1: 2010/07/11(日) 22:21:20.02
和「……」

静かな生徒会室。
今日は生徒会活動はないが、いくつかの簡単な仕事があったので私だけ一人で残っている。

和「ん……」

カチ、カチ、と一定のリズムを刻み続ける時計の音。
サラサラと紙の上を走るペンの音。
たまに窓から吹き込み、部屋の中をグルンと巡っていく風。
こんな静かな時間が最近の密かなお気に入りだ。

……別に人といるのが嫌いというわけではない。
むしろいつも騒がしいのといるから、静かな時間が恋しくなっているのだと思う。

3: 2010/07/11(日) 22:23:01.05
和「……ふう」

疲れを感じ、書き込んでいた書類から顔を上げる。
首をグルンと回すと、コキッと小気味よい音が響いた。
最近忙しかったし、肩凝っちゃってるのかな……?

和「ん、美味しい」

少し前に用意したお茶を一口。
温くなっているけれど、十分体を潤してくれる。

和「……」

書きかけの書類にチラッと目をやり、残っている仕事がどれくらいか簡単に計算。
思ったより時間がかかりそうだ。
これはまた帰りは遅くなるかな……。

4: 2010/07/11(日) 22:23:57.32
和「よ~し……」

私がどれくらい早く終わらせられるか見せてやろう。
想像の中の私と勝負だ!

和「わっ!?」

そう気合いを入れ直したところで、携帯がブルルっと振動。
集中するためにマナーモードにしておいたのだが、身につけていた分余計に集中を削がれちゃった気がする……。
誰よ、こんな時にメールしてくるなんて。

件名:和ちゃん!
本文:アイス食べに行こうよ~♪

差出人は……。
まあ確認するまでもなく、我が幼なじみだろう。

5: 2010/07/11(日) 22:26:27.75
『生徒会の仕事があるから行けないわ』
『え~!?行こうよ~!』
『無理だって…』
『ヤダ、和ちゃんと一緒に行くんだもん!』
『む・り』
『今から30分後、校門の前で待ってるからね~♪』

……はあ。
仕事は明日に回すことになりそうね。
グイ、と。
残っていたお茶を一気に飲み干す。

和「……温い」

6: 2010/07/11(日) 22:30:11.99
……

唯「あっ、和ちゃ~ん!こっちこっち~」

和「いきなり呼び出さないでよ、もう……」

唯「えへへ~、ごめんごめん。でも和ちゃんなら来てくれるって信じてたよ!」

和「はあ……」

唯「ギュ~♪」

和「暑いからあまりくっつかないで」

何だかんだ言っても、私は幼なじみである唯の誘いは断らない。
いや、断れない。
私の性分なのか、小さい時からずっと一緒にいたせいなのか。
私は唯を放っておけないのだ。

8: 2010/07/11(日) 22:33:23.24
梓「あ、あの~」

和「あら」

ヒョコッと。
唯の陰から小さな女の子が出てきた。
黒髪を二つ縛りにして、唯と同じようにギターケースを背負っている。
この子は確か……

和「梓ちゃん?」

梓「はい、中野梓です。お久しぶりです和先輩」

9: 2010/07/11(日) 22:36:48.33
唯「あずにゃん、どうしたの~?」

梓「いえ、ずっとここにいてもしょうがないので早く行きませんか、と……って唯先輩!抱きつかないで下さい!」

唯「ひへへへ~、あずにゃん可愛いのう」ナデナデ

梓「や、やめてください!///」

じゃれつく唯と梓ちゃん。
唯は本当に人に抱きつく癖が直らないわね……。
梓ちゃんも口では嫌がってるけど、どことなく嬉しそうな顔だし。

10: 2010/07/11(日) 22:40:49.30
和「ほら、行くわよ」

唯「ほ~い」パッ

梓「あっ……」

和「そういえば澪たちはどうしたの?」

唯「何か用事があるんだって~。そのまま帰ろうかと思ってたんだけど、久しぶりに和ちゃんと一緒にお茶したくなっちゃって……」

梓「ご迷惑かと思ったんですが、私もご一緒させてもらうことになりました」

11: 2010/07/11(日) 22:46:11.74
和「ふふ、迷惑なんかじゃないわよ」

唯「そうだよ~!」

梓「あ、ありがとうございます」

和「それにどちらかと言うと私のほうが異分子よね、これって」クスクス

澪や律たちがいないのは残念だけど、この組み合わせもなかなか新鮮ね。
梓ちゃんとはあまり接点がなかったし、これを機会に仲良くさせてもらおうかな。

12: 2010/07/11(日) 22:48:05.65
……

唯「美味しい!おいひいよお~!」モグモグ

和「……はあ」

梓「ゆ、唯先輩……」

駅の近くにある小さな喫茶店。
昔から唯とよくお茶をしていた店だ。
落ち着いた雰囲気と美味しい紅茶、心を和ませてくれるセンスのいいBGM……

唯「相変わらずここのアイスは最高だね!」

……がこの店の売りのはずなんだけど。
目の前の我が幼なじみは、専らケーキやアイスが目的だったりする。
まあ確かに美味しいんだけどね。

13: 2010/07/11(日) 22:50:35.22
梓「唯先輩、あまり大きな声を出さないで下さいよお……」

唯「ふぇ?何で?」

梓「何でって……。さっきから周りの人たちに見られてますし、店員さんなんかクスクス笑ってますよ?」

梓ちゃんはどうやら注目されるのが恥ずかしいようだ。
唯といるならこれくらいは普通なので、私はあまり気にしなくなっていたけどこれが普通の反応だろう。
この店は小さいし静かだから余計に目立つし。
でも……

15: 2010/07/11(日) 22:52:54.17
和「大丈夫よ、梓ちゃん。唯はここの名物みたいなものだから」

梓「へっ?」

唯「もむもむ……ここ昔から来てたから、顔見知りの人多いんだ~」

和「もちろん店員さんとも知り合いよ?」

梓「そ、そうなんですか……」

唯があんまりにも美味しそうに食べるものだから、唯が来ると他のお客さんも注文してくれるって感謝されたことがあるくらいだ。
本当得な性格よね、この子って。

16: 2010/07/11(日) 22:54:45.92
和「でも梓ちゃんの言うことももっともよ。もう少し静かになさいね、唯」

唯「ふぁ~い」

和「ふふ……」

声を出さなくとも満面の笑みは崩さない唯。
そんな姿を見ていると、こちらも自然と笑顔になってしまう。

和「あ、唯……口元」

唯「ん?どうかしたの?」

口の端にアイスがべっとりとついてしまっている。
まったく、がっついてるから……

17: 2010/07/11(日) 22:56:31.17
梓「もう、唯先輩は仕方な」

和「ほら唯、拭ってあげるからこっち向いて」

素早くハンカチを取り出し、唯の口元をそっと拭う。
これも昔からのことなので私にとっては慣れっこだ。
過保護すぎる気がしないわけでもないが、今さら気にしない。

梓「あっ……」

何故か梓ちゃんはこっちを見たまま固まっている。
手に何枚かのティッシュを持って。
……何か零しちゃったのかな?

19: 2010/07/11(日) 22:58:49.83
唯「あはは、和ちゃんくすぐったいよ~」

和「ととっ、まだ綺麗になってないから動かないで。……よし、いいわよ」

唯「ありがと~和ちゃん!」

和「まったく……自分のことなんだからもっと気にしなきゃダメじゃない」

唯「えへへへ~、和ちゃんが面倒見てくれるからいいもん!」

和「何よそれ……」

梓「……」ブー

相変わらずの唯の発言に呆れ果ててしまう。
でも、悪気はないことがはっきりしているので、何も言う気は起きない。
この笑顔は反則よね……

……そして梓ちゃんは何故不機嫌になってるの?

21: 2010/07/11(日) 23:01:22.05
梓「お二人は……」

唯「ん?」

梓「……仲、いいんですね」

ぽつりと、梓ちゃんが口を開く。
表情は少し暗い。

和「まあ……私と唯は幼稚園からの付き合いだからねえ」

唯「小さい頃からラブラブだもんね、私と和ちゃんは!のどかちゃ~ん、ん~……」

梓「……っ!」

22: 2010/07/11(日) 23:03:23.11
和「はいはい」

唯「流された!?」ガーン

口を尖らせてこちらに顔を近づけてきた唯を適当に押しのける。
気のせいか、梓ちゃんからの視線がキツくなった気が……

梓「そうですか、幼稚園の頃から……」

俯く梓ちゃん。
私は高校からしか……、とボソッと呟いたのを耳の良い私は聞き逃さなかった。

24: 2010/07/11(日) 23:06:11.05
唯「そうそう、昔の和ちゃんはメガネもかけてなくて可愛かったんだ~♪」

和「あら、かけてる今の私は可愛くないってこと?」

唯「そ、そんなこと言ってないよ~!」

和「ふふっ、冗談よ」

梓「……」

ついに黙り込んでしまった。
薄々感じてたけど、この子もしかして……

26: 2010/07/11(日) 23:08:46.22
唯「あ~ずにゃん!」

梓「にゃっ!?」

唯「いきなり黙っちゃってどうしたの~?」スリスリ

梓「ち、ちょっとお……///」

どうフォローするか考えようとしたところで、唯が梓ちゃんに抱きついた。
うわ、梓ちゃん顔真っ赤。

28: 2010/07/11(日) 23:11:51.66
唯「寂しがらせちゃったのかな?ごめんね~」

梓「そ、そんなこと、ないです……」

唯「それならいいけど……。ん~、あずにゃん可愛い♪」ナデナデ

梓「あ……えへへ」

嬉しそうにほほ笑む梓ちゃん。
いちいち気を回さなくていいみたいね、この二人には。
……それにしても、唯は天然でこういうことをやってしまうから恐ろしい。

29: 2010/07/11(日) 23:14:13.07
唯「あずにゃんにゃん♪」

梓「……♪」

すっかり手懐けられてる……
猫みたいな子ね、梓ちゃんって。
唯がつけたという『あずにゃん』というニックネームはなるほど、的を射ている。

和「……ふう」

じゃれ合う二人を眺めながら、そっと紅茶を一口。
……うん、美味しい。

30: 2010/07/11(日) 23:16:40.73
……

梓「それでは唯先輩、和先輩。私はここで失礼しますね」

あれから数十分。
日もすっかり傾きかけた街の交差点で、梓ちゃんと別れることになった。

唯「うん、あずにゃんじゃ~ね~!また明日~!」

手をブンブン振り回す唯。
まったく、子供なんだから……
っと、私も梓ちゃんに言っておきたいことがあるんだった。

31: 2010/07/11(日) 23:18:33.87
和「梓ちゃん……」コソコソ

梓「何ですか?」

和「……私と唯は幼なじみってだけだから、安心してね?」

梓「!?な、何ですか安心って!私は別に、」

和「ふふ……、小さい頃の唯が知りたいなら、写真つきで教えてあげるからいつでもいらっしゃいね?」

梓「えっ……?」ピクッ

33: 2010/07/11(日) 23:21:14.17
唯「和ちゃ~ん、何してるの~?」

和「おっと、あんまり唯を待たせちゃいけないわね。それじゃあまたね、梓ちゃん」

梓「……はいっ!ありがとうございました、和先輩!」

ぺこっと頭を下げられる。
私は別に感謝されるようなことはしていないけどなあ。
それにしても仕草がいちいち可愛らしい子だ、唯が気に入るのもよく分かる。

34: 2010/07/11(日) 23:23:45.17
唯「和ちゃん、あずにゃんと何話してたの?」

和「ん、別にたいしたことじゃないわよ」

唯「ふ~ん……」

和「どうしたの?」

唯「べっつに~……」

あらら、唯も少し不機嫌ね。
もしその原因が梓ちゃんと内緒の話をした私への嫉妬なら……
ふふ、お似合いの二人ね。

36: 2010/07/11(日) 23:26:30.11
……

唯「そしたらねー、りっちゃんがね……」

和「律らしいわね……」

唯「それだけじゃなくってムギちゃんが……」

和「えっ、ムギがそんなことを?ち、ちょっとイメージ出来ないかも」

久しぶりの唯と二人っきりの帰り道。
そのせいか話のタネは尽きることなく、ずっと話し込んでいる。
……私は主に聞き役だけどね。

38: 2010/07/11(日) 23:28:25.73
憂「あっ、お姉ちゃん!おかえり~!」

和「あら……」

唯「うい~!ただいま~!」

憂「和さんもお帰りなさい」

和「ええ、ただいま」

話に夢中になっていたせいか、唯の家の前まで来ていたことに気が付かなかった。
下手すると通り過ぎちゃってたかもしれない……危ない危ない。
私までぼけぼけになってはいけない。

39: 2010/07/11(日) 23:30:50.05
和「それじゃあ私は帰るわね」

もう少し唯と話していたかったけど、仕方ない。

唯「え~、もっと和ちゃんと一緒にいたいよお……。そうだ!和ちゃん、今日はウチに泊まって行きなよ!」

和「ええっ?」

唯「うん、それがいいよ!ね~ね~、いいでしょ~?」

和「でも……」

正直唯の提案は嬉しい。
でもいきなりだと迷惑をかけてしまうだろう。

40: 2010/07/11(日) 23:32:41.39
憂「和さんならいつでも大歓迎ですよ!今日はカレーなので夕飯の心配もいりませんし、ぜひいらして下さい!」ニコッ

和「う……」

唯「ほら、憂も喜んでるよ!お泊りけって~い♪」

和「はあ……分かった、お言葉に甘えさせてもらうわ」

仕方ないなあ、と困った風を装う。
本当はすごく嬉しいんだけど、ね。
……私も素直じゃないなあ。

42: 2010/07/11(日) 23:34:19.81
……

唯「ごちそうさま~♪」

和「ごちそうさま。相変わらず料理が上手いわね、憂は」

唯「でしょ~?えっへん!」

和「なんであんたが威張るのよ」

憂「えへへ……お粗末様です」

唯が憂を巻き込んでのゲーム対決を行ったため、遅めの夕食。
甘いカレーにポテトサラダ、野菜スープといった憂の手料理に舌鼓を打った。
私も料理覚えようかなあ。
出来ないってことはないんだけど、憂と比べちゃうとやっぱりね……

43: 2010/07/11(日) 23:35:38.46
唯「うい~、あいす~」

憂「はいはい、ちょっと待ってね」

和「あっ、ダメよ。夕方に食べたでしょ?お腹壊しちゃうから、せめてもう少し時間を空けなさい」

唯「え~、大丈夫だよ~」

和「いいから。ほら、今から宿題してお風呂に入ればちょうどいいくらいだから……」

唯「宿題!?……って、あったの……?」

和「はあ……」

本日何度目か分からないため息。
あったわよ、数学と英語……おまけに古典もね。
この子、私がいなかったら間違いなくやらなかったわね……

45: 2010/07/11(日) 23:38:11.29
和「さて唯、私も付き合うから勉強するわよ」ガシッ

唯「えええ~!?」

和「後片付けくらいは手伝いたかったけど……ごめんね、憂」

憂「いえ、気にしないで下さい。それと……お手柔らかにお願いしますね?」

和「うふふ……善処するわ」

唯「ふえええ~ん……」

ズルズル、と。
苦笑いを浮かべた憂に見送られながら唯を連行する。
もうすぐテストだし、みっちり鍛えてやろう。

46: 2010/07/11(日) 23:40:46.01
……

唯「お、終わったあ……」

和「お疲れ様、唯」

唯「あうう~、こんなに頭使ったの久しぶりだよ~……」

時刻は午後11時は少し回ったところ。
宿題を自力で(私が色々と教えてあげたりはしたけど)やり遂げた唯は、力を使い果たしてテーブルに突っ伏してしまっている。

和「ほら唯、そのままだと寝ちゃうわよ。早くお風呂に入らないと……」

48: 2010/07/11(日) 23:42:14.92
唯「もう動けないよ~」

和「何言ってるの、汗かいてるでしょ?」

唯「和ちゃん、私をお風呂場まで連れてって~。そして一緒に入ろうよ~」

和「それはダメ」

唯「え~、何で?」

和「二人で入ると狭いし、あんたがはしゃぐから無駄に長くなっちゃうのよ。私は後でいいから、早く行って来なさい」

49: 2010/07/11(日) 23:43:20.15
唯「ちぇ~、和ちゃんのけち~!」ブー

和「駄々こねないの」

分かりやすいふくれっ面をしたまま着替えを用意し、お風呂場へ向かう唯。
ホント変わらないわね、昔っから。

唯「……ねえ、今度時間がある時は一緒に入ってくれる?」

出て行ったと思ったら、戻って来てヒョイッと顔だけ覗かせて問いかける唯。
まったくこの子は……

51: 2010/07/11(日) 23:44:56.63
和「はいはい、今度ね」

唯「えへへえ、約束だよ!」

にぱっと笑い、先ほどとは打って変わって機嫌良く駆け出していく。
何がそんなに嬉しいのやら。

……まあ私は、そんな唯の姿を見れるのが嬉しいんだけど、ね。

52: 2010/07/11(日) 23:46:37.38
……

和「さあ寝るわよ。明日も学校あるんだから」

時は過ぎて午前1時。
お風呂から上がった後も三人で話していたら、こんな時間になってしまった。

唯「じゃあ和ちゃん、」

和「嫌よ、暑い」

唯「一緒に寝よ……って早あっ!?」

当り前よ。
何年一緒にいると思ってんの。
分かるわよ、あんたが言い出しそうなことくらい。

56: 2010/07/11(日) 23:48:04.20
唯「たまには一緒に寝ようよ~!和ちゃ~ん……」グイグイ

和「引っ張らないで。え~と、私はリビング辺りで眠らせてもらうわ。憂、布団ある?」

憂「ありますけど……その……」

和「どうしたの?」

憂「私も和ちゃんと一緒に寝たいかな~、なんて……」

和「……」

まさか憂までとは。
呼び方も昔のに戻っちゃってるし……
いや、そういえばこの姉妹は基本的にスキンシップ大好きの似た者同士だったわね……

59: 2010/07/11(日) 23:51:00.65
唯「わ~い!じゃあリビングで三人で寝ようよ!」

憂「うん、すぐ準備するね!」

和「あ、ちょっ……もうっ」

唯「えへへへ~♪」

和「はあ……」

脱兎の如く駆け出す憂。
満面の笑顔を浮かべる唯。
……私には、この二人を悲しませるようなことは出来そうもない。

60: 2010/07/11(日) 23:52:04.53
和「……唯?」

唯「な~に、和ちゃん?」

和「……せめてくっついて来ないでね、暑いから」

唯「えへへ、りょ~かいですっ」

和「その言葉、一応は信用させてもらうわ……」

憂「持って来ました~」

和「おっと、手伝うわ。ほら、唯も」

63: 2010/07/11(日) 23:54:01.98
……

憂「こうやって三人で寝るの久しぶりだね~」

唯「そうだね~」

電気を消した真っ暗なリビング。
私が真ん中で右側に唯、左側に憂が横になっている。

和「二人とも、早く寝なさいよ?」

憂「は~い」

唯「分かってるよ和ちゃ~ん♪」

64: 2010/07/11(日) 23:55:17.46
和「きゃっ!?こ、こら抱きつかないで!」

憂「きゃっ、だって!和ちゃん可愛い~♪」

和「もう……からかわないの!ほら唯も離れて!」

唯「ふぁ~い、おやすみ~」

憂「ごめんなさ~い♪おやすみ、和ちゃん」

和「はいはい、おやすみ」

65: 2010/07/11(日) 23:56:17.14
唯「……」

憂「……」

和「……」

コッチ、コッチと時計の針の音だけが静寂に包まれた部屋の中を響き渡る。
もう二人とも寝ちゃったかな?

唯「すう……すう……」

憂「ん……」

チラッと唯、それから憂の様子を伺う。
二人とも微かな寝息を漏らしているし、眠ってしまったようだ。
まったく、寝付きいいんだから……

66: 2010/07/11(日) 23:57:21.36
和「……」

時計の音、唯と憂の寝息。
それらが混ざり合い、独特のハーモニーを奏でる。
それを聞いているうちに、私も何だか……

和「……ん」

おやすみ、二人とも。
明日は今日やり残した生徒会の仕事、やっちゃわないと、ね……

和「……」

69: 2010/07/12(月) 00:00:01.25
……

……暑い。
暑すぎる。
燃えるような暑さだ。
いや、熱いと言ったほうが正確だろうか?

和「んん……っ!」

おまけに身動きも取れない。
何かに体が圧迫され、熱気が逃げていかない。
熱い、熱い、熱い……!

和「……はっ!?」

70: 2010/07/12(月) 00:02:25.09
唯「うう~ん……暑いよお……」ギュー

憂「むにゅ……和ちゃ~ん……」ギュー

和「……」

……熱いと思ったら。
私の体は唯と憂によってサンドイッチにされていた。

和「はあ、こうなるのが分かっていたから一緒に寝るのは遠慮したかったのに……」

というか体温高すぎなのよ、この子たち。

74: 2010/07/12(月) 00:06:46.55
和「ふう……」

起き上がるのは無理そうなので、予め用意しておいたタオルで汗を拭い、水分を補給する。
ついでに唯と憂も。
まあこの二人は私みたいに両側から抱きつかれてたわけじゃないから、私ほど汗はかいていないけど。

憂「すう、すう……えへへ」

唯「ん……和ちゃ~ん」

汗が引いてすっきりしたからなのか、さらに強く抱きしめてくる二人。
それにしても、唯だけじゃなく憂までこんなに甘えてくるなんてね……

77: 2010/07/12(月) 00:10:17.66
和「……」ピッ

扇風機を強に変える。
唯がクーラーを苦手としている以上、これに頼る他はない。

唯「ん……♪」

憂「あ……♪」

涼しい風が届いたのか、眠ったまま笑顔になる。
……でも、私はもう眠れそうにない。

78: 2010/07/12(月) 00:13:35.99
和「目も覚めちゃったし、今から寝たら寝坊しそうね……」

夜明けも近い午前6時前。
二人の寝顔でも眺めながら、時間を潰そう。
唯と憂の、可愛い寝顔を。
その対価として、抱き枕になることや汗を拭いてあげることくらいは引き受けよう。
二人が目を覚ます、少しの間だけだけどね。

和「ふふ……。まったく、唯だけかと思ってたのに……」

そっと二人の頭を撫でる。
ふわふわの髪ね、気持ちいい……

81: 2010/07/12(月) 00:19:11.88
唯「すう、すう……」

憂「んにゅ……くう……」

和「……」

昨日一日のことを思い出す。
唯とのお茶、梓ちゃんとの会話、憂の手料理、唯との勉強……
そして、今の二人の寝顔。
……うん、楽しかった。
それにしても……

和「手のかかる妹たちね、まったく……」


終わり♪

83: 2010/07/12(月) 00:21:44.92
いいもの見せてもらった

おつ、そしてありがとう

86: 2010/07/12(月) 00:24:43.91

引用元: 和「手のかかる妹」