兄「あー？」

妹「ほら。続きやるから」

兄「うん」

妹「うむ。では兄さんや、足を揉みたまえ」

兄「……」ｸﾞﾆｯ

妹「いたたたた！！！！！足を絡ませないで！！！」

妹「酷いなぁ……もう……」

兄「ふわぁ……」

妹「よし。わかった。では、肩をもんでくれ」

兄「なんで？」

妹「なんでも」

兄「仮にも将軍だろ？ちゃんとした理由がないと家臣は動かないぞ？」

妹「むむ……で、では……えーと……あれじゃ、肩が凝ったのじゃ。なんか知らんが肩が凝ったぞ」

兄「知らんがな」

妹「いいからもまんかっ！喝っ！」

兄「わかった。こっちこい」

妹「将軍に向かって失礼じゃな。兄さんがこい」

兄「じゃあ、揉まない」

妹「……うむ。ちょうど散歩がしたかったのじゃ。そちらに向かおう」ｺﾞｿｺﾞｿ

兄「こたつの中から来るなよ」

妹「ふははー！！城の中にはいくつも抜け穴があるのじゃー！！」

兄「……」

妹「よいしょっと……。ほれ、もめ」

兄「……」ｸﾞｸﾞｸﾞｯ

妹「いたたたた！！！いたい！！いたい！！お兄ちゃん！！骨！！そこ骨だから！！」

兄「悪い悪い」

妹「うぅ……なんで意地悪ばっかなの……」

兄「……」

妹「首じゃ！！お前なんて家臣は打ち首じゃ！！」

兄「マジか。俺、氏ななきゃだめかぁ」

妹「くらえー！！ヘッドロックの刑じゃー！！」ｸﾞｸﾞｸﾞ

兄「あー全然くるしくねえわ」

妹「ふぬぬぬ……！！！」

兄「なんか面白いテレビはやってないのかな……」

妹「おらー！！」

兄「……あ。クイズ番組やってんな」

妹「はぁ……はぁ……」

兄「……」

妹「ていっ！！」ｹﾞｼｯ

兄「いてっ。蹴るなよ」

妹「兄さん、嫌いじゃ！」ﾀﾞﾀﾞﾀﾞｯ

兄「……」

兄「将軍のくせに短気なんだな……」

兄「……ふわぁ」

兄「……」

妹「でんちゅうでござるー！！」ﾀﾞﾀﾞﾀﾞｯ

兄「……」

妹「兄殿！！甘えん坊将軍でござるー！！」

兄「……」

妹「でてーん！！甘えん坊将軍じゃ！！控えおろう！！」

兄「ふわぁ……」

妹「兄殿！！将軍の言うことを聞かないと命はないでござるよー！！」

兄「ふーん」

妹「いますぐ、私のためにみかんを剥き、たべさせろー！！」

妹「それができぬのなら、妹の命はないぞー」

妹「きゃー、お兄ちゃんたすけてー」

妹「いいではないかーいいではないかー」

兄「……」

妹「くそっ……！！」

妹「鉄砲隊！！かまえ！！」

兄「……」

妹「うてー！！！」ﾀﾞﾀﾞﾀﾞｯ

兄「え？」

妹「おりゃー！！」ﾄﾞﾝｯ

兄「ぐほっ！」

妹「みかんむけー！！そして食わせろー！！」

兄「……」

妹「ほれ、逃げ場はないぞ、あにちみつひでー」

兄「……いたいな」

妹「ほれ、一個で構わん」

兄「……」

妹「あーん」

兄「はい」ﾎﾟｲｯ

妹「剥いてってば！！」

兄「自分で剥けるだろ」

妹「兄さんに剥いて欲しいのじゃ。なぜそれがわからん」

兄「……剥けばいいんだな」

妹「うむっ」

兄「はぁ……」

妹「はよせい」

兄「……」ﾑｷﾑｷ

妹「うむ。兄さんの剥きかたは素晴らしいのぉ。みかんの皮が開花した花のそれじゃ」

兄「剥けたぞ」

妹「天晴れじゃ」

兄「あーん」

妹「あー……」

兄「―――もぐもぐ」

妹「あー？！」

兄「うめえ」

妹「騎馬隊、すすめー！！」ｹﾞｼｯ

兄「いて」

妹「もうよい！！兄さんはそこに座っておれ！！」

兄「もう座ってるけど」

妹「私が兄さんの膝の上に座るっ！喝っ！」ﾄﾞｶｯ

兄「……」

妹「自分でみかんも剥くわ！！」

兄「……」

妹「むー……きゃ！汁がとんだぁ！」

兄「へったくそだな」

妹「だまれっ！家臣のくせに！！」ﾁｭﾊﾟﾁｭﾊﾟ

兄「将軍のくせに自分の指をしゃぶるのか」

妹「べとべとになるからなっ！」

兄「……ほら、こっちの食え。その崩れたのは貰うから」

妹「ほう……。うむっ。それでこそ兄さんじゃ。よしよし、愛いやつめ」

兄「……ぐちょぐちょじゃねえか」

妹「将軍の剥いたみかんじゃぞ？文句あるか？」

兄「ないけど」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

妹「うまいかの？」

兄「……あ、ほら、時代劇の再放送始めるぞ」

妹「おほ？！」

兄「好きだよなぁ。おまえ」

妹「……」ｼﾞｰｯ

兄「もう聞こえてないか」

テレビ『時は江戸時代―――』

妹「……」ｼﾞｰｯ

兄「みかんくれ」

妹「ん」ｽｯ

兄「さんきゅ」

妹「……」ｼﾞｰｯ

テレビ『ええい！！ひかえろ！！』

テレビ『ははー！！』

妹「……」ｼﾞｰｯ

兄「……こいつのほっぺた柔らかいよな……」ｷﾞｭｯ

妹「……」ｼﾞｰｯ

兄「……」ﾓﾐﾓﾐ

妹「……」ｼﾞｰｯ

兄「……」ﾑﾆﾑﾆ

妹「……」ｼﾞｰｯ

テレビ『さあ、これで終わりです。行きましょうか』

テレビ『はっ！！』

妹「ん～……かっこいい！！」ﾊﾞｯ!!

兄「おぉ」

妹「兄さん！！さあ、世直しにまいりましょう！！」

兄「……」

妹「行きますよ！！兄さん！！」

兄「……みかん、食うか？」

妹「うん」

兄「あーん」

妹「あーん……もぐもぐ……」

兄「うまいか？」

妹「おう！」

兄「そうか」

妹「お兄ちゃん。今度は私が家臣になるね」

兄「……なんだ。やるのか」

妹「甘え奉行にするから、お兄ちゃんが兄代官ね」

妹「兄代官さまぁ～みかんを～みかんを恵んでくだせえ」

兄「一緒じゃねーか」

妹「だめなの？うーん……ジュースをめぐんでくだせえ……ジュースぅ」

兄（こいつのごっこ遊びはホントに長くなるから嫌なんだよなぁ……）

兄「……」ｽﾀｽﾀ

妹「あれ？終わり？」

兄「部屋に戻る」

妹「……」

兄「ふわぁ……」

妹「……」ﾄｺﾄｺ

兄「……ん？」

妹「あ！こたつぅ～！」

兄「……」

妹「やいやいやい！！こたつのやろう！！兄を逃がすたぁ、いい度胸だ！！」

妹「お天道様が許しても、この俺がゆるしゃあしねえ！！」

妹「覚悟しやがれぇ！！」

兄「……」ｽﾀｽﾀ

妹「えいえい！！」ﾎﾟｺﾎﾟｺ

兄（楽しそうだし、放っておいてもいいか）

兄「―――便所」

兄（そういえばアイツは……？）

妹「こたつに食われたー！！」ｼﾞﾀﾊﾞﾀ

兄「……まだやってたのか」

妹「あ！兄さん！！はよう、このこたつから私を救い出してほしいのじゃ」

兄「……将軍様ともあろうものが自力で脱出できないとは情けない」

妹「なぬ？」

兄「見損ないましたぞ。拙者はこのまま将軍様の下を離れます」

妹「ゆるさぬ！！」ｷﾞｭｩｩ

兄「……」ｽﾀｽﾀ

妹「どこへいくー！！」ｽﾞﾙｽﾞﾙ

兄（うぜえ……）

妹「さむいではないかー！！喝っ！！」ｽﾞﾙｽﾞﾙ

兄「離れろ。便所にいくんだから」

妹「うむ！では、ついていってやろう！！」

兄「……はい。邪魔」

妹「のー！」

バタン

兄「……」ｶﾁｬｶﾁｬ

兄（親父もお袋も仕事一筋であいつに構ってやらなかったからなぁ）

兄（俺に懐いてくれるのはいいんだけど……最近は色々と悪化している気がする……）

妹「まだかのー」ﾄﾞﾝﾄﾞﾝ

兄「……」ｼﾞｬｰ

ガチャ

妹「うむ！では、続きじゃ！！」

兄「……」

兄（心を鬼にしないとだめかな……）

妹「兄さん！！出陣じゃー！！」

兄「部屋に戻る。一人でやっててくれ」ｽﾀｽﾀ

妹「あ……」

兄「……」

兄（静かだな……）

兄「……」ｶﾞﾁｬ

兄「……」ｿｰｯ

妹「……」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

兄（みかん食ってる……）

妹「……あ、またつぶれちゃった」

妹「ええい。甘えん坊将軍のくせに情けない。そんなことでは兄は振り向いてくれんぞ」

妹「……」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

妹「ベトベトになっちゃった……洗ってこないと」ﾄｺﾄｺ

兄「……」

妹「……」ｼﾞｬｰ

兄（すげえ寂しそうにするのな……）

妹「はぁ……」ｺﾞｼｺﾞｼ

兄（そんなに俺と遊びたいのか……？）

妹「……よっこいしょ」ｺﾞｿｺﾞｿ

妹「……」

妹（お兄ちゃん……最近、遊んでくれないなぁ……）

妹（お風呂も入ってくれなくなったし……）

妹（私のこと嫌いになったのかなぁ……）

妹（もう甘えないほうがいいのかなぁ……）

妹「はぁ……」

妹「……」

妹「……よし」

妹「甘えん坊将軍、うちとったりー！！」

妹「これからは我輩、甘えない『甘えん坊将軍』の時代じゃー！！」

妹「ふはははー！！！」

妹「まずは小手調べに……」

妹「一人で寝る！！」

妹「寝るぞー！！せいっ！！」ﾊﾟﾀﾝｯ

妹「……」

妹「ねれんっ！！喝っ！！」ｶﾞﾊﾞｯ

妹「難しいのぉ。天下統一への道のりは長いわ」

妹「……」

妹「よし。次じゃ」

妹「みかんの皮を綺麗にむくっ！」

妹「よっと……」ﾑﾝｽﾞｯ

妹「ふむ。慎重にやれば問題あるまい……」

妹「……」ｸﾞｸﾞｯ

グチュン！！

妹「わっ！」

妹「……」ﾍﾟﾛﾍﾟﾛ

妹「うむ！！失敗は付き物じゃな！！」

妹「これを食したら次じゃ！！」

妹「急いでくわねば……！！」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

妹「こたつの電源を切るっ」ﾊﾟﾁﾝ

妹「みかんを台所にはこぶ！！」ﾄｺﾄｺ

ガッ

妹「あ―――」

ドタンッ！！

妹「……」

妹「…………ふぇ」ｳﾙｳﾙ

妹「うぇぇん！！！」

兄「どうした？！」

妹「いたぁい！！いたぁい！！」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

兄「ほら、立ってみろ」

妹「うぅ……」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

兄「怪我はしてないな……大丈夫だ」

妹「ほんとぉ……？」ｺﾞｼｺﾞｼ

兄「びっくりしただけで、そんなに痛くないだろ？」

妹「うん……」

兄「はぁ……ほら、みかんは拾っておくから」

妹「いい！！」

兄「え……」

妹「兄さんは控えておれ！！我輩、甘えん坊将軍が拾ってみせよう！！」

兄「……その将軍は甘えたがりなのか？それとも甘えないのか？」

妹「後者じゃ！！」

兄「そうか」

妹「……」ﾋｮｲﾋｮｲ

兄「……」

妹「ほれみろ！！我輩だけでもひろえるのじゃ！！」ﾑﾌｰ

兄「そうだな」

妹「兄さんの力など、必要ないわ！！喝ッ！！」

兄「そうか」

妹「ふんっ。去れ！顔もみたくないわ！！」

兄「……」

妹「……本当じゃ！！」

兄「分かった。腹減ったら言ってくれ」

妹「腹なんて減らんな！！」

兄「それは嘘だろ」

妹「まことじゃぞ！！武士はくわねど高楊枝じゃ！！」

兄「……まぁいいか」ｽﾀｽﾀ

妹「……」

妹「よし！！兄さんに甘えずにすんだぞ！！」

妹「やればできるぞ！！ふははー！！」

妹「……よっこいせ」ｺﾞｿｺﾞｿ

妹「ふぅ……」

妹「よし！！寝る！！ひとりで！！」

妹「せいっ！！」ﾊﾟﾀﾝｯ

妹「……」

妹「すぅ……すぅ……」

妹「おにいちゃん……すぅ……」

妹「んっ……」ﾌﾞﾙｯ

妹「……おしっこ……」ﾓｿﾞﾓｿﾞ

妹「うぅー……さむいー……」ﾓｿﾓｿ

妹「……」ﾌﾗﾌﾗ

兄「ん？起きたのか？」

妹「うん……」

兄「トイレか？」

妹「おしっこ……」

兄「手伝ってやろうか？」

妹「おねがいします」ﾍﾟｺｯ

兄「冗談だ。一人でがんばれ」

妹「ふわぁ……わかったぁ……」ﾄｺﾄｺ

兄「ねぼけてんな、アイツ」

ガチャ

妹「んん……」ｺﾞｼｺﾞｼ

兄「また寝るのか？」

妹「うん」

兄「こたつで寝るなよ。風邪引くからな」

妹「あぃ……」ﾄｺﾄｺ

妹「さむ……さむ……」ﾓｿﾞﾓｿﾞ

兄「だから、こたつに入るなって」ｸﾞｯ

妹「すぅ……すぅ……」

兄「よっと……しょうがねえな……運ぶか」

妹「うぅん……」ｷﾞｭｩｩ

兄「……」

妹「しょうぐんじゃぞー……ひかえろー……」ﾑﾆｬﾑﾆｬ

兄「はいはい」

妹「ふふ……」ｷﾞｭｩｩ

兄「これでよし」

妹「すぅ……すぅ……」

兄「さてと。夕飯の準備だけでもしとくか」ｽﾀｽﾀ

バタン

妹「―――ん？」

妹「あれ……？」ｷｮﾛｷｮﾛ

妹「……」

妹（こたつで寝てたはず……）

妹「はっ！？またお兄ちゃんに運ばれた……！？」

妹「しまったぁ……！！甘えてしまったかぁ……！！」

妹「おのれ、兄さんめぇ……！！この恨み……一生忘れぬぞ……！！」

妹「ふふ……今日は夜ご飯を一緒に食べないの刑じゃ！！」

妹「我ながらなんと恐ろしい刑罰じゃ。身の毛も総立ちじゃな！！」

妹「……」

妹「さて……こたつで寝るかの」ﾄｺﾄｺ

妹「よっこらっせ」ｺﾞｿｺﾞｿ

兄「昼寝はもういいのか？」

妹「……」ﾌﾟｲｯ

兄「……みかん、食べるか？」

妹「いらーん」

兄「そうか」

妹「寝るっ！」ﾊﾟﾀﾝｯ

兄「こら、寝るな」

妹「すぅ……すぅ……」

兄「おい」

妹「運ばなくてよい！！むしろ運ぶでないぞ！！」

兄「風邪引くぞ？」

妹「ひかんな！！―――何故なら甘えん坊将軍だから！！」

兄「もうしらん」

妹「ふははー！！ついに観念したかー！！これでこの領土は手中におさめたぞー！！」

兄「……」

妹「へっくしゅん！！！」

兄「大丈夫か？」

妹「べいぎじゃー」ｽﾞｽﾞｯ

兄「こたつで寝るからそうなるんだ」

妹「ぢょっど、ばながずばっだだげじゃ……」

兄「……」

妹「……」ｽﾞｽﾞｰ

兄「ほら、部屋に戻るぞ」

妹「びどりでもどれるばい！！」

兄「……」

妹「いづまでもごどもじゃにゃい！！！」

兄「そうか。悪かったな」

妹「ぶーん！！がづっ！！」ﾄｺﾄｺ

兄「飯、どうすんだよ……」

妹「……」ｽﾞｽﾞｰ

妹（一人で寝ることぐらい……）

妹「……」ｽﾞｽﾞｰｯ

妹「いぎぐるじぃ……」

妹「……」ｽﾞｽﾞｰ

妹（こういうとき……いつも……）


兄『ほら、上着脱げ』

妹『うん……』

兄『これを胸に塗れば楽になるからな』ﾇﾘﾇﾘ

妹『おほ。楽になったー』

兄『いや、そんなに早く効くわけないだろ』

妹『えへ……へっくしゅん！！』


妹「……」ｽﾞｽﾞｰ

妹「あにょぐずり……どごがなー？」

妹「……」ﾄｺﾄｺ

兄「……？」

妹「ごごがなー？」ｺﾞｿｺﾞｿ

兄「……」

妹「にゃいなー」ｽﾞｽﾞｰ

兄「おい」

妹「ごっぢがなー？」

兄「……なにやってんだ？」

妹「うるざいなぁー」ｽﾞｽﾞｰ

兄「これだろ？」ｺﾄｯ

妹「ぢげーじ！」

兄「違うのか？」

妹「うむ！あれじゃ！！お尻にいれりゅぼう！！」

兄「……こっちか」ｽｯ

妹「あ、ありゅんだ……」ｽﾞｽﾞｰ

兄「入れてやろうか？」

妹「じぶんでやりゅじ！！」

兄「じゃあ、はい」

妹「……うむ」

妹「ざらばじゃ」ﾄｺﾄｺ

兄「大丈夫かよ……」

バタン

妹「よじ……やるぞ……」

妹「……」ﾇｷﾞﾇｷﾞ

妹「ご、ごれを……おじりに……」

妹「……」ｸﾞｯ

妹「んぐっ……」

妹「うぅ……」

妹「ぎっ……」

妹「ぁ―――」

トントン

妹「なんじゃい！！」

兄「一人じゃ無理だろ？」

妹「もうずごじじゃ！！」

兄「ほんとか？」

妹「ざぎっじょば、ばいっだぞい！！」

兄「大丈夫か？」

妹「もうぢょっど……じゃぁぁ……」ｸﾞｸﾞｸﾞｯ

妹「ぐっ！！」

妹「―――ばいっだー！！」

兄「そうか」

妹「ぶばばー！！兄ざんもだがなじじゃなぁー」

兄「座薬ぐらいでそんなに苦労してるようじゃ……」

妹「ぢれい！！兄ざんにようはなじ！！」

兄「腹へったらいえよ」

妹「……」ｽﾞｽﾞｰ

妹（意外とひとりでできるんだ……）

妹（ふふん……ま、ちょっとお兄ちゃんには敵わないけど、なんとかなるし……）

妹（あ……楽になってきた……）

妹「……」ｽﾞｽﾞｰ

妹「……ねよっと」

妹「すぅ……すぅ……」


兄「―――あいつ、出てこないな」

兄「……」ｽﾀｽﾀ

兄「おーい」ﾄﾝﾄﾝ

兄「……はいるぞ？」ｶﾞﾁｬ」

妹「すぅ……すぅ……」

兄「寝てるのか……」

妹「おにいちゃぁん……」

兄「……」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

兄（いつもは俺にくっついて寝てたのに……一人で寝れるのかよ……）

兄（じゃあ、これからは一人で寝ろよ）ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

妹「……」ｷﾞｭｩ

兄「……」

妹「ふふ……」

兄（本当に甘えたがりだな……こいつ……）

兄（まぁ、俺も甘えて欲しいってのが本音だけどな……）

妹「……」ｶﾞﾊﾞｯ!!

兄「うお？！」

妹「……ふにゃぁ」ﾊﾟﾀﾝｯ

兄「……びっくりした」

妹「すぅ……すぅ……」

兄「飯はどうするんだー？」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

妹「ん……たべりゅぅ……」ﾑﾆｬﾑﾆｬ

兄「そうか。なら、一応つくっとくな」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

妹「ん……？」

妹「ふわぁぁ……よくねた……」

妹「……」ｸﾞｩ～

妹「ごはん……」ﾄｺﾄｺ

兄「……よ」

妹「よっ」

兄「ご飯、できてるぞ」

妹「配膳しろ」ﾖﾛﾖﾛ

兄「はいよ」

妹「ふわぁ……」ｺﾞｼｺﾞｼ

兄「―――はい。おまちどう」

妹「……」ｳﾂﾗｳﾂﾗ

兄「ほら、しっかり持って」

妹「あーん……」

兄「なんでだよ……」

兄「はい」

妹「あー……ん……」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

兄「もう一口いくか？」

妹「うむ……あー……」

兄「はい」

妹「ん……」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

兄「まだ寝ぼけてんのか？」

妹「うむ」

兄「ならしょうがないな。ほら、あーん」

妹「あー……ん……うまいっ！」

兄「……」

妹「おっと……むにゃむにゃ……ねむいぞー」

兄「お前な……」

妹「あーん……」

兄「はいはい……ほらよ」

兄「美味しかったか？」

妹「うむっ」

兄「じゃ、どいてくれ。膝の上に乗られてると洗い物ができない」

妹「むにゃむにゃ……」

兄「それはもうだめ」

妹「むぅ」

兄「ほら、食器運んで」

妹「うむ」ｶﾁｬｶﾁｬ

兄「……」

妹「であえー」ﾌﾗﾌﾗ

兄「あぶなっかしいなぁ」

妹「ほ……はっ……」ﾖﾁﾖﾁ

妹「―――ふぅ！本丸、せめおとしたりー！！」

兄「はい。良くできました」

妹「ふははー！！」ﾑﾌｰ

兄「……」ｻﾞﾌﾞｻﾞﾌﾞ

妹「兄よ！！」

兄「ん？」

妹「もう我は兄に甘えないことに決めたのじゃ！！」

兄「うん。聞いた」

妹「これからはなんでも一人でするぞい」

兄「おう。がんばれ」

妹「だから、今日だけは甘えさせろ！！これは命令ではない！！お願いだ！！」

兄「……」

妹「だめかー！！うわぁー！！」ｺﾞﾛｺﾞﾛ

兄「いいぞ」

妹「え？」ﾋﾟﾀｯ

兄「今日だけな」ｻﾞﾌﾞｻﾞﾌﾞ

妹「ほんとかー？！やったー！！！」ﾋﾟｮﾝﾋﾟｮﾝ

兄「うれしそうだな……」

兄「で、なにするんだ？」

妹「馬になれっ！！」

兄「それかよ」

妹「いざゆかん！！鎌倉！！」

妹「よいしょっと……」

兄「……」ﾄｺﾄｺ

妹「もっとはよはしれい！！」

兄「やなこっった」ﾄｺﾄｺ

妹「おせいなぁ！！この馬は駄馬かぁ！！」

兄「このやろ！！」ｶﾞﾊﾞｯ!!

妹「うわぁぁ」

兄「てめえなんか肩車で十分だ」

妹「たかいぃ……やめてぇ……」ﾌﾞﾙﾌﾞﾙ

兄「おらおらー！！」

妹「おねがいぃ！！おろしてー！！」ｷﾞｭｩｩ

妹「……」ﾌﾞﾙﾌﾞﾙ

兄「悪い……やりすぎたな」

妹「……」ﾌﾞﾙﾌﾞﾙ

兄「もうこんな時間か。ほら、そんな隅で膝抱えてないで、風呂にはいるぞ」

妹「……おふろ？！」

兄「嫌か？」

妹「はいるー！！」ﾀﾀﾀｯ

兄「おし。ここで脱げ」

妹「おりゃー｣ﾇｷﾞﾇｷﾞ

兄「……」

妹「んしょ……んしょ……」ﾇｷﾞﾇｷﾞ

兄「遅いな……」

妹「もうちょっと……よし！！」

兄「いくぞ」

妹「出陣じゃー！！」

妹「ふぅ……」

兄「いい湯だな」

妹「……」ﾌﾞｸﾌﾞｸ

兄「なんだよ。そんなにくっつくな」

妹「今日は甘え放題なのじゃろ？」

兄「そうだな」

妹「ふふーん」

兄「暑苦しいな」

妹「ほれほれ。女子の肌を体感せよ」ｽﾘｽﾘ

兄「やっぱりスベスベだなぁ」

妹「じゃろ？」ｽﾘｽﾘ

兄「うぜ……」

妹「兄さんや、どうじゃ？うれしかろう？」

兄「別に」

妹「なんと？！失敬なやつじゃ！！もっとほしいかぁー！！」ｽﾘｽﾘ

妹「はぁー……気持ちよかったなぁ」

兄「寝れるか？」

妹「兄さんが一緒なら問題はあるまい！！」

兄「……あ、そう」

妹「……」ｷﾞｭｩｩ

兄「そんなにくっつくな。風呂上りで暑いんだから。お前だって―――」

妹「あつくないのぉ」

兄「……」

妹「明日からこうできないと思うと……寒いくらいじゃぁ……」

兄「お前……」

妹「……」ｷﾞｭｩ

兄「……おやすみ」

妹「いやじゃ……寝たくない……」

兄「なんで？」

妹「寝たら……甘えられない……」

妹「お兄ちゃん……」

兄「ん？」

妹「んー……」

兄「ん……」

妹「……ふふ……おやすみのキスは久しぶりだね」

兄「もう寝ろ」

妹「やだー」

兄「俺は寝る」

妹「じゃあ、キスして起こすー！！」ﾁｭｩ

兄「やめろ！！」

妹「なんでー？甘えていいんでしょー？」

兄「……あのなぁ」

妹「日付が変わるまであと2時間！！ずっとキスだぁー！！」

兄「バカか……！？むぐぅ？！」

妹「んー！！！」ﾁｭｩｩ

翌朝

妹「ん……？」

妹「ふわぁぁ……」ﾄｺﾄｺ

兄「―――おはよう」

妹「うん」

兄「ごはん、できてるぞ」

妹「うん」

兄「寝ぼけてるのか？」

妹「ううん。大丈夫」

兄「……」

妹「頂きます」

兄「早く食って支度しろよ」

妹「はーい」

妹「……」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

妹「お兄ちゃん、先いくねー！！」

兄「おう」

妹「いってきまーす！！」

兄「……」

兄「本当に甘えなくなったのか……？」

兄「さっぱりしてていいな」

兄「さーてと……俺も支度するかな」

兄（なんか寂しいな……）


妹「……」ﾄﾎﾞﾄﾎﾞ

妹（これが本当の甘えん坊将軍かぁ……）

妹（慣れるまで時間かかるかもしない……）

妹（でも、大丈夫。昨日は唇がふやけるほどキスしたし！！）

妹（もう平気！！）

妹「……」ﾄﾎﾞﾄﾎﾞ

兄「ただいまー」

妹「おかえり」

兄「おう」

妹「……」

兄「ふぅ……あったけえ」

妹「……」

兄「チャンネルかえていいか？」

妹「いいよー」

兄「……」

妹「……」

兄「外、寒いな」

妹「そだねー」

兄「……てい」ｹﾞｼｯ

妹「いたいなぁ。やめてー」

兄「悪い」

兄（反応悪いな……やっぱり、もう割り切ったのか……）

妹（むぅ……足で攻撃か……やりかえしてもいいよね……）

妹「……」ｹﾞｼｯ

兄「いた」

妹「ふんっ」

兄「……」

兄（これぐらいで怒るのかよ……徹底してんなぁ）

妹（やりかえしてこないの……？なんでー？）

兄「……」

妹「……」

妹（足を絡ませて……）ｼﾞﾘｼﾞﾘ

兄「部屋に戻るわ」ｽｸｯ

妹「おぉ……そうですか」

妹「ちっ……」

兄（なるべく距離を置いたほうがいいのかな……）ｽﾀｽﾀ

兄「―――そろそろ飯つくるけど、なにがいいー？」

妹「ハンバー―――なんでもいいよー」

兄「え？ハンバーグ？」

妹「な　ん　で　も　い　い　！」

兄「わかった。ハンバーグな」

妹「まぁ、なんでもいいけど……」

兄「……」ﾍﾟｯﾀﾝﾍﾟｯﾀﾝ

妹「……な、なんか手伝おうかー？」

兄「別にいい」

妹「え？皿出し？」

兄「いってねーよ」

妹「あ、そう……」

兄「……」ﾍﾟｯﾀﾝﾍﾟｯﾀﾝ

妹「……」ｳｽﾞｳｽﾞ

妹「ごちそうさまでした」

兄「ん」

妹「はい」ｶﾁｬｶﾁｬ

兄「さんきゅ」

妹「おしっこ……」ﾄｺﾄｺ

兄「ついでにトイレットパーパーも補充しててくれ」

妹「うん」

兄「よろしく」ｻﾞﾌﾞｻﾞﾌﾞ

妹「……」ﾄｺﾄｺ

妹「……」ｶﾞﾁｬ

妹「……」

妹「―――おにいちゃーん！！紙がないからもってきてー！！」

兄「補充しろっていわなかったぁー！！」

妹「わすれてたー！！」

兄「バカだなー！！」

兄「ほらよ」

妹「ありがと」

兄「いや……風呂は？」

妹「はいるよー」

兄「先に入るか？」

妹「うん」

兄「分かった」

バタン

妹「……よし」

妹「お風呂にはいってねるぜー」ｼﾞｬｰ

妹「……」

妹「はぁ……」

妹「―――さっぱりしたぁ」

妹「ダァーイブ！！」ﾊﾞﾌﾝ

妹「……」

妹「……ねよっと」ｺﾞｿｺﾞｿ

妹「これで……いいもん……これで……」


兄「……」ｻﾞｧｧ

兄「ふぅ……」ｷｭｯｷｭｯ

兄（なんでこんな空しい気分になるんだろうなぁ……）

兄（単にアイツが兄離れしようとしてるだけなのにな）

兄「……」

兄「いいことだろ……いいことじゃねえか……」

兄「……」

兄「はぁ……」

兄「全然、さっぱりしねえ……」

兄「……」ｺﾞｼｺﾞｼ

兄「寝るか」

ガチャ

兄「……よっと」

妹「ぐぇ！」

兄「？！」

妹「いぁい……」ｺﾞｿｺﾞｿ

兄「お前……！？」

妹「あ。しまった。寝ぼけてお兄ちゃんのベッドにもぐりこんだぞ。てへへ」

兄「……甘えん坊将軍は氏んだんじゃなかったのか？」

妹「だから、間違えただけっていったでしょ」

兄「……はいはい」

妹「まずい！！この時間だと自分の部屋に戻る暇がない！！ここで一人で寝るしかない！！」ﾊﾟﾀﾝｯ

兄「……」

妹「文句あるの？！」

兄「ねーよ」

妹「一人でねるんだから、邪魔しないでね！！」

兄「わかった」ｺﾞｿｺﾞｿ

妹「一人でねるぞー！！」ｷﾞｭｩｩ

兄「……電気消すぞ」

妹「バッチこい」

兄「……」ﾊﾟﾁﾝ

妹「あーひとりでねるのらくしょーすぎるー」ｷﾞｭｩｩ

兄「大変だな」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

妹「ふははー。もっと褒めて！！」

兄「がんばれよ」

妹「うん！」

兄「……」

妹「……我慢してもいいことないね」ｷﾞｭｩ

兄「そうだな」

妹「―――でてーん！甘えん坊将軍じゃ！」ﾄﾞｶﾞｧ

兄「うぐっ！？」

妹「朝日はとうにのぼっておるぞい！！おきんかぁ！！」

兄「はいはい……ありがとよ」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

妹「兄さんや！！今日もたっぷり甘えさせてもらうのじゃ！！」

兄「どうぞ。ご自由に」

妹「よーし！！では今日一日、ずっと抱きついておくぞー！！！」ｷﾞｭｩｩ

兄「将軍には敵わないな……」

妹「当然じゃ！！甘えん坊将軍は不滅じゃー！！！」ｷﾞｭｩ

兄「天下統一も夢じゃないな」

妹「ふふーん。もうお兄ちゃんは統一済みだから、いいもーん！！」

兄「そうだな。じゃ、朝飯にするか。将軍様」

妹「くるしゅうない！！ちこうよれ！！」

兄「はいよー」ｷﾞｭｩｩ

妹「そっちからは卑怯じゃー！！！私が抱きつくのじゃぞ！！もう！！」
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おしまい。

激しく萌えた！
乙乙

乙
妹は頭が良いなぁ