCHq40
「だーめ。 涼宮さんを解放しちゃ、私がここへ来た意味なんてないじゃない」

「なぜハルヒをさらおうとしている!? てめーら思念体の目的は『観察』だろ!」

「もう忘れたの? 私は『急進派』に属しているって事を。
 加えて、ほんの一時間位前かしら、穏健派は分離したものの、主流派は急進派の提唱してきた案と考えを合致させたの・・・」

「その提唱してきた案・・・それは・・・涼宮さんを拉致し、直接的な手法をもって能力を解析・・・それを自身へ応用し組み込む・・・それこそが究極の自立進化へ繋がる・・・
 究極の自立進化とは、老いる事なき肉体の獲得・・・勿論、情報能力は今のレベルを保ったままでね」

「思念体が意見を変えた・・・って事か! だが俺が許すと思うか!? とっととハルヒを放せ!」

「喜緑急げッ! オレが涼宮を助ける!!」

喜緑さんが古泉兄の能力使用可能な空間構築の為、詠唱に入るものの

「今、あなた達の相手をしている暇なんてないの。 バイバイ・・・」

遅かった―――朝倉達の姿が透明になり・・・姿を消した

「くそっ!! オレはまた防げなかった・・・!! これで未来は俺達と同じってワケか!?」

『俺達と同じ』・・・それはどういう事だ?

81: 2010/04/25(日) 20:01:06.24 ID:D60mCHq40
「間違いありません。 今この時間軸は私のきた未来と同じ方向へ進んでいます」


こうしたのはあんたなんじゃないのか? 朝比奈・・・!!


俺は頭に完全に血が昇り、理性がぶっ飛ぶ
朝比奈さんの胸ぐらを掴み、叫び散らす

胸ぐらを掴んだ俺の腕を締め上げる古泉兄

「やめろ」

「それにもういいだろ? 全部話してやっても。 いいか能面面? 落ち着いて聞け」

朝比奈さんが胸ぐらを掴まれた事で乱れた衣服を整え
意を決したといった表情で話し出す

「私達のやってきた未来とは・・・情報統合思念体により完全に統治された未来です。
 涼宮さんを拉致し、その身を永久的に保つ処理の後、彼女の力と自らをリンクさせ思念体は自立進化を実現させました。
 それから・・・この地球の人間達に・・・1から始まるナンバーをふり管理下においた・・・。
 管理下に置いた後は更に世界は悲惨なものへと変わっていきました。
 人間を選別し、自分たちのお眼鏡に適わない人達を虐頃していったんです・・・」

「・・・なっ!?」

82: 2010/04/25(日) 20:06:15.19 ID:D60mCHq40
「私は未来において・・・長門さんが管理する人体研究所の副所長をしています」

「思念体側の人間かよ・・・!!・・・あんたはそんな未来へ誘導しようとしていたのか!? 今まで・・・俺を騙して・・・!!」

「ごめんなさい・・・騙していた事については謝ります・・・だけど違うんです・・・
 聞いて下さい。 私はあんな未来なんて良く思っていません」

「じゃあなぜ、その未来へこの時代を誘導しようとしていたんだよ!?」

「はっきりと言っておきます。 私はあの未来へ導こうという気はありません。 
 キョン君の言う通り、あの未来への誘導が任務の一つではあります・・・だけど、
 鍵であるキョン君を助けようとしていただけなんです!!」

「じゃあSOS団にいる朝比奈さんはどうなんです!?」

「この時間軸へ滞在している私は、強力な精神操作と脳に物理的プロテクトをかけられています。
 何も知らないんですよ、彼女は・・・ただこの時間軸での出来事を報告するだけ・・・
 出来の悪かった私がここへ来たという事は、不幸中の幸いでもありました。
 SOS団の存在。 そして鍵であるあなたの存在・・・それを未来へと報告していないんです。
 おそらく、過去にきている私は、SOS団及び、あなたをそこまで重大な鍵とは思わず報告を怠った。
 その後、それは誤りだったと気づいたものの、今さら言いづらくてそのままズルズルと・・・と言った具合でしょうね」

・・・報告をしていない事が不幸中の幸い? どういう意味だ? 

83: 2010/04/25(日) 20:12:27.86 ID:D60mCHq40
「まぁ、あの朝比奈さんは何も知らなかったんですね・・・安心しました。 あなたの言う事も嘘には聞こえない。 信じます」

「ありがとうございます。 後・・・言いにくいんですが・・・私から話さなければけない事があります。
 驚かないで聞いて・・・あなた自身に関する話です・・・」

「なんでしょうか・・・? 話して下さい」

 以前私が15歳の時、この私も過去へ2年間行きました・・・だけどキョン君・・・あなたとは出会わなかった。
 白雪姫の一件で過去へ再び行った私は涼宮さんの鍵として存在しているあなたを見て驚きました。
 あの時は辻褄を合わせる為の演技に必氏だったんですけど・・・
 そして、あなたと涼宮さんが閉鎖空間から戻ってきた事を確認した後、私は未来であらゆる資料を調べました。
 それでもやっぱり、SOS団とそしてキョン君の存在は私の未来での規定事項の中にはありませんでした・・・」

「俺はいなかった!? そしてSOS団も―――!?」

「はい。過去の歴史が変わっているのは明らかです。 この時間軸から数えて閉ざされてしまった4年前。
 今でも残る巨大な次元断層・・・
 ここからは私の考えになりますが、そのままで聞いて欲しいです。
 あなたはおそらく普通の人間ではありません。 何らかの使命を貸せられこの時間軸へ来ているはず。
 正体こそ分かりませんが、閉ざされた過去と、次元断層から推測するに―――『異世界人』
 私はそう考えています」

84: 2010/04/25(日) 20:19:27.57 ID:D60mCHq40
「俺には今まで家族や友人と暮らしてきた記憶があります! 
 それが朝比奈さんの推論を否定する絶対的な証拠です!」

「涼宮さんは願望を実現する力がある・・・あなたがもともと別の世界で暮らしていた記憶を封印し、この世界で生てきたと思わせる仮想記憶をあなたの脳に埋め込んだ。
 そして、この世界であなたが居なかった世界を否定した・・・それにより、あなたがこの世界にやってくるまで関わりの無かった人たちの記憶が、
 あなたに埋め込まれた仮想記憶に伴い変化した・・・・それ程非現実的な事をも涼宮さんならば可能なんです」

「・・・・・・馬鹿げていますよ」


「あなたがどういった存在であるかは、この時間軸が辿る未来の中ではっきりと分かる事だと私は思っています。 
 それとね・・・私・・・過去を変えたかったんです。 
 あんな未来にしたくなかった・・・
 私は・・・あなたという希望に出会えて嬉しい・・・本当に嬉しいんです・・・
 キョン君なら涼宮さんを救う事ができます・・・必ずっ・・・!!」
 
 
「朝比奈さん・・・!?」

「もう時間です・・・私達には未来でやらなければいけない事があるの・・・」

「そう言うワケだ。 少しは朝比奈の事も察してやれ・・・」

その言葉ののちに、朝比奈さんと古泉兄の体が輝きに包まれる・・

85: 2010/04/25(日) 20:23:25.11 ID:D60mCHq40
光る腕が背中を叩く

「テメーは涼宮のカギなんだぜ? しっかりしろよ・・・!!」

そう言い残し、姿を消す古泉兄

「また、必ず来ます。 それまで、どうか無事でいて・・・!!」

俺がある事を言いかけた直後、二人とも消えてしまった・・・
また来るとは言っていたが、むこうも何やら忙しいようだし、いつになるか分からんだろう


ただ俺は礼を言っておきたかった―――
『朝比奈さん、古泉。 ありがとう』――――

そして約束しておきたかった―――
『二つ以外の新しい未来を俺が創ります』――――と

88: 2010/04/25(日) 20:27:02.43 ID:D60mCHq40
――――――――――――――??年後の未来

「過去にいる俺はなんであんな気色悪い髪型してんだ?」

「キャラ作りじゃないですか? そんな事より、やっぱりカッコいいなぁキョン君」

「あんなガキのどこがイイんだ?」

「あら? 素行の悪いあなたよりよっぽど素敵ですよ~。
 それに羨ましいなぁ、過去の私・・・」

「どっちのだ?」

「ん~両方。 キョン君がお兄ちゃんってのも憧れるし、SOS団の仲間ってのも捨てがたいし・・・
 でもお兄ちゃんじゃ、関係に制限が生まれるから、やっぱSOS団にいる私かな?」

「夢みんのも大概にしとけ。 聞くが、あいつ本当に大丈夫だと思うか? 
 さっき初めて見たんだが、鍵としては相応しい男には見えなかったぞ」

「大丈夫に決まってます。 あの涼宮さんが選んだ人です。 
 SOS団の影の発起人である彼がいたから未来人、宇宙人、超能力者が涼宮さんの元に集ったんですから。
 3つの勢力が手を取り合えば、必ず開きます。 新しい未来が」

「・・・ハッ! そうだとイイがな・・・。 とにかく喜緑が到着次第行くぞ。
 まずは長門有希をぶっ壊す・・・その後は思念体だ。
 助け出すぞ・・・涼宮を・・・!!」

「・・・はい・・・!!」

90: 2010/04/25(日) 20:28:35.23 ID:D60mCHq40
―――――――――――――現在


ハルヒが拉致され二日経った夜、俺達3人は長門のマンションに集まっていた

「喜緑さんからの電話は何だったんだ?」

「つい先程、対有機生命体サプレッション用ヒューマノイドインターフェイスがこの町に出現したとの事。
 現在、喜緑江美里、機関に所属する森、荒川、田丸圭一、田丸裕の5名で迎撃に向かっている」

「・・・その中に古泉はいないんだな?」

「いない。 彼は機関を自ら抜け、私達と戦い、その後行方が分からないまま」

「そうか・・・それと長門・・・本当にいいのか?」

「思念体との情報連結は絶ち情報操作能力に以前と比較し制限はあるが、
 私とい個体単体に備えられた情報操作能力でそれ相応の戦闘はこなせる」

「・・・そういう意味じゃなくてだな・・・その、なんだ、思念体を裏切って、
 本当に良かったのかって聞いてるんだが」

長門が不思議そうな面もちで首をかしげて

「私はあなた達に手を貸したいと考えている」

力強く断言した! ってわけではないがいつもの様に淡々とそう言ってくれた

91: 2010/04/25(日) 20:30:07.56 ID:D60mCHq40
「分かった! ひとまず、そのなんとかインターフェイスはあの人達に任せて、
 俺達はハルヒを助けにいくぞ・・・!
 長門、朝比奈さん・・・準備はいいですか?」


長門は言っていた・・・
自分自身と喜緑さんの帰還に使うルートは消滅したと
そこで浮上した問題点
どうすれば思念体のもとへいるであろうハルヒを助けるために
思念体のいる場所へ行く事ができるのか?

長門が出した案はこうだ
裏切った長門、喜緑を真先に処分しにやってくるであろう宇宙人のルートを使い、思念体のもとへ乗り込む

その先は3人で決めた
乗り込んで、思念体を構成する情報を壊す
破壊する手段があるかは分からないが、何か方法があるはず
とにかくハルヒのいる場所へ

このまま世界があいつの占領下におかれるなら、俺たちが乗り込んで暴れてやる―――『待ってろよハルヒ』

俺達は走った、宇宙人が現れたという場所へ
向う途中、突然長門が立ち止まる
俺と朝比奈さんはそれにまったく気付かなかった
長門が指をさしている付近の空間がほんの少し歪んでいる・・・

92: 2010/04/25(日) 20:31:08.95 ID:D60mCHq40
「これがそうなのか長門?」

「間違いない。 これが亜空間ルートの入り口。 ここから思念体のもとへ行ける」

「あわわわぁぁ~、なんかユラユラしてますぅ」

ここに入れば何があるか分かったもんじゃない・・・
だが俺に。 いや、俺達に迷いはなかった―――足を踏み入れる
眼前に広がる、色彩豊な無機質空間に敷かれた。 ただ真っすぐ続く一本道

「よし、行こう・・・」

歩けば歩くほどに亜空間にいるせいか時間感覚が狂っていく

「ふぇぇぇ~、気持ち悪いですぅ」

「すいませんが、我慢して下さい」

体感的にはもう一日程歩いた気さえする
だが一分しか経ってないと言われれば、それでも納得するだろう
かなり気疲れしたが  
先の方にぼんやりと確認する・・・
途切れた一本道を

「・・・あれが終わりか?」

「終わり。 でも気をつけて」

93: 2010/04/25(日) 20:32:04.38 ID:D60mCHq40
「気をつけて? どうかしたんですかぁ?」

遅れて俺もその気配に気づく―――

とっさに朝比奈さんの肩を掴んで、何者かの攻撃を回避する

「なんで助けるの? 心臓狙ったから痛みなんて感じなくてすんだのに」

無機質な空間にアイツの声が響く・・・

「どんだけ俺達の前へ顔を出せば気が済むんだ? 朝倉ッ!!」

「あら? 今回はあなたから来たじゃない」

「どけ。 俺達はハルヒを助ける」

「させないわよ。 能力の解析が終わって、いよいよ、その力を思念体が使おうってとこなのに・・・」

「―――――ッ! あいつに何をした?」

「フフ、この先にいるから見てみれば? 驚くだろうなぁ~。
 まぁ、ここであなた達は氏んじゃうんだけど」

96: 2010/04/25(日) 21:00:05.09 ID:D60mCHq40
長門が微かに聞こえる位の小声で耳うちする
『どいて・・・』
朝倉の不意を突き、長門が勝負をかける

閃! 稲妻が走る!
周防を一撃で窮地に追い込んだ長門の電撃
直撃するかに見えたが、それを朝倉は寸前でかわす

「あ~びっくりした。 情報連結を絶たれたあなたに、
 まだこれ程の情報操作能力が残っていたのね・・・
 でも長門さん? たった一撃でもう息があがってるわよ?」

初撃から自己最高レベルの一撃・・・勿論、ハルヒを一刻も早く開放する為。
いや、それだけじゃない。 長門は勝負を焦っている―――俺にはそう感じた
思念体との連結を絶った今。 長門には今までの様に戦う力はない

「じゃあ、私も動いちゃおうかな~。 まずは―――あなたっ!」

朝倉が情報操作により作り出した剣を構える
目では全く追う事の叶わないスピードでもって、首を目がけ振われた刃
鮮血が無惨に散る・・・

「さっきから何よ。 あなたそんなに避けるの上手だったっけ?」

97: 2010/04/25(日) 21:06:33.10 ID:D60mCHq40
「切られたっ―――! くそっ、くそッ・・・!」

「きょんくん!!!」

「・・・だ、大丈夫、致命傷は避けました。 右肩を切られただけです・・・」

駆け寄った朝比奈さんが、肩から流れ出る血を手で押さえる・・・
泣きながら、一生懸命に・・・俺は『それで止まるはずがない』と
言葉に出そうとしたが・・・喉まで出てきたそれを飲み込んだ

『彼女の純粋な優しさを否定するみたいで言えなかった』

止まらない流血、その光景を見ていた長門が朝比奈さんに助言する
長門が制服の右肩部分を破き、これを傷口にきつく巻きつけてと
朝比奈さんは大きく頷き、言われた通りに巻きつけ、きつく結び目をつくった

「あ~あ。 あなたが氏んだら長門さんがどんな顔をするのか見てみたかったのになぁ。
 優秀な端末が今では、思念体に背いて地球人の味方しちゃってるんだもん。 
 長門さんが背いたのは全て・・・キョン君、全てあなたのせいよ?
 次は外さないから、覚悟しなさいよね」

98: 2010/04/25(日) 21:10:05.38 ID:D60mCHq40
「彼は殺させない。 勿論、朝比奈みくるも。 涼宮ハルヒも」

「いつの間に背後に? すっかり油断してたわ」

振り返った朝倉が剣を振り下ろす―――それを長門は右手で受け止め、左手で朝倉の首を掴む―――!
長門の体が再び電流を帯び始める―――!

「離しなさいっ! まさか・・・このままっ・・・!?」

「二人とも聞いて・・・私は最初の一撃で朝倉涼子を機能停止に追い込むつもりだった。
 私の今の力ではそうする事でしか、勝算を見出す事が出来なかった。
 今・・・私が残している力は後僅か。 それを全て使い、止めてみせる―――彼女を」

「たとえ私という個体を犠牲にしても」

長門を止めようと走り出そうとした瞬間―――終わる
朝倉にぶち込む―――対周防戦で放った以上の電撃を!
全身から煙を立ち昇らせる朝倉―――首を掴んだまま立ちつくす長門―――!

無音が支配する無機質な空間で『バタン』と音が響く

力なく倒れたのは。 長門―――

99: 2010/04/25(日) 21:15:34.03 ID:D60mCHq40
「嘘だろッ!? こんな時に冗談はやめろ!! 古泉の知り合いの別荘に行った時の様な冗談のつもりか!?
 笑えねーーんだよッ!! お前の冗談は!!!」


『笑えねーつってるだろ!!』――揺すっても、怒鳴っても。 反応がない


その時・・・機能停止したかに見えた朝倉が動きだす―――

「笑えないのは私も同じ・・・危なかった・・・!! やはり・・・絶対に。 彼女は完全に破壊しないといけない・・・!!」

朝倉が右手を広げ、その先が一気に歪んでいく・・・

「高威力圧縮型粒子砲・・・これなら長門さんもろとも、あなた達を消せるわ。跡形もなく―――!!」

「・・・・・くッ!!」

  『俺が助ける』なんて口だけじゃねぇか
   いざと言うときすら何もできない
   ハルヒは攫われ、長門は倒れた
   誰も助ける事なんてできてない
   ただずっと長門の足を引っ張っていただけじゃねぇか

   あの時の朝比奈さんの言葉が頭を過る

100: 2010/04/25(日) 21:21:14.95 ID:D60mCHq40
  『あなたはおそらく普通の人間ではありません。 何らかの使命を課せられこの時間軸へ来ているはず。
   正体こそ分かりませんが、閉ざされた過去と、次元断層から推測するに―――『異世界人』 私はそう考えています』

――――ならば

       ――――――――――俺に
 
                              
「サヨナラ―――あの世で仲良くね」


――――――――――――――――――――――あの日常を守る為の力くらい


―――――――――――――――――――――――――――――――――あってもいいだろ!?

102: 2010/04/25(日) 21:27:35.32 ID:D60mCHq40
「・・・そ・・そんな・・・・私の攻撃は直撃したはず・・・・!!?」

「あれ?・・・・・きょんくん・・ここって天国ですかぁ?」

「ほっぺたをつねってみて下さい」

「痛い!ですぅ・・・ほぇ? わっ、私達生きてるんですねっ!」

「えぇ。 正直信じられませんが」

「でもどうして・・・? ゴオってなって・・・カッとなって・・・ええと・・・それから、それからぁ・・・」

「どうしてなのッ!? あなた達が無傷でそこに立っているのはなぜッ!?
 直撃したはず・・・!!? 何の力も持たないあなた達が生きていられる攻撃じゃないッ!!!」

「消えたんだよ。 お前の攻撃が」

「そんな事あるはずがないじゃない・・・・!! だってあなたは力を持たない一般人のはず!!?」

103: 2010/04/25(日) 21:32:55.26 ID:D60mCHq40
好機――!!
茫然と立ち尽し、うろたえる朝倉の顔面を目がけ渾身の飛び蹴り!

「手応え有りだ」

不格好な飛び蹴りの後、なんとか着地成功し体制を整た後、朝倉に言葉を返す

「お前の質問に答えてやる。 俺は一般人じゃなかったんだ。 今、自分自身がどういった存在か分かったよ。
 過去の記憶が同じ時間なのにダブってるってのが・・・かなり気持ち悪いがな」

蹴りを喰らった肩が消滅し、支えを失った左腕が落下している朝倉
何が起きているのか分からないと言った様子だ

「・・・やっぱりあなたは。 あの時。 あの教室で。 頃しておくべきだった。
 こんな原理すら分からない能力を持っていたなんて・・・!!」

朝倉の目に溢れていく殺意・・・

「今度は俺がお前を消してやる。 そして。 俺に二度と会いたくないって思わせてやる・・・かかって来な!!」

104: 2010/04/25(日) 21:38:03.30 ID:D60mCHq40
朝倉と俺の距離が一気に縮む
ふるわれる剣による鋭い突き・・・なんとかその動きを眼で追い。 願う
朝倉にしてみれば俺につきささるはずのその剣は。 俺に触れた瞬間。 消滅する

つきささるはずのその剣が消えた事で、バランスを僅かに狂わせた朝倉
俺はそれを見逃す事無く、右足をローキックでえぐる
膝下が消滅した事により完全にバランスを失い転倒・・・そして顔をあげた朝倉と目が合う

「お前にもあるよな? 長門と同じ再生能力が。 だがさせないぜ? 
 これからお前の身体の核となっている部分を消滅させる。 覚悟しな」

その瞳に明確に浮かんでいたのは、恐怖と畏怖の感情
だがその壊れかけた表情で朝倉は不気味に笑った

105: 2010/04/25(日) 21:42:50.04 ID:D60mCHq40
「私を消滅させる? 覚悟しなさいですって? 笑わせないで・・・氏ぬのはあなたよッ!」

突如現れた感情など存在しないであろう表情のない生命体
人間とコンタクトを取る事を目的につくられた長門とは決定的に違い
人を頃す事だけを目的につくられたであろう生命体が俺達の前に現れる・・・
その数・・・8体!

「朝比奈さん・・・俺から離れないで下さい」

先に動いたのはその内の二体だった、こちらに攻撃の体制をとる

「ふぇぇぇっ??!」

朝比奈さんの手を握ったまま、その二体の核をつく。 殺人兵器が粒子となり、消滅していく―――
『感』 だった。 突いたのは人間で言う心臓部分

「後、六体・・・!!」

刹那―――内、一体が背後から不意の攻撃を仕掛けるが僅かな出血だけを犠牲にそれをかわす
攻勢に転じるが、拳は空を切る・・・
それだけではない。一体に気を取られ、残りの五体の動きが見えてなかった

106: 2010/04/25(日) 21:44:07.90 ID:D60mCHq40
「まずい・・・囲まれた・・・ッ!!」

俺達を中心に6体が取り囲み、手を広げその前の空間が僅かに歪んでいく・・・!
朝倉程の威力はないと見えるが。 これは『高威力圧縮型粒子砲』―――ッ!?
無言のままにそれは放たれる。

あの時と同じように轟音が迫る。 しかも今度は6方位。

「――――――ッ!!」

炸裂する爆発音


「なんという威力・・・!! それより、お二人ともご無事ですか?」


声の主は――――――古泉!!
砲撃を受けとめる紅のバリア!
力強く、優しく俺達を包み込む―――!! 

107: 2010/04/25(日) 21:45:20.47 ID:D60mCHq40
「今回ばかりは氏ぬかと思ったが、氏んでない。 見ての通り無事だ」

「ご無事で何よりです」

「そうかい。 とにかく助かったよ」

「一ついいでしょうか?・・・あなたはいつの間にそんな力を? 正直言って、驚きました」

「後で話す。 それより今はこいつらだ」

「それはそうでしょうが・・・あなたは何も言わないんですね。 裏切った僕に対して何も・・・」

「何もねーよ。 誰だって間違いなんてある・・・気づいたんだろ? だからここへ来たんだろ?」

「ええ。 ですが・・・僕はしてはならない事をした。 そんな僕にあなたは・・・」

「ゴチャゴチャうるさいぞ古泉。 言っただろ? お前は俺たちの仲間、SOS団の一員だと」

「僕が・・・?」

「そうだ。 なんか文句でもあるのか?」

「ハハハッ! いえ・・・何も。 何もありませんよっ!!」

全てが晴れた笑顔の古泉と
ドンと背中を合わせ――叫ぶ―――

「お前は後ろの3体を任せる! 背中は預けたからなっ!!」

「えぇ!! では・・・まいりましょうかッ!!」

109: 2010/04/25(日) 22:01:48.20 ID:D60mCHq40
紅玉を浮かべた古泉がボソリと言った
はっきりと聞こえなかったが
おそらくこういったんだろう


『ありがとう』―――と


この亜空間がよほど超能力使用環境に適しているのか
或いは・・・迷いが無くなった故か
先日より遙かに古泉は強かった

一体。 また一体と粒子へと変えていく
8体いた感情の無い生命体を残すことなく殲滅し、残るは―――朝倉涼子のみ!

「・・・サプレッション用インターフェイス8体でも敵わないの・・・・!? 
 私じゃどうあがいても無理。 おしまいね。 もうなにもかも。 」

その体がまばゆい光を放ち始める

「これはまずいですね」

「何でもないように耽々と言うなよ」

「これは失礼」

「念のため朝比奈さんと一緒に下がっててくれ」

112: 2010/04/25(日) 22:07:07.60 ID:D60mCHq40
輝きが強くなる―――!

「このまま無に帰すのなら・・・あなた達も連れていく」

朝倉・・・残念だがお断りだ
行くならお前一人で行ってくれ
俺たちは氏ぬわけにはいかねーんだ

「消えろ・・・!」

朝倉の核をなす部分を感を頼りにつく
放っていた光が一瞬で消え
その体の端から徐々に消失していく・・・!

「見事ですね。 しかし、それは一体どういった原理なのでしょうか?」

「視認の後にそれを消したいと念じ対象に触れる。 そうすりゃ触れたモノはなんだって消えちまう。
 原理と言ったらそんな所だろう。 非現実的な存在である事が絶対条件にはなるが」

「現実において非現実的な事象を起こす、涼宮さんの能力。
 現実において非現実的な事象を消失させる、あなたの能力。
 まさに対極関係にあたる力・・・理想のカップルと言えるでしょうね」

114: 2010/04/25(日) 22:12:59.33 ID:D60mCHq40
「バカかお前は」

「フフ、これは失礼・・・!? おや、僕に続いて援軍の到着の様です」

現われたのは喜緑さん、森さん、新川さん、田丸兄弟の5人

「頼みたい事があります! 喜緑さん! 長門が!」

倒れ伏す長門の傍に座り、彼女が長門の胸に手を当てる

「現在、有機エネルギーの要保有絶対量を下回った事により緊急スリープモードに陥っていますが、
 再起動はまず問題なく出来ますよ。 私なら約1分で治療できる範囲ですので御安心を。
 ですが処置が後15分遅れていれば、身体に欠損箇所が発生し手遅れになる所でした」

良かった・・・

「では喜緑さん、長門をお願いしますね」

ところが、安堵したのも束の間
森さんが物凄い剣幕で古泉に近寄り、頬に平手をみまう

「古泉っ! あなたあれから何してたの!? 私がどれだけ探したと思ってるのよっ!?」

115: 2010/04/25(日) 22:18:23.43 ID:D60mCHq40
「森さん・・・申し訳ありませんでした」

「まったくもう!  心配するこっちの身にもなりなさい!」

「申し訳ない。 謝ります・・・この通りです」

「とにかくっ! あなたは懲罰処分を受ける事が決まってるから、これが終わったら機関に顔を出す事! いい?!」

「・・・僕は組織を抜けると書面で伝えました。 それに涼宮さんの能力転移計画に肩入れした。 
 これが懲罰処分で済む訳がありません・・・その決定は何かの間違いでは?」

ヒートアップしている森さんに聞こえぬ様、新川さんが古泉に耳打ちする

「古泉君・・・森さんはあなたの為に、お偉方達に狂犬の様に噛みついたんですよ・・・『古泉に重罰を課す事は勿論、機関を抜ける事も絶対に認めない!!』とね」

「何でも一人で背負い込んで、何でも一人で突っ走って・・・! 私に相談してくれても良かったじゃない・・・!!!」

「森さん・・・今度、食事を御馳走させて下さい。 それと・・・ええとですね・・・
 今後とも僕の上司として、御指導御鞭撻の程・・・宜しくお願いします」

「食事は当り前よ! それ以上の事を私はしたんだからね!! それに、これからは今まで以上に厳しくいくわよ! いい!?」

116: 2010/04/25(日) 22:22:53.42 ID:D60mCHq40
森さんの目にうっすら浮かんでいた涙が消えた
ほほ笑みながらその光景を見ていたが、こうしてはいられない

「行こう! まずはコイツらをぶっ飛ばして」

性懲りもなく再び現れる、感情を持たない宇宙人
数は・・・もう数えるのがめんどくさい。 とにかく沢山だ
俺より早く飛び出した森さんと新川さんが道をつくる!

「あなた達は行きなさい! ここは私達が引き受けるわ! だから・・・しっかりやってきなさいよ古泉っ!」

「えぇ! では、ここはお任せします!」

亜空間の一本道を走りぬける
俺 古泉 朝比奈さん ・・・? 長門ぉ!?

「おい! お前さっきまで・・・」

「完全回復。 いたって普通。 喜緑江美里は優秀」

「ハハ! そうか! もう無理すんなよな!」

「しない。 だから教えて欲しい事がある・・・貴方に芽生えたその力は何?」

「お前意識あったのかよ!?」

「聴覚は機能していた」

「ったく!・・・都合の良いスリープモードだな!!」

118: 2010/04/25(日) 22:28:16.59 ID:D60mCHq40
―――――――――??年後 未来

「おい。朝比奈」

「・・・・はい」

「アイツを過去で出会った長門有希とだぶらせるな。姿形こそ似ちゃあいるが全くの別モンだ」

「だけど・・・」

「だけどじゃねェ・・・あの冷たい氷のような目を思い出せ・・・アイツはいままでオマエに何をさせてきた?」

「そうよね。 分かったわ・・・」

「よし、それでいい。 装備の確認はいいな?」

「えぇ。大丈夫」

「朝比奈。 突入する前に言わせてくれ。 俺はオマエのあの時の行動をムダにする気はない。
 とらわれの身だったオレを危険をおかしてまで助け出してくれた。 感謝してるぜ」


「だからオマエもムダにすんなよ。アイツらに背いてまで成し遂げようとしている・・・
 囚われている涼宮の救出・・・平和の奪還!!・・・それに賭けた意思を!!」

119: 2010/04/25(日) 22:34:05.32 ID:D60mCHq40
「それと喜緑・・・いつもの頼むな」

「それは勿論ですけど、私に対してはそれだけかしら?」

「お前はしっかりしてるからな。 何も言う事なんざねェよ」

「・なっ!・・なによそれ! それじゃあ私はしっかりしてないみたいじゃない!」

「しっかりしてそうなのは見た目だけで中身はスッカラカンだろーが!
 態度と乳ばかりデカくなりやがって!」

「その最悪な言動なんとかなんないワケ!? それさえ治れば、あなたはもっと・・・」

「生憎だがなぁ・・・これがオレだ。 過去の自分みてーに役者気取る気はなんざサラサラねぇよ!」

「クスクス、面白いわ。 まるで夫婦漫才ね」

「あァ!?喜緑だろーが容赦しねーぞ!」

「あら怖いわ。私は率直に感想を言っただけなのに」

「オマエそんなキャラだったか・・・? まぁ、ゴチャゴチャ言うのはこのへんにして・・・行くぞッ!!」

122: 2010/04/25(日) 22:38:57.04 ID:D60mCHq40
――――――――――現在

一本道を抜けた先に辿り着いた空間

その奥に備え付けられた見た事もない大きさの培養機

その中にいたのは――――

「ハルヒっ!!!」

叫ぶものの反応はない 頭部にいくつもの細長い名称不明な機材をつけられたまま眠っているようだ
駆け寄ろうとする俺達を、培養機の更に奥にいた西洋風の顔立ちをした男が呼び止める

「まぁ待ちたまえ。 用件を聞こうか? 地球人の少年よ」

「てめぇがそうか・・・!! ハルヒに何をしやがった!? 答えろ!!」

「なぁに。 危害は加えてはいない、傷一つね。 正直、脳だけを残して後は廃棄しようかと考えもしたが、
 涼宮ハルヒには大恩がある・・・こうして我が膨大な情報量をそのままに自立進化するという夢を実現させてくれた。
 このまま培養機の中で永遠の時を刻んで貰うとするよ。 私とともにね」

123: 2010/04/25(日) 22:40:56.25 ID:D60mCHq40
「知っていたか? 地球人の少年よ。 せっかく来たんだ、涼宮ハルヒの調査結果を聞いていくがいい。 
 涼宮ハルヒは身体的には何ら一般的地球人と変わった個所はなかった。 ある一部分を除いて・・・
 その脳の構造が明らかに、他の地球人と比較して、ほんの僅かだが違いが見られた。
 それが無から有を生み出す能力の起因となっているのだろうな・・・はっきりとは断定はできんがね」

「どうでもいいんだよ・・・そんな事より、その機械からさっさとハルヒを出せ」

「私の脳と涼宮ハルヒの脳は現在リンクしている、それは無理な相談だ」

「リンク・・・!? 一体何の為にだ・・・!!?」

「決まっているだろう。 願望実現能力を私のモノとする為だ」

「そうかい・・・ハルヒを解放する気がないのなら、力づくで返してもらう。 覚悟しやがれ」

「初めから私を倒すつもりでここへ来ている事は分かっている。 教えてやる。 それがどれ程無謀な事かを―――!」

空間が大きく振動を始める・・・!! 立っている事すらできないレベルの尋常ではない揺れ―――!! 

「私の情報操作能力ではなし得る事は出来なかったレベルの事象すら、この能力を使用すれば引き起こす事ができる。
 仮に、これを君のいた惑星全体で引き起こせば、地球人類の半数以上が氏滅するかってない程の大災害となるだろう」

「・・・・・ッ!!」

124: 2010/04/25(日) 22:42:41.15 ID:D60mCHq40
「分かったか? 私と戦おうなどと考えない方がいい」

突然空に舞う古泉・・・そのまま壁に打ち付けられる―――!

「かはっ・・・!」

「私はここから動かずとも、貴様らを殺せる。 ただ『氏ね』と願うだけで頃す事ができる・・・!! もう一度言う。
 私と戦おうなどと考えるな・・・!!」

戦わなくて済むのなら戦いたくはないさ・・・
だけどな
藤原の未来―――そして朝比奈さんの未来
そのどちらでもない未来を望む俺達にはお前の存在がどうしても邪魔なんだよ

「貴様らは選ばれた人間・・・その他大多数の実験動物の管理者として、それなりの生活を保障しよう。 私に黙って従え」

ふざけるな・・・
実験動物だと―――!?
従うわけがないだろ!?

「貴様は黙ってハルヒを返しやがれ!!」

125: 2010/04/25(日) 23:00:45.41 ID:D60mCHq40
思念体・・・非現実的な存在なら俺の能力で消せるはず!


古泉達が落ち着くよう叫ぶ中
ハルヒを信じ、賭けに出た俺は拳をふりかぶる


「実験動物の管理者としては不適格だな――――お望みどおり・・・『氏ね』」


あのハルヒがそんなバカな願望など許すと思うか?
俺は思わないね――――なんてったって―――


思念体の体が吹き飛ぶ――――!!


――――『俺はハルヒの雑用係だからな』


126: 2010/04/25(日) 23:05:44.02 ID:D60mCHq40
その隙を見逃さなかった古泉と長門が培養機を破壊―――!!
そしてハルヒを救出する!!

「涼宮ハルヒと情報統合思念体とのリンクを確認。 解除する」

「長門さんの処理が終わったら、朝比奈さん。 涼宮さんを頼みますね」

「はい・・・絶対に皆さん・・・氏なないで下さいね? ケガ・・・しないで下さいね?」

一撃で仕留める事はできないと分かっていた
だがその姿に先程と一切変化が見受けられない
一発で効果がないのなら、効くまで何発でもぶん殴ってやる
止まらねぇぞ・・・俺は

「落ち着いて。 あなたは一人で戦っているわけではない」

「僕が言えた義理ではありませんが・・・突っ走りすぎですよ? 先ほどのあなたの行動・・・少々命を軽んじているとしか言えません」

「・・・・・すまん」

周りが見えていなかった
不完全ながらも攻守揃った能力を得た事で
頭のどこかで一人で全てなんとかしようと思っていた
俺には命を賭けて戦ってくれている仲間がいる―――俺は一人じゃない・・・!!

127: 2010/04/25(日) 23:10:14.34 ID:D60mCHq40
吹っ飛んだ思念体がゆっくりと立ち上がる・・・!

「何故だ!? リンクが不完全だったとでもいうのか・・・!?」

「さぁ―――かかってきな。 SOS団を敵に回す事の恐ろしさを教えてやるよ」

「地球人風情がいい気になるなよ? 涼宮ハルヒの能力など無くとも、貴様らの処分には事欠かんわ。
 全てにおいて頂点を統べる我が情報操作能力の前にひれ伏すがいい・・・!!」

――――何が起きた!?
地べたに這いつくばらされたまま、身動きがとれなくなる

「貴様らにはその姿がお似合いだ・・・いっその事そのまま潰れてしまうがいい」

地に体がめりこみ出し、骨が悲鳴を上げる・・・!

「・・思念隊・・は・・・重力の操作を・・行っている・・・・・」

そうか・・・・能力による重力操作!!
種が分かれば簡単な事だ―――『消えろ』

「その力は一体・・・? 何故、我が情報操作が強制解除される!?」

立ち上がった長門が俺に触れ、高速詠唱により何かを施す

「思念体にとって最大の有効打を持っているのはあなた。 行って。 サポートは氏力を尽くすから」

一方―――古泉は紅玉を放ち思念体の態勢を崩す

129: 2010/04/25(日) 23:20:30.01 ID:D60mCHq40

「僕は残念ですが黒子に徹します。 主役はあなたです」

「馬鹿な事言ってんな―――!! 」

そう言ったのち駆ける―――!
長門が俺に対し施したのは

『身体能力の向上』

思念体との距離を一瞬の内に縮め背後をとる

「覚悟しやがれ」

拳の弾幕を断続的に打ち込む!
願望を一撃一撃に込め・・・打ち続ける―――!!

この攻撃が効かないはずはない
圧倒的優勢のはず

131: 2010/04/25(日) 23:26:29.01 ID:D60mCHq40
だが

今もなお攻勢を続けているはずの俺に戦慄が走る

その予感は当たっていた・・・思念体が突如振り返り、その腕が腹をえぐる!

「があッ・・・反応・・・できなかった・・・!! それにこの能力が効かないのか・・・!!?」

足もとに出来ていく血の水たまり

「先刻までのやり取りの中で、貴様の能力の原理こそ分からぬものの特性は把握した。
 この身で試してみたが、その効果適用範囲から私という存在は大きく逸脱しているようだな・・・
 次元が違うのだよ・・・諦めろ」

激痛で意識が揺れる

「・・・・・・くっ・・・駄目なのか・・・ここまで、来て・・・」


意思が折れていく・・・・・


遠く、色彩を失っていく視界が捉えたのは
まるで玩具のように腕を引きちぎらる長門・・・
不可解な情報操作により頭を押さえ悶え苦しむ古泉だった・・・

132: 2010/04/25(日) 23:32:43.70 ID:D60mCHq40
『頼む』


思念体が脅え震える朝比奈さんと眠ったままのハルヒに近づいていく・・・


『お願いだ』―――『頼む』

『やめてくれ』


泣きわめきながらも
しっかりとハルヒを抱いて離そうとしない朝比奈さんに殺意を持った腕が伸びる・・・


『もう諦めるから』

『どうすればそいつらを見逃してくれる?』


『言ってくれるのなら俺はなんでも――――』


――――――――――――で、あんたはこう言いたいわけ!?
――――――――――――何でも言うことから助けて下さい~~って

133: 2010/04/25(日) 23:39:53.81 ID:D60mCHq40
『誰だ? 人の気も知らないで・・・』

――――――――――――えぇ。 知らないわ。 何か問題でもあるぅ!?
――――――――――――あんた男でしょ!? まったく弱っちいわねぇ!!  

『・・・思い出した・・・たしか俺はあんたの声を異世界にいた時に聞いた気がする』

――――――――――――ピンポーン。でも、やっぱりハズレだったかしら?
――――――――――――こうなるなら他のを呼べば良かったわ
 
『・・・こっちのお前も、未来のお前も全く変わらねぇみたいだな』

――――――――――――そりゃそうよ
――――――――――――だって私は私だもん

『勝手にこんな世界に放りこみやがって』

――――――――――――でも幸せでしょ? 
――――――――――――私の下で雑用として働けるんですもの

『その天上天下唯我独尊っぷりも顕在みたいだな』

――――――――――――えっへん

『褒めてはない・・・勘違いするな』

134: 2010/04/25(日) 23:46:14.10 ID:D60mCHq40
――――――――――――むかつくわねー!!
――――――――――――私はてっきり称えられたものと思ったわっ!!

『決めたぞ』

――――――――――――何をよ!?

『俺はお前がお前みたいにならない様、更生するまで見届ける』

――――――――――――たぶんそれ・・・
――――――――――――私が氏ぬまでかかるわよ? 本当にいいの?

『いいぞ。 構わん』

――――――――――――!! じゃあ・・・とっ、とりあえず、そこの私を助けなさいっ!!
――――――――――――そうしたら、あんたのその願いを聞いてあげない事もないわねっ!!


『お前の許可をとっても、こいつの許可を取った事にならんだろーが』

135: 2010/04/25(日) 23:49:43.85 ID:D60mCHq40
しかしその言葉に返答はなかった・・・
氏の淵の妄想だった・・・そういう事にしておこう
でも、まぁ、独り言だが
一応、礼でも言っとくか


助かったよ―――お前のおかげで立ち上がる事ができた!



俺の力が思念体効かなかったのは・・・!
俺の願望が足りなかったから・・・そうだろ!?


「おい。思念体・・・!」

「―――なッ!?」

「その薄汚れた手でハルヒに触ろうとすんじゃねぇよ・・・!」

「貴様は確かに・・・氏んだはずじゃ―――!?」


ありったけの願望を拳に詰めこみ―――!!
全力渾身の右ストレートッ―――――――――!!

136: 2010/04/25(日) 23:51:08.39 ID:D60mCHq40
―――――――――――「俺達の日常を―――返してもらうぜッッ!!!!!」


『ハルヒを守りたい』その願望が思念体の存在を否定する―――!!

 
                 

     『創りあげた未来の扉が開く』




それから俺は現れた朝比奈さん大と一緒に未来へと時間渡航し自称古泉兄、
喜緑さんと合流

四人で思念体のもとへ向かった

そんなこんなで共同戦線のもと未来の思念体も倒す事に成功

腹の傷口が開いてしまったが こっちのハルヒも救い出す事ができたしオールOKと
言ったところだろう


姿は高校生のまま、スヤスヤと眠ったままのハルヒを見て
俺は言った


「この分じゃ当分起きそうにないな」

139: 2010/04/26(月) 00:00:46.94 ID:Q4dpngKU0
「あぁ。だからテメーはさっさと帰ってその溢れてる血を長門にでも止めてもらえ。
 見てるこっちが気色わりーんだよ」

「お前に言われたくないな古泉。お前だって随分と派手にやられてるじゃないか」

「てめーよりマシだ。それにだ・・・言っただろーが!一樹は俺の弟だと!!」

「もう隠せてないと思うわよ? まぁ、それは置いといてキョン君・・・
 彼の言うように早く帰って長門さんに治して貰って下さい。 後は私たちでやりますから」

「では・・・お言葉に甘えて失礼しますね。本当は、そこで寝てるそいつをゆすり起こしてでも言いたい事があったんですが・・・
 それは今度にしときます。じゃあ、俺はこれで」

「また、いつか彼を連れて会いに行きますね」

「えぇ。ぜひ来てください。観光案内でもなんでもしますから」

「おい・・・帰る前に1つ約束しろ・・・涼宮の笑顔を守ると」

「・・・あぁ。約束する・・・・」

「頼んだからな・・・」

140: 2010/04/26(月) 00:10:44.52 ID:Q4dpngKU0
「あぁ。迷惑極まりない団長様だが、あいつを泣かすようなマネをするヤツがいれば俺の願望で消し去ってやるさ・・・」

「分かってるならいい・・・用はそれだけだ。さっさと行け」

「じゃあ今度こそお別れだ。戻ります。過去へ」


観光案内と言ったものの、朝比奈さん大も過去へ来たことあったんだよなぁ。
まぁ、どこへ案内するかは、次会う時までに決めとけばいいか・・・


「行っちゃいましたね・・・」

「そうだな」

「これで良かったんだよね?」

「あぁ・・・過去で生きるあいつには知る必要はない事だ」

「教えて・・・いつから気づいていたの?・・・涼宮さんがもうこの世にいない事に」

「はっきりと分かっていたわけじゃない・・・。この目で確認するまでは、
 あいつが氏んでいるなんて信じないようにして生きてきた。
 気づいたのはアイツが捕らえられた半年後。
 能力に架せられていた制限に変化が起きた。
 ある程度のレベルでだが通常空間で使用できるようになっていたんだ」

「ここからはオレのカンにはなるが、願ったんだろうコイツは・・・自らの氏を。
 意識すらなくとも、深層的な部分で能力を理不尽に使われ人が氏んでいく事が許せなかった・・・だから・・・」

141: 2010/04/26(月) 00:17:27.97 ID:Q4dpngKU0
「・・・ねぇ。古泉?」

「なんだ?」

「キョン君はもう帰った・・・血が滲むまで唇を噛み締めてこらえるくらいなら・・・もう泣いてもいいんじゃないかな?」

「うるせぇ―――ウッ・・ウグッ・・・クソっ!こんなのあんまりじゃねーか!?・・・俺達は一体今まで何のために・・・!」

「意味がなかったわけじゃない・・・こうしてこの時間軸にも平穏が戻ってきたんです・・・それに・・・ほら。見て?」

「・・・・ウ・・・ウウッ」

「涼宮さんの幸せそうに寝顔・・・」

「・・・ハハ・・・一体どんな夢―――見てんだろーな」



――――――――――――二日後  河川敷

「あなたはこの世界に残るおつもりで?」

「あぁ。 そのつもりだ。
 この力を使えば帰れない事はないだろうが、こっちでやる事ができたからな」

「それは良かった。 部室でボードゲームの相手がいなくなると寂しいですからね」

143: 2010/04/26(月) 00:26:12.98 ID:Q4dpngKU0
「そういや長門。 お前釣り竿ちゃんと持ってきたか?」

「釣りはしないからいい。 私は本を読む」

「ハハハ・・・そうかい」

「・・・おや? いらっしゃったようですね」

「あの二人が遅れてくるなんて珍しいな」

「何かあったのでしょう。 それより見て下さい・・・あの涼宮さんの楽しそうな笑顔を――――」

「この前の大事件について、あいつは何も知らないからな」

その日、俺達は河川敷で釣り大会をした
題して『第一回SOS団釣り名人決定戦』
途中経過にはなるが、大方の予想通りハルヒが一位を爆走中だ
皆、釣りに夢中になっているが俺はというと勝敗の行方などとうに諦め
別の事に興味が移っていた

やっぱあの時

未来のハルヒに礼を言うべきだったな

144: 2010/04/26(月) 00:28:33.57 ID:Q4dpngKU0
天涯孤独だった俺に家族と呼べる人を与えてくれた事
そしてこの素晴らしい仲間と出会うきっかけをくれた事
それとだ・・・こっぱずかしいが―――


『ハルヒに出会えた事』


大事件は終わったが、ハルヒがいる限り退屈しそうになさそうだ

『いつまでもこの変わらない日常のままで』

それを実現できるこの力で――――日常を守っていきたい
それが俺の願望だ


『お前に逢えて。 本当に良かった』



おわり



見てくれた人! ありがとうでした!!!

145: 2010/04/26(月) 00:29:34.37
おつ!
やっと完結できたなw

146: 2010/04/26(月) 00:30:37.10

引用元: キョン「お前に逢えて。 本当に良かった」