1: 2013/07/06(土) 18:51:17.01 ID:cE2MPQ1R0
     ~カメハウス~

『はい、皆さんもご一緒にぃ~』

亀仙人「はぁ~わんつっわんつっ! ほぉ~ええチチしとるのぉ~」

亀仙人「ほれ、クリリンも一緒にどうじゃ?」

亀仙人「おお? クリリンはおらんのか?」

ウミガメ「クリリンさんは今日も外にいますよ」

亀仙人「ふぅむ?」チラッ

クリリン「……はあ」

亀仙人「ありゃ完全に恋煩いじゃのう」

ウミガメ「ですねぇ」

亀仙人「どれ、わしがちょっくら元気にしてやるか」

ウミガメ「余計なお世話だと思いますけど」

亀仙人「なにを言うか! 若い頃はピチピチギャルがわんさか群がってきて色恋沙汰は手馴れたもんじゃぞ?」

ウミガメ「見る影もありませんが」

亀仙人「ったく、失礼な亀じゃ」スタスタ

4: 2013/07/06(土) 18:56:09.38 ID:cE2MPQ1R0
 

亀仙人「おい、クリリン」

クリリン「……」ボォー

亀仙人「クリリン!」

クリリン「はいぃ!? む、武天老師様。どうされました?」

亀仙人「いつまでそこで待つつもりじゃ?」

クリリン「!」ギクゥッ

亀仙人「誰を待っておるかは言わんでも解っとる。だがな、時には果敢に攻めることも重要じゃぞ。武道と一緒じゃ」

クリリン「武天老師様……そうは言ってもあいつがどこで暮らしてるのかも解りませんし、気を探ろうにも人造人間ですし……」

亀仙人「おかしなことを言うのう。じゃあ聞くがな、18号の居場所を知っていたら会いに行くのか?」

クリリン「そ、それは」

 

5: 2013/07/06(土) 18:59:44.79 ID:cE2MPQ1R0
 

亀仙人「このヘタレが。わしの弟子ともあろう者が情けない、少しはヤムチャを見習ったらどうじゃ」

クリリン「でもヤムチャさん本気の恋愛はことごとく失敗してるじゃないですか」

亀仙人「言い訳無用! あの強気の姿勢も大事だと言っておる! 場所がわからない? じゃったらブルマを訪ねてみたらどうじゃ? あいつじゃったら18号の居場所を探る装置を作れんこともないじゃろ。設計図はまだ保管しておるじゃろうしな」

クリリン「なるほど! 流石武天老師様! スケベに関することなら頭が働きますね!」

亀仙人「お前ほんとにわしの弟子?」

クリリン「武天老師様は僕の素晴らしいお師匠様ですよ! それじゃ、行ってきます!」ビューン

亀仙人「現金な奴……おお、いかんいかん。テレビのプリチー姉ちゃんがわしを待っとる」スタスタ

ビューン
クリリン「へへっ、これで18号に会えるぞ!」

クリリン(……でも会ってどうすりゃいいんだ? 18号めちゃくちゃ美人だし、俺みてぇな奴相手にされないんじゃ……)

 

11: 2013/07/06(土) 19:07:33.27 ID:cE2MPQ1R0
     ~CP(カプセルコーポレーション)~

クリリン「ブルマさんこんにちわー」

ブルマ「あらクリリンくん、いらっしゃい。なぁんかやけににやにやしてるけどどうしたの?」

クリリン「そ、そうですか? えへへ。実はですね、作って欲しいものがあるんです」
ブルマ「作って欲しいもの? なになに、どんなメカよ」ズズイ

クリリン「急に機嫌が良くなりましたね」

ブルマ「あったりまえじゃない! 私は天才発明家よ? 自分の発想にないメカを作れるなんて最高に楽しいじゃない! で、どんなの?」

クリリン「その、18号の居場所が解るようなメカを作って欲しいんです」

ブルマ「はは~ん、なるほどね。会いたいけど居場所もわからないし気も探れないしでお手上げなのね」

クリリン「そうなんですよ」

ブルマ「うん、無理」
クリリン「ええ!? あ、諦めが早くないですか!?」

ブルマ「18号の設計図を解析してるからね、無理なもんは無理って解るのよ。そもそも居場所を特定するには18号自身がなにかしらの発信をしてなきゃいけないんだけど
永久自立型人造人間である彼女には発信源が一つもない。強いて言えば体内の爆弾がそれだったけど、取り外しちゃったんでしょ?」

クリリン「そんなぁ」

ブルマ「それにね、クリリンくん。あんたさっきの発言サイッテーよ」
クリリン「え?」

12: 2013/07/06(土) 19:09:07.74 ID:cE2MPQ1R0
ブルマ「居場所が解らないから居場所を特定する機械を発明してくれ? それって要するに一人の人間の人権をないがしろにするのよね。
設計図なんてもんを私は見てるからなんとなく感情移入しちゃうんだけど、彼女だって人間よ? 女の子よ? わかってる?」

クリリン「もちろんわかって――」

ブルマ「解ってないわね。わかってたらそんなデリカシーのない発言はしないはず」

クリリン「うぅ……それじゃあどうしたら」

ブルマ「自力で捜しなさいよ。それに関しては止めはしないわ。でも、これは多分だけどね、彼女は好き好んで人造人間になったんじゃないと思うの」

クリリン「?」

ブルマ「女の勘ってやつよ。さ、解ったらさっさと行った行った。あ、そうだ、これだけは教えてあげる」

クリリン「はい?」

ブルマ「彼女は大都市にいるわ」
クリリン「どうしてそんなことが?」

ブルマ「ヤムチャに聞いたんだけど、彼女ってお洒落なんでしょ? 着ていたブランドも田舎にはない服ばかりって。
そんな性格の子が田舎に引っ込むとは思えないからね」

クリリン「な、なるほど。それじゃとりあえずこの都から探してみます!」

ブルマ「行ってらっしゃい」

クリリン「ブルマさん、ありがとう! なにかあったら携帯に電話ください!」シュタッ

ブルマ「あらら、はしゃいじゃって。頑張りなよ、クリリンくん」

14: 2013/07/06(土) 19:09:57.36 ID:cE2MPQ1R0
クリリン(くそ、俺は馬鹿だった。武天老師様も俺を励ますために言ってくれたんだろうけど、考えてみればそうだ。
相手が機械だからって機械で場所を特定するなんて間違ってるじゃないか)

クリリン「でも大都会って言ったって……どこにいるんだ?」

クリリン「18号がいそうなとこっても、俺あいつのことなぁんにも知らねぇしなあ」

クリリン「仕事とかもなにしてんだろ。人の下について仕事ができそうな感じには見えないけど、ってなると……やばい仕事!? ありそうで嫌だなあ」

ビュ~ ビラビラ

クリリン「うわっぷ、なんだこの紙。なになに」

"Wanted! この顔にピンと来たら110!"
18号の振り向き顔が載っている

クリリン「……早速手がかりが見つかって幸先がいいのか悪いのか」クシャッ

クリリン「ったく、なにやってんだよあいつ! 結局そういうことだってのかよ!」

クリリン(……でも)

クリリン「ああ、もう! 考えるは辞めだ! 絶対見つける!」

クリリン「まずは警察に話を聞きに行こう」

15: 2013/07/06(土) 19:12:37.81 ID:cE2MPQ1R0
     ~警察署~

クリリン「ですからこの子のことを教えてもらいたいんですよぉ」
犬署員「だからこいつは強盗殺人犯なの! それ以上のことは新聞でも見てくれ。詳しいことは関係者以外には教えられんから」
クリリン「そこをなんとかぁ」
犬署員「しつこい奴だなあ!」

猫署長「なんだ騒がしい」

犬署員「こいつが指名手配犯についての情報を教えてくれって無茶なこと言うんですよ」

猫署長「ああ、すまんがそれは……って君、どこかで見たことあるな」

クリリン「……はい?」

猫署長「そのハゲ頭と独特な……そう、鼻のない顔!」
クリリン「ほ、放っておいてくださいよ」
猫署長「思い出した、君、以前天下一武闘会に出場していただろ!」
クリリン「はあ」

犬署員「こんなチビがですか?」
猫署長「馬鹿、この人はお前なんかよりもずっと強いぞ! なにせあの武天老師様の弟子だからな!」
犬署員「あの武術の神様の!?」
クリリン(おお、武天老師様の噂がまだ残っていたとは。喜ぶだろうなあ)

猫署長「そうか、君のような強者がその指名手配犯を追ってくれるとなれば心強い。なにせやたらと強くてどうしようもないのだよ」

クリリン(スーパーサイヤ人のベジータより強かったしな)

猫署長「よし、会議室で話をしよう」

16: 2013/07/06(土) 19:13:33.16 ID:cE2MPQ1R0
クリリン「それで18……奴はどんな犯罪を?」

猫署長「うむ、ある富豪の家に押し入り家主を頃した強盗殺人犯として指名手配されている。その富豪の家はこの地区の外れにあってな、行けばすぐに解るような豪邸だ」

クリリン「それで手がかりは?」

猫署長「今のところは特に。顔が解っただけでもお手柄だよ。その豪邸にはいくつもの監視カメラが設置されていたからね。
探っている線としては、この富豪の家主はどうにも悪い噂の絶えない人物だったから、恨みがあっての犯行か、或いは依頼されたか。ただの強盗って可能性もあるが」

クリリン「それはありませんよ!」

猫署長「ん? 君はこいつを知っているのか?」

クリリン「い、いえ、その、なんとなく。そんな悪い人には見えないんで」

猫署長「悪人面だと思うがなあ……ともかく、今のところ捜査中だ。
監視カメラに映っていた映像で得たのは、こいつには機関銃でさえ効かないということ。ミサイルでもぶっ飛ばせばいいのかな」ハッハッハ

クリリン(核兵器でも効かないだろうな、17号と同じ作りならバリアあるだろうし)
クリリン(恨みからの犯行ってことはなさそうだけど、どうだろ。改造される前の記憶とかもあるかもしれないしなあ……もしかして将来を誓った恋人がいたり!?
 だったらどうすりゃいいんだよぉ)ショボーン

猫署長「気分が悪そうだね」

クリリン「いえ、大丈夫ですよ。それより、その家主の話をもっと詳しく教えていただけませんか?」

猫署長「うむ。被害者の名は九藤新一といって、遺体は粉々にされていたため足しか残っていない状態だった」

クリリン(手がかりはその家主のみだ。金が欲しいだけなら頃す必要なんてない。きっとそんなことはしないよな? 18号)

17: 2013/07/06(土) 19:16:25.14 ID:cE2MPQ1R0
クリリン「んー……知れば知るほどに悪い噂の絶えない奴なんだな、こいつ」ペラッ

クリリン(猫の署長さんが持ってきてくれたファイルに載った情報を見るだけでも、九藤新一は真っ黒だ。火のないところに煙は絶たないって言うし)

クリリン「依頼されたって線はありえるんだよな。手っ取り早く大金が手に入るし。強盗も多分、金目当てなんだろう」

クリリン(そういう善悪は微妙っぽいしなあ)

クリリン「んー、んん? なんだこの情報」

"被害者宅のメイドが言うには、家主は人間離れした怪力である"

クリリン「人間離れした、怪力?」

クリリン「……人間離れした怪力ってどの程度のことを言うんだろう。子供時代の俺と悟空ぐらいかな」

"体に内蔵されたビームを発しては使用人を怖がらせて遊んでいた"

クリリン「体に内蔵されたビーム!? 人間じゃないじゃん、いや待てよ。気功術ってのはビームみたいなもんだよな……ってことはこいつ、それなりにできる武術家か?」

クリリン(だとすれば18号はなんでこいつを? やっぱし依頼か? いやだとすれば探しようがない。探すためにもなにか手がかりを得なきゃ)

クリリン「んー……よし、決めた。悪い噂、武術家、富豪を頼りに18号の次の標的を探してみよ」

18: 2013/07/06(土) 19:17:06.15 ID:cE2MPQ1R0
     ~一ヶ月後~

クリリン「今日も無駄足か、18号の影も聞かねえや」piriri piriri

クリリン「はいもしもしクリリンです」

猫署長『クリリン君か! 例の指名手配犯がまた犯を重ねたぞ!』

クリリン「なんですって!? すぐ行きます!」

猫署長『うむ、現場は○○の○○三ブロック目○○だ』

クリリン「ありがとうございます!」pi

クリリン「ってなんで俺こんな探偵みたいなことしてんだ? とにかく急ごう!」

 

20: 2013/07/06(土) 19:19:37.97 ID:cE2MPQ1R0
 

クリリン「ものっそい古びた家だなあ。到底金持ちには見えない。あの共通点は間違いだったか?」

猫署長「クリリンくん、こっちだ、入りなさい」

クリリン「はい。って中も汚いなあ」

猫署長「うむ、今回は殺人だけで強盗はなしだ。目撃者がいてな、同居人の少年だ」

少年「」ブルブル

クリリン「被害者はどのような状態で?」

猫署長「前回と同じく粉々で、腕一本しか残っていなかったらしい」

少年「ぼ、僕、見たんだ、あの姉ちゃんが手からなにか出して父さんを消し炭にしちまうの! あ、あんなの人間じゃないよ」

クリリン(俺も同じことができるとは流石に黙っておこう。にしても粉々? どうしてそんな面倒な頃し方をするんだ?)

クリリン(頃すだけなら首の骨折るなり手刀で一発なりの方が楽なのに。家を壊さないように拡散型のエネルギー波を使うなんて面倒だろ)

 

21: 2013/07/06(土) 19:20:37.26 ID:cE2MPQ1R0
猫署長「実はな、あの少年はどうやら商品のようなんだ」ボソッ

クリリン「商品?」ボソッ

猫署長「被害者は人身売買を行うブローカーなんだよ。簡単な調査の結果だが、捨て子を拾ったりして育てては売るを繰り返していたらしい。その筋の人間に聞いたら一発だったよ」ボソッ

クリリン「なるほど、今回も悪い奴なんですね」

少年「お父さん……」

猫署長「君のお父さんも強かったようだが、犯人の女性はもっと強かったんだろう?」

少年「強いなんてもんじゃないよ! あのお父さんが玩具みたいに……」

クリリン「強い? 今回の被害者も強かったんですか?」

猫署長「今回? そういえば前回も強いと報告があったな」

クリリン(悪い噂のある武術家くずれ……この二つがまたしても当てはまってる。あいつ武術を悪いことに使う奴は許さない、なんてたまか?)

クリリン(なにか妙だ……大切なことを見落としている気がする)

クリリン「今回の被害者についての情報もわかり次第教えてもらっていいですか?」

猫署長「ああ、わかった。まだサンクスという名前で通っていたとしか解ってないがな」

クリリン「はは、変な名前ですね」

クリリン(一人で考えていても拉致が明かないな。こういう時こそブルマさんを頼ってみようか。あの人あれで天才だし)

22: 2013/07/06(土) 19:23:50.59 ID:cE2MPQ1R0
     ~CP~

ブルマ「なんか大変なことになってるのねえ。研究ばかりで世の中のことなんて気にしないから知らなかったわ」

クリリン「浮世離れしてますね」

ブルマ「いいのよ別に。私は発明家なんだから」

クリリン「それでなにか解ることってあります?」

ブルマ「んークリリンくんと対して変わらない感想しか持たないわね。一つだけ気になるところもあるんだけど」

クリリン「な、なんですか!?」

ブルマ「といっても勘違いかもしれないわよ?」

クリリン「それでもいいです! 行き詰まってるんで!」

ブルマ「わかったわかった。最初の被害者が九藤新一で、二人目の被害者がサンクスだったわね。そして18号……この三人の共通点ってなんだと思う?」

クリリン「三人? 18号も含めてですか?」

ブルマ「うん」

クリリン「んー……強いってことですかね」
ブルマ「そう、それもある。けどそれ以上にこっちの方が大切かもしれないわ。九藤新一の九、サンクスを別の言い方に変えたありがとうのとう、そして18号」

クリリン「あ、全部に数字が入ってる!」

ブルマ「そういうこと。勘違いかもしれないけどね」

23: 2013/07/06(土) 19:24:22.19 ID:cE2MPQ1R0
ブルマ「強い、数字入り。この二つを考えるだけでも簡単な想像ができるわね」

クリリン「被害者は人造人間かもしれない、ってことですか?」

ブルマ「そう。だとしたら彼女が被害者を狙った理由もわからなくもないわ。ドクターゲロに造られた者としてのケジメ、或いは罪滅ぼしかしらね」

ブルマ「それに関しては次の被害者が出るか、或いは被害者の遺体が手に入れば私でも調べることができるわ。やっておこうか?」

クリリン「できるんですか?」

ブルマ「捜査協力のためって言えば解剖関係なら融通が効くのよ、ほら私って天才だし」

クリリン(平常運転だなこの人)

クリリン「じゃあお願いします! それじゃ僕は……どうやって次の被害者になりそうな人を探そう」

ブルマ「この流れで行くと11号ってのがそれになるんだろうけど、そうね……孫くんの古い友人でも訪ねてみる?」

クリリン「悟空の友人?」

ブルマ「うん、彼がレッドリボン軍を壊滅させた時に仲良くなったっていう、8号って人にね」

25: 2013/07/06(土) 19:32:02.09 ID:cE2MPQ1R0
 

人気のない崖の囲い――ドクターゲロの研究所があったその場所から数キロ離れた地点に、金の髪をなびかせる女はいた。

18号「ちっ、ろくでもない奴らばかりじゃないか」

ドクターゲロの研究所、別棟。
そこでは彼の造った人造人間の現状が絶えずデータとなり送られている。超小型自動追尾蠅ロボットによって。

18号「あの糞科学者の発明品なんだから仕方ないんだろうけどね」

18号(……わたしも)

18号(人造人間は人間じゃない。少なくとも、改造された時に生まれ変わっている。わたしも17号もこんな性格じゃなかった。普通の双子だったさ)

18号(けど今はどうだ? 簡単に身内を頃して、服も盗品で、邪魔する奴はぶっ飛ばして。戦いを楽しめちまう風になって)

18号「……次に行くか」

18号(あと二体)

26: 2013/07/06(土) 19:32:58.48 ID:cE2MPQ1R0
     ~ジングル村~

クリリン「うえっ、寒いとこだなあ。人が外に出てないや」ビュゥゥゥゥゥ
クリリン「とりあえず適当に訪ねてみよう」コンコン「すいませーん」

「はーい。どちら様?」

クリリン「八号って人を訪ねてきたんですが」

「……彼になんの用?」ギロッ

クリリン(凄い怪しんでるよ。そういえば八号って人は元々レッドリボン軍にいたんだもんな)

クリリン「えっと、俺、孫悟空の友達です。覚えてます? 悟空って」

「貴方悟空くんのお友達? あらあらごめんなさないねえ、上がって上がって」

クリリン「え、でも、八号さんは?」

「ちょうど家にいるから上がってちょうだいな。どうも、私はスノ母といいます」

クリリン「これはご丁寧に、僕はクリリンです」

スノ母「どうぞ、すぐに暖かいの淹れますからねー」

クリリン「あ、ども」

スノ「ママー、お客さん?」

クリリン(うおっ、可愛いっ)

27: 2013/07/06(土) 19:36:14.33 ID:cE2MPQ1R0
スノ「悟空くんの友達なんだ! 元気にしてる?」

クリリン「はい、とっても元気ですよ。子供の時って確かこんくらいでしたよね? でも今じゃ僕なんかよりずっと背も高くて」(まああの世にいるけどそれはいいだろう)

スノ「久々に喋りたくなっちゃったなあ」

クリリン「悟空に惚れてたんですか?」

スノ「そんなこと――どうだったかな? もうずっと前だし子供だったから、そういう気持ちもあったかもしれないけどね」

クリリン「あいつ嫁も子供もいますよ」

スノ「あの悟空くんに奥さん!? 想像つかないなあ」

クリリン「バランスの取れた夫婦ですよ。奥さんも武道の達人ですし」

スノ「なんかそれ凄い納得」クスクス

8号「スノ?」ノシ

スノ「あ、ごめんほったらかしにしちゃって。悟空くんのお友達なんだって!」

クリリン「ども、クリリンです。貴方が……八号さんですか?」

8号「違う」

クリリン「えっ」
クリリン(この人だと思ったのになあ、まんまそんな雰囲気だし)

8号「俺、はっちゃん。悟空が名づけてくれた、いい名前がある」

28: 2013/07/06(土) 19:38:02.82 ID:cE2MPQ1R0
クリリン「実はちょっと重たい話なんですけど、8、じゃなくてはっちゃんに聞きたいことがあって来たんです」

8号「聞きたいこと?」

クリリン「実は――」ベンリナペラペラ「――というわけなんです」

8号「ドクターゲロ、まだ研究を続けていた。でも、すまない。俺、ずっとここにいるから、なにも知らない」

クリリン「そうですか……はっちゃんっていい人そうですもんね」

スノ「はっちゃんは悟空くんにも負けないくらいの善人なんだから!」

クリリン(あいつは純粋であって善人じゃないけどな、はは……)

8号「でも、その人、二ヶ月前に来た」

クリリン「ええ!? 18号がですか!?」

8号「多分。金色の髪、冷たい目、都会っぽい人、違うか?」

クリリン「その人です! 一体なにしに?」

29: 2013/07/06(土) 19:39:10.06 ID:cE2MPQ1R0
     ~二ヶ月前~

18号「あんたが人造人間8号かい」

8号「お前、何者」

18号「似た者同士ってとこだ」

8号「お前も人造人間……なにしにきた」

18号「あんたに一つ聞きたいことがあってね」

18号「あんた、その力をなんに使ってきた」

8号「オレは、力、使いたくない。それでも使うのは、村の皆を、守るため」

18号「ふうん、それじゃあわたしが村の人を頃すと言ったら?」

8号「させない……!」ガシャッ

18号「……人間みたいだね」

18号「てんでスペックが違ってて話にならない。あんたはいい」シュンッ

8号「……?」

30: 2013/07/06(土) 19:42:51.69 ID:cE2MPQ1R0
 
     ~現代~

クリリン「やっぱりあいつ、人造人間でも悪い奴だけをターゲットにしてるんだ」

8号「クリリン、あの女好きか?」

クリリン「ななななに言い出すんですか急に! そんな好きとか俺はあ」

8号「あの女、寂しそうな目、してた。クリリン、頑張れ」

クリリン「……うん、頑張りますよ」ガタッ

スノ「もう行っちゃうの?」

クリリン「ええ、頑張って18号を見つけないと」

スノ母「頑張ってね」

スノ「悟空くんによろしくね! 遊びに来るよう行っておいてよ!」

クリリン「はい!」ガチャッ


8号「クリリン、いい人」

スノ「やっぱり悟空くんの友達だね」

31: 2013/07/06(土) 19:43:26.80 ID:cE2MPQ1R0
priri priri pi

ブルマ『クリリンくん? 被害者のサンクスの解析終わったわよ』

クリリン「流石ブルマさん。それで結果は?」

ブルマ『睨んだ通りだったわ。遺伝子の配列が人間とは違ってた。あれは人造人間ね』

クリリン「やっぱり。はっちゃん、8号のところにも18号は来てたみたいです」

ブルマ『なるほどねえ。となると次は11号か』

クリリン「ええ、でもそいつがどこにいるのか」

ブルマ『それは18号も同じはずよ。でも彼女はなにかしらの方法で居場所を掴んでるわ。それを調べる方が先決ね』

クリリン「宛はあるんですか?」

ブルマ『ドクターゲロの研究所があったでしょ? あの近辺に多分、バックアップ用の研究所があるはずなの』

クリリン「僕たちが壊した研究所とは別にですか?」

ブルマ『なにか有った時のために用意しているもんよ。私も研究成果を他に保管しているし、ドクターゲロは抜け目なさそうだからあるはず』

クリリン「わかりました、行ってみます」

ブルマ『その前に一回家に寄りなさい。いいもんあげるから』

クリリン「はい!」

32: 2013/07/06(土) 19:45:32.83 ID:cE2MPQ1R0
     ~ドクターゲロ研究地跡~

クリリン「凄いよなブルマさん。こんなものを簡単に作るんだから」pipi

クリリン「機械の電磁波を感じ取る機械か。ドラゴンレーダーより簡単だつってたけど、とにかくこれで」pipi

クリリン「うん、反応がある。この辺りは機械とは無縁の場所だから怪しいぞ」シュタ シュンシュンシュン シュタ

クリリン「この辺か? それっぽいのはないけど……探してみるか」

クリリン(にしても、俺あいつに会ってどうすりゃいいんだろ。ただデートに誘いたいだけだったのに……デート!? デートに誘いたかったの!?)

クリリン(そりゃ、誘いたいけどよぉ……それどころじゃなくなっちまったし、会って……止めるのもなんか変だしなあ)ザッザッザ カコン

クリリン「なんだここ、音がなんか妙だぞ」コンコン

クリリン「んー」ペタペタ ガコンッ

クリリン「おわわっ、なんだなんだぁ!?」

プシュー ウィーン ガチャガチャ ゴゴゴゴゴゴ

クリリン「すっげえ、正に秘密基地って感じだなあ。あそこが入口か、よし」スタスタ

33: 2013/07/06(土) 19:49:21.85 ID:cE2MPQ1R0
クリリン「なんかよくわかんねえけど機械だらけだな。とりあえずブルマさんに連絡してみよう」pipi

ブルマ『見つけたー?』

クリリン「はい、見つけたんですけど、なにをどうしていいのやら」

ブルマ『テレビモードにして見せてよ、判断するから』

クリリン「えっと、確かこう、こうだったな」pipi 「はいどうぞ」

ブルマ『んー……そこのパソコンが怪しいわね。言う通りにイジってくれる?』

クリリン「はい。ここをこうして、こう、こうですね。おお、なんか出てきた」

ブルマ『うん、それが人造人間の情報リストね。8号と11号と12号以外はLOSTになってるわ』

クリリン「13号~15号は悟空達が倒してましたからね」

ブルマ『11号の現在位置は東の都ね。場所わかる?』

クリリン「はい、ここなら」

ブルマ『あとは自分で頑張りなさい』

クリリン「でも俺、会ってどうすれば……」

ブルマ『手伝うなり止めるなり空気読まずに求婚するなり、それはクリリンくんの自由よ。でもなにもしないってのは違うんじゃないの?』

クリリン「ははっ、そうですね、ありがとうございます」pi
クリリン「ここからなら一時間もかからないな。急ぐか」シュタッ

34: 2013/07/06(土) 19:50:10.87 ID:cE2MPQ1R0
クリリン「えっと、確かこの辺に……あったあった。さて、あのビルに11号がいるはずなんだけど」

クリリン「ペペロン商会? なんか聞いたことがあるな……ヤムチャさんに聞いてみようか」pipi

ヤムチャ『おう、クリリンか。久しぶりだな』

クリリン「ご無沙汰ヤムチャさん。ちょっと聞きたいんですけどペペロン商会って知ってます?」

ヤムチャ『ペペロン商会つったら有名な犯罪組織だな。用心棒の仕事してるとしょっちゅうそいつんとことかち合うから間違いない』

クリリン「ひえぇ~、それでそのペペロン商会が堂々とビル構えてるんすよ」

ヤムチャ『どうせそのビルを抑えてもトカゲの尻尾切りだから警察も手を出さないんだろ。それか懐柔されてるかだな』

クリリン「はは、腐ってますね」

ヤムチャ『警察だって人間だからな。それでどうした、なんか問題でもあったのか?』

クリリン「いえ、別に。ちょっと用があったんで。ありがとうございます」

ヤムチャ『おう、まあ気をつけてな』pi

クリリン「用心棒か。俺も折角武術身につけてるんだしそっちで食ってこうかなあ、ヤムチャさんに紹介してもらえそうだし」

クリリン「さて、このままだと18号が確実に11号を潰すわけだけど、どう動くかな」

ガシャーンッ
キャーキャー ワーギャー

クリリン「まさかあいつもう来てるのか!?」シュタッ

35: 2013/07/06(土) 19:50:41.42 ID:cE2MPQ1R0
11号「なんだてめえ、うちと戦争やろうってのか? ああ!?」

18号「喋るな、面倒臭い」

11号「調子に乗りやがって……氏ね糞アマ!」キュゥゥゥン ドガーン

パラパラ パラパラ

11号「へへ、雑魚が」

18号「」シュン ヒュッ

11号「ぐあっ!」ドガッ ガッガッガッ ドゴンッ

18号「エネルギー吸引式か。ロボットタイプの10号から随分とマシになったじゃないか。それでも」シュン ヒュッ ドゴォッ

18号「敵じゃないね」

11号「うう……」パラパラ

18号「消えな」キュゥゥゥゥゥゥン

クリリン「18号!」

18号「!?」

36: 2013/07/06(土) 19:51:28.52 ID:cE2MPQ1R0
18号「……チビのオッサンじゃないか」

クリリン「覚えててくれて嬉しいよ。あ、そうそう。俺はクリリンっていうんだ」

18号「勝手に名乗るな、聞いてない。……なんでこんな所にいるんだ?」

クリリン「お、お前が指名手配なんてされてるからだろ! 心配になって色々調べてみたら、なんか事情もあるみたいだし……」

18号「どうでもいいね、そんなこと。それより……なにを調べたって?」

クリリン「どうして18号がこんな事件を起こしてるのかだよ」

18号「はっ、ストーカーってことかい。鬱陶しい」

クリリン「そうじゃないんだ! 俺、お前に会いたかったんだよ」

18号「爆弾取り外した褒美でも欲しいのか?」

クリリン「そんなんじゃない。それが負い目になるってなら忘れてくれていい。ただ俺は……」

11号「はっはっはあ!」ガバッ ガシッ

クリリン「ぐっ」

11号「糞女! ちょっとでも動いてみろ、こいつが木っ端微塵だあ!」

37: 2013/07/06(土) 19:52:47.48 ID:cE2MPQ1R0
18号「知ったことか」キュゥゥゥゥゥゥ

11号「おい! 脅しじゃねえぞ!」ググッ

18号「ちっ、邪魔だからさっさとどいてよ。まさかあんた、そこのガラクタより弱いってことはないだろ?」

クリリン「そりゃあ、ね!」ドゴォッ

11号「ぐおっ!」ガフゥッ

クリリン「これでも武闘家だ」

11号「この、ハゲ野郎……ッ」

クリリン「むかっ」シュン バキィッ ドゴォォンッ 「これは剃ってるんだっての」

18号「……面倒臭い。一階まで突き破ってるじゃないか」シュンッ

クリリン「ま、待てよっ」ガシッ

18号「――触るなッ」バキィツ

クリリン「ぶへえっ」ドカァン

18号「はあ、はあ……ふんっ」シュンッ

クリリン(ゆ、油断した。駄目だ、意識が……)フッ

こうして18号はまた一つ、罪を重ねた。
クリリンが目を覚ました時、18号はもうそこにはいなかった。

40: 2013/07/06(土) 20:00:20.93 ID:cE2MPQ1R0
     ~三日後~

クリリン「ブルマさんどうしたんだろう。凄く慌ててたけど。相変わらず18号は見つからないし、次の標的のはずの12号も居場所が掴めないし」

クリリン(それに、殴られた理由が触ったからだもんなぁ。俺、そんなに嫌われてんのかなぁ?)ガックシ

     ~CP宅~

クリリン「ブルマさーん」

ブルマ「クリリンくん! た、大変なのよ!」

クリリン「どうしたんですかブルマさん」

ブルマ「落ち着いて! 落ち着いて聞いてよ!」

クリリン「ブルマさんが落ち着きましょうよ」

ブルマ「じゅ、12号のことなんだけど……」

クリリン「居場所が解ったんですか!?」

ブルマ「それどころじゃないの! 人造人間12号が造られた目的が問題なのよ!」

41: 2013/07/06(土) 20:00:53.56 ID:cE2MPQ1R0
クリリン「……目的?」

ブルマ「ドクターゲロは人造人間が言うことを聞かなくなった時のことを危険視していたの。その時のために爆弾や停止機能をつけていたんだけど、それだけじゃなくて、外部からの手段も備えていたのよ!」

クリリン「それって……もしかして!」

ブルマ「そう! 12号は人造人間にとって相性が最悪な、人造人間破壊用兵器なのよ!」

クリリン「……」プルプル ワナワナ

ブルマ「ここ、12号はここにいるはずよ! 見つかりづらい場所だけど18号が向かってるかもしれないわ! 急いで!」

クリリン「」シュンッ ビュゥゥゥゥゥウウウン

クリリン「18号おおおおおおおおおおおっ!」ヒュゥゥゥゥウウン

42: 2013/07/06(土) 20:03:04.38 ID:cE2MPQ1R0
『キャハハ、お兄ちゃんっ、待ってよ!』
『ハッハッハ、遅いぞ、早く来い!』
『キャハハ』『ハッハッハ』

ははっ、そんな時もあったっけね。
あの頃は幸せだった。
幸せって言葉が本当にあるんだって信じていられた。

『キャッ』
『やめろ! 妹に触るな!』

『黙れ!』バキィ
『ぐあっ』

『お兄ちゃん!』

潰れかけの小屋。
懐かしいね、あの場所でわたし達は孤立した。

『大人しくしてれば可愛がってやるからよぉ』

『いや、いやぁ、やめて! やめてよぉ!』ビリッ ビリリッ

『おらっ、暴れんじゃねえ――!?』ドンッ
『はあ……はあ……はあ……妹を……離せ!』ドンッ グサッ
『うぐっ……ちょ、調子に乗んじゃねえぞガキがぁ!』バキィッ

『ぐあっ』カランカランカランッ

『お兄ちゃん!』

43: 2013/07/06(土) 20:03:34.91 ID:cE2MPQ1R0
『おらっ! おらっ! おらっ!』バキッ ドカッ ボコッ

『お兄ちゃん! お兄ちゃん!』

『おらおらおら! 大切な妹が泣いてんぞぉ!?』バキッ ドカッ ボコッ

『いや……いやああああっ!』ドンッ グサッ

『――!? な……なんだお前ら……?』ポタポタ ドサッ

『お兄ちゃん!』

『泣くな……大丈夫だから……』

糞みたいな男に誘拐されたわたし達は氏に物狂いで生き残った。
そこは誰の声も届かない深い森の奥。
生き続けるには普通であることを辞める必要があった。

だからってわたしはそう悲観的でもなかった。
暫くしたら森での生活に慣れてきたし、なんだかんだで楽しいこともあった。

地獄は数年後にやってきたんだっけ。
糞みたいな男よりもよっぽどの糞な、世界征服を企むアホがやってきた。
そいつはムカつくことにわたし達よりもずっと強く、残酷だった。
意識を失う狭間でわたしは聞いた。

ほう、いい素材が手に入った。

44: 2013/07/06(土) 20:04:05.61 ID:cE2MPQ1R0
目が覚めるとやけに意識が鮮明だった。
クリアな視界とは裏腹に体は動かない。
不気味だ。
あまりにも不気味だ。

心が冷静すぎて気持ち悪い。

『産まれ変わったか、18号』

その悪趣味な老人はわたしに糞ったれな名前をつけた。
わたしの名前はそんな数字じゃない。記号じゃない。
わたしは、わたしの名前は――誰だ?

わたしの名前が思い出せない。なぜだ、なぜ思い出せない。
なにもかもを覚えているというのに、沢山の思い出があるというのに。

それに、どうしてわたしは落ち着いているんだ?
記憶があるのに名前が思い出せないというのは恐いはずだろう?

……まあいいか。

『ドクター、ゲロ』

感情。感情がどこかに行った。失うはずがないのに、消えている。
なにが起こったのか、なにも解りはしないが、わたしはとにかく。

『頃す』

この悪趣味な爺を頃してやりたい。

45: 2013/07/06(土) 20:05:13.52 ID:cE2MPQ1R0
懐かしい夢だね。
どうしてわたしは思い出しているのだろう。
大して心残りのない、どうでもいいことだってのに。

わたしにとって思い出ってのは、前世だ。
過去のわたしを勝手に改造したドクターゲロに憎しみがあったような気もするが、本当にそんなものがあったのか不安になる。

改造されたわたしに心と呼べるものが見当たらなかったからだ。
だからわたしは人間のフリをした。
人間のように振る舞った。
でないとただの機械だ。ロボットだ。
目的を失ったロボットは存在する意味がない。

わたしの目的から孫悟空殺害の項目はとっくに抜けている。
だから人間のように振る舞い、だとすればわたしはロボットだった。
目的がないから存在できない。
一つでもいいから目的が必要だ。

人造人間はわたしと17号以外にもいた。
それならわたしはこれを目的にしよう。
きっとわたし達なんてろくな存在じゃない。

46: 2013/07/06(土) 20:05:43.91 ID:cE2MPQ1R0
破壊した。
人造人間はやはり人間ではなかった。
頃したのではなく、破壊した。
だけど奴は違っていたな。
8号――あいつは人間だった。

しかしあいつは人間としての部分が大きい。
わたしよりも機械化しているくせに、心の隅々までが人間のようだった。
大切なナニカのために戦おうとしていた。
まるで人間のようだ。

人間と人造人間の違いとはなんだろう。
感情があることだろうか。
心があることだろうか。
思い出があることだろうか。
だとしたら嫌だな……わたしにはろくな思い出がない。

ろくな思い出もないままに。

18号「がっ……ぐ、ぃああっ」ミシミシミシッ

ワケのわからない機械に殺されるのか。
いや、壊される、か。

47: 2013/07/06(土) 20:06:14.35 ID:cE2MPQ1R0
12号「ドクターゲロ……どうしようもない狂人だったが、頭に狂いはなかったようだ。私の力は次世代機の18号にも充分通用する」

18号「こ、の……ぁぁああっ」ミシミシミシッ

12号「知らなかっただろう。人造人間とは体をサイボーグ化されただけではなく、
体内の血液をハイブリットされた強化合成液に入れ替えることによって尋常ではないパワーを発揮しているのだ。
私は強化合成液の働きを一時的に抑えることができる」

18号「知るかよ……ばー、か……ぁぁっ」ミシミシミシッ

12号「減らず口を叩くな。間もなく貴様の体は完全に機能を停止する」

どうしようもないことを自覚している。
既に全身に力が入らなくて成すすべもなかった。
まあ、別にいい。
わたしはとっくに氏んでいる。

48: 2013/07/06(土) 20:06:46.62 ID:cE2MPQ1R0
だから壊されるだけだ。
機械が機械的に処分されるだけのことだ。

18号「……あ、あぁぁ――    」

声にならない息が漏れた。
誰にも届かなくてもわたしだけは言葉を知ってしまった。
無意識に吐かれた四文字に全ての答えがあった気がした。

クリリン「18号おおおおおおおおおおっ!」ビュゥゥゥゥゥウンッ

わたしは――生きたい。

クリリン「うおおおおおおおおっ!」バキィッ

12号「ぐおっ」ヒューンッ ドゴォォォォンッ

クリリン「18号!」

18号「う……」

49: 2013/07/06(土) 20:07:17.11 ID:cE2MPQ1R0
クリリン「18号! 大丈夫か!?」

18号「なにしにきたのさ、チビのおっさん」

クリリン「馬鹿野郎! ずっと探してたんだぞ!」

18号「はっ……ストーカーだね」

12号「」 シュンッ シュタッ

12号「何者だ、貴様」

クリリン「な……ノーダメージかよ……思ったより強いんだな」

18号「12号は11号から飛躍的に能力が上がってる。あんたじゃ勝てないだろうね」

12号「だそうだ。私はそこの女を破壊できればそれでいい。邪魔をしないなら許してやろう、どこかへ行け」

クリリン「ふざけんな! こんな場面で逃げられっか!」

18号「やめときなって……あんたじゃ勝てない。痛い目見るよ」

クリリン「痛い目見ようとなんだろうと、好きな女がぶっ倒れてんのに逃げられるわけがないだろ!」

18号「……はっ」

50: 2013/07/06(土) 20:08:02.62 ID:cE2MPQ1R0
18号「手でも繋いでほしいのかよ」

クリリン「つ、繋いでほしい! 一緒にデートしてほしい! ちゅ、ちゅうだってしたい! 好きだからな! 当たり前だ!」

18号「……ばーか」

12号「それは無理だろう。貴様は今から氏ぬ。その女も氏ぬ。夢は叶わないものだ」

クリリン「だったら俺がお前を倒す! はああぁぁぁぁぁあああっ!」シュンシュンシュンシュンシュンッ

クリリン「気円斬ッ!」シュアッ

12号「……くだらん」スッ

クリリン(引っかかった! こいつを受け止めようなんて、ベジータに笑われるぜ!)

12号「ふんっ」ギッ――ギュィィィィィィィィィィッ

クリリン(人差し指と親指で無理矢理押さえ込んだ!? い、勢いが止まってく!)

12号「んんん」ィィィィィィ...ン「ふん。他にもあるのか?」

クリリン(つ、つええ)ゴクッ

12号「ないならこちらから行くぞ」シュンッ バキィッ

クリリン「ぐああっ!!」

52: 2013/07/06(土) 20:08:34.48 ID:cE2MPQ1R0
12号「ふんっ、ふんふんっ、はっ、ふんっ」バキッ シュンッ キィィンドゴォッ ドォン バキバキッ

クリリン「ぐ、あ、ああ……」

12号「まだ氏んでいないのか。しぶとい奴だ」

18号「あああああああっ」シュンッ

12号「はっ!」ドヒュゥゥゥゥッ

18号「うっ」グラァッ

12号「馬鹿な奴だ。折角戻り始めた体力があるなら逃げればいいものを」

クリリン「18、号……」

18号「う、うう……」

12号「他愛もない。終わらせるとしよう」

クリリン「や、やめろ……」

クリリン(くそ、どうして、どうして俺はこんなに弱いんだ! 悟空も悟飯もピッコロも天津飯も、やるときはきっちりやるってのに! 俺は! どうして!)

クリリン(もっと、俺に! 力があれば!)

なぁにいってんだおめぇ

クリリン(!?)

53: 2013/07/06(土) 20:10:29.42 ID:cE2MPQ1R0
おめぇはすっげえつええぞ

クリリン(この声……悟空!?)

オラと一緒に修行したろ?

クリリン(そんなの、ずっと昔の話だろ)

関係ねえよ、ガキん時とかさ
本気だせよ、クリリン

クリリン(本気? 本気どころか、もう指一本も動かないって)

本気の出し方忘れちまったのか?

クリリン(本気の……出し方……)

クリリン「……へへ」ググッ

12号「見苦しい」

クリリン「ほんとだな……俺、本気の出し方……忘れてたよ」

12号「何度も邪魔されるのは趣味ではない。消し炭となれ」サッ ギュオンギュオンギュオン

18号「に、にげろ」

クリリン「もう、大丈夫だ。18号……こんな奴、すぐに倒して、やるから」

12号「口ではなんとでも言える。この極大のエネルギー波を受けてまだ言えたなら、その性根に拍手をしてやろう」ギュオンギュオンギュオンッ

54: 2013/07/06(土) 20:12:42.94 ID:cE2MPQ1R0
クリリン「本気……亀仙人様に教わった、本気の、出し方」スッ

クリリン「かぁ……」

明日のことなんて考えてたらギャルに逃げられちゃうもんねー

クリリン「めぇ……」

美女が可愛いけどふられるのが恐い? 恐れてどうする、ばかもん!

クリリン「はぁ……」

上手くいく方法なんていらんのじゃ! 常に全力! これぞベスト!

クリリン「めぇ……」

亀仙人『クリリン、お前は悟空には勝てん。だがな、お前は誰よりも器用な奴じゃ。
悟空では太刀打ちできんこともお前が助けてやれるだろう。じゃからな、クリリン』


"頑張れ"



クリリン「――はぁぁぁぁああああああああああっ!!!!」ビュオッ

12号「ごあああああああああああああっ」ブゥンッ

ドガァァァアアアアアアアアアアアッガガガガガガガガガガガッ
ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン

56: 2013/07/06(土) 20:13:34.88 ID:cE2MPQ1R0
クリリン「はぁぁぁああああああああああっ!」

ガガガガガガガガガガガガガガガガガガ
12号「ぐぅぅうううぬううううう……奴のどこに、こんな力がっ」

18号(あいつ……)

クリリン「くぅううううああああああああっ!!」
ガガッガガガガガガガッガガガガガガガッガガガガガ

12号「しかぁし! 貴様では! 私に! 勝てん!」

18号(くそ……僅かに競り負けてるじゃないか)スッ

18号(くっ、力が、入らない)

クリリン「ああああああああああああっ!!!」ガガガガガ ガガガガガッ ガガガガガガガガガガッ

12号「このまま、消えてしまえええええええい!」

クリリン「……ははっ」

57: 2013/07/06(土) 20:14:55.69 ID:cE2MPQ1R0
クリリン「俺は悟空と違って不真面目だからよく怒られたっけな」

クリリン「亀仙人様の修行の石探し……早速ずるしてたもんな」

クリリン「そのあとの修行でも悟空の功績をぶんどったりしてたっけ」

クリリン「そのたんびに悟空はずりぃぞクリリンつってたっけ」

クリリン「だからあいつは俺より強いのかな……サイヤ人とか、そういうことじゃなくて、もっと、こう、根っこから」
ガガガガガガガッガッガガガッガッガッガガガガガガガッ

12号「はっはっはっは! 氏ねい!」

クリリン「だから、あんたもさ……」

58: 2013/07/06(土) 20:15:44.59 ID:cE2MPQ1R0
 

クリリン「俺がまともに勝負してるだなんて思わない方がいい。なんせ、不真面目な武道家だからな」


 
シュンシュンシュンシュンッ

12号「なあっ!?」ズバッ
12号「な……ぜ……?」ズリズリズリ

クリリン「俺はこれでもエネルギーの扱い方だったらいまだに悟空よりも器用なんだぜ。
かめはめ波を打ちながら気円斬を作ることぐらい、時間をかければできる」

12号「く……そがぁ……」ズザァ プッシャーッ

クリリン「ただ……俺には才能がないからなぁ……かめはめ波を打ちながら気円斬を作るだけのエネルギーが……無いんだよ、な」バタンッ

 

59: 2013/07/06(土) 20:16:41.76 ID:cE2MPQ1R0
クリリン(暖かい)

クリリン(なんか、すごい眠くなる)

クリリン(眠くなる……ってか、俺って寝てんじゃね?)

クリリン(頭がぼーっとするなあ……生きてんのかな、氏んでんのかな、解らないな)

クリリン(氏んでてもまあ、いいかあ? 二回も生き返らせてもらってるし、最後は好きな子守れて氏んだんだし)

クリリン(……でも、もっかいくらいは18号と喋りたかったなあ)

クリリン「はあ、しゃーないしゃーない」パチ

クリリン「……あれ? 18号?」

18号「どうした」

クリリン「えっと、その、あっれえ?」

クリリン(なにがどうなってこうなってんの?)

クリリン(なんで18号に膝枕されてんの!?)

クリリン「いや、その、ええっとお……なんでもない」

クリリン(夢でもなんでもいいから太腿の感触をしっかりと覚えよう)

61: 2013/07/06(土) 20:20:18.33 ID:cE2MPQ1R0
18号「……」

クリリン「……」

ヒュゥゥゥゥウ

クリリン(なんだこの空気は。俺はどうしたらいいんですかヤムチャさん!)

クリリン「……」ドキドキ

クリリン(嫌われては……ないのかな?)チラッ

18号「……ん?」

クリリン「っ」ドキドキドキドキ

クリリン(ず、ずっとこっち見てたのか? 目が合った……)

クリリン(にしても18号って……ほんっとに、綺麗だよな)ドキドキ

18号「……なあ」

クリリン「な、なんだよ」

18号「あんた、わたしを好きだとか……言ってたな」

クリリン(……そういえば!)

63: 2013/07/06(土) 20:21:48.34 ID:cE2MPQ1R0
18号「……」

クリリン(この間はなんだ……ふられるのか? 膝枕されながらフラれるのか!?)

18号「……なにが、いいんだ」

クリリン「……ん?」

18号「わたしの、なにがいいんだ」

クリリン「な、なにって言われても、んな恥ずかしいこと」

18号「言いなよ」スッ

クリリン(膝枕されながら首に手をかけられたの初めてだ)

クリリン「言う、言うって! そうだな、18号のいいところなあ」

クリリン(まじで言うのか、恥ずかしい。ええい、こうなりゃヤケだ!)

クリリン「やっぱ綺麗なとこだよな。18号より綺麗な人を見たことがない。だけど、なんだろうな、綺麗なだけじゃなくって……優しいよな、18号は」

18号「……わたしが?」

64: 2013/07/06(土) 20:27:03.26 ID:cE2MPQ1R0
 

クリリン「うん、すごい優しい。さっきも俺を逃がそうとしてくれてたろ? 自分だって大変なのに。
あとは、そうだな、18号には見えない部分が沢山あるんだよな」

18号「……」
18号(それはわたしが人間のフリをしているからだろう)

クリリン「だから気になるんだろうけど、そういう見えない部分が優しさだったりすんだから、きっと18号は素敵な女の子なんだろう」

クリリン「いやぁ、そういうの見抜いてんのかな、俺」

18号「……そんないいもんじゃない」

クリリン「じゃあどんな女の子なんだ?」

18号「わたしは……わからない。わたしは人造人間だ。人間じゃない」

クリリン「俺にも18号がなにを言ってるのかわからない。人造人間と人間って、そんなに違うのか?」

65: 2013/07/06(土) 20:27:44.50 ID:cE2MPQ1R0
 

18号「わたしは改造された日に氏んだんだ。前の性格とは丸っきり違う物になった。前のわたしを別人だと思えるぐらいだ。だから……」

クリリン「ってことはその日に18号は産まれたんだな」

18号「……産まれた?」

クリリン「え、そ、そういうことじゃないのか?」

18号(産まれた……あの日、私は産まれたのか?)

18号「……」

クリリン「……?」

18号「ふふっ」

クリリン(笑っ……かんわいぃっ!)ドキドキ

18号「わたしはあの日、産まれたらしい」

クリリン「お、おう?」

67: 2013/07/06(土) 20:28:51.28 ID:cE2MPQ1R0
18号「……」

クリリン(なんかすっきりしたみたいだな、よかったよかった)

クリリン「で、どうして俺は膝枕されてるんだ?」

18号「嫌か?」

クリリン「嫌なわけがない!」

18号「……」

クリリン「……」

18号「確か、なんか言ってたな」

クリリン「なんか?」

18号「手を繋ぎたいだの、どうのこうの」

クリリン「わわわっ」

68: 2013/07/06(土) 20:29:47.00 ID:cE2MPQ1R0
クリリン「わ、忘れてくれていいからっ」

18号「あんなこと言って恥ずかしくないわけ?」

クリリン「ほんっとーに忘れてくれぇ!」

18号「ばーか」

クリリン「あの時は気分が盛り上がっててそれでついその」

18号「嘘ってこと? いっぺん氏んでみる?」

クリリン「じょ、冗談にならねえなお前が言うと」

18号「……ふんっ」

クリリン(はぁ~、かっこつかねえよなぁ)

18号「  な」

クリリン「……え?」

18号「また、今度な」

クリリン「……」
18号「……」

クリリン「うおおおおおおおおおおおおおっっしゃあああ!」

18号「うるさいんだよ、ばーか」

69: 2013/07/06(土) 20:31:43.84 ID:cE2MPQ1R0
亀仙人「で、連れて帰ってきたのか。やるのう」

クリリン「そういうわけじゃないんですけど……こいつの指名手配、ブルマさんに相談したらなんとかなるらしくて」

亀仙人「金の力じゃろ? 恐ろしい」

クリリン「こいつも悪気があったわけじゃないですから」

18号「誰がこいつだい」バキィッ

クリリン「うわわっ」キィィンッ ザッバーン

亀仙人「……頼むからわしの家を壊さんといてくれな」

18号「さあね」クルッ スタスタスタ

クリリン「ったくあいつ、照れてんなあ?」デヘヘ

亀仙人「……おいウミガメ」

ウミガメ「はいはいなんでしょう」

亀仙人「ちょっと間旅行に行くぞ」

ウミガメ「おお、なんだかんだで弟子思いなのですね。わたしは嬉しいです」オロロ

亀仙人「違うわ! あのハゲがムカつくから南国の開放的なギャルとキャッキャウフフしに行くんじゃ!」

ウミガメ「……oh」

70: 2013/07/06(土) 20:32:14.65 ID:cE2MPQ1R0
終わり

71: 2013/07/06(土) 20:34:30.60
鳥山明はベタベタな恋愛描かないからねえ
千兵衛さんの便所越しプロポーズはあっさり過ぎて逆に嬉しかったけど

73: 2013/07/06(土) 20:48:05.03
鳥山はべジータとブルマの恋愛劇も考えてたけど描くのが恥ずかしくなったから没にしたらしいな

引用元: クリリン「18号……」ザザァン